ブランド・企業論

2017年2月16日 (木)

原子力事業で破滅の危機の東芝(5)/ブランド・企業論(66)

東芝が14日、同社本社で記者会見を開き、半導体メモリ事業を100%売却する可能を問われた綱川智社長は、「柔軟に考えていく。なんでもあり得る」と回答した。
既に経営再建策の柱のひとつとして、メモリ事業を分社化することを発表していた。
しかし、20%未満の外部資本の導入で、東芝が主導権を維持した形で事業運営する姿勢だったが、この方針を撤回したことになる。
それだけ事態は切羽詰まっているということだろう。

東芝は、2015年の「不適切会計」が明るみに出てから経営再建に努めてきた、はずであった。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)
⇒2017年1月28日 (土):原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)
⇒2017年1月31日 (火):原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)

エネルギーとメモリが2本の柱であった。
Photo
東洋経済2017年2月4日号

原発事業の失敗によって、もう1本の柱であるメモリも手放さざるを得なくなってしまったのだ。
2
東洋経済2017年2月4日号

東芝のなかでメモリ事業が大事な事業であるという位置づけを継続したいという希望も放棄せざるを得なかったというわけである。
買い叩かれることを避けるため、関連の売却は期末を越える見通しで、そうなると東証の規定により2部に降格になる。
21702162
東京新聞2月16日

名門の自負からすれば屈辱だろうが、原子力事業は取り返しのつかない失敗を犯したことになる。
しかも、大局的に考えれば、いずれ撤退を図るべき事業だったにも拘わらず、である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月31日 (火)

原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)

東芝の危機は衝撃的である。
2015年に発覚した不正会計処理に対応するため、優良事業だった東芝メディカルシステムズの全株式を売却するなどろリストラを進めていたところだった。
約1兆円という巨額の資金を捻出し、社長を含む8人の取締役が引責辞任した。
16年3月期は、7000億円以上の営業赤字、医療機器子会社の売却益を加えた最終赤字は4600億円に達した。

それを底として、V字回復するはずだった。
それが一気に暗転である。
書店に、「東芝解体」と大きく書いた雑誌が平積みされている。
発売中の「週刊東洋経済」2017年2月4日号である。

同誌によれば、東芝解体は待ったなし!
選択肢としては、「優良資産の売却」「原子力事業の分離」「外部資本の受け入れ」があるが、これらを同時並行的に進めなければならない。
1702042

グループ企業も合わせると19万人のマンモス企業である。
福島原発事故を教訓にして、原子力事業からの方向転換を図っていれば、と今更ながら思う。
1701282
東京新聞1月28日

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月28日 (土)

原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)

原子力事業を深追いした東芝が窮地に立っている。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

経緯は以下の通りである。
1701273
東京新聞1月27日

東芝「倒産」はついに秒読み段階か 〜取締役会議長が明かした内情」には、次のような記述がある。

そうした中、いま市場関係者の間で注目が集まっているのが東芝の「CDS値」。これは「企業の倒産危険度」をやり取りする金融商品で、値が高いほど危険度が高まっていることを示す。
東芝のそれを見ると、昨年12月には80台だったのが、年末の発表以降に急上昇し、一時は400を突破したほどだ。
「日立のCDS値は20台、ソニーは40台。比較すれば一目瞭然で、東芝は完全に『危険水域』に入った」(外資系証券債券アナリスト)
東芝破綻の一報をどこが最初に打つか――。

そして、ついに虎の子の半導体事業を切り売りせざるを得なくなった。
217012822
東京新聞1月28日

世耕経産相は未だに「原発は安い電源」などと言っているが、東芝や東京電力という日本を代表するエクセレント・カンパニーを破綻の淵に立たせている原発事業は、まさに亡国の事業というべきであろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月20日 (金)

