「同じ」と「違う」

2017年9月15日 (金)

インテンシブとエクステンシブ/「同じ」と「違う」(106)

台風18号が接近している。
「非常に強い」勢力で上陸すれば、24年ぶりのことだという。
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24年ぶり非常に強い上陸?台風18号

台風には「大きさ」と「強さ」がある。

 気象庁は台風のおおよその勢力を示す目安として、下表のように風速(10分間平均)をもとに台風の「大きさ」と「強さ」 を表現します。 「大きさ」は強風域(風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、 「強さ」は最大風速で区分しています。
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台風の大きさと強さ

18号は、「大型」ではなかったが、夜のニュースの時点で大型に発達した。
私は台風の「大きさ」と「強さ」は、学生時代に学んだ「示量変数」と「示強変数」に相当すると思う。

Wikipediaでは次のように説明している。

状態量すなわち状態変数は示量変数 (extensive variable) と示強変数 (intensive variable) の2種類に分けられる。
示量性の定義は文献により、「系全体の量が部分系の量の和に等なること」という定義と「系の大きさ、体積、質量に比例すること」という定義とがある。厳密には前者の性質は相加性、後者の性質は示量性として区別する。均一系の状態量は相加性ならば示量性となるが、部分系ごとにその量の密度が異なる不均一系の場合には相加性であっても示量性とはならない。しかし熱力学では部分系として均一なものを取ることが普通であり、部分系においては相加性と示量性が一致するようにできる。従って、相加性と示量性は区別しない流儀の方が多い。
示量性(相加性)を持たない状態変数を示強変数という。示量性状態量と示強性状態量の中には、体積と圧力のように互いに掛け合わせるとエネルギーの次元をもった示量性の量となるものがある。このような関係を(互いに)共役な関係または双対な関係と言う。

具体例で考えた方が分かりやすい。
比熱と熱容量は次のような関係である。

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このように比熱は物質由来であり質量に依存しないですが、熱容量は物質の質量に依存します。
前者のような質量を始めとした物質の各種の量に依存しないものを示強変数と呼び、
後者のように質量を始めとした物質の各種の量に依存するものを示量変数と呼びます。
電池の知識 比熱と熱容量、電圧と電位、示強変数と示量変数

私の知り合いのやっている英会話学校に、インテンシブコースというのがある。
集中的に叩き込むというイメージである。
私が現代文のお手本と位置づけている掛谷誠氏の「伊谷純一郎『アフリカ紀行』の解説」に、次のような一節がある。

こうしたエクステンシヴな広域調査と、タンガニイカ湖畔の村カソゲでの餌づけによるインテンシヴな調査があいまって、チンパンジー社会における単位集団、自在にそのメンバーが離合集散する社会構造、メスの単位集団間の移籍など、驚くべき実態が明らかにされていった。この調査の過程で、伊谷さんは、チンパンジーの社会がヒトの社会につながるという確信を強め、ヒトについての生態人類学的研究を具体的に展開する構想を育てておられたにちがいない。
⇒2015年4月20日 (月):掛谷誠・「伊谷純一郎『アフリカ紀行』」の解説/私撰アンソロジー(35)

私はこの箇所を目にしたとき、遠い教養部時代の授業を思い出して、懐かしくなった。

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2017年8月17日 (木)

切れ者とキレる人/「同じ」と「違う」(105)

安倍首相が都議選の最終日に応援演説に立ったが、その時の言葉が惨敗の大きな要因だったと言われている。
室井佑月さんが「週刊朝日」7月21日号に書いている。
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まあ、これが一般的な見方だろう。
安倍首相が「帰れ!」コールにキレて、「こんな人たち・・・」と声を張り上げてしまった。
つまり、自民党惨敗の大きな要因の1つが「安倍不信」で、それが内閣支持率の急激な低下である。
⇒2017年7月13日 (木):加計疑惑(32)支持率の下落が止まらない安倍政権/アベノポリシーの危うさ(253)

