アベノミクスの危うさ

2017年8月22日 (火)

加計疑惑(48)地方都市の負担/アベノポリシーの危うさ(280)

安倍政権は「地方創生」の旗を高く掲げている(はずである)。
しかし「言うは易く行うは難し」の典型ではないかと思う。
地方都市は、どこへ行っても中心市街地がシャッター街と化している。
成功例は極めて限られたものだろう。

8月3日の内閣改造によって新たに梶山弘志氏が任命されたがどうであろうか。
前任の山本幸三氏は、ピントのずれた発言を繰り返していた。
⇒2017年4月18日 (火):不適格大臣列伝(17)山本幸三地方創生担当相/アベノポリシーの危うさ(184)
⇒2017年4月22日 (土):アホな内閣(3)山本幸三地方創生担当相/アベノポリシーの危うさ(188)
⇒2017年8月14日 (月):改造内閣(3)閣僚の資質をどう考えるか/アベノポリシーの危うさ(277)

地方都市の活性化は容易ではない。
そんな地方都市にとって、大学は「魔法の杖」のように見えるだろう。
若者の代表である大学生が、塊で現れるのである。
しかし地元の大いなる期待を担って作られた銚子市の千葉科学大学は、市財政の大きな負担になって、破綻を早める結果になりつつある。
⇒2017年8月20日 (日):加計疑惑(46)先行事例としての千葉科学大/アベノポリシーの危うさ(278)

逆に加計学園の方は、味をしめたというか、よく似た構図で今治市に岡山理科大学獣医学部を構想している。
来年3月開学予定であるが、客観的にみて雲行きが怪しくなっていることは事実であろう。
⇒2017年8月13日 (日):加計疑惑(45)特区WGのいかがわしさ(2)/アベノポリシーわの危うさ(276)
⇒2017年8月21日 (月):加計疑惑(47)獣医学部の設計図面/アベノポリシーの危うさ(279)

岡山理科大獣医学部に関し、今治市は用地(16・8ヘクタール)の無償譲渡と校舎建設費192億円の半額にあたる96億円(県との合計限度額、うち市の上限64億円)の債務負担行為をすることになっている。
他所事ながら大丈夫だろうかと思わざるを得ない。

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 市の説明によると、獣医学部は「岡山理科大今治キャンパス」として、加計学園が今月中に文部科学省に設置を申請する。6年制の「獣医学科」(定員160人)と、4年制の「獣医保健看護学科」(同60人)を置く。
 民間シンクタンクは、校舎建設などによる経済波及効果を240億円、学生約1200人がそろった時点での学生と教職員の年間支出を約20億円と試算している。
 今治新都市(いこいの丘)にある用地は市が約36億7400万円で市土地開発公社などから買い戻し、3日付で加計学園に無償譲渡した。
今治市 大学用地を無償譲渡 加計学園へ 岡山理大獣医学部開設

経済波及効果など机上の計算でいくらでも膨らますことができるだろう。
内訳と根拠を知りたいところだ。
以下のような指摘もあることを載せておく。
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今治市は土地を購入して加計学園に無償譲渡?

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2017年7月16日 (日)

加計疑惑(34)大学設置基準は意欲の問題か?/アベノポリシーの危うさ(255)

新しく学部を開設する作業は大変である。
私も親しい友人が新学部の準備責任者だったので、大体の推測はできる。
あるいは、私自身が直接専門学校の開設準備に携わったこともある。
文科省の「設置基準」はきめ細かく、厳しい。

このような規定を「岩盤規制」と見るかどうかは、立場によるだろう。
しかし、一定の「質」の確保のためには、何らかの基準は必要である。
ところが、安倍首相は「意欲があれば獣医学部新設を認める」と言う。
加計疑惑を逃れるために深く考えないで言ってしまったのだろうが、耳を疑うような言葉である。
皿を1枚割ってしまったから、他の皿も割ってしまおう、と言うに等しい。

しかし、ネット上には「安倍さんカッコいい(*≧∀≦*)」というような反応もあるのだから、驚く。
加計学園グループが今治市に設置しようとしている獣医学部の開設準備の経緯は以下のようである。
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東京新聞7月5日