原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

東芝の米原発事業での損失が最大で7000億円規模に膨らむ恐れが出てきた。

Photo不正会計が発覚した2016年3月期、東芝はリストラ費用や米原発事業の損失により、株主資本が3289億円に落ち込んだ。キヤノンに6655億円で医療機器子会社を売却した利益がなければ、負債が資産を上回る債務超過に陥るところだった。
 成長事業と不採算事業を切り離し、新生東芝として再出発したはずだったが、原発で再び損失が発覚した。損失発覚前の予想では、期末の株主資本は3200億円の見込み。最大7000億円の損失を考えれば、事業売却による資金調達や金融支援がなければ、債務超過に陥りかねない。
 2年連続で巨額損失を出す原発事業のために稼ぎ頭の半導体に外部資本を入れる。インフラやIT関連についても、金融筋は「売却できる事業がある」と指摘する。
 損失額は現在精査中の監査を経て、2月中旬に発表する16年4~12月期決算で確定する。事業を縮小したパソコンやテレビ、損失続きの原発で成長の絵図を描くのは難しく、前途が見えない。
近づく「東芝解体」=相次ぐ事業売却

東芝の株主資本は、原子力事業によって大きく毀損されている。
年9月末時点で東芝の自己資本は3600億円強あり、本業の回復と円安進行による外貨建て資産の価値の増加により、米原発事業による損失が無ければ今期末の自己資本は5000億円前後に膨らむ可能性があった。
Photo_2
東芝、米原発事業の損失5000億円超も 政投銀に支援要請

東京証券取引所は、東芝を投資家に注意を促す特設注意市場銘柄に指定しており、一般の投資家から幅広く資本を募る公募増資などは困難だ。
東芝は日本政策投資銀行に資本支援を要請すると共に、他の取引銀行にも協力を求め、財務や事業構造の立て直しを急ぐという。
事業構造の見直しを迫られているなかで、主力のフラッシュメモリーを含む半導体事業は分社化するという。
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
しかし、原発事業を温存するのでは、解決にならないのではないか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月18日 (水)

原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)

昨年暮れ、東芝は原発事業に関し、数千億円規模の減損損失が出る可能性があると発表した。

 多くの人が大晦日の準備を始めていた先月27日、東芝は米国の原発事業において数千億円の損失が発生する可能性があると発表しました。しかも、正確な金額が確定しておらず「数千億円という段階までしか言えない」というかなりずさんな内容でした。
 損失が発生するのは、米子会社のウェスチングハウス(WH)社が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)です。東芝の説明によると資産価値を精査したところ想定よりも大幅に価値が下回ったとのことです。
 米国の原子力事業で巨額の損失が発生する可能性があることは、以前から指摘されていました。同社は累計で数千億円の金額を投じてWH社を買収しましたが、東芝による買収後もWH社の経営は安定しませんでした。WH社は状況を打開するため、米国の原子力サービス企業S&Wと提携し、原発建設のプロジェクトを積極的に進めてきましたが、プロジェクトがうまく進まず、S&Wは巨額の損失を抱えてしまいます。
 東芝グループとS&Wの親会社であるCB&Iは損失処理をめぐって対立するようになり、一部では訴訟に発展しました。各種報道によると今回の買収は、S&Wの損失処理をめぐる紛争解決の手段だったとされています。損失を抱えた会社を買い取ったわけですから、買収が行われた段階で、相応の損失が発生することはある程度、予見できていたことになります。東芝経営陣の見込みはかなり甘かったといってよいでしょう。
東芝が巨額損失問題、自己資本はすべて吹き飛び、債務超過に転落の可能性も

債務超過になれば、東証のルール上2部に転落し、東芝株の買い手は極端に少なくなる。
まさに危機的状況であるが、その原因は、原子力事業である。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)

「見切り千両」という言葉があるが、原子力事業を見切ることができなかった必然的な結果である。
⇒2016年7月19日 (火):原子力を死守する東芝の未来/ブランド・企業論(55)

しかし原子力事業は国策としての側面が強いので、何らかの政府主導の救済が模索されるだろう。
日立製作所やNECとの経営統合が囁かれている。
東芝は、リストラクチャリングとして半導体事業の分社化を発表した。

