ブランド・企業論

2017年4月13日 (木)

原子力事業で破滅の危機の東芝(7)政官との癒着/ブランド・企業論(67)

東芝はどうなるのであろうか?
米国の子会社WHの破綻処理で今期赤字が1兆円を超え、債務超過に陥った。
2年連続で債務超過ならば上場廃止である。
虎の子の半導体事業を分離・売却して損失を穴埋めする計画であるが、2期連続債務超過を回避できるかは不透明だ。
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静岡新聞4月6日

背後に、原子力ムラの事情があったのであろうが、福島原発事故以後も国策として原発を推進してきた自民党政府にも大きな責任があるだろう。
「週刊文春」4月13日号で、『東芝“原発大暴走”を後押しした安倍秘書官』という記事を掲載している。
その人の名は、今井尚哉。

今井秘書官の叔父の今井善衛は、城山三郎『官僚たちの夏』の主人公のモデルと言われ、通商産業省で事務次官を務めた。
また、同じく叔父の今井敬は、新日本製鐵の社長を経て経済団体連合会の会長を務めた。
そういうバックグラウンドもあってか、“影の首相”として権力を振るってきたことが知られている。
⇒2016年11月 7日 (月):「驕るお友達」は久しからず/日本の針路(307)

森友疑惑のキーパーソン・谷査恵子氏の上司である。
今井氏は資源エネルギー庁次長だった経歴からしても諸利権の網の目の中核である。
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「週刊文春」4月13日号

今井氏は、森友疑惑、加計疑惑等にも絡んでいるだろう。
⇒2017年3月27日 (月):森友疑惑(34)林査恵子氏および上司を国会へ/アベノポリシーの危うさ(169)
今後、隠されいた事実が暴かれていくと思われる。

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2017年4月11日 (火)

原子力事業で破滅の危機の東芝(6)第3Q決算発表/ブランド・企業論(68)

東芝が11日、2度にわたり延期していた2016年4~12月期連結決算(米国会計基準)を発表した。
最終損益は5325億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)だった。
監査法人が決算内容に「適正意見」を付けない異例の公表であった。
ウェスティングハウス社の会計処理や内部統制をめぐり監査法人と見解が折り合わなかった。

東芝の失敗が原発事業に拘ったことが原因であることは明らかである。
⇒2017年2月16日 (木):原子力事業で破滅の危機の東芝(5)/ブランド・企業論(66)
⇒2017年1月31日 (火):原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)
⇒2017年1月28日 (土):原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)

東芝再建は、下記のようなスキームで進められようとしている。
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東京新聞3月30日

しかし▲の課題解消は一筋縄ではいかない。

 株主から預かったお金を示す自己資本は昨年末時点で2256億円のマイナスとなり、債務超過に陥った。
 16年4~12月期は売上高が前年同期比4%減の3兆8468億円、本業のもうけを示す営業損益は5762億円の赤字(前年同期は2319億円の赤字)だった。前回1兆円超の最終赤字としていた17年3月期通期の業績予想については「未定」とした。
・・・・・・
 今回、監査法人の適正意見を得られなかったのは米ウエスチングハウス(WH)の内部統制について監査法人のPwCあらたと意見の違いを埋めきれなかったためだ。
 WHでは昨年末に発覚した巨額損失を少しでも抑えようと、一部経営陣が従業員に過度な圧力をかけた疑いが出ている。監査法人は内部統制の不備があったとされる期間や過去の決算などに疑義を持っている。適切に処理してきたとする東芝側と見解の差は大きい。
東芝、最終赤字5325億円 16年4~12月期

東芝の先行きは不透明で株価もそれを反映している。
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11日の東京市場で東芝株は前日比3%安の223.5円で取引を終えた。
市場の信頼を失っているが、今後回復できるであろうか?

