日本の針路

2017年12月 3日 (日)

改元のスケジュール/日本の針路(356)

1979年に制定・公布された「元号法」によって、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める」とされた。
いわゆる「一世一元の制」の法制化である。
しかし歴史は意外に新しい。
明治政府は、慶応4年を改めて「明治元年」とするとともに、一世一元の詔で天皇一代につき一元号とする一世一元の制を定めた。
明治以前は、天皇の在位中にも災害など様々な理由によりしばしば改元が行なわれていた。
また、寛永や慶長のように、新たな天皇が即位しても、元号が変わらない場合もあったのである。

第二次世界大戦後に制定された日本国憲法、1947年(昭和22年)施行の皇室典範では元号の規定が明記されず、同年5月3日を以って元号の法的根拠は消失した。
しかし、その後も元号が「慣例として」用いられていたが、昭和天皇の高齢化に伴い、元号法制化を求める声が高まり、元号法の制定になった。

最近、自民党の竹下亘氏が、宮中晩さん会の国賓に同性パートナーが出席することについて、「私は反対だ。日本本国の伝統には合わない」と 発言し波紋を呼んだ。
その後撤回したが、、「皇室を考えた場合に、日本人のメンタリティーとしてどうかな という思いが私の中にあったものだから、ああいう言葉になって出 た」と言わずもがなの弁解をして、何が問題なのか分かっていないことを露呈した。
「日本国の伝統」ばどと言えば、保守層に好感されると考える根性がさもしい。

1日の皇室会議で、天皇陛下が2019年4月30日に退位する日程が決まった。
退位を実現する特例法が6月に成立し、政府が退位時期の決定に向けた検討を本格化して以降、宮内庁と首相官邸は妥当な時期を巡り駆け引きを続けたという。

 官邸が昨年から探ってきたのは「18年12月末退位・19年元日改元」案。陛下が退位の意向をにじませる昨年8月のビデオメッセージで「平成30年(2018年)」に触れたからだ。18年の誕生日に85歳を迎えられる区切りの良さもあった。
 先手を打ったのは宮内庁だった。「1月1日は皇室にとり極めて重要な日。譲位、即位に関する行事を設定するのは難しい」。西村泰彦次長が今年1月17日の定例記者会見で18年末退位案について難色を示した。宮内庁が退位を巡って公の場で異例の言及をしたことに、菅氏は「政府の立場でコメントは控えたい」と言葉をのみこんだ。
 「なんだかんだ言っても陛下のお気持ちというのは本当に大きい」。退位特例法の成立後、退位時期をめぐり宮内庁との調整に入るにあたって、官邸の高官はこぼした。
 宮内庁がこだわったのは19年1月7日。昭和天皇の死去から30年の式年祭をいまの天皇陛下で開くことだった。官邸に求めたのは「19年3月末・4月1日改元」案。年度替わりの節目でもある。同庁関係者によると、官邸側に年末年始と3~4月の皇室行事を示し、どちらが皇位継承に伴う陛下と皇太子さまの負担が少ないか説明した。
・・・・・・
宮内庁の山本信一郎長官は11月21日夜、19年4月末退位案が浮上したとの報道を受け、同庁長官室前で記者団に硬い表情で繰り返した。ある宮内庁幹部は「12月1日の皇室会議の日取りを聞いたのが21日夜。4月末退位案は寝耳に水で長官も知らなかったと思う」と話す。
 「4月末」という国民的に決してきりの良くない退位時期。それ自体が、官邸と宮内庁の溝の深さを物語る。
Vs
皇室の事情、官邸のメンツ 退位時期巡り溝浮き彫り

改元は日本人全体に影響することである。
5月1日という日の是非についてはいろいろ意見があろうが、「象徴天皇」というファジーな概念を、全身全霊で追求し実践しようとされてきたことに疑問はない。
静かに滞りなく皇位継承と改元が行われることを願う。

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2017年11月21日 (火)

そこまで堕ちたか、「文春砲」/日本の針路(355)

かつて様々なスクープをものにして「文春砲」と称された「週刊文春」もすっかり安倍官邸のプロパガンダ誌になってしまったようだ。
週刊文春が週刊新潮の中吊り広告を業者から事前入手するという出版モラルを欠いた事件が報じられたが、安倍首相の「宿敵」山尾志桜里に対する報道も異様な感じである。
最新の11月23日号には以下のような記事が載っている。
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「一泊二日を共にした」と、いかにも不倫関係を実証するかのような書きぶりである。
ところが小林よしのり氏は、二人の行動について次のように語っている。