Ws000000 米原発事業で多額の損失が出る見通しの東芝が、半導体事業の主力製品「フラッシュメモリー」を分社化する本格検討に入ったことが17日、分かった。損失の規模によっては債務超過となる可能性もあるため、外部資本の導入によって財務基盤を強化する準備を急ぐ。
 外部から数千億円規模の出資があれば、原発事業の損失を吸収できそう。分社化の対象製品は、三重県の四日市工場で生産している。中でもスマートフォンなどの記憶媒体として使われる「NAND型フラッシュメモリー」のシェアは世界トップクラスで、今後の成長も見込まれる。「市場価値は2兆円」(金融機関)との見方もある。
東芝、半導体分社化を本格検討

原発事業はブラックホールである。
一時的にしのいでみても、原発事業を続けている限り、東芝の危機は去らない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月30日 (金)

企業と労働の本質が問われている/ブランド・企業論(61)

電通によって、改めて企業と労働の意味が問われた年となった。
新入社員だった高橋まつりさんが自殺してから1年、母が手記を発表した。
それをマスメディアが、トップニュースとして全文掲載などで大きく扱った。
今までの電通のメディアへの影響力を考えると、ちょっと風向きが変わってきたように思える。

12月23日、第5回ブラック企業大賞2016授賞式が行われた。
大賞に「輝いた」のが電通で、受賞理由は以下の通りである。

 電通においては、「殺されても放すな。目的完遂までは・・・」などという社訓『鬼十則』に象徴される異常な精神論が蔓延し、パワハラ・セクハラなどが日常化している。13年前にも入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。
 電通は、このような過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けた。何人もの労働者がこの企業によって殺された。 電通は、日本を代表する大企業である。それは輝かしい意味でではない。社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する。
ブラック企業大賞2016 受賞企業決定いたしました

厚生労働省東京労働局は28日、広告大手の電通と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した。
幹部社員は、インターネット広告を扱う部署で、高橋まつりさんの直属の上司だったじんぶつである。
このような展開を受けて、電通の石井社長は辞任を発表した。
16122922
東京新聞12月29日

社長辞任が示すように、この事件は電通という
企業の存立基盤に関わるものである。
同社を象徴するのが「鬼十則」の社訓である。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

電通は「鬼十則」を社員手帖から外すとともに、夜10時に一斉消灯するなど対策を行っている。
長時間労働に対しては多くの企業が「36協定」を結んで対応しているだろう。
雇用者と被雇用者の間で締結される"労使協定"で、届け出があった場合にのみ労働時間の延長や休日の労働が可能になるものである。
しかし、実態としてこの協定が守られていない企業は多いだろう。

特に、肉体労働から知的労働に比重がシフトし、ICTの発達によって労働の場と時間の制約がなくなりつつある現在、「一斉消灯」などという対策は笑止でもある。
政府は「働き方改革」というが、ことは資本主義の本質に係るものであり、ことはかんたんではない。
1612292
東京新聞12月29日

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月19日 (月)

マツダの復活/ブランド・企業論(60)

マツダが好調である。
プロ野球の広島カープは、リーグ優勝を果たしたものの 日本シリーズでは日本ハムに敗れた。
しかし、カープのシンボルカラーを思わせる深紅のマツダ車が街頭で目立つ。
相次ぐ不正隠しによって、日産自動車の傘下入るした三菱自動車と対照的である。