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2017年2月16日 (木)

原子力事業で破滅の危機の東芝(5)/ブランド・企業論(66)

東芝が14日、同社本社で記者会見を開き、半導体メモリ事業を100%売却する可能を問われた綱川智社長は、「柔軟に考えていく。なんでもあり得る」と回答した。
既に経営再建策の柱のひとつとして、メモリ事業を分社化することを発表していた。
しかし、20%未満の外部資本の導入で、東芝が主導権を維持した形で事業運営する姿勢だったが、この方針を撤回したことになる。
それだけ事態は切羽詰まっているということだろう。

東芝は、2015年の「不適切会計」が明るみに出てから経営再建に努めてきた、はずであった。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)
⇒2017年1月28日 (土):原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)
⇒2017年1月31日 (火):原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)

エネルギーとメモリが2本の柱であった。
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東洋経済2017年2月4日号

原発事業の失敗によって、もう1本の柱であるメモリも手放さざるを得なくなってしまったのだ。
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東洋経済2017年2月4日号

東芝のなかでメモリ事業が大事な事業であるという位置づけを継続したいという希望も放棄せざるを得なかったというわけである。
買い叩かれることを避けるため、関連の売却は期末を越える見通しで、そうなると東証の規定により2部に降格になる。
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東京新聞2月16日

名門の自負からすれば屈辱だろうが、原子力事業は取り返しのつかない失敗を犯したことになる。
しかも、大局的に考えれば、いずれ撤退を図るべき事業だったにも拘わらず、である。

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2017年1月31日 (火)

原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)

東芝の危機は衝撃的である。
2015年に発覚した不正会計処理に対応するため、優良事業だった東芝メディカルシステムズの全株式を売却するなどろリストラを進めていたところだった。
約1兆円という巨額の資金を捻出し、社長を含む8人の取締役が引責辞任した。
16年3月期は、7000億円以上の営業赤字、医療機器子会社の売却益を加えた最終赤字は4600億円に達した。

それを底として、V字回復するはずだった。
それが一気に暗転である。
書店に、「東芝解体」と大きく書いた雑誌が平積みされている。
発売中の「週刊東洋経済」2017年2月4日号である。

同誌によれば、東芝解体は待ったなし!
選択肢としては、「優良資産の売却」「原子力事業の分離」「外部資本の受け入れ」があるが、これらを同時並行的に進めなければならない。
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グループ企業も合わせると19万人のマンモス企業である。
福島原発事故を教訓にして、原子力事業からの方向転換を図っていれば、と今更ながら思う。
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東京新聞1月28日

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2017年1月28日 (土)

原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)

原子力事業を深追いした東芝が窮地に立っている。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

経緯は以下の通りである。
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東京新聞1月27日

東芝「倒産」はついに秒読み段階か 〜取締役会議長が明かした内情」には、次のような記述がある。

そうした中、いま市場関係者の間で注目が集まっているのが東芝の「CDS値」。これは「企業の倒産危険度」をやり取りする金融商品で、値が高いほど危険度が高まっていることを示す。
東芝のそれを見ると、昨年12月には80台だったのが、年末の発表以降に急上昇し、一時は400を突破したほどだ。
「日立のCDS値は20台、ソニーは40台。比較すれば一目瞭然で、東芝は完全に『危険水域』に入った」(外資系証券債券アナリスト)
東芝破綻の一報をどこが最初に打つか――。

そして、ついに虎の子の半導体事業を切り売りせざるを得なくなった。
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東京新聞1月28日

世耕経産相は未だに「原発は安い電源」などと言っているが、東芝や東京電力という日本を代表するエクセレント・カンパニーを破綻の淵に立たせている原発事業は、まさに亡国の事業というべきであろう。

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2017年1月20日 (金)

原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

東芝の米原発事業での損失が最大で7000億円規模に膨らむ恐れが出てきた。

Photo不正会計が発覚した2016年3月期、東芝はリストラ費用や米原発事業の損失により、株主資本が3289億円に落ち込んだ。キヤノンに6655億円で医療機器子会社を売却した利益がなければ、負債が資産を上回る債務超過に陥るところだった。
 成長事業と不採算事業を切り離し、新生東芝として再出発したはずだったが、原発で再び損失が発覚した。損失発覚前の予想では、期末の株主資本は3200億円の見込み。最大7000億円の損失を考えれば、事業売却による資金調達や金融支援がなければ、債務超過に陥りかねない。
 2年連続で巨額損失を出す原発事業のために稼ぎ頭の半導体に外部資本を入れる。インフラやIT関連についても、金融筋は「売却できる事業がある」と指摘する。
 損失額は現在精査中の監査を経て、2月中旬に発表する16年4~12月期決算で確定する。事業を縮小したパソコンやテレビ、損失続きの原発で成長の絵図を描くのは難しく、前途が見えない。
近づく「東芝解体」=相次ぐ事業売却