昨日(12日)大阪で開催した「関西ゴー宣道場」は山尾志桜里、倉持麟太郎が公の場で始めて同席し、その様子はニコ生で生中継されたが、近々、全編動画配信もされる。
道場終了後、わしは合気道の達人のボディガードと共に、山尾氏を送って会場の外に出て、タクシーを拾って乗車させた。
そのとき、すでに週刊文春の記者が尾行していたのだが、人通りが多いため、気づかなかった。
山尾氏は大阪の友だちの家に行き、以後一歩も外出せず、今日、新幹線で帰ったのだが、東京駅に着いて山尾氏がホームに降りた途端、週刊文春の男女記者二名が襲撃してきた。
呆れたことに同じ新幹線に乗っていたのだ。
つまり山尾氏の友人宅から記者は尾行していたことになる。
それで発した言葉が
「大阪で倉持さんと泊まりましたよね?」だ。
昨夕、わしが山尾氏を送って行ったあと、倉持氏は「ゴー宣道場」師範たちと、その日の感想を述べ合う動画収録を行ない、その後は我々と設営隊メンバーの慰労会に顔を出し、その後、師範だけの反省会に移動した。
その後は高森・笹・泉美・倉持と共に、わしが予約したホテルに帰った。
どうやらこれは、週刊文春記者は把握していなかったようだ。
狂気に走る週刊文春(その1)

もちろん、小林氏の言も一つの証言であって、全面的に依拠していいかどうかという問題はある。
しかし価値判断は別として、事実関係について虚偽を言う必要性も必然性もない。
しかもすべて第三者も行動を一にしているのであるから、十分信用に足るのではなかろうか。
小林氏は次のように書いているが、文春側の反論を聴きたい。

週刊文春から山尾氏事務所に来た質問書には
〈昨日(11月12日)、山尾先生は「ゴー宣道場」に出演された後、大阪で倉持麟太郎弁護士と一緒に宿泊していましたが、間違いございませんか。〉
と神田知子の名で、書いてある。
「一緒に宿泊していましたが」と既成事実のように書いているのだから狂っている。
大阪での証人が、山尾にも、倉持にも、複数いるのに、それでも嘘をねつ造しようとする狂気はもう常軌を逸している。
狂気に走る週刊文春(その1)

なお、11月9日号では以下のような記事を載せている。
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書き方がいかにもゲスではないか。
不倫関係にあることを事実にしないと気が済まないという感じであるが、仮に事実としても「秘め事」であるから、よほどのことがない限り状況証拠に過ぎない。
状況証拠だけで決めつける態度は、如何なものだろうか?
そこまで堕ちたか、「文春砲」と言わざるを得ない。
これからは「週刊文春」の記事については、基本的に信用しないようにしようと思う。

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2017年11月14日 (火)

小池劇場は終演したのか?/日本の針路(354)

「驕る平家は久しからず」というが、「小池劇場」といわれた小池百合子東京都知事のパフォーマンスも終息したようである。
12日投票が行われた東京・葛飾区議会議員選挙(定数40・立候補者59人)が13日午前開票され、小池都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は、公認候補者5人のうち、4人が落選した。
「都民ファーストの会」は、7月の都議選で55議席を占める最大会派に躍進したが、10月の衆院選で小池氏の率いる国政政党「希望の党」が完敗した。
⇒2017年10月26日 (木): 小池都知事の錯覚・錯誤・蹉跌/日本の針路(350)

今回の葛飾区議選は、「都民ファーストの会」にとって都議選後、公認候補を擁立した初の地方議会選だったが、当選が民進党から移った現職1人のみで、新人4人が落選して、急失速が改めて浮き彫りになった。
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東京新聞11月14日

劇場型政治は、風に乗っている時は強いは、風向きが変わると一挙に低落して行く。
劇場型政治を支えているのはいわゆるB層であるが、マスメディアの影響を受けやすい。
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⇒2017年10月 9日 (月):希望の党の支持基盤としてのB層/日本の針路(342)

小池氏は「希望の党」の両院議員総会で代表辞任を表明した。
それを受け、都議会公明党の東村邦浩幹事長は「これまで小池知事寄りのスタンスを取ってきたが、これからは是々非々でやっていく」と述べ、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」との「知事与党」関係を解消する考えを示した。
小池氏が代表を降りても退勢は変らず、前途多難であろう。