加計学園と同様に獣医学部新設構想を持っていた京都産業大が、断念せざるを得なくなった事情を記者会見で説明した。

 同大は、学校法人「加計学園」などと共に特区での新設を要望していたが、政府が昨年11月、広域的に獣医師系養成大学が存在しない地域に限り新設を認める方針を決定。既に大阪府立大(堺市)に獣医師系学部があるため、条件的に排除される形となっていた。
 黒坂副学長は、断念の理由は地域的な条件によるものではないと説明。特区に関する告示で指定された2018年4月の開学には準備期間が足りず、加計学園が先に申請したため優秀な教員の確保も難しくなったとした。
 副学長は「残念だ」と述べる一方、加計学園をめぐる問題については「大学によって状況は異なり、(加計学園が)どう準備していたのかは知らない」と話した。
 京産大は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬分野などで実験動物を扱う獣医師養成を目指し、京都府綾部市での校舎建設を計画していた。 
獣医学部断念を発表=京産大「準備期間足りず」

要するに、開学までの準備期間の不足などが理由である。
京産大排除の論理を組み立てたのは誰か?
⇒2017年5月28日 (日):加計疑惑(7)京産大排除の論理/アベノポリシーの危うさ(218)
まさに「総理の意向」文書に記されていたこととも合致する。
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⇒2017年5月17日 (水):加計疑惑(3)総理の意向という文科省文書/アベノポリシーの危うさ(209)
⇒2017年5月26日 (金):加計疑惑(5)文書の存在確認/アベノポリシーの危うさ(216)

これでもシラを切るつもりなのだろうか?。
「安倍さんカッコいい(*≧∀≦*)」だろうか?

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2016年1月18日 (月)

いかさま経済政策の破綻(3)/アベノミクスの危うさ(69)

日本市場の株価の低落が止まらない。
今日の日経平均は、終値で17,000円を割った。
アベノミクスと称するものの実態が明らかになりつつある。

貧富の格差拡大は、現代社会の重要問題であろう。
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)
ピケティが言うように格差を解消する方向に尽力すべきなのに、安倍政権は格差拡大を積極的に図っていると言える。

貧困問題に取り組む非政府組織(NGO)のオックスファム・インターナショナルの報告では、世界の富裕層の上位62人が保有する資産は、世界の人口全体の下位半数が持つ合計と同じ額だという。

オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。
それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。
富裕層の資産は近年、急激に膨れ上がっており、上位グループの資産はこの5年間で計約5000億ドル増えた。一方、下位半数の資産は計1兆ドル減少した。10年の時点では、上位388人の資産の合計が下位半数の合計に等しいという結果が出ていた。
また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。
貧富の格差増大、上位62人と下位36億人の資産が同額

日本についてみれば、派遣などの非正規労働者が主な稼ぎ手の世帯のうち、約2割が生活苦のため食事の回数を減らしているという。
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東京新聞1月18日

こんな状態を是とはできないのが普通の人間的感覚というものだろう。
しかしながら、アベノミクスの旗を振りつつ、トリクルダウンなど起きるはずがないと言った竹中平蔵氏は、派遣労働の問題について、次のように発言している。

番組中盤になると、出演者は「改正派遣法の是非」を議題として、現状の派遣労働者や非正規雇用の地位についてそれぞれの意見を述べた。
その中で竹中氏は、労働省が実施した派遣に対する調査を例に上げ、正社員に変わりたい人と非正規のままでいいという人では、非正規のままでいいという人の方が多い、という調査結果を紹介した。
また竹中氏は、派遣雇用が増加した原因について「日本の正規労働ってのが世界の中で見て異常に保護されているからなんです」と述べ、整理解雇の4要件について触れた。
さらに竹中氏は、同一労働同一賃金について「(実現を目指すなら)正社員をなくしましょうって、やっぱね言わなきゃいけない」「全員を正社員にしようとしたから大変なことになったんですよ」と、日本の問題点を指摘した。
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竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ

正規雇用と不正規雇用の格差や、女性労働者の低待遇をなくそうとする「同一労働同一賃金の原則」を、歪んだ解釈で、正規雇用の正社員を非正規労働者と同じく解雇しやすくしようというのが、派遣法改悪といわれるゆえんである。
ちなみに竹中氏は、人材派遣会社パソナの会長である。
公私混同というか、私益のために公権力を利用していると言って良いであろう。Ws000000
竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ

富裕層と大企業を優遇する経済政策を進めるときは、便宜上トリクルダウンを全面に立ててきたが、そんなことを信じる方がバカだ、ということであろう。
こんないかさまの経済政策は終わりにしよう。

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2016年1月17日 (日)

いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

元旦の朝放映された「朝まで生テレビ」を久しぶりに視聴した。
昔はそれなりに真剣な討論が交わされていたように記憶する。
残念ながら、司会の田原総一朗氏も加齢のためか、ボケているようである。
やたらに大声を張り上げて自論を主張する姿は、耄碌を感じさせるものであった。

「激論!戦後70年日本はどんな国を目指すのか!」と題されていたが、いくつかの点で「やっぱり」という気がした。
番組全体については、小林よしのり氏の発言がある。

「朝ナマ」に出たが、議論はアベノミクスばかりで韓国の慰安婦合意に関しては全く無視された。
どうも奇妙である。
アベノミクス延命が目的だったかのようだ。
わしを含め、アベノミクス疑念派の論客が草食系過ぎて全然弱い。
浜矩子くらい呼んでこないと太刀打ちできないだろう。
「朝ナマ」が終わって

私がびっくりしたのは、竹中平蔵氏が「トリクルダウンなど起きるはずがない」という趣旨の発言をしたことである。
もちろん、これは正しい見方なのだろうが、トリクルダウンはアベノミクスの柱の1つではなかったのか。
⇒2015年11月 2日 (月):異次元緩和の効果と限界/アベノミクスの危うさ(58)
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)

竹中平蔵氏は、アベノミクス肯定派のはずである。
田原氏との共著『ちょっと待って!  竹中先生、アベノミクスは本当に間違ってませんね?ワニブックス(2013年12月)という本まである。
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この書で竹中氏は「企業が収益を上げ、日本の経済が上向きになったら、必ず、庶民にも恩恵が来ますよ」と言ているのだ。

 番組では、アベノミクスの「元祖3本の矢」や「新3本の矢」について是非を評価。冒頭、「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。
「トリクルダウンあり得ない」竹中氏が手のひら返しのア然

アベノミクスのいかさま性を見事に表している。

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2016年1月15日 (金)

いかさま経済政策の破綻/アベノミクスの危うさ(67)

日本株が続落している。
今年に入って、9営業日中1勝8敗で、チャートに見るように1年前に戻った。
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年金資金まで投入しての株価連動内閣であるが、犠牲になるのは一般国民である。
⇒2015年12月 1日 (火):究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

「底値がいつ来るのか分からない。混乱している」。東京都内の運用会社で働くファンドマネジャーは、「6連敗」の相場に困惑しきりだった。
 11日は米国のダウ工業株平均が上昇し、12日は中国・上海総合株価指数が反発。日本時間の同日夕に始まった欧州市場も全面高で推移し、年明け2週目に入っても下げ止まらない日本株の「一人負け」が鮮明になった。
 その理由は、中国経済の減速懸念がくすぶっていることだ。日本にとって中国は最大の貿易相手国。同じアジア市場に位置し、流動性の高い日本株が真っ先に売られた格好だ。12日は中国関連銘柄の売りが膨らみ、新日鉄住金が前週末終値より3・95%安、コマツも同3・57%安で取引を終えた。
 中国への懸念を背景に、外国為替市場では、リスクを避けたい投資家が安全資産とされる円を買う動きを強めている。日本銀行の12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の想定為替レートは2015年度下期で1ドル=118円だが、最近はこの水準を突破。11日には一時1ドル=116円台半ばをつけ、輸出関連株などの売りを招いている。
 さらに円高が進めば、自動車や電機といった主力株の業績下振れにもつながる。対ドルで1円の円高は、トヨタ自動車の営業利益を約400億円押し下げる。資源安で総合商社の一部や鉄鋼業界の業績は厳しさを増しており、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「来期(17年3月期)の企業業績は、2ケタに満たない増益幅に減速するかもしれない」と話す。
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中国減速・円高・原油安…続く重圧、日本株安止まらず

しかし海外要因だけではないだろう。
実体経済に無関係にむりに株価を上げてきたツケが来ていると考えるべきであろう。
バフェット指数が示している。
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もきち♪のきもち 株とコンピュータ編

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2015年12月28日 (月)

「新三本の矢」批判①介護離職0/アベノミクスの危うさ(66)