東芝の株主資本は、原子力事業によって大きく毀損されている。
年9月末時点で東芝の自己資本は3600億円強あり、本業の回復と円安進行による外貨建て資産の価値の増加により、米原発事業による損失が無ければ今期末の自己資本は5000億円前後に膨らむ可能性があった。
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東芝、米原発事業の損失5000億円超も 政投銀に支援要請

東京証券取引所は、東芝を投資家に注意を促す特設注意市場銘柄に指定しており、一般の投資家から幅広く資本を募る公募増資などは困難だ。
東芝は日本政策投資銀行に資本支援を要請すると共に、他の取引銀行にも協力を求め、財務や事業構造の立て直しを急ぐという。
事業構造の見直しを迫られているなかで、主力のフラッシュメモリーを含む半導体事業は分社化するという。
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
しかし、原発事業を温存するのでは、解決にならないのではないか。

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2017年1月18日 (水)

原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)

昨年暮れ、東芝は原発事業に関し、数千億円規模の減損損失が出る可能性があると発表した。

 多くの人が大晦日の準備を始めていた先月27日、東芝は米国の原発事業において数千億円の損失が発生する可能性があると発表しました。しかも、正確な金額が確定しておらず「数千億円という段階までしか言えない」というかなりずさんな内容でした。
 損失が発生するのは、米子会社のウェスチングハウス(WH)社が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)です。東芝の説明によると資産価値を精査したところ想定よりも大幅に価値が下回ったとのことです。
 米国の原子力事業で巨額の損失が発生する可能性があることは、以前から指摘されていました。同社は累計で数千億円の金額を投じてWH社を買収しましたが、東芝による買収後もWH社の経営は安定しませんでした。WH社は状況を打開するため、米国の原子力サービス企業S&Wと提携し、原発建設のプロジェクトを積極的に進めてきましたが、プロジェクトがうまく進まず、S&Wは巨額の損失を抱えてしまいます。
 東芝グループとS&Wの親会社であるCB&Iは損失処理をめぐって対立するようになり、一部では訴訟に発展しました。各種報道によると今回の買収は、S&Wの損失処理をめぐる紛争解決の手段だったとされています。損失を抱えた会社を買い取ったわけですから、買収が行われた段階で、相応の損失が発生することはある程度、予見できていたことになります。東芝経営陣の見込みはかなり甘かったといってよいでしょう。
東芝が巨額損失問題、自己資本はすべて吹き飛び、債務超過に転落の可能性も

債務超過になれば、東証のルール上2部に転落し、東芝株の買い手は極端に少なくなる。
まさに危機的状況であるが、その原因は、原子力事業である。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)

「見切り千両」という言葉があるが、原子力事業を見切ることができなかった必然的な結果である。
⇒2016年7月19日 (火):原子力を死守する東芝の未来/ブランド・企業論(55)

しかし原子力事業は国策としての側面が強いので、何らかの政府主導の救済が模索されるだろう。
日立製作所やNECとの経営統合が囁かれている。
東芝は、リストラクチャリングとして半導体事業の分社化を発表した。

Ws000000 米原発事業で多額の損失が出る見通しの東芝が、半導体事業の主力製品「フラッシュメモリー」を分社化する本格検討に入ったことが17日、分かった。損失の規模によっては債務超過となる可能性もあるため、外部資本の導入によって財務基盤を強化する準備を急ぐ。
 外部から数千億円規模の出資があれば、原発事業の損失を吸収できそう。分社化の対象製品は、三重県の四日市工場で生産している。中でもスマートフォンなどの記憶媒体として使われる「NAND型フラッシュメモリー」のシェアは世界トップクラスで、今後の成長も見込まれる。「市場価値は2兆円」(金融機関)との見方もある。
東芝、半導体分社化を本格検討