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2017年11月13日 (月)

創価学会と官邸の関係/日本の針路(353)

私は学生時代に、一度だけ創価学会の会議に参加したことがある。
尊敬していた先輩が急に学会の熱心な信者になって誘われたのだ。
もちろん違和感はあったが、嫌悪感はなかった。
公明党があったのかどうか記憶にはないが、護憲平和路線だったと思う。

いつから自民党主導の与党の立場になったのか?
安倍政権のウルトラライトの立場と、公明との母体の創価学会の立場がどう折り合っているのか、不思議な感覚だと思うが、余り深く考えたことはないが、選挙結果次第では変化するのではと思っていた。
公明党が先の衆院選を総括した10日の全国県代表協議会では、地方組織代表から安倍晋三首相(自民党総裁)が提案する憲法9条改正による自衛隊明記案への賛否を明確にするよう求める意見が出ていたそうである。

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党執行部は重要政策を巡り自民党との対立が明確になれば連立政権の基盤が揺らぎかねないとして、自民党の議論を見守る慎重な姿勢を示した。出席者が11日、明らかにした。
 協議会では、出席者が9条改正への党見解が曖昧として方向性を示すよう要求。執行部は「改憲を党是とする自民党と公明党が対立すれば、政権そのものに関わる話になる」と述べ、賛否を明言しないことに理解を求めた。
公明地方、9条改正賛否明確化を 総括で要求 執行部は慎重姿勢

執行部は持ちこたえられるだろうか?
また、学会員の公明離れが加速するのではないか、という記事を目にした。

「10月の総選挙で公明党は5減の29議席に終わりました。比例代表では、2000年以降の衆参両院選を通じて初めて700万票を割った。これは一部の学会員が批判の意味を込めて立憲民主党に投票したり、無効票を投じたからといわれています」(創価学会関係者)
・・・・・・
 安保法制や共謀罪に賛成し、自民党のブレーキどころかエンジンになっている今の公明党に学会員の不満は鬱積し、爆発寸前という。今後、“公明離れ”がさらに加速する可能性が高い。
「今回、公明党は『5歳までの幼児教育を全て無償化する』と公約に掲げました。安倍首相も教育無償化について『全ての子供たち』と言っていたくせに、選挙が終わった途端、認可外保育は対象外にしようとしていると判明。選挙で汗を流した学会婦人部はカンカンです」(ある婦人部会員)
 こうした動きを察知した創価学会は、沈静化のために先手を打とうとしているようだ。例年、学会は創立記念日の11月18日前後に幹部人事を行う。今年は“官邸とのパイプ役”と呼ばれる幹部を要職から外すのではないか、という情報が流れている。
「この幹部は菅官房長官の“盟友”といわれています。今回、安倍首相が解散・総選挙に踏み切ろうとしていることを知ると、足元の改憲反対派の学会員の反発を危惧して『都議選が終わったばかりで準備が間に合わない』『年末にするよう首相を説得して欲しい』などと菅氏に要請したといいます。ところが、やんわりと押し切られて選挙に突入。結果、公明党の議席を大きく減らすことにつながった。創価学会が本当にこの幹部を要職から外すことになれば“懲罰人事”になりますが、同時に“官邸との決別”も意味します」(前出の創価学会関係者)
 こうした公明党の事情を知ってか知らずか、安倍首相は8日夜、「憲法を変えることを支持されたと思っている。できれば早めにしたい」と明言した。解けそうな“下駄の雪”を捨てて、別の改憲勢力と手を組むつもりかもしれない。
菅官房長官の“盟友”を更迭? 公明党に自公連立解消の兆し

安倍首相にとって改憲は至上命題なのか?
普通はそう考えるだろうが、自民党の長老山崎拓氏は次のように見ているという。
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サンデー毎日11月19日号

要するに、自民党が総選挙で勢力を維持し、公明党が微減に終わった結果、巨大与党が改憲問題で割れて行くだろうと言う見立てだ。
果たしてどうなるか?
創価学会の側では内部矛盾が高まっているであろうから、公明党は与党のうま味は捨てがたいにせよ、創価学会の意向に従わざるを得ないだろう。

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2017年11月12日 (日)

