日本の針路

2017年8月 6日 (日)

今こそ、主導して核兵器禁止を前に進めるべきだ/日本の針路(325)

8月は、鎮魂・慰霊の月である。
お盆は、地域によって日時が異なるが、かつて太陰暦の7月15日を中心とした期間に行われたことから、現在は太陽暦の8月15日を中心とした期間に行われることが多い。
奇しくも敗戦の日と重なる。

今日、広島は72回目の原爆の日を迎えた。
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広島原爆忌、5万人の参列者が犠牲者悼む


各紙はこぞって原爆忌に関連させて核兵器禁止条約への日本の不参加を取り上げている。

朝日
 日本は、米国の核で他国の攻撃を抑止する「核の傘」を安全保障の基軸とする。安倍首相は2月のトランプ氏との首脳会談で核の傘の提供を確認した。北朝鮮や中国の脅威を背景に、核への依存を強めている。
 だが核抑止論は、相手との軍拡競争に陥るリスクがある。現に北朝鮮は核・ミサイル開発を米国への対抗策だと主張する。
 核の傘の本質は「有事では核攻撃もありうる」との脅しだ。政府は米国が核を使う可能性を否定しないが、深刻な「苦痛と被害」の再現は確実だ。被爆国として道義的にも許されまい。

読売
 条約は、核兵器の生産、保有、使用、使用の威嚇などを禁止し、122か国が賛同した。「ヒバクシャの容認し難い苦しみと損害に留意する」とも明記している。
 しかし、核兵器を巡る国際政治の現実は厳しい。
 北朝鮮は昨年、2回も核実験を行った。ミサイル実験も繰り返し、7月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を2回強行した。
 こうした核の脅威がある以上、日本は、同盟国である米国の「核の傘」に頼らざるを得ない。核抑止の考え方自体を否定する条約に加入するのは無理がある。
 やはり米国の核抑止力に依存するドイツなど多くの欧州諸国や韓国なども、禁止条約に関して日本と同じ主張を唱えている。

毎日
 そんな折、国連では7月に約120カ国の賛成で核兵器禁止条約が採択されたが、米国など核保有国は反対し、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国や米国の「核の傘」の中にいる日本と韓国も反対した。
 核兵器の保有や使用の禁止はもとより、核によって核をけん制する、伝統的な「核抑止論」に批判的な条約だからだろう。北朝鮮の脅威が高まる折、これでは賛成できないと日本政府は判断したようだ。
 だが、日本は昨年5月、オバマ米大統領を広島に迎え、「核兵器のない世界」への誓いを新たにしたはずだ。米国が核軍拡路線のトランプ政権になったとはいえ、「唯一の被爆国」が核廃絶への弾みにブレーキをかけるのは違和感がある。

日本経済新聞
 核廃絶の理念を追求しながら、差し迫る北朝鮮の核の脅威にどう対処するのか。政府は条約不参加の理由や、今後の核軍縮に向け日本が国際社会で果たすべき役割を、もっと丁寧に説明すべきだ。被爆者への責務である。
 核拡散防止条約(NPT)の運用状況を点検するため、加盟国が5年ごとに開く再検討会議が2020年にある。15年は核保有国と非保有国が対立したため、最終文書を採択できずに閉幕した。
 政府は次期会議に向け、保有国、非保有国から有識者16人を招いた「賢人会議」を設置した。双方の溝を埋める新たな取り組みだ。

産経新聞
 そうした勢力は、わが国の安全を高めることに寄与する安保法制に、「戦争法」などと短絡的なレッテルを貼って難じてきた。では北朝鮮の脅威を防ぐために何をするのか。目をつむるのか。
 このような運動が原爆の日を利用することは、犠牲者にもはなはだしく礼を欠く。
 7月には核兵器禁止条約が国連で採択された。しかし、核保有国や「核の傘」のもとにある日本は参加していない。
 核兵器廃絶という理念は理解するとしても、核の脅威が増している現実を、理念ゆえに見失っては、本末転倒でしかない。

