俳句のキレと味覚のキレ/「同じ」と「違う」(105)
「プレバト!!」というテレビ番組を見ている。
いささかマンネリ気味かなとも思うが、俳句、水彩画、消しゴムはんこなどに芸能人がチャレンジし、それを査定・評価して、格付け(才能アリ、凡人、才能ナシ)する。
特に、俳句の夏井いつきさんのコメントは、毒舌もさることながら、見事な添削の効果が楽しみだ。
ビフォアの作品が、語順の修正やちょっとした補足で、見事なアフタに劇的に変化する。
――番組では毎週5人くらいの俳句を査定していますが、「才能アリ」「凡人」「才能ナシ」の基準は何ですか
夏井 詩のかけらがあるかということですね。詩のかけらを作ろうという意識はあるけど日本語がうまく機能していないのが「凡人」。詩のかけらが希薄で発想がありきたりなのが凡人の下のほう。日本語の仕組みが分かっていないのが「才能ナシ」です(笑い)。
――語順を入れ替えたり、助詞を変えるだけで作品が大変身する夏井マジックはどこからくるのですか
夏井 私じゃなく、日本語がすごいんですよ。助詞を変えるだけで作者の立ち位置が全然違ってくる。無意識にしゃべっている時は気付かない日本語の豊かな働きが、17音という短い詩形の中だとよく分かる。日本語のすごさを知ってもらえたらうれしいです。
「プレバト俳句」夏井先生に聞く芸能人ホントの実力
俳句は五七五という定型の中に日本語を盛り込む文芸であるから、小学生でも制作できる。
事実、出場者の皆さんは、「これぞ俳句!」という顔をしている。
俳句の難しさは、定型の他に季語や「切れ」という要素の扱いにある。
季語は、歳時記等を参照すれば、それらしい言葉を見つけることもできるが、「切れ」は日本語の語感の問題だから、感性が問われる。
俳句の入門サイトには、以下のような説明がある。
俳句を江戸前の握り鮨に例えたとき、季語をネタ(魚)、それを受け止める定型をシャリ(酢飯)とするならば、切れ・切れ字は、味を引き締めるサビ(山葵)のように大事なものと言えるでしょう。
俳句の切れ・切れ字
そのサビ加減が難しい。
『夏井いつきの超カンタン! 俳句塾』世界文化社(2016年7月)では次のように説明している。
要するに、コンテキストが文字通り「切れ」るのだ。
まあ、「習うより慣れろ」で、実作を通じて、感覚を養うしかないのかもしれない。
「切れ」という言葉には、味覚に関連して、コクの対語として使われることがある。
ビールのCMで浸透した「キレがあるのにコクがある」のように。
さらには、「キレ・コク」を思考の態様にまで拡大した議論もある。
⇒2013年1月17日 (木):「キレ」の思考と「コク」の思考/知的生産の方法(28)
⇒2013年1月21日 (月):「コク」の思考と『「いき」の構造』/知的生産の方法(31)
⇒2013年2月 2日 (土):センター試験問題の「コク」と「キレ」/知的生産の方法(34)
⇒2013年3月 4日 (月):小林秀雄と吉本隆明の「キレ」と「コク」/知的生産の方法(38)
⇒2013年4月 4日 (木):佐藤可士和さんの「キレ」と「コク」/知的生産の方法(46)
まあ、味覚の問題と同じように、多分に主観の問題かとは思うが、それではまったく共通性がないかと言えば、そうでもないだろう。
文芸やデザインについて、多くの人が「良い」というものがある。
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