知的生産の方法

2018年5月14日 (月)

小売業におけるAIの活用/知的生産の方法(176)

コンビニやスーパーマーケットのような小売業は、AIによってどう変わるであろうか?
例えば「ダイヤモンドオンライン」誌のAIが店長の座を奪う!?小売業で起きつつある革命とはという記事で、株式会社ABEJAの岡田陽介社長は次のように説明している。

岡田 じゃあ、仮に舞台をスーパーマーケットにしましょう。まず、仕入れが変わります。何曜日の何時にどんな商品が売れたか、POSのデータをAIに「ディープラーニング」(連載第2回を参照)させていきます。すると、いままで店長さんが行っていた発注作業をAIが代行できるようになります。しかも、店長さんの経験やカンより正確、かもしれません。
岡田 小売店は品切れを起こしたら機会損失になります。しかし生鮮など賞味期限が短いものは、仕入れすぎると売れ残り、破棄しなければなりません。だから今までは、店長さんが熟練のカンで「今日は絹とうふを何丁、木綿を何丁」といった具合に仕入れていました。
 AIは膨大なデータから、その「カン」の部分も学んで自動で発注してくれます。過去のデータの天候や気温とリンクさせれば「暑い日は絹が売れ、寒いと木綿が売れる」といったことも学習していきます。さらに、店長さんが気付かなかった法則性も認識できます。「なぜか4月1日~3日だけ、男性向けの弁当がいつもより少し売れるから仕入れましょう」とAIが言い出したとします。そこでお店の人が理由を調べると、毎年この期間は近所の〇〇建設さんの社員研修で若い男性が集まっていた、といったことが分かったりします。
 もちろんAIは「〇〇建設さんの社員研修がある」と知っているわけではありません。でも、「毎年、4月の1~3日は男性向けのお弁当がいつもより売れる」、「ただし休日の場合は関係ない」、「ただし休日の場合は関係ない」データを捉え、「このお弁当をいくつ」とアウトプットしてくれるんです。

いわゆるディープラーニングの成果である。
⇒2016年5月24日 (火)  ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)
⇒2016年11月11日 (金)  人脳と人工知能/「同じ」と「違う」(99)

経済学では「一物一価」が原則であろう。
しかし現実には寿司屋の「時価」のように、人を見て値段を変えるようなケースもある。
人によって、モノやサービスに対する価値感は異なり、支払い能力にも差があるのだから、フレキシブルに「一物多価」の方が合理的な場合もあると思われる。
その実験店舗ともいうべきローソンの「オープンイノベーションセンター」がオープンした。

 POS(販売時点情報管理)レジや電子マネーなど小売業を巡るITの発達は目覚ましい。にもかかわらず、価格設定を取り巻く店の業務だけは昔とあまり変わっていない。コンビニの場合、弁当などの定価を最初に設定する際は市場調査などに注力するが、一旦決めた価格は変更しないのが原則だった。
 一方で、家電やブランド小物などの高額品は「価格.com」などの比較サイトの利用が一般化した。ここに掲載される最安価格は消費者の購買行動を左右する。ここでの相場が下がれば、家電量販店なども対抗して値下げせざるを得ない状況になっている。
 価格戦略の策定に携わってきたEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの中村裕之エグゼクティブディレクターは「価格比較サイトや大手通販サイトの価格を収集して参照する製造業や小売業は多い。ただし、最安価格に追随するばかりでは、価格破壊の底なし沼にはまってしまう」と話す。
 価格決定や価格調整にAIを採用する動きも広がる。中村氏は「AIに全てを委ねるのはやめたほうがいいが、支援には使える」と話す。中村氏によれば、価格は「3C(Customer=顧客、Competitor=競合、Company=自社)」の3要素から決まる。3つ全てを満たす価格設定は理論的に難しい。「顧客にとって割安感があり、競合よりも安く、かつ自社もがっぽりもうかる」という価格設定があり得ないのは当然だろう。ただ、最安かどうかはともかく、顧客が納得する価格を適切なタイミングで提示し、自社ももうかる仕組みは実現されつつある。そこにAIが絡むのが2018年の新潮流だ。
 顧客のニーズを満たし、競合に負けず、自社の売上高を最大化するという3つの変数からなる方程式を解くために企業は工夫を凝らす。カギはAIなどのITと人の判断との組み合わせにある。
ローソンが挑む「一物多価」、コンビニ商品の値段はAIが決める