マツダは長い間、日本の自動車業界のお荷物的な存在であった。
12月18日の日本経済新聞が、マツダ復活の舞台裏を探っている。

1612182
 金井には秘策があった。部下でエンジンのスペシャリストとして知られる人見光夫(62)は改良点を7つに絞り込むと提言していた。フォードなどと比べ限られた人員で世界一を目指すため、取り組むべき課題をあえて限定した。特にこだわったのがエンジンの燃焼効率に直結する圧縮比。人見は既存技術を活用して世界一を実現できるという。金井は「最後はあいつの目を見て考えた。賭けてみようと」と振り返る。
 後にHV並みの燃費を達成した実力を認めたのがトヨタ自動車だ。マツダに車両供給を打診し、15年の包括提携につながった。
 翌10年には中国政府から「マツダ切り」の要請を受けたフォードがあっさり保有株を売却し、実質的に提携を解消した。後ろ盾を失ったマツダ。尾崎はこの後、金策に駆け回った。
 「何とか3年連続の最終赤字は回避できそうです」。井巻から社長を引き継いだ山内孝(71)に尾崎が報告した日の午後、大震災が東日本を襲った。広島が本拠の同社に直接の被害はなかったが11年3月の震災で部品供給が停止。起死回生に向けいよいよ開発陣へのプレッシャーは高まった。
 結局、12年3月期まで4年連続の赤字になった。増資を繰り返したためマツダの発行済み株式数は2倍にまで膨らんだ。それでもぶれなかった。山内は何度も繰り返した。「(世界の)3%のお客様に支持してもらえる車づくりに徹する」
 「もうこれ以上の赤字は許されませんよ」。主力取引銀行から最後通告とも取れる連絡が入った前後の12年2月、スカイアクティブ技術をフル搭載した小型SUV(多目的スポーツ車)「CX―5」を発売するとヒットを連発して赤字を帳消しにしていった。
 フォードという「大樹の陰」を捨ててまで独自路線を貫いたマツダ。対照的なのは巨大メーカーのトヨタの傘下に入ることで復活した富士重だ。08年に16.5%の出資を受け入れた。
 同社もここから選択と集中で復活を果たす。だが大樹の陰に入るリスクが見え隠れする出来事もあった。
 「もし御社がトヨタと同じ領域に入ってきたら、即座にたたきつぶします」。トヨタとの提携交渉の初回会合。経営企画部長として出席した富士重社長の吉永泰之(62)は、トヨタ幹部の言葉に息をのんだ。立ち位置を間違えれば富士重の将来はない。その制約は恐らく、今後も続く。
危機から復活 マツダ、エンジン一点突破の凄み

自動車産業は典型的な装置産業であり、規模の経済が大きく効く。
独自路線で成功しているマツダだが、独自路線と規模の経済は背反的である。
独立性と合従連衡策のバランスの舵取りが問われることになるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月27日 (木)

コカ・コーラGとキリンHDが資本業務提携/ブランド・企業論(59)

コカ・コーラグループとキリンホールディングス(HD)が、清涼飲料事業で資本業務提携するという。
グループ同士で数%ずつ株式を持ち合い、物流と原料調達で連携する。
1610262
日本経済新聞10月26日

両社は国内で首位と4位だが、清涼飲料市場は人口減で市場が伸び悩む一方、メーカー数が多く激しい価格競争が続いている。
コスト削減により消耗戦からの脱却を目指す。

Photo_2 米コカ・コーラ日本法人の日本コカ・コーラとキリンHDが、近く提携内容を詰める協議に入る。早ければ年内にも提携契約を結ぶ見通し。コカ・コーラグループが日本で同業メーカーと本格的な協業を手掛けるのは初めて。
 国内コカ製品の製造・販売を手掛けるコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンが2017年4月に統合して設立する新会社と、キリンHDの清涼飲料事業子会社キリンビバレッジに、それぞれのグループから出資することを検討する。出資額は数百億円規模の可能性がある。
 製品を小売店や自動販売機へ共同配送するなど物流面で協力したり、果汁やコーヒー豆といった原料やペットボトルなど資材を共同調達したりすることを軸に検討する。実現すれば年間数十億円規模のコスト削減効果があるとみられる。
 販売やマーケティング面の提携は協議項目に含まないが、将来は製品の相互供給や共同での製品開発に発展する可能性もある。
 国内清涼飲料市場の規模は約4兆円に上り、多くのメーカーが激しい競争を繰り広げている。スーパーやドラッグストアでは大容量の飲料が低価格で販売されるなどして収益力が悪化している。
 コカは来春に東西ボトラーを統合し、売上高1兆円規模の新会社を立ち上げるなど、コスト削減と収益力強化を進める。15年に国内2位のサントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収。猛追を受けるなか、単独でのコスト削減には限界があるとみて、キリンとの提携に踏み切る。
 キリンHDも飲料事業の収益力の低さに悩む。15年12月期に1.5%だったキリンビバの営業利益率を18年までに3%に引き上げる目標を掲げている。10%強の国内シェアの中で成長を維持するには中長期でさらなるコスト削減を進める必要があると判断した。
コカ・コーラとキリン提携 清涼飲料で相互出資

