進化・発達の謎

2015年6月15日 (月)

言語の「小鳥のさえずり起源説」の実証?/進化・発達の謎(6)

動物行動学者の岡ノ谷一夫さんの「小鳥のさえずり言語起源説」は、ユニークで面白いが検証が難しいだろうと思っていた。
⇒2014年5月 2日 (金):言語の歌起源論/進化・発達の謎(4)

しかしその第一歩を歩み始めたということであろうか?
北海道大のチームが、文鳥のオスが求愛のさえずりのとき、決まった鳴き声の前後に規則的にくちばしをこすって音を出していることをあきらかにした。
人間が歌いながら手をたたくように、さえずりの歌に合わせて拍子をとっていると考えられるという。

Ws000000 文鳥がくちばしをこすって「ギリッ」という音を出すことは知られていたが、鳴き声との関係は不明だった。チームは30羽のオスのさえずりを録音し、くちばしの音が入るタイミングなどを調べた。
 文鳥は、鳥によって求愛のさえずりのパターンが異なり、くちばしの音が入るタイミングは、鳥ごとに決まった鳴き声の前後に限定されていた。また、求愛のさえずりは父から子に受け継がれ、くちばしの音を発するタイミングも父子で似る傾向があった。
 一方、父や他の文鳥から隔離して育てられ、独自のさえずりを発する鳥も規則的にくちばしの音を発していた。チームは、くちばしの音は歌とセットに学ぶのではなく、拍子を取るような性質があると結論付けた。
 人間以外で音楽などに合わせて拍子を取る動物は、オウムなど非常に少ない。チームの相馬雅代・北海道大准教授(行動生態学)は「文鳥のメスは複雑なさえずりを好むと言われる。オスはくちばしの音を入れて、より魅力的な歌にしているのかもしれない」と話す。
文鳥:拍子で求愛の歌彩る くちばしこすり「ギリッ」 北大チーム発表

私は発症以来、声が出にくいし、酒席というものにも縁がなくなったので、歌を歌う機会がなくなった。
先日知人の入っている男声合唱団のコンサートがあり、久しぶりに男声合唱を聴いた。
馴染みの曲も多く、久しぶりに声を出して歌いたい気分になった。
そう言えば、言語学・哲学の学徒であった故丸山圭三郎氏に、『人はなぜ歌うのか』岩波現代文庫(2014年9月)という著作があった。

言語哲学の第一人者であり、熱烈なカラオケファンである著者が、楽しくかつ真摯にカラオケを様々な視点から論ずる。人間は唯一の“歌う動物(ホモ・カンターンス)”である。人は歌うことにより世界に気づく。カラオケで歌うことは、生(レーベン)の回復であると著者は考える。カラオケと歌うことの魅力を存分に語り、歌うことの好きな全ての人におくる格好の書。井上陽水と著者が歌うことの楽しさを語り合った対談を併せて収載。

なぜ歌うのか?
言語の発生は、情報行動(表出と伝達)欲求を解明する重要な糸口と思われる。
その意味で、歌は人間性の本質に迫る1つの切り口になり得るだろう。   

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2015年4月21日 (火)

素数ゼミの謎の解明/進化・発達の謎(5)

若い人たちとやっている算数トレーニングのテキスト(小田敏広『大人のための算数教室』中経出版(2011年10月))に、次のような記述があった。

9で割れないものを見つけるためには「各位の和が9の倍数でなければ9で割れない」という判別法があるので・・・

確かに昔、「9の倍数の判別法」を使った記憶がある。
しかし、どうして「各位の和が9の倍数でなければ9で割れない」のか、と考えると、すっかり忘れてしまっている。
また、「9以外の倍数の判別法は?とか、そもそも倍数とは?(=約数、素数とは?)」ということが気になってくる。
ちょっと関連資料を読んでみると、すっかり「素数の世界」にはまってしまった。
整数論が数学の女王であるとは聞いていたが、素数論はその中でもとびきりである。

素数に関連した著書の中で、面白い本にぶつかった。
吉村仁『素数ゼミの謎』文藝春秋(2005年7月)である。
一種の絵本で、絵は石森愛彦氏が描いている。
石森氏が絵を描いている入門書シリーズは、以下を読んだことがある。
・石森愛彦絵・工藤雅樹監修『多賀城焼けた瓦の謎 』文藝春秋(0707)
⇒2007年9月29日 (土):多賀城炎上