それを顧みることなく、内閣改造で支持率アップが図れると考えるのは甘いと言わざるを得ない。
ところで「キレる」とはどういうことか?
Wikipediaでは次のように説明されている。

キレる(切れる)とは、主に対人関係において昂ぶった怒りの感情が、我慢の限界を超えて一気に露わになる様子を表す、日本の俗語。
同義の言葉には「激昂」「激高」などがある。

「秋葉原通り魔事件」などを連想するが、この事件はかなり計画的なようにも思えるので、単純に「キレた」からとは言えないかも知れない。
⇒2008年6月11日 (水):秋葉原通り魔と心の闇
⇒2008年6月22日 (日):通り魔をヒーロー視する人たち

森友・加計問題がこれだけ大きな問題になっているのも、安倍首相の「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という言葉が大きいであろう。
⇒2017年2月22日 (水):森友疑惑(2)国有地格安売却/アベノポリシーの危うさ(136)

しかし、「関係している」ことが明白になっても、一向に辞めようと言い出す気配はない。
有言不実行である。
24、25日の閉会中審査では、「李下に冠を正さず」と丁寧な説明ではないが低姿勢に徹しようとしていた。
⇒7年3月14日 (火):森友疑惑(21)加計学園の李下の冠/アベノポリシーの危うさ(156)

そもそも、「丁寧な説明」を考えるならば、なぜ加計孝太郎氏を招致しないのか?
⇒2017年7月27日 (木):加計疑惑(38)加計孝太郎氏はなぜ表に出ないのか/アベノポリシーの危うさ(264)

閉会中審査では、前川前事務次官と直接対立する形になった和泉洋人首相補佐官が、首相の代わりに(?)がキレ気味だった。
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日刊ゲンダイ7月25日

ところで「キレる」という言葉は、シャープな頭の働きにも使う。
「キレる人」と切れ者」はどう違うのであろうか?

概念工作家の村山昇氏は、『「キレ」の思考 「コク」の思考』東洋経済新報社(1211)において、次のように説明している。

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「キレ」の思考は、C(具象)×L(論理)×O(客観)領域を運動の範囲とする思考であり、「コク」の思考は、A(抽象)×I(イメージ)×S(主観)の領域を運動の範囲とする思考である。
⇒2013年1月17日 (木):「キレ」の思考と「コク」の思考/知的生産の方法(28)

つまり、「キレ」の思考は、分析的思考、クリティカル・シンギングであろう。
対して「キレる」は、思考する余裕を失った状態を指すと言える。
表面的には似ているようで、対蹠的な内容である。

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2017年2月14日 (火)

「計画:PLAN」と「実行:DO」/「同じ」と「違う」(104)

ビジネスパーソンにとっては、PDCAサイクルは、マネジメントの1丁目1番地として馴染み深いものだ。
しかし、政治家の場合、そうではないらしい。
アベノミクスと称する経済政策についても、原発を軸とするエネルギー政策についても、破綻、失敗が明らかであるのにも拘わらず、見直そうとしていない。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)