小売業の現場でのAIの活用を以下のように説明している図があった。Ai21712222
東京新聞12月24日

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2018年5月 2日 (水)

算数は知的好奇心のエンジン/知的生産の方法(175)

若い人たちと「考える」ということについての読書会をやっている。
現在は神永正博『直感を裏切る数学』ブルーバックス(1014年11月)がテキストであるが、
初歩的な問題集であったり、数学的な思想書であったりとさまざまである。
あくまでビジネスパーソンとしての基礎的な思考力の向上に寄与することを目的としているから、個別の問題の正誤にはまったくこだわらない(つもりだった)。
しかし中には問題を解くことに集中するあまり、高校時代のチャート式〇〇のような参考書を持ち込む人がいたりした。
「数学」と聞くと問題を解くこと、あるいは解答の正誤に関心が向くらしい。

例えば、算数で基本的な問題として、距離、時間、速さの関係に関するものがある。
[距離]=[速さ]×[時間]であるが、
変形すれば
[速さ]=[距離]÷[時間]
[時間]=[距離]÷[速さ]
まとめれば
Photo_3

これは当たり前のように思うが、これを以下のような図に当てはめて考える風潮があることを知った。
1804062
東京新聞4月6日

左側は、[距離]と[速さ]と[時間]の関係を覚えるものであり、右側は、[比べる量]と[元の量]と[割合]を覚えるものだという。
少なくとも私は初めて目にしたが、関西方面の塾などでは当たり前に扱われているようである。
両方とも、こんな図を使わなくとも、[速さ]とか[割合]とはどういうことかを理解していれば自明だと思うが、高校まで京都で過ごした人が上図を描いていた。

明光義塾宇土教室の人が「これらこそが、子供をダメにする要因ではないか」とツイートした。
何でもかんでも公式に当てはめて答を出すのは、如何なものか、ということに関してはまったく同感である。
与えられた問題に対して、教えられた通りに答を出す。
その行きつく先が、佐川宣寿前国税庁長官や柳瀬唯夫経産審議官(元首相秘書官)のような人間を作り出すことになるのではないか。
1804063
東京新聞4月6日

大事なのは、知的好奇心であろう。
知的好奇心の総和が国力を決することになると思うのだが、安倍政権の5年間で、急速に衰退しつつあるように感じる。
次のような閣議決定を行うというのだから、学力の基礎とも言える「語彙力」がオカシクなるのも当然であろう。

 政府は27日、自衛隊のイラク派遣の際の活動報告(日報)に記載があった「戦闘」の言葉について、自衛隊法で定義される「戦闘行為」の意味で用いられた表現ではないとする答弁書を閣議決定した。立憲民主党の逢坂誠二衆院議員の質問主意書に答えた。
 日報の記述については、昨年7月の衆院予算委員会でも、安倍晋三首相が「(憲法の要請との関係で)定義を決めている戦闘行為とは違う意味で、一般的、いわば国語辞典的な意味での戦闘という言葉を使う、これはあり得る」と答弁していた。
日報の「戦闘」、法的な「戦闘行為」でない 政府答弁書

自律的に考えるのではなく、上司の命に唯唯諾諾として従う。
会社員についてはヒラメ社員という言葉があったが、公務員が公僕ではなく、権力のシモベになっている。

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2018年4月 2日 (月)

吉野彰博士が日本国際賞受賞/知的生産の方法(174)

吉野彰博士が「Japan Prize:日本国際賞」を受賞した。
「日本国際賞」)とは、「国際社会への恩返しの意味で日本にノーベル賞並みの世界的な賞を作ってはどうか」との政府の構想に、松下幸之助氏が寄付をもって応え、1985年に実現した国際賞である。
全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられ、毎年、科学技術の動向を勘案して決められた2つの分野で受賞者が選定される。180307
東京新聞3月7日

吉野博士は、次のノーべル賞の最短距離にいると言われる。
京都大学で福井謙一博士の流れに位置する研究者である。
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2017年9月25日 (月) 日本の研究力を回復するために・基礎と自由/日本の針路(330)

「IT革命」ということが喧伝されたのは世紀の変わり目の頃だった。
爾来20年近くである。
「IT革命」の次は「ET革命だと吉野さんは言う。
「ET」の
Eはエネルギーや環境を、T は技術を表す。

既にリチウムイオン電池の用途は、電気自動車(EV)向けがIT機器向けを上回っているという。
かつて電気はためられな いもの、と考えられていた。
しかし、近未来に数千万台に上ると予測されている電気自動車が蓄電の役割を担う。
そうすれば、電気の需給は劇的に変化するのだ。Ws000001
リチウムイオン電池というシステムを実証しモバイル革命と持続的発展に貢献