清涼飲料市場は人口減で伸び悩む中、合従連衡の動きが活発だ。
2011年にサッポロホールディングスがポッカコーポレーションを子会社化し、2012年にはアサヒグループホールディングスがカルピスを買収した。
両社とも具体的な提携内容や出資比率などは発表していないが、小売店や自動販売機への製品の配送や、原料と資材の共同調達などを軸に、グループの枠を超えて連携することで優位性を確保しようということだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月18日 (火)

電通の光と影/ブランド・企業論(58)

政府は「働き方改革」を掲げるが、痛ましい過労自殺が後を絶たない。
広告代理店電通の新入社員だった女性が自殺したのは長時間の過重労働が原因として労災認定された。
女性は昨年4月に入社し、試用期間だった9月までは残業時間が約40時間/月だったが、10月以降は約105に増えたという。

10月14日、東京労働局の特別対策班が、電通の本社に立ち入り調査に入った。
社会保険労務士の榊裕葵氏は、今回の立ち入り調査の意義について、4つの着眼点があるという(電通への強制捜査、その真意を読み解く4つのポイントとは?)

1.「かとく」が動いたこと
電通に立ち入ったのが労働基準監督署の監督官ではなく、東京労働局の「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)であった。
「かとく」は、重大性や悪質性の高い労働基準法違反を取り締まる役割を担うため、2015年にベテランの労働基準監督官を集めて、東京および大阪の労働局に新設された組織である。

2.立ち入りが「抜き打ち」だったこと
労働基準監督官が調査を行う場合、定期調査の場合や、労働者からの申告に基づく調査であっても違法性や証拠隠滅の恐れが小さいと考えられる場合は、あらかじめ調査の日時を通知した上で、立ち入りが行われたり、労働基準監督署に出頭を命じられたりする。
今回は、事前の通知がなく、「抜き打ち調査」であったので、電通の労働基準法違反が重大なものであるという認識を持って、調査に当たっているのだと考えられる。

3.官房長官のコメント
一企業に対する労働基準法違反の立ち入り調査について、官房長官がコメントを発表するというのは異例であるが、日本経済新聞は次のように報じている。
菅義偉官房長官は「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する」と述べた。その上で「働きすぎによって尊い命を落とすことがないよう、働く人の立場にたって長時間労働の是正、同一労働同一賃金を実現したい」と話した。
「一罰百戒」の意味を持つ国策捜査ではないか。

4.「勝ち組」の会社であること
世間の一般的な評価として、「ブラック企業」ではなく、むしろ「エクセレント企業」とされている電通に対して立ち入り調査が行われた。
これまで過重労働がニュースで大きく取り上げられたのは、靴小売の「ABCマート」の書類送検や、棚卸代行の「エイジス」の社名公表処分などや「すき家」のワンオペ、「ワタミ」の過労自殺といったよう、どちらかというと、非正規社員を多く雇用し、低賃金で重労働になりがちな小売業や飲食業が話題の中心であった。
「電通」は給与水準も高く、新卒で内定を得られたら「勝ち組」と称えられる一流企業に「かとく」が立ち入った。

個人的な体験として言えば、月100時間程度の残業は別に珍しいことではなかった。
しかし、電通では1991年にも入社2年目の社員が過労で自殺した。
2000年の最高裁判決で「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする責任がある」と認定して、過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れができた。
電通でも、損害賠償と謝罪をすることで遺族と和解したという経緯がある。

過労か否か?
個人差もあれば、環境の影響も大きい。
このニュースを聞いて、直感的に思ったのは「鬼十則」との関係である。
4代目社長・吉田秀雄によって1951年につくられた「電通マン」の行動規範である。
高度成長期のビジネスマンの少なからぬ人が、目にしたり影響を受けたのではないか。
Photo_4
http://www.sciencehouse.jp/materials/oni.pdf

働き盛りならば耐えられることでも、新入社員にとっては耐えられないことはいくらでもある。
電通という会社には、本当に有能な社員と、周りにおんぶされているような社員がいる。
まあ、どこの企業でもあることだろうが、電通の場合は極端であるような気がする。
「鬼十則」が示すのは、成果主義でもある。