原発事業はブラックホールである。
一時的にしのいでみても、原発事業を続けている限り、東芝の危機は去らない。

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2016年12月30日 (金)

企業と労働の本質が問われている/ブランド・企業論(61)

電通によって、改めて企業と労働の意味が問われた年となった。
新入社員だった高橋まつりさんが自殺してから1年、母が手記を発表した。
それをマスメディアが、トップニュースとして全文掲載などで大きく扱った。
今までの電通のメディアへの影響力を考えると、ちょっと風向きが変わってきたように思える。

12月23日、第5回ブラック企業大賞2016授賞式が行われた。
大賞に「輝いた」のが電通で、受賞理由は以下の通りである。

 電通においては、「殺されても放すな。目的完遂までは・・・」などという社訓『鬼十則』に象徴される異常な精神論が蔓延し、パワハラ・セクハラなどが日常化している。13年前にも入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。
 電通は、このような過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けた。何人もの労働者がこの企業によって殺された。 電通は、日本を代表する大企業である。それは輝かしい意味でではない。社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する。
ブラック企業大賞2016 受賞企業決定いたしました

厚生労働省東京労働局は28日、広告大手の電通と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した。
幹部社員は、インターネット広告を扱う部署で、高橋まつりさんの直属の上司だったじんぶつである。
このような展開を受けて、電通の石井社長は辞任を発表した。
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東京新聞12月29日

社長辞任が示すように、この事件は電通という
企業の存立基盤に関わるものである。
同社を象徴するのが「鬼十則」の社訓である。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

電通は「鬼十則」を社員手帖から外すとともに、夜10時に一斉消灯するなど対策を行っている。
長時間労働に対しては多くの企業が「36協定」を結んで対応しているだろう。
雇用者と被雇用者の間で締結される"労使協定"で、届け出があった場合にのみ労働時間の延長や休日の労働が可能になるものである。
しかし、実態としてこの協定が守られていない企業は多いだろう。

特に、肉体労働から知的労働に比重がシフトし、ICTの発達によって労働の場と時間の制約がなくなりつつある現在、「一斉消灯」などという対策は笑止でもある。
政府は「働き方改革」というが、ことは資本主義の本質に係るものであり、ことはかんたんではない。
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東京新聞12月29日

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2016年12月19日 (月)

マツダの復活/ブランド・企業論(60)

マツダが好調である。
プロ野球の広島カープは、リーグ優勝を果たしたものの 日本シリーズでは日本ハムに敗れた。
しかし、カープのシンボルカラーを思わせる深紅のマツダ車が街頭で目立つ。
相次ぐ不正隠しによって、日産自動車の傘下入るした三菱自動車と対照的である。

マツダは長い間、日本の自動車業界のお荷物的な存在であった。
12月18日の日本経済新聞が、マツダ復活の舞台裏を探っている。

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 金井には秘策があった。部下でエンジンのスペシャリストとして知られる人見光夫(62)は改良点を7つに絞り込むと提言していた。フォードなどと比べ限られた人員で世界一を目指すため、取り組むべき課題をあえて限定した。特にこだわったのがエンジンの燃焼効率に直結する圧縮比。人見は既存技術を活用して世界一を実現できるという。金井は「最後はあいつの目を見て考えた。賭けてみようと」と振り返る。
 後にHV並みの燃費を達成した実力を認めたのがトヨタ自動車だ。マツダに車両供給を打診し、15年の包括提携につながった。
 翌10年には中国政府から「マツダ切り」の要請を受けたフォードがあっさり保有株を売却し、実質的に提携を解消した。後ろ盾を失ったマツダ。尾崎はこの後、金策に駆け回った。
 「何とか3年連続の最終赤字は回避できそうです」。井巻から社長を引き継いだ山内孝(71)に尾崎が報告した日の午後、大震災が東日本を襲った。広島が本拠の同社に直接の被害はなかったが11年3月の震災で部品供給が停止。起死回生に向けいよいよ開発陣へのプレッシャーは高まった。
 結局、12年3月期まで4年連続の赤字になった。増資を繰り返したためマツダの発行済み株式数は2倍にまで膨らんだ。それでもぶれなかった。山内は何度も繰り返した。「(世界の)3%のお客様に支持してもらえる車づくりに徹する」
 「もうこれ以上の赤字は許されませんよ」。主力取引銀行から最後通告とも取れる連絡が入った前後の12年2月、スカイアクティブ技術をフル搭載した小型SUV(多目的スポーツ車)「CX―5」を発売するとヒットを連発して赤字を帳消しにしていった。
 フォードという「大樹の陰」を捨ててまで独自路線を貫いたマツダ。対照的なのは巨大メーカーのトヨタの傘下に入ることで復活した富士重だ。08年に16.5%の出資を受け入れた。
 同社もここから選択と集中で復活を果たす。だが大樹の陰に入るリスクが見え隠れする出来事もあった。
 「もし御社がトヨタと同じ領域に入ってきたら、即座にたたきつぶします」。トヨタとの提携交渉の初回会合。経営企画部長として出席した富士重社長の吉永泰之(62)は、トヨタ幹部の言葉に息をのんだ。立ち位置を間違えれば富士重の将来はない。その制約は恐らく、今後も続く。
危機から復活 マツダ、エンジン一点突破の凄み