安倍晋三首相は、9月の自民党総裁再選後の記者会見において、「アベノミクスは第2ステージに入った」として、アベノミクスの新しい「3本の矢」を打ち出した。
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アベノミクス「新3本の矢」に見る真相

第1の矢は「希望を生み出す強い経済」であり、具体的には2020年頃に名目GDPを600兆円にすることを目標とするという。
第2の矢は「夢を紡ぐ子育て支援」とされ、これによって希望出生率1.8を2020年代初頭に実現したいとする。
第3の矢は「安心につながる社会保障」であり、2020年代中頃には介護離職をゼロにするという。

これらの目標はすべて望ましいものである。
しかし、第1ステージの総括もなく、唐突にでてきた印象は否めない。
大前研一氏は、次のように解説している。

 この新三本の矢についてはコメントする価値もありません。
・・・・・・
1つは新しい時代を提案し気持ちを切り替えさせることです。これによって集団的自衛権問題ではなく、議論を呼ぶような内容を3つ提案したのでこちらに争点を移してくださいと言うメッセージです。
 もう一つの狙いは、古い三本の矢がうまくいかないので、これを忘れてくださいということです。
アベノミクス「新3本の矢」に見る真相

私も、よくぞ言うものだ、と思う。
第3の矢とされる介護離職0について考えてみよう。
日本の人口構成上問題になるのは「団塊の世代」の動向である。
終戦後の後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた人たちである。
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団塊の世代とは1947~1949年生まれの世代

つまり、2020年代の初頭とは、団塊世代が一斉に後期高齢者に突入する頃である。
当然、要介護者も増えるので、一般にはむしろ介護離職者の急増を懸念すべきである。
この時期に介護離職者をゼロにするというのは、極めて高いハードルだと言わざるを得ないし、政府はこれまで施設介護から在宅介護へという方向で介護政策を進めてきた。
もし介護離職を0にすると言うなら、今後は施設介護を重視するほかないが、それは従来の方針の大転換である。
同時に、介護のための財政負担の大幅な増加を覚悟しなくてはならない。
財政について触れないのは、絵に描いた餅である。

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2015年12月13日 (日)

日本国民を窮乏化させる安倍政権/アベノミクスの危うさ(65)

総務省が11月17日に発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の実質消費は対前年比-2.4%に終わった。
実質個人消費は消費税率引き上げの影響を受けて 2014 年 4~6 月期に前期比
-5.0%と急減した後、前期比+0.3%程度での緩やかな持ち直し基調にあったが、家計は苦しくなっていると言って良い。
エンゲル係数の推移は下図のようである。
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三菱UFJリサーチ&コンサルティング

エンゲル係数とは、消費支出のうち、どれぐらい食料費に使われたかを示す数字であるが、2013 年度までは 22%程度で安定して推移していた。
消費税率引き上げの影響も加わって 2014 年度に水準が急速に切り上がった後、2015 年度に入ってからはさらに高くなっている。
生鮮食品も含めて食料品価格の値上がりが続いている影響が大きいと考えられる。
「「三本の矢」の政策によって経済を成長させ、(略)経済の好循環を我々は作り出すことができたわけでございます・・・・・・」と安倍首相が自賛するのは、とんでもない認識違いということだ。
現に、日本国民は窮乏化しているのだ。

国民は、14年4月の消費税増税で、実質賃金を一気に引き下げられた。
当然、実質消費も大幅にマイナスとなったが、その14年と比べてすら、15年は実質の所得や消費が減っているのが現実だ。
安倍首相達は何度も「民主党政権では経済が衰退した」と言ってるが、実は民主党政権時代に日本の経済は大幅に成長していた。
民主党政権の3年3ヶ月で日本のGDPは5%強も成長したのに対して、安倍政権の2年間で成長したGDPの値は僅かに1.5%だけとなっているのだ。
また、実質賃金に関しても民主党政権はリーマンショック時のマイナス5%から1年でプラス3%に回復させました。
これは東日本大震災の影響も合わせた値で、未だに実質賃金がマイナス状態の自民党政権とは雲泥の差がある。
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「民主党で経済衰退した」はデマ!逆に安倍政権の方が経済弱体化!