希望の党に希望はあるか/日本の針路(352)

希望の党が、10日、国会議員の共同代表として玉木雄一郎衆議院議員を選出した。
小池代表との共同代表体制であるが、失望から絶望へ、などと言われている「希望の党」は、希望を復活させることができるだろうか。

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 11月10日に行われた希望の党の共同代表選挙で、玉木雄一郎衆議院議員(48)が選任された。国会議員票53票のうち、39票が玉木氏に投じられた。小池百合子代表に近く、チャーターメンバーが味方に付いた玉木氏の勝利は予想通りだと言える。
 しかしながら勝利の結果はともかく、7割強の得票率は「大勝」と言えるのか。あるチャーターメンバーは投票前に、「玉木氏は4対1以上で勝たなくてはいけない」と語っている。
 その理由は、玉木氏の対抗馬の大串博志衆議院議員(52)が、「憲法9条改正反対」「安保法制反対」の姿勢を明確にしたからだ。さらに大串氏は、新進党や無所属の会、立憲民主党との“連携”まで言及した。
【希望の党】共同代表に玉木氏就任!問われるリーダーシップ。

敗北した大串氏の立場は次のようだ。

これについて大串氏は「憲法改正の議論はあっていいが、9条改正は必要ない」と断言。安保法制についても、「日本の立憲主義を守るという立場から、集団的自衛権を含む安保法制は容認しないという立場を明らかにする」と述べ、他党との連携についても、民進党や無所属の会、立憲民主党との連携及び統一会派を組む可能性にも言及した。
しかしながら希望の党は、保守政党を標ぼうし、安全保障政策について現実視するのではなかったか。そのために政策協定書が作られ、民進党からの参加希望者は振り分けられたのではなかったか。上記のチャーターメンバーは、「安保法制も憲法改正問題も、希望の党に入る時に確認済みの事項だ。それに反するならば、同じ政党としてやっていられない。出て行ってほしい」と述べている。
これについて大串氏は、「当初の政策協定書には『安保法制を容認しない』と書かれていたが、後で修正してその文言は消えた」として、持論が希望の党の基本方針と矛盾しないことを強調。実際に当初作られた「8項目政策協定書」にはその第2項で「限定的な集団的自衛権の行使を含め、安全保障法制を基本的に容認し、現実的な安全保障政策を支援すること」と記載されていたが、後に「現実的な安全保障政策を支持する」に修正されてはいる。
よって「安保法制を容認しない」と主張しても、政策協定書に矛盾するわけではないという論理が成立するというのが大串氏の言い分だ。
希望の党は「玉木共同代表」で何が変わるか

この路線の違いは、戦術的というよりも戦略的だから、早晩希望の党の内部矛盾は顕在化するだろう。
玉木氏は、「さわやかにスポーティにいきたいと思うので、みなさん頑張りましょう」と挨拶したが、そう簡単にはいかないと思われる。
ベクトルの違いを容認すれば民進党を解党したことの意味が問われるし、路線純化をすれば大串氏の支持勢力は離党するだろう。

最近の小池百合子氏はすっかりくたびれているように見える。
「鬼道に仕え、よく衆を惑わす。年齢は既に高齢」という『魏志倭人伝』の卑弥呼の描写を思わせる。
いよいよ、「倭国大乱」かも知れない。
⇒2017年9月28日 (木):衆院解散は「倭国大乱」に似ているか?/日本の針路(332)

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2017年10月27日 (金)

小池都知事の中立性という名目の政治性/日本の針路(351)

小池氏が急速に支持を失ったことは、選挙前の言動によるところが大きいだろう。
しかし、それは上手に迷彩を施していた小池氏の本質が、都知事選、都議会選の圧勝で気が緩み、表面に露出したに過ぎない。
⇒2017年10月26日 (木): 小池都知事の錯覚・錯誤・蹉跌/日本の針路(350)

小池氏は緑をイメージカラーにしていた。
緑はエコロジーの象徴であり、支持の拡大に効果的であった。
しかし小池氏が特にエコロジーにこだわりを持っていたは思えない。
小池氏は、核武装や他国への先制攻撃を主張する幸福実現党と共闘していたし、自身も核保有論者だったことを忘れてはならない。
⇒2009年8月22日 (土):小池百合子氏と幸福実現党が共闘!
⇒2016年7月22日 (金):緑を冒涜する小池百合子/日本の針路(277)