・岡ノ谷一夫、石森愛彦・絵『言葉はなぜ生まれたのか』文藝春秋(2010年7月)
⇒2014年5月 2日 (金):言語の歌起源論/進化・発達の謎(4)

どちらも子供向けでもあるが、大人の知的好奇心を刺激するものでもあった。
素数ゼミというのは、次のような不思議なセミである。

アメリカに生息するもので、正確な体内時計によって、ある集団に属するすべての個体が、一斉に13年もしくは17年おきに羽化する。
したがって、それぞれの集団の生息地域ごとに、13年もしくは17年に一度ずつしか、セミが発生しないようになっている。
2004年にニューヨークで17年ゼミが大発生したが、2021年まで姿を見せない。

13や17が素数であることから、周期ゼミとか素数ゼミと呼ばれている。
素数ゼミが、日本のセミと違うポイントは以下の3点だ。
① 成虫になるまで10年以上の長期間を要する。
② 常に同じ場所で一度に大発生する。
③ 成虫になるまでの期間が、きっかり13年の種と17年の種のみがいる。
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0707/06/news042.html

吉村仁氏は、静岡大学工学部数理システム工学科の教授である。
理論(数理)生態学が専門で、環境の不確定性が生物の進化・適応へ及ぼす影響を主に研究してきている。
吉村氏は、上記のポイントに対して、きわめて説得的な仮説を提示している。

つまり、進化論である。
ステージ1:祖先ゼミ
周期ゼミの祖先は、日本のセミのように温度に依存して成長し、7年前後で成虫になり、毎年発生していた。

ステージ2:氷河期における生活史の長期化
氷河期の到来による森林の消失で、個体群がほぼ絶滅した。
わずかに残った森林がレフュージア(待避地)となり、そこでセミは生き延びた。
しかし、それらのセミも寒さによって成長が遅れ、幼虫期間は13-17年へと長期化した。

ステージ3:レフュージアでの周期性の獲得
レフュージアにおいては、同じ気候条件下なので、幼虫が成虫になるまで期間はだいたい同じになる。
生息地の減少と幼虫期間の長期化により、成虫密度が激減し、雌雄の出会いが困難になってしまい、限られた場所で一斉にドバッと発生する奇妙な性質が身についた(そういう性質を備えたセミが生き残った)。

ステージ4:素数周期の選択
約180万年前に地球をおそった氷河期に北アメリカのほぼ全土が文字通り氷に覆われてしまった。当然、いろんな生き物たちが息絶え、セミも例外ではなく絶滅の危機に直面した。
生物は遺伝子型が異なる種と交配(交雑)すると、一般に不利なように遺伝する。
交雑の機会は、周期の最小公倍数である。
比較的大きな素数の13年周期ゼミと17年周期ゼミが、氷河期に耐えてサバイバルした。
さらに長い周期のものは、幼虫期間が長すぎて、厳しい環境に耐えられなかった。

鮮やかな推論である。
しかし、意外なところで素数が威力を発揮するものだ。

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2014年5月 2日 (金)

言語の歌起源論/進化・発達の謎(4)

動物行動学者の岡ノ谷一夫さんは、言語の起源に関してユニークな説を展開していることで知られる。
言語の起源は実験的に確認することのできない課題である。
免疫論で有名な故多田富雄さんは、『生命の意味論』新潮社(1997年2月)において、人類が最初に発した言葉は、新生児が初めて発する言葉のようなものだっただろう、と書いている。

新人と旧人区別するのは、言語の使用ということである。
言語を使い始めたのは、旧人類が生まれてからでさえ10万年以上経過した後で、たった4万年位の歴史だと推測される。
言語は少しずつ創り出されたのではなく、非常に短期間に生まれたらしい。
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http://www.seibutsushi.net/blog/2013/06/001395.html

人間の言葉がどうして生まれたかについては、人間を研究していても分からない。
他の動物との比較研究が必要である。
他の動物にはない人間の言葉の特徴を整理すると、以下の4つが挙げられる。
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岡ノ谷一夫、石森愛彦・絵『言葉はなぜ生まれたのか』文藝春秋(2010年7月)

たとえば、ジュウシマツのオスは、求愛のため歌をうたう。
オスがうたう歌は、1羽ずつ異なる。
複雑な歌をうたえるオスほど、メスをひきつける力が強い。
複雑な歌をうたって目立つことは、敵に見つかる危険性が高く、「自己の生存」のためには不利である。...
しかし、複雑な歌をうたえるということは、余力がある証拠でもある。
メスは余力のあるオスにひかれるのである。

ジュウシマツのオスは、どうやって自分独自の歌を編み出すのか?
どうして、歌を複雑化しているのか?