改めて、PDCAサイクルの解説を確認してみよう。

ちょっと小難しいPDCAサイクルを、少し簡単に表現してみましょう。ものすごくざっくり表現します。
P(計画)=これからすることを考える
PDCAサイクルの一つ目。これからすることを、細かく分解して考えます。何をするのか、誰に対してのものか、何故するのか、どれぐらいの量か、いつまでにやるか、いつまで行うか、どのように行うか、誰と行うか、どうなったら良い結果なのか…など、考えると無限に出てきますし、何をするかによっても考える項目は変わってきます。
ちょっと勘の良い人はピンときたはず。「5W1H(=What/Who/Why/When/Where/How)」が基本です。
D(実行)=計画したことを実行する
PDCAサイクルの二つ目。先ほどのPで計画したことを実行にうつします。何かを作るなら作る。身体を使うなら動く。頭で考えるなら考える。
実行で大事なことはふたつ。計画を意識して行動する事と、あとで評価できるように、結果が分かるような仕込みをしておくこと。時間を測るのか、数を数えるのか、日記を書くのか、評価を尋ねられる誰かに声をかけるのか。
C(評価)=結果が良かったか悪かったか判断する
PDCAサイクルの三つ目。実行した結果が望むものだったか、そうでないかを調べて、善し悪しを判断します。この時点では良かったか悪かったかだけを判断します。
判断するうえで、先ほどの実行のときに仕込んだ結果を使います。なので結果は数字のような誰が見ても分かる基準があると良いでしょう。(間違いではないですが)人の意見は、主観であることが多いので、具体性に欠けるので判断するときは気をつけましょう。
A(改善)=見直しをかけて、次の計画に進む
PDCAサイクルの四つ目。善し悪しの判断を元に全体の見直しをします。続けるか、止めるか、ちょっと手直しして続けるか、などです。結果が悪いとしても、結果が出るまで時間がかかると分かっているものはこの段階では「続ける」という見直しになります。
ここで大事なことは、次のP(計画)を意識した見直しをすることです。これがPDCAサイクルのサイクルたる所以でもあります。
PDCAサイクルをすごく簡単に説明します

金田法相の滅茶苦茶な答弁が問題になっている「共謀罪=テロ等準備罪」の1つの焦点は、Pの段階で、逮捕拘留、強制捜査ができるか否かである。
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東京新聞2月1日

PLANを対象にしようというのは、罪刑法定主義的に苦しいのは当然である。
検事出身の民進党山尾志桜里議員の質疑である。

毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 01:18:10   
逢坂議員の質疑までは、総理も大臣も「準備行為が会って初めて処罰される」と言葉を揃えていた。が、総理は「検挙できる」大臣は「逮捕できる」とブレはじめた。 ・罪が成立すること ・成立して処罰をされること ・罪を成立を証明するために捜査をすること、逮捕を含む これらは全く違う概念。           
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 01:24:42   
山尾氏・総理も大臣も「準備行為があって初めて逮捕できる」これが統一見解であると言った。それを実務上の運用でそのようにするという話なのか、法案の中にきちんと書き込むのか、今の段階では答えられない、と。これが実務上の運用という話であれば、これまで廃案になった共謀罪と同じです。
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 01:34:09   
「準備行為の有無」に関して、法の中に条文として盛り込むのか、法運用で対応するのかというのでは、法解釈の範囲に大きな違いが出る。共謀罪の問題は、まさにこの「解釈の範囲」であるのに、これを首相にぶつけても、「現場の人に聞くべきでしょう」と、アサッテな回答。しかも切れ気味で。ナニ切れ?
・・・・・・
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 04:17:31 
山尾氏「総理の指示で明日にでも政令で指定すればいいんです。政令で足りることについて、なぜ共謀罪という法律が必要になると仰るのか」 安倍首相「テロ組織などが秘密裏に開発している薬品に関しては、未知なので指定できない。」(4分間の安倍節を簡潔にした) ⇨未知なるものが立法事実って。
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 05:16:24   
山尾氏「私も一言だけお返ししますね。犯人は何を持っているか予測できない、と。その裏を返せば、これから国民は何を持っていれば逮捕されるか予測できない国家になるということです。そういう危険性をしっかりと踏まえていただきたい。当たり前のことでしょ。」
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 05:41:29
山尾氏「罪刑法定主義について(私たちの見解と)これだけ差があるとは思いませんでした。」苦笑
毛ば部とる子 @kaori_sakai 2017-02-05 05:42:36 
※罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ) ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令(議会制定法を中心とする法体系)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。   
政府が共謀罪が必要と言っている案件は現行法制で全部対処できる(山尾しおり氏)

政権は頭悪すぎなのか、悪いフリしてやり過ごす作戦なのか?
いくらなんでも騙せないだろう。

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2017年2月12日 (日)

「戦闘」と「武力衝突」/「同じ」と「違う」(103)