都知事選で急遽脱原発を持ち出したりしたが、付け焼き刃もしくは偽装と見るべきであろう。
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⇒2017年9月27日 (水):小池新党はポピュリストの本領か?/日本の針路(331)
⇒2017年9月28日 (木):衆院解散は「倭国大乱」に似ているか?/日本の針路(332)

小池氏の本質は、選挙前にも現れていた。
それは関東大震災が起きた時に発生した朝鮮人虐殺の犠牲者に対する都知事としての追悼文を送付しなかったことである。
その理由は、都知事としての追悼文は東京都慰霊堂で行う式典に送っており、「知事は朝鮮人も含め全ての犠牲者に追悼の意を表しているので、個別の慰霊式への追悼文送付は見合わせることにした」と説明されている。
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東京新聞8月24日

追悼文を送らないことが話題になっても、特別に対応しなかったのであるから、これは小池氏自身の意思であると考えて良いだろう。
小田嶋隆氏は「日経ビジネスオンライン9月1日号」の『追悼文をやめて何を得るのか』で次のように言っている。

 あまりにもさらりと言ってのけているので、こちらもついさらりと聞き流してしまいそうになるが、この短い質疑応答の中で、小池都知事は、実に空恐ろしい言葉を連ねている。
 「民族差別という観点というよりは……そういう災害で亡くなられた……様々な被害によって亡くなられた方々」
 というこの言い方は、知事が朝鮮人虐殺について、民族差別とは無縁な偶発的な出来事である旨の認識を抱いていることを物語っている。
「民族差別というよりは」
 というよりは、何だ? 
 民族差別でないのだとすると、あの集団殺戮は、いったいいかなる心情がドライブした動作だったというのだろうか。
 同じ町で暮らしている隣人を、同じ町の住人が多数の暴力によって殺害することが、差別以外のどういう言葉で説明できるのだろうか。
 6000人以上と言われている虐殺の犠牲者は、民族差別による殺人の犠牲者ではなくて、一般の災害関連死と同じ「様々な被害」として一緒くたにまとめあげることのできる死者だというのか?

至極真っ当な意見であるが、こういうことを言うと昨今は「極左」などと言う人がいるから、日本の右傾化も相当のものだ。
中島岳志氏は、虐殺死を災害死に包含するような考え方を「中立性という名の政治性」と呼んでいる。

さいたま市の公民館が「9条デモの俳句」を中立でないという名目で掲載しなかったのも同じことだろう。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)

この不掲載という判断は、今年話題になった妙な「忖度」のハシリと言うべきだろう。
小池氏の反安倍の言動に幻惑されてはならない。

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2017年10月26日 (木)

小池都知事の錯覚・錯誤・蹉跌/日本の針路(350)

それにしてもジェットコースターよりも激しい急降下だったと言えよう。
小池百合子東京都知事が、国政新党として「希望の党」を立ち上げると発表してから1カ月での評価の低落である。

小池氏は、昨年7月の都知事選に圧勝した。
私は、猪瀬直樹、舛添要一の二人に続き、東京都民はまた間違えたと思った。
なぜなら、彼らが選出された経緯についてのレビューが不十分であると考えたからである。
そして、「漠然とした不安」を抱いた。
⇒2016年7月31日 (日): 都知事選の暫定総括/日本の針路(282)

しかし、今年7月の都議選においても、小池都知事が代表を務める地域政党「都民ファーストの会」が49議席を獲得して、都議会第1党となった。
都議選においては、公明党も小池知事を支持したので、支持勢力は過半数の64を大きく上回り、79議席となった。
この結果が小池氏にある種の万能感をもたらしたであろうことは想像に難くない。

それは「希望の党」をの設立を発表する際の高揚した感じからも窺えた。
若狭勝、細野豪志の両氏が、2人で協議していた新党議論を打ち切ってリセットすると言い放った。
そして、自分だけの判断で、首班指名に公明党の山口那津男氏の名前を持ち出したりする「はしゃぎ」ようだった。
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東京新聞10月25日

特に、民進党のリベラル議員を「排除する」と言ったことが有権者の反感を招いた。
側近とされた若狭氏でさえ、「あの発言が・・・」と恨み節を口にした。
選挙結果により後悔しているのかも知れないが、後の祭りである。
排除した民進党のリベラル議員らによって後追い的に作られた立憲民主党に、完全に勢いを奪われた。