東京新聞
 蝉(せみ)しぐれがかき消しそうな八月の記憶と記録。「沈黙の声」は懸命に語っています。今を生きる人たちが、もう二度と、ヒバクシャにならないように。
 「三菱長崎兵器製作所大橋工場」-。長崎大学文教地区キャンパス正門前の木陰にたたずむ銘板です。
 <一九四五年(昭和二十年)八月九日、午前十一時二分、原子爆弾の炸裂(さくれつ)によって、爆心地から北約千三百メートルに位置した二十棟余の大橋工場は、一瞬にして、空洞化したコンクリートの巨塊と飴(あめ)のように折れ曲がった鉄骨の残骸に姿をかえた。原爆当時、大橋工場、茂里町工場など三菱長崎兵器製作所全体の従業員数は女子挺身(ていしん)隊、学徒報国隊を含め、一万七千七百九十三人。そのうち、原爆による死亡者は二千二百七十三人、負傷者は五千六百七十九人->
 当たり前のことですが、そこにはただ淡々と、被爆の記録が刻印されています。

日本が「唯一の被爆国」である限り、やはり被爆(被曝)体験から考えるべきだろう。
核兵器禁止条約に明記されたヒバクシャに、最も近く立つべきである。
安倍首相は、国民を「こんな人たち」と「お友達」に二分し、差別してきた。
余りにも単純化した思考法である。

日本は「核抑止論」の立場に立つべきなのか否か。
積極的肯定が産経、消極的賛成が読売、中立的なのが日経、反対が朝日、毎日である。
東京は、今日の社説だけでは捉えにくいが、社論からすれば反対と言える。
「核抑止論」の立場に立てば、必然的にわが国も核武装すべきということになるだろう。
特に安倍政権は、憲法は核兵器使用を禁止していないという「閣議決定」までしている。
核武装の意思を読み取るべきだろう。

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東京新聞7月11日

「こんな人たち」と「お友達」に二分するような思考法では、平沼騏一郎の轍えお踏むことになろう。
すなわち、「欧洲の天地は複雑怪奇」と言って退陣を余儀なくされた。
安倍首相の退陣が遠からぬことを願う。

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2017年7月 5日 (水)

自民ワーストの都議選と自民の「反省」/日本の針路(324)

都議選の結果をどう見るかはさまざまであろう。
現象的には、都民ファーストの圧勝と自民党の惨敗であった。
自民党に出されたカードは、イエローかレッドか?
私は、レッドカードだと考える。
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日刊ゲンダイ7月4日

この結果を受けて、自民党には反省の声しきりと報じられている。
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東京新聞7月4日

しかし、何を反省すべきか、分かっていないのではないか。
緩みではなくて、本質に多くの有権者が気がついたということである。

例えば、「失言の女王」稲田防衛相は、自身の発言をしきりに「誤解を招きかねない」と言っているが、誤解の生じようもない発言ではないか。
当然辞任するかと思っていたら、「恋々と」大臣を続ける意向のようであり、安倍首相も罷免しないらしい。
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日刊ゲンダイ7月4日

最大の問題点は共謀罪(組織的犯罪防止法改正)の問題であろうが、金田法務相はまったく自覚がないようである。
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東京新聞7月5日

こんな反省では、次の総選挙でも変わらないだろうなあ。

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2017年7月 2日 (日)

都議選の結果は国政にどう影響するか/日本の針路(323)

都議選の最終結果は未確定だが、都民ファーストの圧勝と自民党の大敗は間違いなさそうである。
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開票センターで花を付ける小池代表

潮目の変化が表面化したとも言える。
⇒2017年6月 2日 (金):内閣支持率の動向が示す潮目の変化/アベノポリシーの危うさ(223)
都議選は一自治体の議会選挙ではあるが、国政の動向を占う性格も持っている。
国政にどういう影響を与えるであろうか?

自民党の惨敗は当然の結果であろう。
森友・加計学園問題で有権者が安倍政権に対する疑念を募らせていたことに加え、選挙期間中に、稲田防衛相の大失言と下村都連会長のヤミ献金報道が加わった。
⇒2017年6月28日 (水):自衛隊を私物視する愚かな稲田防衛相/アベノポリシーの危うさ(245)
⇒2017年6月30日 (金):加計疑惑(28)下村元文科相に資金疑惑/アベノポリシーの危うさ(247)