吉野博士の業績は以下のように紹介されている。Ws000000
リチウムイオン電池というシステムを実証しモバイル革命と持続的発展に貢献

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2018年3月23日 (金)

考える技術・書く技術(2)理科系の作文技術/知的生産の方法(173)

「森友疑惑」は、霞が関官僚の、尻尾を掴まれない話法・修辞法「霞が関文学」の限界を国民の目の前に明らかにした。
霞が関文学の対極に位置するのが「理科系の作文技術」であろう。

通りすがりの書店で、『まんがでわかる 理科系の作文技術』中央公論新社(2018年1月)が平積みされていた。
木下是雄氏のベストセラー『理科系の作文技術』中公新書(1981年9月)をマンガで開設したもので、久間月慧太郎という人がイラストを担当している。
理科系の作文技術』は、発刊当時読んだ記憶がある。
私は大学は工学部だったから、理科系と言えば理科系なのであるが、この書が刊行された当時は技術の現場はとうにサラバして、ベンチャー企業で経営スタッフをしていた。
その業務の一環で、専修学校の開設準備をしていた頃のはずである。

学生時代の専攻を離れ、リサーチファームを体験し、その後の職場だった。
ソフトウエア開発企業だったが、リクルートに苦戦していた。
ならば自前で養成機関を作ったらどうだ、という発想だった。
ソフトウェア需要の拡大とソフトウェアの巨大化が引き起こすソフトウェアの生産性の限界によって、コンピュータ技術の発展が大きく阻害される事態、すなわちソフトウエア・クライシスが叫ばれていた頃である。

その学校のカリキュラムを組んでいた時、「テクニカル・ドキュメンテーション」の必要性を強調した。
当時のソフトウェア技術者というのが、概してドキュメントをまとめる習慣がなかったので、メンテナンスに苦労しているのを知っていた。
一方、リサーチ・ファーム時代には、報告書の書き方について、かなり辛口のコメントをする先輩がいて、文章の書き方について、仲間と研究会をしていたので、自分でも興味のある分野だった。

いわゆる「文章読本」の類は何冊も出版されていた。
しかし、それらは専門学校のテキストには相応しくなかった。
後に、第1回小林秀雄賞(2002年)を受賞した斎藤美奈子さんの力作『文章読本さん江』筑摩書房(文庫版2007年12月)が出て、既存の「文章読本」が、ビジネスには役に立たない理由を明快に論じてくれたが、それは約20年後のことである。

当時、さまざまな資料を参照して、自分なりのテキストを作成してみた。
2年ほど専門学校生を対象に授業をしたが、本業が忙しくなったこともあってそれきりになったが、ゆっくりとまとめてみたい気持ちは残っている。

おおよそ、次のようなことを考えていた。
私たちが「情報」と呼んでいる物には、「情」の側面と「報」の側面がある。
ソフト(ウェア)という言葉にも、広狭あって、コンピュータのソフトウェアを狭、デザインや企画などを広とすれば、以下のような整理ができるであろう。

Ws000001

そして、[情・報]産業のプロダクツをポジショニングすれば、以下のようになるのではないか。
Ws000002

理科系の作文技術≒テクニカル・ドキュメンテーションであり、生産財的・報的ではないだろうか。
霞が関官僚にも『理科系の作文技術』を推奨したい。

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2018年1月20日 (土)

ムーミン谷の入試問題/知的生産の方法(172)

2018年1月13日に行われたセンター試験地理Bで「ムーミン」に関する問題が出題された件が話題になっている。
「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」がそれぞれフィンランドとノルウェーのどちらかを舞台にした作品であると紹介した上で、正しい言語との組み合わせを選択するものである。
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ムーミン公式が「ムーミン谷がある場所」について見解発表 センター試験地理Bの出題の件で

試験問題は、アニメの『ニルスの不思議な旅』がスウェーデンを舞台にしたものであることを紹介した上で、同じ北欧三国に関係する『ムーミン』と『小さなバイキングビッケ』の画像を見せ、それぞれが「ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメーション」であると紹介し、そのどちらが「フィンランドを舞台にしたアニメーションなのか」を考えさせる問題だった。