三浦瑠麗氏は、立憲民主党は全員当選しても少数であり、あらかじめ敗北していたことを総括すべきだ、と「朝ナマ」で言っていた。
米山隆一新潟県知事はツイッターで次のように批判した。
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同感である。
三浦氏が安倍首相よりのスタンスであることは承知している。
⇒2017年9月14日 (木):親安倍イデオローグ(1)三浦瑠麗/アベノポリシーの危うさ(295)
しかしこれは米山氏の言うように、完全にお門違いのコメントというべきだろう。
選挙前後の変動率で見れば、唯一立憲民主党だけが議席を増やしているのだ。
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ところで、小池氏は何を間違えたのか?
万能感によって客観的な目を失ったからであろう。
論理的な思考の一丁目一番地は、根拠に基づく判断である。
空を見る目が曇っていたというしかない。
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ところで、小池氏の排除したリベラルとは何か?
最近は何を勘違いしてか「極左」などという人もいる。
社会の右傾化が進んだためか、単に無知なだけか。
日本のリベラルの源流は自民党宏池会なのだそうだ。
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東京新聞10月3日

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2017年10月24日 (火)

総選挙の帰趨を決めた要因/日本の針路(349)

安倍翼賛体制が続くかと思うと憂鬱になるが、自民党大勝に終わった要因はどう考えられるだろうか?
もちろん複合的であって、答えようがないとも言える。
しかし現象的には、小選挙区制という制度において、一強といわれる相手に対し、挑戦する側が四分五裂していたのでは、勝てるはずがない。
その意味で「1対1」の構図に持ち込もうとした前原誠司民進党代表の判断や、それを受け入れた民進党議員らの判断は分からなくもない。

しかし、結果的にはその意図が実現することはなかった。
民進党は前原執行部の発足以前、共産党や社民党などとの野党共闘を進めていたので、小池氏と前原氏は共謀して野党共闘を潰したのかも知れない。
あるいは、本人たちは意識していなくて、誰かに謀られたのかも知れない。
死んだ子の齢を数えるようなものだが、朝日新聞が野党共闘が成立した場合のシミュレーションをしている。

「立憲、希望、共産、社民、野党系無所属による野党共闘」が成功していればという仮定のもと、朝日新聞は独自に、各選挙区でのこれらの候補の得票を単純に合算する試算を行った。その結果、「野党分裂型」226選挙区のうち、63選挙区で勝敗が入れ替わり、与党120勝、野党106勝となった。
Ws000003
野党一本化なら63選挙区で勝敗逆転 得票合算の試算

また、全国を1つの選挙区と見て、政党別の獲得票数で議席を配分したらどうなるか?
ツイッターの投稿から引用する。
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安倍首相が勝敗ラインとして設定した「与党過半数」を僅かに下回る数字である。
過半数≧233 自公:215

まあ、希望、維新・・・の113、を加えると328になるから、広義の与党大勝に変わりはないが、希望も一枚岩とは考えられないだろう。
まあ、意味のないシミュレーションではあるが、野党共闘が成立していれば結果が大きく変わっていた蓋然性は高い。
その意味では、野党のオウンゴールだったし、その戦犯は、小池、前原の両氏であることは疑い得ないだろう。

特に、踏み絵まで踏ませた小池氏が急失速したのは当然と言えよう。
元共産党の幹部だった筆坂秀世氏は次のように言う。

 9月25日、小池氏は安倍晋三首相の解散表明の日にぶつけるように希望の党を立ち上げた。このとき、国民の間で大きな期待が広がった。自民党の小泉進次郎氏は、「最初はビビった」と言う。二階俊博幹事長は、「今から解散を止められないか」とこぼしたと言う。それぐらい自民党に衝撃を与えたのだ。
 だが、小池氏のたった一言で流れは大きく変化してしまった。小池氏は昂然と胸を張って、「民進党議員を全員受け入れるつもりはさらさらない」「排除します」と発言した。この発言をテレビで聞いたとき、「何様だ」と瞬時に感じた。多くの国民が同様に感じたはずである。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺があるが、傲慢さは日本人が一番嫌うものだ。ましてや踏み絵などというのは、キリスト教の弾圧を想起させるだけだ。自民党のある幹部は、「安倍さんが一番嫌われていたのに、小池さんが一番嫌われるようになって、安倍さんは二番になった」とほくそ笑んだという。
自民党大勝の最大の功労者は小池百合子と前原誠司