自動車産業は典型的な装置産業であり、規模の経済が大きく効く。
独自路線で成功しているマツダだが、独自路線と規模の経済は背反的である。
独立性と合従連衡策のバランスの舵取りが問われることになるだろう。

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2016年10月27日 (木)

コカ・コーラGとキリンHDが資本業務提携/ブランド・企業論(59)

コカ・コーラグループとキリンホールディングス(HD)が、清涼飲料事業で資本業務提携するという。
グループ同士で数%ずつ株式を持ち合い、物流と原料調達で連携する。
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日本経済新聞10月26日

両社は国内で首位と4位だが、清涼飲料市場は人口減で市場が伸び悩む一方、メーカー数が多く激しい価格競争が続いている。
コスト削減により消耗戦からの脱却を目指す。

Photo_2 米コカ・コーラ日本法人の日本コカ・コーラとキリンHDが、近く提携内容を詰める協議に入る。早ければ年内にも提携契約を結ぶ見通し。コカ・コーラグループが日本で同業メーカーと本格的な協業を手掛けるのは初めて。
 国内コカ製品の製造・販売を手掛けるコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンが2017年4月に統合して設立する新会社と、キリンHDの清涼飲料事業子会社キリンビバレッジに、それぞれのグループから出資することを検討する。出資額は数百億円規模の可能性がある。
 製品を小売店や自動販売機へ共同配送するなど物流面で協力したり、果汁やコーヒー豆といった原料やペットボトルなど資材を共同調達したりすることを軸に検討する。実現すれば年間数十億円規模のコスト削減効果があるとみられる。
 販売やマーケティング面の提携は協議項目に含まないが、将来は製品の相互供給や共同での製品開発に発展する可能性もある。
 国内清涼飲料市場の規模は約4兆円に上り、多くのメーカーが激しい競争を繰り広げている。スーパーやドラッグストアでは大容量の飲料が低価格で販売されるなどして収益力が悪化している。
 コカは来春に東西ボトラーを統合し、売上高1兆円規模の新会社を立ち上げるなど、コスト削減と収益力強化を進める。15年に国内2位のサントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収。猛追を受けるなか、単独でのコスト削減には限界があるとみて、キリンとの提携に踏み切る。
 キリンHDも飲料事業の収益力の低さに悩む。15年12月期に1.5%だったキリンビバの営業利益率を18年までに3%に引き上げる目標を掲げている。10%強の国内シェアの中で成長を維持するには中長期でさらなるコスト削減を進める必要があると判断した。
コカ・コーラとキリン提携 清涼飲料で相互出資

清涼飲料市場は人口減で伸び悩む中、合従連衡の動きが活発だ。
2011年にサッポロホールディングスがポッカコーポレーションを子会社化し、2012年にはアサヒグループホールディングスがカルピスを買収した。
両社とも具体的な提携内容や出資比率などは発表していないが、小売店や自動販売機への製品の配送や、原料と資材の共同調達などを軸に、グループの枠を超えて連携することで優位性を確保しようということだ。

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