都議選の敗戦責任は、本来は都連会長や党幹事長クラスであるが、今回は安倍首相の責任問題にならざるを得ない。
惨敗を決定づけた稲田防衛相と下村都連会長は首相の側近中の側近として知られる。
果たして自民党内に安倍降ろしの動きが出てくるであろうか?
私個人としては、出てくると思うが、それは自民党凋落という大きな流れの1コマに過ぎないだろう。

問題は都民ファーストである。
正直言って、未知数であるが、日本新党からスタートし、風見鶏のように有権者の風を読んでここまでやってきた。
しかし、いかにも危ういのは確かである。
風見鶏を動かすのは、結局有権者の動向である。

注目すべきは、静岡県である。
テストマーケティングの拠点とされているのは、日本の縮図と言われる特性を持っているからである。
その静岡県で、都議選より一足早く、知事選と2県議の補選が行われた。
結果は次の通りであった。
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いずれの選挙でも、自民党系が敗北しているのだ。
自民党の現状にノーということである。
都民ファーストも、自民党と手を結ぶようなことになれば、一挙に瓦解するだろう。

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2017年6月13日 (火)

獄死した牧口常三郎と公明党・共謀罪/日本の針路(322)

今国会は18日に会期末を迎える。
「共謀罪」の成立要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の採決日程を巡り、与野党の折衝が続いていたが、秋野公造委員長(公明党)が職権で13日の委員会開催を決定した。
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会期末控え攻防 委員長職権で13日、参院法務委

13日に開催すると、参院での審議時間は20時間になり、与党側が採決のめどとしていた衆院の審議時間(30時間)の約7割になる。
与党の立場とはいえ、創価学会を支持母体とする公明党が共謀罪の成立の執着するのは不思議なような気がする。
というのは、創価学会を設立した初代会長牧口常三郎は、治安維持法違反および不敬罪で検挙され、獄死しているからだ。
治安維持法の再来と言われる「共謀罪」の成立に加担するのは、如何なものだろうかと思う。

治安維持法の犠牲になったのは、牧口などの宗教者を始め幅広く厚い。
牧口の生涯の概要を、牧口常三郎:Wikipediaで拾ってみよう。

1871年7月23日〈明治4年6月6日〉 - 1944年〈昭和19年〉11月18日。
1891年、札幌の北海道尋常師範学校(現:北海道教育大学)第一学部3学年に編入、1893年3月に卒業し、母校の付属小学校の教師となる。
1902年、国粋主義で知られる地理学者の志賀重昂の門を叩き、1903年、人間の生活と地理との関係を論じた『人生地理学』を32歳で発刊。
1828年、日蓮正宗に入信。
1930年11月18日、『創価教育学体系』第1巻を刊行する。創価学会はこの日を創価教育学会設立の日としている。
1941年、機関誌『価値創造』を発刊するが、翌年廃刊。戦時下の特別高等警察による監視が続けられる。
1943年7月6日、伊豆下田での座談会開催直後、伊勢神宮の神札を祭ることを拒否したために、治安維持法違反並びに不敬罪の容疑で下田警察署に連行、検挙。獄中においても転向を拒否し、1944年11月18日、東京拘置所内の病監で栄養失調と老衰のため死去。

牧口の獄死が、治安維持法の直接の被害であることは疑えない。
「テロ等準備罪」の担当大臣である金田勝年法務相は、治安維持法は適法であったと答弁している。
しかし、凄惨なリンチ・拷問は、当時といえども不法行為であった。
そしてひとたび法律が成立すると、その拡大解釈が行われることは歴史が示すところである。
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東京新聞6月9日

公明党は、初期創価学会の苦難に学ぶべきではないか。

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2017年5月 5日 (金)

子どもの数と将来人口/日本の針路(316)

わが国は人口減少社会に入っており、少子化対策が重要な課題と言われて久しい。
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人口減少社会という希望

総務省が「こどもの日」に合わせて4日発表し た15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現 在)によれば、子供の数が36年連続で減少した。

内訳は男子が805万人、女子が76 7万人。  総人口に占める子どもの割合は、前年比0.1 ポイント減の12.4%で43年連続で低下し た。  3歳ごとの年齢区分では、12~14歳が33 5万人と最も多く、9~11歳が321万人、6 ~8歳が317万人、3~5歳が304万人。0 ~2歳が294万人と最も少なく、年齢が低いほど人口が減っている。  都道府県別のデータ(2016年10月1日現在)によると、人口に占める子ども の割合が最も高いのが沖縄の17.2%で、滋賀14.3%、佐賀13.8%と続 く。最も低いのが秋田の10.3%。九州8県(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮 崎、鹿児島、沖縄)の子どもの割合はいずれも全国平均の12.4%を上回ったが、 東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)は全て全国平均を下回るなど地域 間のばらつきが大きい。
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子どもの人口、36年連続減=15歳未満1571万 人-総務省

