日本の針路

2017年5月 5日 (金)

子どもの数と将来人口/日本の針路(316)

わが国は人口減少社会に入っており、少子化対策が重要な課題と言われて久しい。
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人口減少社会という希望

総務省が「こどもの日」に合わせて4日発表し た15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現 在)によれば、子供の数が36年連続で減少した。

内訳は男子が805万人、女子が76 7万人。  総人口に占める子どもの割合は、前年比0.1 ポイント減の12.4%で43年連続で低下し た。  3歳ごとの年齢区分では、12~14歳が33 5万人と最も多く、9~11歳が321万人、6 ~8歳が317万人、3~5歳が304万人。0 ~2歳が294万人と最も少なく、年齢が低いほど人口が減っている。  都道府県別のデータ(2016年10月1日現在)によると、人口に占める子ども の割合が最も高いのが沖縄の17.2%で、滋賀14.3%、佐賀13.8%と続 く。最も低いのが秋田の10.3%。九州8県(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮 崎、鹿児島、沖縄)の子どもの割合はいずれも全国平均の12.4%を上回ったが、 東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)は全て全国平均を下回るなど地域 間のばらつきが大きい。
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子どもの人口、36年連続減=15歳未満1571万 人-総務省

それでは児童手当、出産育児一時金、就学援助など、家族政策の財政規模を諸外国と比較して、日本はどうだろうか。

 日本と欧米諸国(米国、ドイツ、英国、フランス、スウェーデン)でこれらの財政割合を比べるため、家族を支援するために支出されている現金給付と現物給付(サービス)の対GDP比を調べています。
 具体的には児童手当、社会福祉、健康保険、各種共済組合、雇用保険、生活保護、就学・就学前援助の項目から計上しています。その結果、日本はこれら家族関係社会支出の対GDP比は1.25%(2013年度)で、最も高い英国3.76%(2011年度)やスウェーデン3.46%(同)、フランス2.85%(同)などと比べ、4割程度の水準であるとわかりました。
 国民負担率などの違いもあるため、単純比較は出来ないものの、数値を見る限り、家族政策全体の財政規模は、欧米諸国に比べ、日本はまだ少ない割合にとどまっているといえそうです。
海外の少子化対策どこが違う? 出生率が大幅上昇した先進国と日本を比較

有限の財源をどう配分するか?
安倍政権の経済政策が一向に効果を上げていない中で、財政のあり方が厳しく問われよう。

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2017年1月26日 (木)

豊洲の病理と自公の責任/日本の針路(315)

築地市場の豊洲移転問題で、小池都知事が石原元知事の責任を問題にし始めた。
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東京新聞1月21日

そもそもは、石原元知事の不適切な判断が原因と考えられるから、当然であろう。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

同時に、石原氏の近況をTVで見ると、明らかに老化が進んでおり、責任能力すら疑問が湧いてくる。
⇒2014年3月 9日 (日):石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)

石原氏だけでなく、同氏を擁立し、石原都政の与党だった自公両党の責任の有無も明確化すべきではないか。
都議会公明党は自民離れが進みつつあり、それはそれで結構なことであるが、豊洲の問題が関係ないでは済まされない。
それにしても、豊洲への移転は常識的に考えれば、あり得ないであろう。
今の時点で、環境基準の79倍という数値なのだ。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

そもそもなぜ豊洲移転なのか?
いろいろな利権が取りざたされており、その闇は、おいおい明らかにされて行くであろう。
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東京新聞1月20日

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2017年1月25日 (水)

横浜市教育委員会の信じられない判断/日本の針路(321)

東京電力福島第1原発事故で、福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒がいじめを受けていた。
⇒2016年11月17日 (木):原発避難者いじめは社会の反映/原発事故の真相(148)

男子生徒はいじめを受けていた小学5年の時、同級生から「賠償金をもらっているだろう」と言われ、同級生らの遊ぶ金として自宅から現金を持ち出して1回5万~10万円を渡しており、その総額は150万円にも上っていた。
この金銭問題について、横浜市教育委員会は「金銭要求をいじめと認定するのは困難」とした。
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東京新聞1月21日

横浜市の第三者委員会が2016年11月にまとめた報告書では「金銭授受はいじめから逃れるためだった」と指摘しながらも「おごりおごられる関係で、いじめとは認定できない」と判断していた。
しかし、男子生徒は、「だれが出す?」「賠償金もらっているだろ?」とか「次のお金もよろしくな」などと言われ、今までにされてきたことも考え、威圧感を感じて、家からお金を持ち出してしまったという、と書いているのである。
誰が、どう考えたって、いじめそのものではないのか。
これをいじめと認めないとしたら、どういう事態をいじめというのか?