甘利明経済財政・再生相は27日午前の閣議後の記者会見で、同日に総務省が発表した10月の家計調査で実質消費支出がマイナスとなったことについて「ここが正念場になっているのだと思う」と話した。
担当大臣が、「正念場」「安心感」などの抽象用語しか発せられないのでは、改善は見込めない。
安倍政権は口先では「消費者に安心感を」などと言いつつ、労働者派遣法改正、外国人労働者受け入れ拡大等、雇用を不安定化させ、生産者の実質賃金を引き下げる政策ばかりを推進してる。
消費者が安心して消費を増やせる環境を作らないと、経済成長など夢のまた夢であることが分からないらしい。
お坊ちゃんたちは困ったものだ。

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2015年12月12日 (土)

続続・安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(64)

安倍首相はやはり「裸の王様」なんだと思う。
最近のアベノミクスについての発言は、「自画自賛」と「大言壮語」のてんこ盛りである。
アベノミクスの成果をことさらに強調し、「1億総活躍社会」実現の緊急対策でも、実現の道筋の見えない目標数値が並び、政策の体をなしていない。
⇒2015年12月 9日 (水):一億総活躍社会をどう実現するのか/日本の針路(263)

「文藝春秋」12月号の『「一億総活躍」わが真意』では、次のように書いている。

一ドル八十円を切るような行き過ぎた円高は、是正されました。日経平均株価も八千円台から二倍以上、上昇しました。・・・・・・

また、11月26日、「1億総活躍社会」実現に向けた緊急対策が発表された際、次のように述べた。

「三本の矢」の政策によって経済を成長させ、(略)経済の好循環を我々は作り出すことができたわけでございます・・・・・・

安倍首相の執務室には株価ボードがあるという話だが、罫線だけで経済を判断しているとしたら進路を誤るだろう。
「その国のGDPと上場株式の時価総額の総和を比べたもの」を、バフェット指標という。
投資の神様とも言われウォーレン・バフェットが愛用したことに因む、
2015年4月~6月の国内総生産(GDP )は、マイナス成長で約500兆円だった。
一方で、東証1部の時価総額 が610兆円と過去最高を更新した。
2012年12月の安倍政権発足時のGDPは約475兆円だった。
同じ時期の東証一部株式総額は約250兆円に過ぎなかった。その後の2年半で株価は2.4倍になった。

バフェット指標を指数化した「バフェット指数」は、第二次安倍政権発足時が0.52で、15年5月は1.25だった。
約2.4倍である。
つまり、バフェット指数と株価がパラレルである。
GDPが成長していないのに、株価だけが高いのだ。
それがGPIFなどの公的資金投入によるものであることは既に指摘した。
⇒2015年4月14日 (火):株価2万円のカラクリ/アベノミクスの危うさ(51)
⇒2015年12月 1日 (火):究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

「第一ステージ」は、安倍首相の自賛とは裏腹に、目論見を実現し得ていないと言うべきであろう。
大前研一氏は、「第二ステージ」として「新三本の矢」を打ち出した目的を次のように説明している。

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1つは新しい時代を提案し気持ちを切り替えさせることです。これによって集団的自衛権問題ではなく、議論を呼ぶような内容を3つ提案したのでこちらに争点を移してくださいと言うメッセージです。
もう一つの狙いは、古い三本の矢がうまくいかないので、これを忘れてくださいということです。消しゴムで消すわけにはいかないので新しい目標を提案したというわけです。そしてその新しい目標では、GDPの目標は600兆円です。子育て支援では待機児童ゼロを目指し、社会保障の面では、問題になっている介護離職をゼロにすると言うのです。言葉だけ聞くとすべてにいいね!をつけたくなるような政策です。しかし具体的に考えると、GDP 2%の増加ができないアベノミクスに600兆円が実現できると言うのでしょうか。まさに目くらましの三本の矢であり、目に矢を入れて見えなくしようと言う狙いなのです。
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20150930-2/

しかし、安倍首相は本気で、第一ステージはうまく行ったと思っているのかも知れない。
取り巻きが本当のことを言えない「裸の王様」だからだ。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

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2015年12月 2日 (水)

日経平均という指標の代表性/アベノミクスの危うさ(62)

11月16日に発表されたGDP統計では、2015年7-9月期の実質経済成長率は、年率換算で-0.8%のマイナス成長となった。
4-6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長である。
⇒2015年11月18日 (水):虚妄の景気回復シナリオ/アベノミクスの危うさ(59)