それでは児童手当、出産育児一時金、就学援助など、家族政策の財政規模を諸外国と比較して、日本はどうだろうか。

 日本と欧米諸国(米国、ドイツ、英国、フランス、スウェーデン)でこれらの財政割合を比べるため、家族を支援するために支出されている現金給付と現物給付(サービス)の対GDP比を調べています。
 具体的には児童手当、社会福祉、健康保険、各種共済組合、雇用保険、生活保護、就学・就学前援助の項目から計上しています。その結果、日本はこれら家族関係社会支出の対GDP比は1.25%(2013年度)で、最も高い英国3.76%(2011年度)やスウェーデン3.46%(同)、フランス2.85%(同)などと比べ、4割程度の水準であるとわかりました。
 国民負担率などの違いもあるため、単純比較は出来ないものの、数値を見る限り、家族政策全体の財政規模は、欧米諸国に比べ、日本はまだ少ない割合にとどまっているといえそうです。
海外の少子化対策どこが違う? 出生率が大幅上昇した先進国と日本を比較

有限の財源をどう配分するか?
安倍政権の経済政策が一向に効果を上げていない中で、財政のあり方が厳しく問われよう。

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2017年1月26日 (木)

豊洲の病理と自公の責任/日本の針路(315)

築地市場の豊洲移転問題で、小池都知事が石原元知事の責任を問題にし始めた。
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東京新聞1月21日

そもそもは、石原元知事の不適切な判断が原因と考えられるから、当然であろう。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

同時に、石原氏の近況をTVで見ると、明らかに老化が進んでおり、責任能力すら疑問が湧いてくる。
⇒2014年3月 9日 (日):石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)

石原氏だけでなく、同氏を擁立し、石原都政の与党だった自公両党の責任の有無も明確化すべきではないか。
都議会公明党は自民離れが進みつつあり、それはそれで結構なことであるが、豊洲の問題が関係ないでは済まされない。
それにしても、豊洲への移転は常識的に考えれば、あり得ないであろう。
今の時点で、環境基準の79倍という数値なのだ。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

そもそもなぜ豊洲移転なのか?
いろいろな利権が取りざたされており、その闇は、おいおい明らかにされて行くであろう。
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東京新聞1月20日

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2017年1月25日 (水)

横浜市教育委員会の信じられない判断/日本の針路(321)

東京電力福島第1原発事故で、福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒がいじめを受けていた。
⇒2016年11月17日 (木):原発避難者いじめは社会の反映/原発事故の真相(148)

男子生徒はいじめを受けていた小学5年の時、同級生から「賠償金をもらっているだろう」と言われ、同級生らの遊ぶ金として自宅から現金を持ち出して1回5万~10万円を渡しており、その総額は150万円にも上っていた。
この金銭問題について、横浜市教育委員会は「金銭要求をいじめと認定するのは困難」とした。
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東京新聞1月21日

横浜市の第三者委員会が2016年11月にまとめた報告書では「金銭授受はいじめから逃れるためだった」と指摘しながらも「おごりおごられる関係で、いじめとは認定できない」と判断していた。
しかし、男子生徒は、「だれが出す?」「賠償金もらっているだろ?」とか「次のお金もよろしくな」などと言われ、今までにされてきたことも考え、威圧感を感じて、家からお金を持ち出してしまったという、と書いているのである。
誰が、どう考えたって、いじめそのものではないのか。
これをいじめと認めないとしたら、どういう事態をいじめというのか?