ただ、「ムーミン」は著者のトーベ・ヤンソンがフィンランド出身であるものの、あくまで舞台は仮想の世界「ムーミン谷」。そのため、「出題ミスではないか」という意見が出て、「ムーミン」の公式Twitterアカウントに意見するものが続出したり、大阪大学大学院にスウェーデン語研究室が「フィンランドとは確定できない」という見解を表明するなどの騒ぎになった。

私は、鈴木貴博・百年コンサルティング代表の『ムーミンの炎上入試問題が不適切どころか「良問」である理由』に同感するところが多い。

 さらにこの問題は、実はムーミンを知っているだけでは正解にならない。それぞれ(タ)(チ)という番号が付いたムーミンとビッケの画像の横に、同じく(A)(B)という番号が付いたフィンランド語とノルウェー語のイラストが載っており、アニメの舞台とその国の言語として、(タ)(チ)(A)(B)のどのような組み合わせが正しいかを、選ばせる内容になっていたのだ。
 その言語とは、「(それは)いくらですか?」という意味の「A:ヴァ コステル デ?」と「B:パリヨンコ セ マクサー?」である。
 受験生にしてみれば、こっちのほうが「わかるわけない!」と憤りそうだが、親切なことに、Aのイラストには妖精のような小さな小人が描かれていて、Bのほうにはトナカイが描かれている。
 トナカイと言えばサンタクロース。そして、サンタクロースが世界に向けて出発するサンタクロース村はフィンランドにある。また、サンタクロース村はムーミン谷と違い、実在している上に営業もしている。それを知っていれば、正しい組み合わせはBであることがなんとなく想像できる。

フィンランド大使館は「物語を愛する皆さんの心の中にある」とイキなコメントだし、スウェーデン大使館は「北欧は取り上げられるのは嬉しい」とオトナの対応だ。
見習うところが多いのでは?

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2018年1月14日 (日)

AIのコピーライティング/知的生産の方法(171)

AIの話題に事欠かない。
囲碁や将棋などの知的ゲームの分野では棋士を凌駕するレベルになっている。
芸術とかビジネスの戦略など、クリエイティブな思考が重要な分野ではどうだろうか?
⇒2016年2月21日 (日) AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)
電通が静岡大がと共同で広告コピーライティングのAIを開発した。

 電通は、人工知能(AI)による広告コピー生成システム「AICO (アイコ/AI Copy Writer)」のβ版を開発した。
 昨今人工知能の研究と実用化が急速に進んでおり、広告コミュニケーション領域においても欠かせない技術になりつつある。たとえば、今回電通が開発したシステムで人工知能による広告コピー生成が実現すると、TPOに合わせてリアルタイムにメッセージを変化させることができる。そのため、ネット広告や屋外・交通広告などでよりパーソナライズした広告配信が可能となる。
・・・・・・
 同社は次世代型広告に関する研究を5年ほど前から行っており、その中で広告コピーの良し悪しによって広告効果がどのように変化するかの定量・定性的評価を行ってきた。その研究をさらに発展させ、自然言語処理を専門分野とする静岡大学情報学部の狩野研究室と同システムの共同開発に至った。
 今回の発表に先駆け、電通と狩野研究室は、双方の知見とノウハウ、データを組み合わせることで、「人工知能が書いたキャッチコピーによる新聞広告」を2016年に出稿した。その際、広告制作の実務に携わっている電通のコピーライターが人工知能の学習をサポートし、より人間に近いコピーの生成を可能にした。
 今後電通は、同システム開発を皮切りにさらなる研究開発を進め、より具体的な広告効果が期待できる広告生成の実用化を目指す。くわえて、人工知能と人間のクリエイターの協業による、これまでにない新たな広告手法の研究開発を進めていく。
電通、人工知能による広告コピー生成システム「AICO」のβ版を開発 静岡大学の狩野研究室と共同で

実際の作例は以下のようである。
Ai1706243
東京新聞2017年6月24日

まあ、微妙な感じではあるが、「もう一息」のところまで来ていることは間違いないだろう。

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2018年1月13日 (土)

スマートフォンとAI/知的生産の方法(170)

身近にAIを感じることができるのは、スマホなどに搭載されている言語認識機能であろうか。
秘書機能と銘打ったSiri(Speech Interpretation and Recognition Interface:発話解析・認識インターフェース)は、iPhoneやiPadで使っている例を良く見かける。
野口悠紀雄『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!講談社(2016年5月)は、「著者の野口悠紀雄氏がスマートフォンの音声入力を使って書き上げた」そうである。
しかし私の場合、脳梗塞の後遺症で構音障害があるため、実用的に文章を入力することは不可能である。