横浜市教育委員会の岡田優子教育長は「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」と述ているが、これでは「おごってもらったと言おうぜ」という抜け道を指南しているようなものではないか。
慄然とするような感覚である。

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2017年1月15日 (日)

混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

東京都の豊洲市場(江東区)の地下水調査で、環境基準を大幅に超える有害物質が検出された。
報告を受けた専門家会議のメンバーも、想定外の事態に「なぜ」と驚きの声を漏らしている。
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東京新聞1月15日

 築地市場(中央区)の講堂で開かれた14日の専門家会議。傍聴していた業者らに調査結果の報告書が配布されると、これまでとは桁違いの数値に会場はどよめきに包まれた。
 都の担当者は、激変したデータが「暫定値」であることを強調。平田健正座長は「どう評価していいのか、戸惑ってしまう」。
 会議のメンバーによると、考えられる可能性は大きく分けて二つあるという。一つは、9回目の採水が行われる直前に稼働した地下水排水システムの影響だ。稼働に伴い地下水が移動し、数値が上昇したという見立てだが、平田座長は「それならば、排水の数値も高いはずだ」と話す。
 もう一つは、採水方法のミスといった人為的な要因だ。今回は、1~8回目とは別の民間機関が担当。このため調査手法などを確認するとともに、今後は都環境科学研究所と民間機関2社で実施することにした。
 傍聴していた築地市場協会の伊藤裕康会長は「大変驚き、がっかりした」と動揺を隠せず、「早く実態をつかみ、包み隠さずにしてほしい」と要請。仲卸の男性は「(過去のデータに)改ざんがあったと疑われても、しょうがない」といぶかった。
 「都議会がこれまでどういう審議をしてきたのかも問われる」。小池氏は移転を推進してきた最大会派の自民党に矛先を向け、今夏の都議選での争点化は「避けられないのではないか」との見方を示した。
豊洲移転に黄信号=「桁違い」検出に衝撃-小池氏は疑義、業者憤慨

それにしても、今までのデータとの不整合の理由は何か?
専門家会議のメンバーの主な意見は次のようである。
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東京新聞1月15日

専門家たちも困惑している様子が窺えるが、そもそも豊洲は築地の移転先として適格であったのか?
石原都政時代に遡った検証が必要だと思われる。

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2017年1月14日 (土)

「日本3.0」と梅棹忠夫/日本の針路(319)

新年には、これからの日本がどう動いていくかが気にかかる。
特に、アメリカ大統領へのトランプ氏就任、イギリスのEU離脱、混沌が深まる中東情勢など、世界史との関係はどうなるか。
1939(昭和14)年8月28日、独ソ不侵条約が締結されると、平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇」という談話を発して総辞職した。
国際認識の欠如を示した言葉として有名であるが、平沼騏一郎ならずとも、「世界史の動向は複雑怪奇」と言いたくなる。

オックスフォード辞書は、2016年の「今年の言葉」に「post-truth」を選んだ。
最初に使われたのは1992年だというが、イギリスの国民投票やアメリカ大統領選によって使用頻度が急上昇したのが理由である。
いささか意味が取りにくい言葉であるが、同辞書は「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」を示す言葉だと定義している。
確かに、人間の脳の中で一番早く反応するのは、大脳辺縁系の感情を司る扁桃体だという。
⇒2013年3月 9日 (土):論理が先か感情が先か?/知的生産の方法(40)

ビジネススキルとして「エレベーターピッチ=エレベーターに乗っている15秒から30秒の時間内にプレゼンし、ビジネスチャンスをつかむテクニック」の重要性が指摘されているのもそのためであろう。
特に導入部の「つかみ」が決め手と言わるが、小泉純一郎元首相は名手であると思う。
郵政民営化に反対する人たちを「抵抗勢力」と命名し、「自民党をぶっ壊す!」と叫んで選挙で圧勝した。確かにワンフレーズでのアピールは、端的なエレベーターピッチであり、大きな効果を上げた。