ジュウシマツの鳴き声を分析すると、8種類ぐらいの短い鳴き声を出すことが分かった。
これは日本語でいえば、五十音に相当するものであり、「エレメント」という。
ジュウシマツはエレメントを組み合わせて、自分独自の歌を作る。
あるジュウシマツは、7種類のエレメントをつなぎ合せて歌をうたう。
この歌を調べると、3つの塊があった。この塊を「チャンク」という。「チャンク」は単語に相当する。
ジュウシマツの歌は、まずエレメントがあり、エレメントが組み合わさってチャンクになり、チャンクがつながって歌になるという構造がある。
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上掲書

ジュウシマツのオスが成鳥に育つまでの間、歌の変化を観察すると、35日ほどで歌い始め、次第に上手になって4カ月ほどで「歌文法」をもつ歌が完成する。
親子で比較すると、似ている部分もあるが、違う部分も多いことが分かった。

ヒナは誰から歌を学ぶのか?
驚くべきことに、自分の親を含めた複数のオスの歌を聴いて、それを「切り貼り」して、自分独自の歌を作っていた!
つまり、発声と歌文法を、周りの複数のオスの歌をお手本にして、学習しているのである。
「切り貼り」は、チャンクの切れ目ごとに行われていた!
チャンクの切れ目を認識することは、外国語のヒヤリングや音楽を聴くときなどに実感できる。
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上掲書

つまり、ジュウシマツも人間も、生まれつき鳴き声や言葉が脳に刷り込まれているわけではなく、生後、鳴き声や言葉を学習する。
人間の言葉はいろいろな意味を表せるが、ジュウシマツの歌には「求愛」の意味しかない。
ジュウシマツの歌にも人間の言葉にも「文法」がある。
ジュウシマツも人間も、歌の中に一定の規則を見つけ、音の切れ目を認識する能力を持っている。

これが、「言語の歌起源説」の仮説である。

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2014年4月 2日 (水)

ニホンザルのボス選出の投票行動/進化・発達の謎(3)

ニホンザルが社会を構成していることは良く知られている。
ボスに選ばれたサルが、群れを統治しており、ボスは何年かで交代する。
私は、学生時代に藤田信勝『学者の森・下』毎日新聞社(1963年10月)に収録されている「社会と文化の起源を探る」によって、この分野の研究のことを知った。

半世紀も前のことであるが、『学者の森』は、大学に入りたての若者にとって、ワクワクするような分野が紹介されており、「社会と文化の起源を探る」はそのようなものの1つであった。
「社会と文化の起源を探る」は、今西錦司氏を始祖とする京都大学霊長類研究グループを対象としていた。
幸島の野生サル、高崎山の大きな群れ等のフィールドに取り組む川村俊蔵氏や伊谷純一郎などの姿勢に驚嘆しつつ、大きなシンパシーを感じた。
特に、サルの個体識別という方法論に、日本人研究者らしさを見たような記憶がある。

好奇心を刺激されたのは、私だけではない。
この書が契機だったかどうかは分からないが、私と教養部時代に同じクラスだった掛谷誠氏は、工学部電気工学科に入学したが、理学部に転部し、生態人類学の研究者になった。
同氏は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授を経て、現名誉教授である。
理工系ブームだったこともあり、一度は工学部に入ったものの、他学部へ移ってその分野の第一人者になった人には、たとえば高校時代の友人でガンダーラ美術の研究者になった宮治昭前龍谷ミュージアム館長もいる。
⇒2011年11月30日 (水):龍谷ミュージアム/京都彼方此方(3)

昔のことを思い出したのは、4月1日の東京新聞「特報部」欄に、ニホンザルの驚嘆するような記事が載っていたからである。
瀬戸内海のある島に約500頭にニホンザルが生息している。
数十頭の複数の群れに分かれている。
それぞれの群れは、「ボス格の数頭のオス-サブ格のオス-メスと子ザル-若いオス」というピラミッド型の秩序がある。
ボス格の順位も決まっている。