ファーウェイ社の「HUAWEI Mate 10 Pro」というスマホは、AI搭載を売り物にしているようである。
NPU(Neural network Processing Unit)と呼ばれる、機械学習のためのプロセッサーを内蔵した、もっとも性能の高いチップセット「Kirin 970」を搭載したこと。さらにそこに、6GBに増えたRAMと、最新のEmotion UI(EMUI) 8.0が加わり、ハードとソフト、両方の進化によって快適な使用感を実現したという。

AIすなわち人工知能(Artificial Intelligence)には、「汎用AI」と「特化型AI」に分かれる。
「HUAWEI Mate 10 Pro」が搭載しているというAIは後者で、「機械学習」を指せるための専用のチップが使われた。
ユーザーが使用する中で蓄積されたデータから、ユーザーがしようとしていることなどを推測することができるようになったという。
Huawei2

Huawei
「HUAWEI Mate 10 Pro」レビュー。 「AI搭載」でスマートフォンはどう進化するか?

また、スマホのネックである電池の消耗に対しても、AIによる省電力を実現しているという。
今のスマホの電池の寿命が限界に近づきつつあるので、買い替えるとしたら一寸そそられる機種であるが、iPhoneからの乗り換えは面倒だろうなあ。
こういうものは実際に使って見ないと良く分からない。

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2018年1月10日 (水)

翻訳アルゴリズムと化学反応/知的生産の方法(169)

世の中にはユニークな発想をする人がいるものである。
有機化学といえば、ベンゼン核を思い出す人もいるだろう。
炭素を含む化合物の化学が有機化学である。

炭素には、4つの外殻電子と4つの空席があり、価電子数4と元素の中でも最も多い4組の共有結合を持つことが可能である。
そのため、多様な分子をつくる骨格となる。
IBMの研究者が、AIに39万5千の化学反応を勉強させ未知の化学反応の予測を可能にした。

Photo
この結果の特徴は機械翻訳でよく使われるニューラルネットワークを用いたことで、化学反応を言語のように処理していることです。具体的には、
 1.合成化学的に正しい反応を予想をするためのSIMLEの文法
 2.分子構造の傾向
 3.原料、反応剤の反応部位
といったような三つの内容について学習させました。これは人間が有機化学を学ぶ時と同じで、人間のようと同じ方法で反応を予測していると考えられます。
今後の展望として、
 ・正解率を90%以上にする。
 ・有機合成化学の分野別に反応予測を最適化させる。
 ・システムに関しては化学構造だけでなく、温度や溶媒。pHなども予測のファクターに取り込む。
 ・特許のデータベースだけでなく、より多くの有機化学反応を学習させる。
 ・ビジネスの観点からクラウドサービスにして誰もが使えるサービスにする。
といったようなことを計画しているそうです。また、AIは完全ではないため化学者のフォローアップが必要で、このシステムが有機化学者にとって代わるのではなく助けるために作ったと論文を執筆した研究者の一人であるテオドロ・ライーノ博士はコメントしています。

AIによる化学反応の予測というトピックについて全然知りませんでしたが、論文中では最近の研究結果を多く引用していて、ホットなトピックであることがわかります。ScifinderとReaxysには多くの反応がデータベース化されているのでこれらとコラボすれば、すべての反応を網羅できると個人的には思います。またこの研究者のコメントには一安心ですが、このようなツールが発達すると研究が効率的に進められる一方、合成反応をよく勉強しなくても新規合成や反応開発できるようになってしまい、学生の考察力が低下するのではないかと私は危惧しています。Googleに聞けば学生実験の答えが出る時代から、AIに聞けば思い通りの分子が合成できる時代になるかもしれません。
翻訳アルゴリズムで化学反応を予測、IBMの研究者が発表

考えてみれば、語彙と語彙を結び付ける法則性(文法やレトリック)も多様であり、化学反応の多様性と似ているかも知れない。
しかしそれこそ「コロンブスの卵」というものであろう。

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2018年1月 7日 (日)

シンプソンのパラドックス/知的生産の方法(168)

西内啓『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社(2013年1月)という本があるが、「最強」という言葉には抵抗がある。
著者は、「どんな権威やロジックも吹き飛ばし」という。
権威を吹き飛ばすのは結構であるが、ロジックを吹き飛ばすのが最強だろうか?