横浜市教育委員会の岡田優子教育長は「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」と述ているが、これでは「おごってもらったと言おうぜ」という抜け道を指南しているようなものではないか。
慄然とするような感覚である。

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2017年1月15日 (日)

混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

東京都の豊洲市場(江東区)の地下水調査で、環境基準を大幅に超える有害物質が検出された。
報告を受けた専門家会議のメンバーも、想定外の事態に「なぜ」と驚きの声を漏らしている。
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東京新聞1月15日

 築地市場(中央区)の講堂で開かれた14日の専門家会議。傍聴していた業者らに調査結果の報告書が配布されると、これまでとは桁違いの数値に会場はどよめきに包まれた。
 都の担当者は、激変したデータが「暫定値」であることを強調。平田健正座長は「どう評価していいのか、戸惑ってしまう」。
 会議のメンバーによると、考えられる可能性は大きく分けて二つあるという。一つは、9回目の採水が行われる直前に稼働した地下水排水システムの影響だ。稼働に伴い地下水が移動し、数値が上昇したという見立てだが、平田座長は「それならば、排水の数値も高いはずだ」と話す。
 もう一つは、採水方法のミスといった人為的な要因だ。今回は、1~8回目とは別の民間機関が担当。このため調査手法などを確認するとともに、今後は都環境科学研究所と民間機関2社で実施することにした。
 傍聴していた築地市場協会の伊藤裕康会長は「大変驚き、がっかりした」と動揺を隠せず、「早く実態をつかみ、包み隠さずにしてほしい」と要請。仲卸の男性は「(過去のデータに)改ざんがあったと疑われても、しょうがない」といぶかった。
 「都議会がこれまでどういう審議をしてきたのかも問われる」。小池氏は移転を推進してきた最大会派の自民党に矛先を向け、今夏の都議選での争点化は「避けられないのではないか」との見方を示した。
豊洲移転に黄信号=「桁違い」検出に衝撃-小池氏は疑義、業者憤慨

それにしても、今までのデータとの不整合の理由は何か?
専門家会議のメンバーの主な意見は次のようである。
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東京新聞1月15日

専門家たちも困惑している様子が窺えるが、そもそも豊洲は築地の移転先として適格であったのか?
石原都政時代に遡った検証が必要だと思われる。

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2017年1月14日 (土)

「日本3.0」と梅棹忠夫/日本の針路(319)

新年には、これからの日本がどう動いていくかが気にかかる。
特に、アメリカ大統領へのトランプ氏就任、イギリスのEU離脱、混沌が深まる中東情勢など、世界史との関係はどうなるか。
1939(昭和14)年8月28日、独ソ不侵条約が締結されると、平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇」という談話を発して総辞職した。
国際認識の欠如を示した言葉として有名であるが、平沼騏一郎ならずとも、「世界史の動向は複雑怪奇」と言いたくなる。

オックスフォード辞書は、2016年の「今年の言葉」に「post-truth」を選んだ。
最初に使われたのは1992年だというが、イギリスの国民投票やアメリカ大統領選によって使用頻度が急上昇したのが理由である。
いささか意味が取りにくい言葉であるが、同辞書は「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」を示す言葉だと定義している。
確かに、人間の脳の中で一番早く反応するのは、大脳辺縁系の感情を司る扁桃体だという。
⇒2013年3月 9日 (土):論理が先か感情が先か?/知的生産の方法(40)

ビジネススキルとして「エレベーターピッチ=エレベーターに乗っている15秒から30秒の時間内にプレゼンし、ビジネスチャンスをつかむテクニック」の重要性が指摘されているのもそのためであろう。
特に導入部の「つかみ」が決め手と言わるが、小泉純一郎元首相は名手であると思う。
郵政民営化に反対する人たちを「抵抗勢力」と命名し、「自民党をぶっ壊す!」と叫んで選挙で圧勝した。確かにワンフレーズでのアピールは、端的なエレベーターピッチであり、大きな効果を上げた。

安倍首相(のブレーン)も、エレベーターピッチを意識しているようである。
真珠湾での慰霊のスピーチも美しい言葉だ。

耳を澄ますと、寄せては返す、波の音が聞こえてきます。降り注ぐ陽の、やわらかな光に照らされた、青い静かな入り江……
安倍首相の真珠湾での演説全文

しかし、言葉が往々にして人を誤らせるのも事実だろう。
五輪招致の際の安倍首相の言葉を忘れまい。
⇒2015年6月 2日 (火):安倍晋三=サイコパス論/人間の理解(13)