小池氏は勘違いをしていたのであろうか?
前原氏はその勘違いを、諒としたのだろうか?
両氏が意図的に野党共闘を潰したのではないと思いたい。

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2017年10月23日 (月)

フェイク新聞と化した産経と日本の状況/日本の針路(348)

衆院選の投票日にテレビ速報を、主に池上彰氏の番組を中心に視聴していた。
その時、安倍首相へのインタビューが「妨害」されたように聞き取り難かった。
「何だろうな?」と思っていたら、次のような記事があった。

 まず、司会のジャーナリスト・池上彰氏が「今回の選挙戦での結果を、どのように評価していますか?」と質問すると、安倍首相はその質問には答えず、「まず質問にお答えする前に申し上げたいのですが」と切り出し、約1分間にわたり、日本に上陸中の台風に対する警戒を国民に呼びかけ、続けて、多くの選挙区で自民党候補者が接戦を繰り広げていることについて、「私たちに厳しい視線が注がれているということを、肝に命じていかないといけないと思っている」と自ら反省の弁を述べた。
 そして、話題が今回衆院解散を決断した理由におよび、池上氏が「北朝鮮情勢に関してはですね」と切り出した途端、中継先である自民党本部の会場内に大音量で「続きましては、高村副総裁によるバラ付けを行います」というマイク音が響き渡り、約1分間にわたり当選者名の読み上げやバラ付けが安倍首相の背後で行われ、池上氏と安倍首相のやりとりが聞き取りにくい状態が続いた。そして「高村総裁、ありがとうございました」というアナウンスが入ったかと思うと、今度は同じく大音量で「続きまして、竹下総務会長によるバラ付けを行います」というマイク音が流れてバラ付けが行われ、2分近く中継が聞き取りにくい状態となった。これには、池上氏もやや戸惑う表情を見せた。
 最後は池上氏が質問している途中で強制的に中継が終了されて“時間切れ”となったが、約6分間の中継時間の内の半分が、安倍首相による一方的な発言や“大音量のバラ付け”に占められ、質疑応答が十分に行われなかった。
 池上氏が司会を務めるテレビ東京の選挙特番といえば、これまで政治家たちへのタブーのない鋭い追及がウリだっただけに、インターネット上では「会場のアナウンスでのインタビュー妨害が露骨」「池上さんの質疑を嫌って、わざと音をうるさくする作戦」「花付け作業で質問かき消す」「自民も姑息な手段してきたね」などと批判を呼んでいる。
 ちなみに同番組内では、その後、池上氏は自民党の岸田文雄政調会長との中継の際に、「中継の際は読み上げなどは行わないルールのはず」「こちらと安倍さんとのやりとりがうまくいかなかったことについて、きわめて異例のことだったと一言申し上げておきます」と抗議しているだけに、今後問題化される可能性もありそうだ。
自民党、安倍首相と池上彰の中継で大音量「妨害」に批判殺到…「姑息」「わざと音」

もし意図的な行為だとしたらずいぶん姑息ではないか。
誰かが、「池上氏は選挙期間中にやるべきだ」と言っていたが同感である。

自民党と同じように姑息なのが、自民党の機関紙と化している産経新聞である。
私も産経新聞を購読していた時代があった。
文芸欄には光るものがあったし、斎藤勉『スターリン秘録』や堺屋太一『風と炎と』など大型のノンフィクションは面白く読んだ。
しかしもう四半世紀も前のことだ。
ネット戦略では先行していて、紙面イメージがそのままスクショできるが、時々知人がコピーして渡してくれる。
安倍応援団であることは分かっていたが、投票日の紙面構成には驚いた。Photo_2

ツイッターからに引用であるが、なんと新宿の立憲民主党の写真である。
あたかも安倍首相の演説が熱気を帯びたものであるかのようである。
これを「印象操作」とか「フェイクニュース」というのではないか?
ツイッターの文章は次のようである。
Photo_3