そんなツッコミを入れたくなるが、統計的に処理され、表現されたデータが強い説得力を持つことは事実であろう。
定性的な言葉にない定量的な表現の持つ力である。

しかし、注意しないと誤った評価や判断など、ミスリードしかねない点に注意する必要がある。
統計的なパラドックスとして有名なものが「シンプソンのパラドックス」である。
イギリスの統計学者エドワード・H・シンプソンによって示されたもので、「母集団での相関と、母集団を分割した集団での相関は、異なっている場合がある。つまり集団を2つに分けた場合にある仮説が成立しても、集団全体では正反対の仮説が成立することがある」というものである。

神永正博『直感を裏切る数学 「思い込み」にだまされない数学的思考法 』講談社ブルーバックス(2014年11月)に「新生児体重のパラドックス」と呼ばれる例が載っている。

喫煙をしていない母親から産まれた新生児(A)と喫煙をしている母親から産まれた新生児(B)について、体重別死亡率をみると以下のようであった。
Photo_8

上表は、どの体重ランクにおいても、喫煙をしている母親の方が赤ちゃんの死亡率が低いという不可解な結果であった。
喫煙の害は良く知られている。
何故だろうか?

もう少し詳細に見てみると以下のようであった。
2

上表をグラフ化すると下図になる。
Photo_12

つまり、喫煙をしていない母親から産まれた新生児(A)の方が、喫煙をしている母親から産まれた新生児(B)よりも死亡率が高いように見えた 最初の表は、以下のような2つの因果関係が複合した結果であった。

Photo_7

それぞれの因果関係は当然であろうと納得できるものである。
統計の結果を、自分にとって都合のよいように解釈して、断片的に表示していくと、統計そのものの信頼性を失わせないことになる。

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2018年1月 2日 (火)

AIによる古文書の判読/知的生産の方法(167)

地域の歴史等を調べようとすると、古文書の読解が必須である。
以下のような文書である。
Photo_3
白石村古文書

古文書などの史料を読解するためには「判読」と「解読」という2つのプロセスを経ることが必要である。
Photo_3

しかし、活字を印刷した文書に慣れている人間にとって、判読がなかなか難しい。
字の単位(1字なのか、2字なのか・・・)すら分からないし、仮名か漢字かも分からない。
仮名が漢字から作られていることからすれば当然のことではあるが。
⇒2008年2月17日 (日) 判読と解読
⇒2008年2月18日 (月) 右と左の識別

文字の崩し方には一定のパターンがある。
1990年代の終わりごろ、大学の理工学部でパターン認識を結球している知人に、何とか読解支援ができないだろうか、と相談を持ち掛けたことがある。
趣味でやっていた利根川開発史のサークルで、古文書を読んでいたからである。
知人は「できると思うよ」と軽く返事をしたが、仕事とは無関係だったので、話は発展しなかった。

ここ数年、機械学習(ディープラーニング)が話題になっている。
専用AIでは、人間を凌駕する「読み」を示すことは、将棋や囲碁で話題になっている。
これなら、古文書読解にも可能性が広がるのではないかと思っていた。
東京農工大の中川研究室の院生たちが、古文書読解アルゴリズムで、表彰を受けたというニュースがあった。

東京農工大学は、同大学の学生が考案したアルゴリズムが「第21回アルゴリズムコンテスト」において、最優秀賞を受賞したと発表した。古典籍画像の指定領域に含まれるくずし字をAIに認識させる課題で、優秀な認識性能を示したということだ。
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同アルゴリズムは、東京農工大学大学院工学研究院の中川研究室の修士課程2年リー・トゥアン・ナムと博士課程1年グエン・コング・カーが考案したもので、11月に開催された4th International Workshop on Historical Document Imaging and Processing(HIP 2017)でも、最優秀論文賞を受賞している。
同アルゴリズムコンテストは、パターン認識・メディア理解分野の若手研究者・学生の育成および研究会活動の活性化を目的として、毎年開催されているもの。提示される課題には、代表的・基礎的な研究課題が取り上げられ、応募されたアルゴリズムは、その性能・独創性・処理時間の観点で評価される。今年は、古典籍画像の指定領域に含まれるくずし字を認識して、コードを出力する課題が出された。課題は、外接する長方形に含まれる文字数に応じて難易度が設定されており、レベル1は1文字、レベル2は縦方向の3文字、レベル3は縦横方向の3文字以上の文字が含まれている。なお、認識対象の文字は変体かな50種程度で、漢字は含まれていない。
東京農工大、古典籍のくずし字をAIが認識するコンテストで最優秀賞

私(たち)は、AIの行方をどこまで見定められるのだろうか?

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