団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年に向かって、日本は大きな曲がり角を曲がることになるだろう。
日本の総人口は既にピークアウトしているが、一極集中の弊害を言われてきた東京都も、間もなく人口減少に転じる。
近代日本は、敗戦までの第1サイクル、敗戦後からの第2サイクルの後の第3サイクルに入るのだ。
「日本3.0」である。

長いスパンでの歴史認識において突出していたのが梅棹忠夫さんだった。
「文明の生態史観」「情報産業論」「知的生産の技術」「中洋という視点」などを次々と提起し、鮮やかな論理を展開した。
それは探検家として、世界各地を実際に足で感得した知見と豊富な文献渉猟や多彩な人脈から得られる情報を反応させ、熟成させた思考である。
鳥の目と虫の目を両立させ得た稀有な学者であった。

例えば、社会発展を生物の発生のアナロジーで説明し、情報社会の到来を論じた。
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東谷暁『予言者 梅棹忠夫』文春新書(2016年12月)

2010年に亡くなった梅棹さんは東日本大震災を知らない。
⇒2010年7月 7日 (水):梅棹忠夫さんを悼む/追悼(8)

つまり、もう6年半が過ぎたことになるが、梅棹さんの論説に対する評価は高まりこそすれ、減じてはいない。
震災が発生した時、脳裏に浮かんだのは1973年すなわちオイルショックの年に刊行された小松左京さんの『日本沈没』だった。
日本列島がマントル対流によって太平洋プレートの下に引きずり込まれるという設定は、プレートテクトニクス理論を世に知らしめたが、型破りの科学者・田所博士は、梅棹さんがモデルだと言われる。

情報爆発と呼ばれている現象が加速し、「日本3.0」の主役は、情報を対象とする知的労働になると思われる。
果たして、働き方改革が実効性をあげ、苦役としての労働から解放される社会が到来するのだろうか。

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2017年1月13日 (金)

三菱電機元社員の労災認定と働き方改革/日本の針路(318)

三菱電機で、違法な長時間労働が行われたとして、厚生労働省神奈川労働局が11日に同社を書類送検した。

 男性の労働環境は過酷だった。平成25年4月に入社後、先進的な研究の発表を促されていたのと同時に、製品のトラブル対応を求められ、26年1月から業務が膨大になった。
 翌月は2日しか休みがなく、食事がのどを通らなくなり、手が震えるようになった。残業時間は月160時間に上ったが、会社への申告は「59時間」しか認められなかった。
 配属先の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では、名札だけで姿を見せない社員が何人もいた。尋ねてみると、休職している人たちだったという。
 上司からは厳しい叱責が飛んだ。「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」
 不眠を訴えても仕事は減らなかった。26年4月に鬱病になり、薬を飲みながら仕事をしていたが、同年6月には医師から勤務停止を求められた。
 男性は「何度も言い続けてきたが無視されてきた。会社はきちんと考えを改め、日本の社会も変わってほしい」と話した。
三菱電機元社員を労災認定

実態が良く分からないが、上記の情報だけでもいろいろ考えなければならない問題がある。
「先進的な研究の発表」とは?
先進的かどうかは相対的である。
企業の研究であるから有用性が求められるのは当然である。
例えば、特許権になるような研究ということであろう。
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発明塾式 ビジネスのための知財講座

産業上の有用性は当然として、問題は新規性と進歩性の判断である。
俳句を例にして、この問題を考えたことがある。
「新規性」というのは、特許を出願する時点で、「公知」でないこと、つまり今までに発表されていないことであり、「進歩性」というのは、誰でもが簡単に思いつくようなものではない、ということである。
問題は、「進歩性」の「誰でもが簡単に思いつくようなものではない」という基準をどう考えるか?

「特許法」では、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」は、「前項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」としている。
これを「進歩性」がない、と表現している。
しかし、「通常の知識」や「容易に」という概念には、裁量の要素が入ってくることを避けられない。
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⇒2007年10月23日 (火):選句の基準…③新規性と進歩性

三菱電機社員のテーマが何だったのかは不明であるが、「進歩性」を問われるようなテーマであれば、そしてその可能性は高いであろうが、寝ている時も考えるような状態だったのかも知れない。
そして、それは誤解を恐れずに言えば「当たり前」かも知れないのである。
時間で規定される労働と、知的藤堂の根本的な違いである。
働き方改革は必要であると思うが、超過時間労働「だけ」を問題にすることには違和感がある。

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