ボスはどういう基準で選ばれるか?
直観的には、体が大きく力も強いオスが選ばれるだろう。
事実、ほとんどの群れは、そのようなオスがボスとなっている。

ところが、ある1つの群れが、奇妙な方法でボスを選ぶようになった。
サルたちが小石を1個ずつ手にして、それを複数の山として積み上げるのだ。
石の山は、数年おきに築かれるということが分かった。
Photo
東京新聞4月1日

そして、石の山が築かれると決まってボス格の交代があった。
山の数は、ボス格のオスの数に一致しており、山の高さは序列と一致していた。

この小石を積む行為は、ボスを決める投票行動だったのだ。
石の山ができる前の一定期間は、ボス格のサルは、毛繕いやえさの分与等の行動はしていないことも確認されている。
利益の供与のような行為が禁じられていると見られる。

この群れは、かつては弱小の群れだった。
ところが、この投票による選出方法でボスを決めるようになって、勢力を拡大した。
力よりも賢さが群れの消長を決めていたのだ。
何だか身につまされる話である。

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2014年3月31日 (月)

脳の回路形成の可視化/進化・発達の謎(2)

人間の赤ちゃんと成人との差は、他の動物に比べると格段に大きい。
たとえば、馬の赤ちゃんは、生まれて直ぐに四足で立ち上がる。
しかし、人間の赤ちゃんは、二足で立ち上がるのに早くても1年位を要する。

やがて言葉を覚え、好奇心が芽生えてからは、驚くほどの勢いで多くのことを学習していく。
自分の子育ての時は、余裕もなく必死だったが、孫の場合は観察する余裕もあって、つぶさに発達の様子を眺めることができる。
それを記録した島泰三『孫の力―誰もしたことのない観察の記録』中公新書(2010年1月)という著書があるが、確かに孫の成長を眺めることは、高齢者にとって大きな楽しみといえよう。

ところで、人間の頭の中の情報処理は次のように説明されている。
情報処理の最小単位は神経細胞(ニューロン)で、1つの神経細胞から長い「軸索」と、複雑に枝分かれしている「樹状突起」と呼ばれる突起が出ている。
これらの突起が別の神経細胞とつながり合い、複雑な神経回路網(ネットワーク)を形成している。
1個の神経細胞はそれぞれ1万個もの神経細胞と連絡を取り合っている。
神経細胞内では、電気の流れが情報を伝える。
紙経細胞と神経細胞の接合部分はシナプスと呼ばれるわずかな隙間があり、この部分では神経伝達物質が次の神経細胞に情報を伝達する。
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http://www.nissui.co.jp/academy/eating/07/02.html

この脳内神経回路網は、どのようにして形成されるのであろうか?
3月28日の静岡新聞に、三島市にある国立遺伝学研究所(遺伝研)の興味深い研究が紹介されていた。
ここでは、科学ニュースのサイトから引用する。

国立遺伝学研究所(遺伝研)は3月27日、生まれて間もないマウスの大脳皮質の神経回路を可視化する方法を開発し、生きたまま脳の深部までとらえることの可能な改良型の二光子顕微鏡の観察技術と組み合わせることで、新生児大脳皮質の神経回路が成長する様子を直接観察することに成功したと発表した。
同成果は、同研究所の水野秀信氏、羅ブンジュウ氏、佐藤拓也氏、岩里琢治氏、理化学研究所脳科学総合研究センターの斎藤芳和氏、糸原重美氏、生理学研究所の足澤悦子氏、吉村由美子氏らによるもの。詳細は3月27日付(米国時間)で米国科学誌「Neuron」オンライン版に先行掲載された。ヒトの脳表面の大部分を占める大脳皮質は、哺乳類に特有の脳構造であり、そこにある神経回路により、知覚や運動、思考、記憶などの高度な情報処理が行われていることが知られている。しかし、この回路は生まれた時は未熟でおおまかにしかできておらず、さまざまな刺激により、成長することが分かっていたものの、そのプロセスやメカニズムについては、良く分かっていなかった。
研究グループでは、今回開発した技術を用いて新生児マウスの大脳皮質を調べたところ、神経細胞は突起を激しく伸び縮みさせながら、結合すべき正しい相手に向かって突起を広げていくことを突き止めたという。また、遺伝子操作によって情報をうまく受け取れなくした神経細胞では、突起の伸び縮みの程度が異常に大きくなり、正しい相手の有無と関係なくランダムに突起が広がることも確認したという。
Photo
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/28/211/