安倍首相(のブレーン)も、エレベーターピッチを意識しているようである。
真珠湾での慰霊のスピーチも美しい言葉だ。

耳を澄ますと、寄せては返す、波の音が聞こえてきます。降り注ぐ陽の、やわらかな光に照らされた、青い静かな入り江……
安倍首相の真珠湾での演説全文

しかし、言葉が往々にして人を誤らせるのも事実だろう。
五輪招致の際の安倍首相の言葉を忘れまい。
⇒2015年6月 2日 (火):安倍晋三=サイコパス論/人間の理解(13)

団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年に向かって、日本は大きな曲がり角を曲がることになるだろう。
日本の総人口は既にピークアウトしているが、一極集中の弊害を言われてきた東京都も、間もなく人口減少に転じる。
近代日本は、敗戦までの第1サイクル、敗戦後からの第2サイクルの後の第3サイクルに入るのだ。
「日本3.0」である。

長いスパンでの歴史認識において突出していたのが梅棹忠夫さんだった。
「文明の生態史観」「情報産業論」「知的生産の技術」「中洋という視点」などを次々と提起し、鮮やかな論理を展開した。
それは探検家として、世界各地を実際に足で感得した知見と豊富な文献渉猟や多彩な人脈から得られる情報を反応させ、熟成させた思考である。
鳥の目と虫の目を両立させ得た稀有な学者であった。

例えば、社会発展を生物の発生のアナロジーで説明し、情報社会の到来を論じた。
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東谷暁『予言者 梅棹忠夫』文春新書(2016年12月)

2010年に亡くなった梅棹さんは東日本大震災を知らない。
⇒2010年7月 7日 (水):梅棹忠夫さんを悼む/追悼(8)

つまり、もう6年半が過ぎたことになるが、梅棹さんの論説に対する評価は高まりこそすれ、減じてはいない。
震災が発生した時、脳裏に浮かんだのは1973年すなわちオイルショックの年に刊行された小松左京さんの『日本沈没』だった。
日本列島がマントル対流によって太平洋プレートの下に引きずり込まれるという設定は、プレートテクトニクス理論を世に知らしめたが、型破りの科学者・田所博士は、梅棹さんがモデルだと言われる。

情報爆発と呼ばれている現象が加速し、「日本3.0」の主役は、情報を対象とする知的労働になると思われる。
果たして、働き方改革が実効性をあげ、苦役としての労働から解放される社会が到来するのだろうか。

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2017年1月13日 (金)

三菱電機元社員の労災認定と働き方改革/日本の針路(318)

三菱電機で、違法な長時間労働が行われたとして、厚生労働省神奈川労働局が11日に同社を書類送検した。

 男性の労働環境は過酷だった。平成25年4月に入社後、先進的な研究の発表を促されていたのと同時に、製品のトラブル対応を求められ、26年1月から業務が膨大になった。
 翌月は2日しか休みがなく、食事がのどを通らなくなり、手が震えるようになった。残業時間は月160時間に上ったが、会社への申告は「59時間」しか認められなかった。
 配属先の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では、名札だけで姿を見せない社員が何人もいた。尋ねてみると、休職している人たちだったという。
 上司からは厳しい叱責が飛んだ。「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」
 不眠を訴えても仕事は減らなかった。26年4月に鬱病になり、薬を飲みながら仕事をしていたが、同年6月には医師から勤務停止を求められた。
 男性は「何度も言い続けてきたが無視されてきた。会社はきちんと考えを改め、日本の社会も変わってほしい」と話した。
三菱電機元社員を労災認定

実態が良く分からないが、上記の情報だけでもいろいろ考えなければならない問題がある。
「先進的な研究の発表」とは?
先進的かどうかは相対的である。
企業の研究であるから有用性が求められるのは当然である。
例えば、特許権になるような研究ということであろう。
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発明塾式 ビジネスのための知財講座

産業上の有用性は当然として、問題は新規性と進歩性の判断である。
俳句を例にして、この問題を考えたことがある。
「新規性」というのは、特許を出願する時点で、「公知」でないこと、つまり今までに発表されていないことであり、「進歩性」というのは、誰でもが簡単に思いつくようなものではない、ということである。
問題は、「進歩性」の「誰でもが簡単に思いつくようなものではない」という基準をどう考えるか?