まったく同感である。
しかし、秋葉原の様子は以下のようだったから、いくら産経新聞でも使うわけにはいかなかったのだろう。
20171023_142120

 選挙戦を締めくくる「最後の訴え」で安倍首相が到着する1時間半前から、無人の自民党選挙カーの周囲を人が埋め尽くし、数え切れない日の丸の旗が揺れている。大半が支持者のようだ。「負けるな安倍総理」「頑張れ安倍総理」--巨大な横断幕が何枚も掲げられている。
 大勢の警察官が、鉄柵やロープを使ってその大集団と一般市民を隔てている。横断幕や居並ぶ警察官の前を、通行人が足早に通り過ぎていく。
 駅ロータリーを囲んで地上を見下ろす歩行者デッキも、支持者で埋まっている。「みなさーん、これで応援してくださーい」。各所で日の丸の小旗を配っている。誰が小旗を用意したのか。配る女性の一人は「ボランティアなので、ちょっと……」と笑顔で首をかしげたが、自民党のバッジをつけた人も配っていた。
 TBSやテレビ朝日を「偏向報道」と糾弾するプラカードを持って歩き回る支持者たちも多数いる。全体に若い世代が多い印象だ。
揺れる日の丸、かき消される「アベやめろ」 首相の「アキバ演説」で見えたもの

安倍首相と枝野代表の街頭演説を対比させた画像は以下のようである。Photo_4
⇒2017年10月22日 (日):「こんな首相」を続けさせて良いのか?(2)/アベノポリシーの危うさ(311)

それにしても日本もヒドイ状況になってきたものだと思う。

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2017年10月22日 (日)

開票速報を眺めつつ/日本の針路(347)

テレビで開票速報をやっている。
最初に目に飛び込んできたのは、なんと稲田朋美氏である。
私が議員であるべきではないと考える人である。
⇒2016年10月16日 (日):稲田防衛大臣の資質と適性/人間の理解(18)
⇒2017年4月 1日 (土):稲田防衛相の虚偽答弁/日本のPost-truth(1)
⇒2017年2月19日 (日):不適格大臣列伝(15)稲田朋美防衛相(6)/アベノポリシーの危うさ(134)

この結果が示すものは、何のための選挙だったのか、改めて疑問に思う。
与党は、ほぼ改選議席と同程度の議席数のようである。
野党は、希望の党が伸び悩み、立憲民主党が上回りそうである。
事前に予想された情勢通りであろう。
Photo_5
自公2/3維持の勢い 希望、立民 野党第1党争い 終盤情勢

⇒2017年10月18日 (水):総選挙終盤の情勢/日本の針路(345)

序盤の情勢分析から、希望と立憲の位置が変わっただけとも言える。
⇒2017年10月12日 (木):安倍首相の暴言と衆院選序盤(?)の情勢/日本の針路(343)

結局、橋本治氏の言うように、自民・希望・民進『三方一両損』の構図なのだろうか。

 安倍は北朝鮮問題やら民進党のスキャンダルやらで、一時は落ち込んでた支持率が、ここにきてちょっと上がったから「今だ」と思って解散総選挙に踏み切ったんだろうけど。選挙戦じゃ希望の党や民進党の悪口ばっかり言っていて、そういうコトしていると自分が嫌われるというのが、相変わらず分かってないでしょ。
 一方、希望の党の小池百合子は民進党を乗っ取って、一気に主役になろうと考えたんだろうけど、その過程で「私にとって都合の悪い人は排除します」なんて言うもんだから、結局はタカ派だってのがあっさりバレて嫌われた(笑)。で、前原がその小池に手玉に取られて、分裂崩壊しちゃった民進党は「ああ、あの人たちってやっぱりバカだったのね……」とみんなに納得されちゃった。
 その希望の党を排除された面々は、急遽団結して立憲民主党を作った。ほとんど忠臣蔵だよね。代表のせいでお家断絶となった民進党の浪士が、仇討ちを決意して結集したという……。日本人の同情はこういうところに集まるから、元の城をなくしてもここはそれなりに勝てる。そういうもんです。

⇒2017年10月22日 (日):「こんな首相」を続けさせて良いのか?(2)/アベノポリシーの危うさ(311)

戦いを前にして解党してしまった民進党は、希望、立憲、無所属に割れた。
結果を見れば、何のための解党だったのだろうか?
もちろん、見解が明快になったという副次的(?)効果はあった。
⇒2017年9月11日 (月:民進党の解体と「真の野党」への再編成/日本の針路(328)

選挙結果は現時点の状態(ストック)を示すものである。
それはそれとして、フロー(ベクトル)がどうなのか?
上げ潮の立憲が勢いを維持できるかどうかがポイントであろう。

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