安倍首相が胸を張るように、アベノミクスは大きな成果を上げているとはとても言えないのが実体だ。
年率換算の経済成長率は以下のように推移している。
2014年4-6月期   -7.7%
2014年7-9月期   -1.1%
2014年10-12月期  +1.2%
2015年1-3月期   +4.6%
2015年4-6月期   -0.7%
2015年7-9月期   -0.8%
米国の定義では、2四半期連続のマイナス経済成長に陥った場合、「リセッション=景気後退」としている。
アベノミクスは落第だったというべきである。

これに反して、日経平均株価は高い。
日経平均株価の推移は以下のようである(5年間)。
Ws000007

今年8月の下落はイレギュラーのように見えるが、株式市場は常にイレギュラーであると言うべきであろう。
安倍政権が発足した12年末以来の上昇は、GPIF等の動員によるものであり、それが限界に近づいている。
⇒2015年12月 1日 (火):究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

ここでは、そもそも日経平均という指標が、株価全体を代表するものではないことを、塚澤健二『そして偽装経済の崩壊が仕組まれる』 ビジネス社(2015年11月)から引用しよう。
下図は、日経平均の株式市場への寄与度である。
Ws000001_2
1980年には日本の株式相場=日経平均株価と言っても良かったが、逐年寄与度は低下していき、現在は1/3程度なのである。
日経平均の上昇をアベノミクスの成果というのは、二重の誤りということになる。

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2015年12月 1日 (火)

究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は30日、2015年7~9月期の運用損益が7兆8899億円の赤字に転落したと発表した。
赤字は6四半期ぶりで、四半期の赤字額としては過去最大となった。
記者会見したGPIFの三石博之審議役は「10月以降の市場環境は回復しており、今年度の直近までの収益額はプラスに転じる基調だ」と強調したが、それだから許されるというものではないだろう。
GPIFの資金運用方針そのものが問われなければならない。

そもそも国民の大切な資金である。
リスクの高い市場で運用することが適切なのか?

安倍政権が、高株価を演出するために、GPIFの資金を動員してきたことは周知の事実である。
「文藝春秋」12月号で、『「一億総活躍」わが真意』で、「日経平均株価も八千円台から二倍以上、上昇しました」と得意げに語っているが、政策的に形成された株価で実体経済とは乖離したものであることは、GDPが2四半期下落していることでも分かる。
⇒2015年11月18日 (水):虚妄の景気回復シナリオ/アベノミクスの危うさ(59)

15年4月~6月の国内総生産(GDP )はマイナス成長で約500兆円だった一方で、東証1部の時価総額 が610兆円と過去最高を更新した。
GDPに対する株式時価総額の比率を指数化した「バフェット指標」というものがある。
アメリカの投資家のウォーレン・バフェットが愛用することから呼ばれている。

2012年12月の安倍政権発足時のGDPは現在と変わらない約475兆円だった。
同じ時期の東証一部株式総額は約250兆円ほどに過ぎなかったので、この指数では「安すぎ」とされた。
その後の2年半で株価は2.4倍になったが、GDPはほぼ同じまま成長しませんでした。
バフェット指標で日本株は高すぎる GDPと株価総額は同額であるべき

もちろん、バフェット指数が絶対とは言えない。
しかし安倍政権の高株価が実体経済と遊離したものであることは確かである。
塚澤健二『そして偽装経済の崩壊が仕組まれる』 ビジネス社(2015年11月)に下図が載っている。
Ws000000
割高な株価を形成してきたのがGPIFなどの資金である。
⇒2015年4月14日 (火):株価2万円のカラクリ/アベノミクスの危うさ(51)
そのことは上掲書に載っている下図が見事に示している。
Gpif
見事であるとしか言いようがない。
同書で塚澤氏は次のように書いている。

 だが、安倍政権の本当の目的は、今後の日経平均を二万一〇〇〇円台、二万二〇〇〇円台に押し上げることではない。
 黒田総裁が政府よりな金融政策で株価を上げている間に、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案の成立を筆頭に、安倍政権がやりたいことをやれるようにするために他ならない。TPP参加についても、なし崩し的に決まってしまった。

人為的に挙げられた株価は、いつか元に戻る。
自分の政策のために公的資金をつぎ込むというのは、究極の公私混同である。

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