「特許法」では、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」は、「前項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」としている。
これを「進歩性」がない、と表現している。
しかし、「通常の知識」や「容易に」という概念には、裁量の要素が入ってくることを避けられない。
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⇒2007年10月23日 (火):選句の基準…③新規性と進歩性

三菱電機社員のテーマが何だったのかは不明であるが、「進歩性」を問われるようなテーマであれば、そしてその可能性は高いであろうが、寝ている時も考えるような状態だったのかも知れない。
そして、それは誤解を恐れずに言えば「当たり前」かも知れないのである。
時間で規定される労働と、知的藤堂の根本的な違いである。
働き方改革は必要であると思うが、超過時間労働「だけ」を問題にすることには違和感がある。

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2017年1月 3日 (火)

岐路に立つ日本と満州国論/日本の針路(317)

2017年は、様々な点で日本が岐路に立つだと思われる。
日本が再び戦前、戦中のような社会に回帰するのではないか?
第2次安倍内閣が発足した2012年以降、情報の統制が進み、反対意見を言いにくい雰囲気が強まった。

2014年の特定秘密保護法施行による政府に不都合な情報の国民からの遮断、2015年のマイナンバー法施行による国民の一元管理に加え、2016年の改正通信傍受法の施行により、捜査機関による傍受(盗聴)の縛りが大幅に緩和し、市民活動の監視が強化された。
の目が及ぼうとしている。
安倍政権はメディア介入も強めている。高市早苗総務相は昨年、放送局に電波停止を命じる可能性に触れた。政府が放送局に電波停止をちらつかせるようでは放送の自由は死んでしまう。
メディアへの介入も強く、高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に触れたたが、政府が放送局に電波停止を以て恫喝することにより、放送の自由は実質的に死んだ。

これらの事態は、満州事変以降の歴史を想起させるものである。
鶴見俊輔は1956年(昭和31年)に「知識人の戦争責任」(『中央公論』1956年1月号)のなかで「15年戦争」という言葉提起した。
それは以下の3つの段階で進んだ。
1.満州事変:1931年(昭和6年)9月18日 ~
2.日中戦争(支那事変):1937年(昭和12年)7月7日 ~
3.太平洋戦争(大東亜戦争):1941年(昭和16年)12月8日 ~

年表風にまとめれば以下のようになる。
昭和 6年 9月18日 満州事変
昭和 7年 1月 8日 桜田門天皇狙撃未遂事件
             1月28日 上海事件
             3月 1日 満州国建国宣言
             5月15日 5・15事件(犬養首相殺害)
昭和 8年 3月27日 国際連盟を脱退
昭和11年 2月26日 2・26事件
昭和12年 7月 7日 蘆溝橋事件
昭和13年 4月 1日 国家総動員法公布
昭和16年12月 8日 日本軍真珠湾を奇襲
⇒2013年2月27日 (水):石原莞爾と2・26事件/満州「国」論(15)

満州事変は1933年に塘沽協定により停戦が成立し、中国軍による偶発的発砲から起こったとされる盧溝橋事件(日中戦争)についても日本は「局面不拡大」「平和的折衝の望みを捨てず」と閣議決定[2]をしているが、鶴見は満州事変から日中戦争を経て太平洋戦争に至る(大東亜戦争)過程を日本の連続的な対外膨張戦略ととらえて14年間(15年にわたる)に及ぶ戦争を「十五年戦争」として総括しており、現実の歴史を振り返れば重要な視点であろう。

満州国という「国」は、様々に論じられてきた。
例えば、宮下隆二『イーハトーブと満洲国-宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』PHP研究所(0706)などは、意外な視点だと思われる。
文学者が岩手県を理想化して描いた仮想的なユートピアと日本の侵略の象徴ともいうべき「国」である。

満州国は国家だったのか?
武田徹『偽満州国論』河出書房新社(1995年12月)は、「満州国の興亡をテキストに、国家を規定する幻想性を追求する。石原莞爾の「最終戦争論」、甘粕正彦の満州政策。そしてインターネット、デジタルキャッシュ、オウム王国の建設へ。満州国のデザインは戦後も生き続ける。」ことを描いた書である。
「満州国」と「」付きで表記され、「なかった」ことになっているが、壮大な社会実験とみることもできる。

あるいは「評論自体が「ジャズ的なノリ」で書かれることが多く、あまり論理的な文章ではない。平岡の感性でとらえた、「辺境的なもの、マイナーなもの」を、ことさらに称揚しているだけとも受け取れる」と評された平岡正明『石原莞爾試論』白川書院(1977年5月)は、現在でも一部にカリスマ的人気を持つ石原莞爾を「武装せる右翼革命家」として論じている。
⇒2009年7月10日 (金):平岡正明さんを悼む/追悼(7)

同書の装丁に使われている満州国図は以下のようである。
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もう一度、満州国の興亡を辿ることを今年の1つの課題としたい。