TPPの国会審議の際、真っ黒に墨の塗られた資料の印象が強く残っている。
⇒2016年4月 8日 (金):秘密のヴェールに包まれたTPPと甘利前大臣/アベノポリシーの危うさ(50)
トランプ大統領が反対している以上、発効の見通しが立たなくなっているが、果たして何が問題になりそうだと、誰が判断したのだろうか。

公開された南スーダン派遣の陸上自衛隊の日報にも墨塗りがある。
⇒2017年2月 8日 (水):不適格大臣列伝(11)稲田朋美防衛相(4)/アベノポリシーの危うさ(130)
それでも「TK射撃含む激しい銃撃戦」の文字などが読める。

昨年10月、ジュバを視察した稲田朋美防衛相はわずか7時間の滞在にもかかわらず「状況は落ち着いている」と述べた。
⇒2016年10月16日 (日):稲田防衛大臣の資質と適性/人間の理解(18)
戦闘があったのか、なかったのか。
改めて国会で質問された稲田氏は、「憲法9条があるから、戦闘という言葉を使ってはいけないので、武力衝突はあったが、法的な意味での戦闘はなかった」と答弁した。

つまり「憲法9条の内容に抵触する事象は発生しているが、そのまま表現すると、憲法9条に違反する可能性があるから、別の言葉を使っている」と言っているのだ。
これを詭弁と言わずして何を詭弁と言うのか?

権力者が自己の都合の良い情報操作をして虚偽の情報を発信することを揶揄して、「大本営発表」と言うことがある。
さも戦況が有利であるかのような虚偽の情報を発表し、印象を変えるための言い換えを行ったのである。
辻田真佐憲『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』 幻冬舎新書(2016年7月)から引用する。
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安倍政権は、安全保障関連法を平和安全法制と、カジノ解禁法を統合型リゾート整備推進法と、共謀罪をテロ等準備罪と言い換えてきた。
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東京新聞2月9日

言葉を変えれば、実態が変わるとでも言うのだろうか。
言霊の作用を全否定するわけではないが、起きている事象の客観的な認識や表現は重要であろう。

情報の価値評価の軸は、質と希少性と言われる。
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質の高い情報と希少な情報 -価値ある情報の創り方

政府が大本営発表と同様の情報操作に走れば、それが自分の判断や行動を縛ることになるだろう。
自縄自縛である。
日本軍は次第に現実を無視した作戦が、現場に押し付けられていった。
神風が吹くと言われ、犬死のように多くの命が奪われたのだ。

稲田氏が頑なになればなる程、防衛省はかつての軍部に似てくるように思われる。
安倍首相の任命責任が問われよう。

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2016年12月26日 (月)

不時着と墜落/「同じ」と「違う」(102)

沖縄県名護市沖で米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが「不時着」した。
米側は「コントロールを失った状況でなく自発的に着水した」と墜落を否定しているが、現実に大破しており、客観的の見れば「墜落」に限りなく近い。
⇒2016年12月15日 (木)::オスプレイ事故と根拠ない安全主張/永続敗戦の構造(7)

「不時着」か「墜落」か。
現実は1つであるが、立場によって見方は変わる。
「地」と「図」があった場合、どちらを「図」とみるかは相対的である。
ゲシュタルト心理学で有名な錯視の絵がある。
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カメラ的日乗3.0

若い娘と見るか、老婆と見るか。
どちらにも見えるが、一度どちらかに見てしまうとなかなかもう一方の見方にならない。
柔軟な見方を失うと、安倍首相のように「裸の王様」になることになる。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

沖縄県は、統計上のカテゴリーを「墜落」とした。
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東京新聞12月18日

「不時着」にしか見えないとすれば、日本政府は「裸の王様」集団である。

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2016年11月19日 (土)

進化と深化/「同じ」と「違う」(101)

安倍首相が17日夕(日本時間18日朝)、米ニューヨークでドナルド・トランプ次期大統領と会談した。
首相が就任前の次期米大統領と会談するのは極めて異例なことだ。
トランプ氏が選挙戦などで環太平洋連携協定(TPP)離脱の意向を示したり、日本に米軍駐留経費の負担増を求めたりしており、しかも官邸はヒラリー勝利を確信していたらしく、大慌てで駆け付けたという感じだ。