私の孫は今年小学校に入学する。
この1年、つまり幼稚園の年長の間に、ずいぶんニューロンのネットワークが高密度化したように思える。
たとえば、運動会で万国旗を作ったことから、国旗に興味を持ち、ソチ・オリンピックで各国の国旗が掲揚されるのをTVでみて増幅されたようである。
私の子供たちがかって遊んだことのある国旗ゲームという遊び(裏返してある2枚の国旗をトランプの神経衰弱の要領であてる)に、飽くことなく挑戦する。
20140331_102838
http://www.yukawanet.com/archives/3733622.htm

祖父母が相手であるが、孫の圧勝である。
短期記憶においては、到底6歳児に敵わないのだ。
小さい頭の中で、どのような現象が起きているのかと考えると不思議である。

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2014年3月27日 (木)

恐竜の絶滅に関する新仮説/進化・発達の謎(1)

生物進化の様子は化石によって調べる。
その年代区分は、たとえば以下のように示される。
Photo
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/chishitsunendai-01.htm

約6,600万年前の白亜紀と新生代は、進化史の大きな画期である。
白亜末期に、中生代三畳紀に現れ、中生代を通じて繁栄した恐竜など生物が大量絶滅した。
当時生存していた生物種の約7割が絶滅したという。
はたして、地球に何が起きたのだろうか?
子供のみならず、大人にとっても興味深いテーマである。

生物の大量絶滅については、これまで様々な仮説が提唱されてきた。
メキシコ・ユカタン半島に約6550万年前に直径10キロの隕石が衝突し、環境が変動して地球上の全生物種の半分以上が絶滅したとされている。
隕石衝突で放出されたちりが日射を遮り寒冷化が起きたとする説など、さまざまな説が提唱されているが、どれも海の生物の絶滅をうまく説明できなかった。

千葉工業大学・惑星探査研究センターの大野宗祐上席研究員らで作る研究グループが、3月9日付の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に、新しい説を発表した。
巨大隕石の衝突で発生した酸性雨による海洋の酸性化が原因となった可能性が高いという説である。

千葉工業大学のチームは、隕石の衝突直後の様子を再現した実験で突き止めたという。
三酸化硫黄と呼ばれる物質が大量に放出されていたことが分かり、これにより海が酸性化し、プランクトンなど生物の多くが生存できなくなった。
三酸化硫黄は強い酸性雨を引き起こす物質で、衝突後、数日のうちには地球全体に降りそそぎ、それが恐竜の絶滅につながった可能性が高いと研究グループはみている。
大野上席研究員は「隕石の衝突による酸性雨と恐竜などの大量絶滅のメカニズムを知ることは、現在の生態系がどのように作られたかを理解するうえでも重要だ」と話している。

私は以前、恐竜の絶滅に関する説の紹介をしたことがある。
⇒⇒2010年7月 6日 (火):恐竜はなぜ絶滅したのか?/因果関係論(6)
産経新聞の2010年7月5日付の「宇宙-その過去から未来を解き明かす」という記事の紹介である。
要約すれば、以下のようなものであった。

世界の学際的な研究者41人の研究チームが、米科学誌「Science」の2010年3月5日号に、小惑星の衝突による環境変動が原因と結論づけたことが発表された。
1980年に、ノーベル物理学者のルイス・アルバレズ博士らにより提唱され、1991年に、メキシコのユカタン半島で直径約180キロの白亜紀末に形成された大クレーター(チュチュルブ・クレーター)が発見されて、賛同者が増えていたものだ。
直径10~15キロの巨大隕石が、秒速20~30キロで、浅い海の下にあったユカタン半島に衝突し、クレーターを生成した。
そのエネルギーは、冷戦時代に米ソが保有していた核爆弾を、全部同時に爆発させたものの1万~10万倍と計算されている。

この説ですべてが説明されているわけではないのは当然であった。
千葉工業大学のグループは、海の酸性化という媒介項を取り入れることによって、より進んだ説明を行った。
しかし、まだ、これですべて終了というわけではないだろう。

私たちは、恐竜という言葉で、かつて栄えたといわれる「巨大爬虫類」のことを代表させている。
爬虫類の進化系統樹は下図のように示される。
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http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130709_1/

注目すべきは、言語の起源との関係で最近注目を集めている鳥類と恐竜が同類であることである。
隕石が衝突しなければ、言葉をもった恐竜が出現していた?

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