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2017年1月 2日 (月)

「日本3.0」(?)への対応/日本の針路(316)

安倍首相が年頭所感を発表した。

 女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが、その能力を発揮できる一億総活躍社会を創り上げ、日本経済の新たな成長軌道を描く。
 激変する国際情勢の荒波の中にあって、積極的平和主義の旗をさらに高く掲げ、日本を、世界の真ん中で輝かせる。
安倍内閣総理大臣 平成29年 年頭所感

昨年は、相模原障害者施設における大量殺人や原発自主避難家族に対するいじめなど、弱者に対する迫害が深刻化した年であった。
これらの顕在化した事件は氷山の一角に過ぎない。
社会全体の風潮がそういう方向に進んでいるのだ。

「積極的平和主義」の美名の下に戦争の準備を進め、「日本を世界の真ん中で輝かせる」と客観的条件を無視して、自己陶酔する。
安倍首相の(スピーチライターの)言説には幼児性が際立つ。
未来志向がお好きな内閣であるが、そのためには歴史に学ぶ必要がある。
昭和は遠くなりにけり、であり、昭和を歴史として捉える時期になった。

近代日本は、明治維新から敗戦までの時代、敗戦から現在の時代を経て、第3の時代にシフトする。
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近代の第3ステージ、「日本3.0」が始まる

1964年の東京五輪に始まる経済志向(思考)で過ごしてきた時代が終焉するのだ。
安倍政権が「未来志向」を口にするなら、このようなパラダイムシフトをベースに置くべきだろう。
「日本2.0」時代の政策が、「日本3.0」時代にはまったく有効性を失う。
2020年には東京五輪が開催されるが、「日本経済の新たな成長軌道を描く」と相変わらず経済成長を目標に掲げるのは、時代錯誤でしかないのだ。

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2016年12月25日 (日)

昭和改元と歴史観/日本の針路(315)

1926年12月25日、つまりちょうど90年前、大正は昭和と改元された。

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1週間しかなかった昭和元年の出来事まとめ

現時点で振り返れば、前年の1925年が歴史の大きな分岐点だったと言えるだろう。
4月22日 - 治安維持法公布
5月5日 - 普通選挙法公布(25歳以上の男子に選挙権)
12月1日 - 民労働党結成、即日結社禁止、京都学連事件、京都府警察部特高課が京大・同志社大などの社研部員33名を拘束。

治安維持法が天下の悪法であったことは、よほどの右翼的な傾向の人間でない限り、現代の共通認識と言えよう。
治安維持法は普通選挙法とバーターというか、セットで導入されたものである。
普通選挙制度は、民主主義の観点からは制限選挙制度より優れたものとすべきであろうが、衆愚に陥る危険性については注意する必要がある。
「悪貨は良貨を駆逐する」からである。

船戸与一『満州国演義』第五巻『灰塵の暦』(2016年1月)で、西木正明氏は、日本近代史を次のようにまとめている。

 戦争の世紀と呼ばれる二十世紀は、あまたの国々の興亡の世紀でもあった。
……
 二十世紀冒頭の一九〇二年。
 当時全世界に君臨する覇権国家だった大英帝国が、前世紀末の一八九五年、日清戦争に勝利した日本に目をつけ、同盟締結を持ちかけてきた。日本にとっては世界の盟主からの同盟締結提案である。否やのあろうはずもなく、一九〇二年一月三十日に同盟は調印され、発効した。
……
  十年後の一九一四余年、欧州で第一次世界大戦がはじまり、日本は英国を中心とする連合国側の一員として、中国や西太平洋に植民地や利権を有するドイツと戦い、戦勝国となった。
 結果的に大英帝国は手先にした日本を操って、自らが握る世界の利権と覇権に挑もうとした、帝政ロシアと帝政ドイツを殲滅した。
 こうして当面の目的を達成し、これ以上日本を支える必然性がないと判断した英国は、東アジアで台頭した大日本帝国を危険視したアメリカの意向をふまえ、一九二三年八月一七日、同盟延長を懇願する日本の意向を拒否して、日英同盟に終止符を打った。
 しかしこれが大きな誤算に繋がることを、ほどなく英国は知ることになる。
……
 日英同盟廃棄から十年後のこの年、世界の孤児的な存在となっていた日本がドイツに急接近、アジアと欧州の情勢が一転して不安定になった。
 激流となった時代の流れの片隅にで出来る渦のように出現したのが満州国である。