「君の残業時間は会社にとって無駄」と上司からパワハラ発言を繰り返されていたともいい、次のような記事もある。
1610202
週刊文春10月20日号

「鬼十則」がパワハラと親近性があることは直ぐに理解できる。
母子家庭で育ち、「お母さんを楽にしてあげたい」と猛勉強して東京大学に入り、電通に就職した。
「体も心もズタズタ」「毎日次の日が来るのが怖くてねられない」……
友人たちに伝えていた言葉が哀れを誘う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年9月14日 (水)

本来的なリストラに成功・富士フィルム/ブランド・企業論(57)

今や銀塩写真フィルムなど、よほど特殊な場合以外は必要としないだろう。
デジカメ(スマホを含む)でほとんどのことは用が足りる。
劇的な銀塩写真フィルムの衰退である。

1995年に私が精密業界を取材し始めた当時、フィルム業界はまだ成長期だった。街中にはフィルムのパトローネを預かって、DPE(現像をして印画紙へ拡大プリント)を行うお店がたくさんあった。昔ながらの集配モデル(工場で集約して現像・プリントを行う)に対し、店内で現像処理するミニラボを設置した店舗では数十分でプリントを手にすることができたため、スピード重視のDPEチェーンがニュービジネスとして勃興していた。
市場はアナログからデジタルへ一気に変わる

高々20年位の間の変化である。
写真フィルムは典型的な寡占市場だった。
世界で4社(アメリカのコダック、ドイツのアグファ、日本の富士フイルム、コニカ)しか製造できなかった商品だった。
各企業はいずれも高収益企業であった。

それがデジタル化の波に翻弄され、2012年1月にコダックが日本の会社更生法に当たる法律の適用を申請した。
コニカは、写真機メーカーのミノルタと合併し、デジタルカメラや複写機など技術の幅を拡大し生き残りを図っている。
そんな中で、富士フィルムの好調は際立っているといえよう。

どんな事業にも栄枯盛衰はある。
だから、事業の組み換え、見直しは必至である。
事業の組み換えに成功した企業は新しい成長路線をつかむが、衰退事業にしがみついて安売りに走る企業は、体力を弱めて衰退、消滅することが多い。

事業の組み換えをマネジメントする手法として有名なのがPPM(プロダクツ・ポートフォリオ・マネジメント)である。
ボストン・コンサルティング・グループは、「経験効果曲線」から「相対的市場占有率(シェア)」を横軸に、「PLC」から「市場成長率」を縦軸に、2次元で描画することにより、有名な「BCGマトリクス」を考案した。
Ppm
マーケティングの基本まとめノート【入門】

⇒2016年5月 9日 (月):分ける思考(4)マトリクス/知的生産の方法(148)

経営戦略には「ポジショニング派」VS「ケイパビリティ派」という基本的な構図があるというのが三谷宏治『経営戦略全史』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2013年4月)の整理である。
PPMはポジショニングの代表的な手法である。
PPMがうまく行った例が富士フィルムであろう。

富士フイルムは現在、ライフサイエンス、関連会社の富士ゼロックス、高機能材料、印刷、デジカメなどイメージング──など5領域を手掛けている。
富士フィルムHD会長でCEOの古森重隆氏は「うちは利益の3分の2を稼いでいた写真フィルム事業をデジタル化により失った。2000年代に入ってリストラを進めたが、リストラだけでは夢も会社の将来像も描けず、何とか生き延びることを考えざるを得ず新規事業や経営の多角化を目指した」と言っている。

リストラとは、英語の「Restructuring」の略語で、本来の意味は「再構築」であるが、再構築の前段階である固定費削減にの意味で使われることが多い。
古森氏もそういう意味で使っているが、同社は見事に本来の意味において成功しているといえよう。
同社の概況は以下のようである。
Ws000000

なかでも医療分野への注力は目覚ましい。
富山化学工業、米セルラー・ダイナミックス・インターナショナルなどの企業を買収、アルツハイマー治療薬や心臓疾患、パーキンソン病などの治験も進める。
また化粧品ブランドのアスタリフトは、TVのCMの露出も多いので知名度は高い。
Al_skincare_topbanner
富士フィルム ビューティ&ヘルシケア

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