要するに、世界史の流れの中に咲いたアダ花が満州国だったのだが、その満州国を「私の作品」と言ってのけたのが岸信介、つまり安倍首相の祖父である。
⇒2012年12月24日 (月):エリート官僚としての岸信介/満州「国」論(13)

祖父を尊敬するのは孫の美徳であろうが、歴史観は肉親の情とは峻別すべきものであろう。

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2016年12月18日 (日)

辺野古訴訟と司法の政治・行政への従属/日本の針路(314)

オスプレイが海上に「墜落(不時着)」した事故について、在沖縄海兵隊トップが「感謝されるべきだ」と発言したことが報道されている。
日本が未だに敗戦状態にあることを図らずも全国民に知らしめることになったと言えるだろう。
⇒2016年12月15日 (木):オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

沖縄県民の忍耐も限界を超えることと思われる。
にもかかわらず、政府はアメリカの発表を追認して「不時着」と表現している。
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東京新聞12月18日

辺野古埋め立て訴訟で、最高裁は弁論も開かず、沖縄県敗訴判決を確定した。
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東京新聞12月13日

われわれが学校で学んだ三権分立という仕組みは、現実には機能していないことが明確に示された。
最高裁が政治・行政に従属せざるを得ない現実を、元判事の瀬木比呂志氏が『黒い巨塔 最高裁判所』(講談社)で描いている。

 小説では、福島原発事故が起こる以前の80年代後半、ある原発が稼働停止に追い込まれる。この原発では、大津波により非常用電源が喪失されるというシミュレーション結果が出されていた。にもかかわらず、電力会社がこの事実を握りつぶしていたことが発覚。また、制御棒6本が脱落し臨界状態が8時間も続くという重大事故の隠蔽なども明らかになったことで、稼働停止を余儀なくされていた。
 一方、こうした事態に電力会社は再稼働へ向け躍起になるが、しかし住民による原発再稼働差し止め訴訟が起こされ、その結果、地裁は再稼働差し止めの仮処分を決定する。時代は違うが、福島原発事故後の原発停止、そして再稼働の動きや、数々の住民訴訟を彷彿とさせるものだ。
 だが、これに危機感をもったのが最高裁判所だった。
・・・・・・
〈須田は、念のため、全国の原発訴訟係属裁判所について、再度人事局に担当裁判長についてのチェックをさせ、また、民事局や行政局にも調査をさせ、原発訴訟で原告側に有利な心証を表に出したことがある者や、過去に行政訴訟や国家賠償請求訴訟で目立った原告側請求容認判決を出している者については、四月に、目立たない形で、つまり、いわゆる左遷人事ではない形で、異動させていた(略)。早急に仮処分を取り消させるために、先の支部長、またこの四月が異動時期であった右陪審の後任には、事務総局経験者の中なら、取り消し決定を出すことに絶対間違いのない者を選んで送り込んだ〉
・・・・・・
 2014年5月、福井地裁において大飯再稼働を認めないよう命じる仮処分が出された。この判決を出したのは同地裁の樋口英明裁判長(当時)。樋口裁判長はその後、高浜原発差し止め仮処分も担当することになるが、一方、裁判所は15年4月1日付で樋口裁判長を名古屋家裁に異動させる決定を行う。
 裁判所は、住民側の訴えを聞き入れた樋口裁判長に、原発裁判にかかわらせないような人事を発令したのだ。
・・・・・・
 問題は、樋口裁判長に代わって最高裁が福井地裁に送り込んだ林潤裁判長の存在だ。林裁判長は1997年の最初の赴任地が東京地裁で、2年後に最高裁判所事務総局民事局に異動。その後も東京、大阪、福岡と都市圏の高裁と地裁の裁判官を歴任しているスーパーエリート裁判官。司法関係者の間でも、将来を約束され最高裁長官まで狙えると言われている人物である。
 これはもちろん、最高裁の“意思”を忖度することを見込んでの人事だった。目論見通り、林裁判長は15年12月24日、高浜原発再稼働を容認する仮処分決定の取り消しを行った。このとき、林裁判長の左右陪席の2人の裁判官もまた最高裁判所事務局での勤務経験があるエリート裁判官だった。
辺野古訴訟の県敗訴は最高裁と政府の癒着だ! 原発再稼働でも政府を追従し続ける司法の内幕を元裁判官が暴露

瀬木氏は、『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(ともに講談社)などで、裁判所と裁判官の腐敗を告発し続けてきた人だ。
司法の腐敗を糺すのは最終的には国民であろう。

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