そこで早期にトランプ氏の真意を確かめる必要があると判断したという。
首相はトランプ氏を「信頼できる指導者」と評価し、トランプ氏も「素晴らしい友人関係を始められた」との所感を示した。
しかし会談の内容は公開されていない。
トランプ氏の本質はディール(駆け引き)にあると言われている。
就任前のトランプ氏に焦って会うのは足元も見透かされるようなものではないか。

安倍首相の日米の同盟関係を「深化」させたいという気持ちが一刻も早くトランプ氏と絆を築きたいという行動になったのだろう。
しかし、トランプ氏が言ってきた基本的な立場と日本との間には大きな隔たりがある。
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東京新聞11月19日

この懸隔を埋めるためには、高度に戦略的な思考が必要だろう。
日米の関係を安全保障面の同盟「深化」だけを追求するのではなく、他の分野を含めて関係を「進化」させる必要があるだろう。
世界の首脳に先駆けて会談をしたからには、「個人的な」ものとは必ずしも言い切れない。
安倍首相は、会談内容をできる範囲で説明する責務があろう。

特に、日米安全保障条約については、米国に日本防衛義務を、日本には米軍への基地提供義務を課している。
米軍の日本駐留費用は条約上、米政府の全額負担だが、日本政府は支払い義務のある土地の借料などに加え、本来支払わなくてもよい費用を含めて約6000億円を毎年負担している。
特に沖縄の基地負担は偏って重く、県民の意思を無視して高江にヘリパッドを移設する問題は、解決の糸口さえ見えない。
このまま強行すれば、深刻な分断を招くだろう。

安全保障以外にも日米が協力して取り組むべき課題は多い。
核拡散、テロ、地球温暖化、難民、貧困などのグローバルな問題にこそ日米が協力して取り組むべきだろう。
安全保障同盟を深化させるのではなく、多様な関係性を進化させるべきだろう。

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2016年11月15日 (火)

奇蹟と奇跡/「同じ」と「違う」(100)

映画『奇蹟がくれた数式』を観た。
インド生まれの天才的数学者・シュリニヴァーサ・アイヤンガー・ラマヌジャン(Srinivasa Aiyangar Ramanujan)の物語である。
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ラマヌジャンは、1887年12月22日生まれで 1920年4月26日に亡くなったから32年の短い生涯だった。
映画にも描かれているが、次のような逸話が残されている。

ある日、ラマヌジャンの才能を見出した ケンブリッジ大学の数学者Hardy (ハーディ)は、病床のラマヌジャンにこういいました。
「1729はつまらない数字だ。」
ラマヌジャンは飛び起き、
「ハーディ先生、1729は大変面白い数字です。」と反論します。
「1729は3乗数の2つの和として、2通りに表すことができる最小の数です。」
つまりこういうことです。
1729という数字は10の3乗と9の3乗の和でもあり、12の3乗と1の3乗の和でもあるのです。
1729
1729が最小であると即座に判断できるラマヌジャンの天才ぶりが伺える話です。
ハーディは後に伝記の中で「ラマヌジャンはすべての自然数と親友であった」と述べています。
神秘的な数字「12」の謎!インドが生んだ天才数学者ラマヌジャン。

1729はハーディが乗ってきたタクシーのナンバーである。
ラマヌジャンは、インドからケンブリッジ大学に招聘されたが、第1次世界大戦が勃発し、植民地のインド出身だということで、偏見を持たれ差別される。
ハーディは例外的な理解者だったが、敬虔なヒンドゥー教の信者と無神論者のハーディは、宗教的な考え方においてはすれ違う。

証明の重要性を説くハーディに対し、ラマヌジャンは「神の恩寵によってもたらされた」と説明し、それで十分ではないかと言う。
証明など、時間のムダだ。

タイトルの『奇蹟がくれた数式』は、ラマヌジャンの立場を説明している。
「奇跡」が「常識で考えては起こりえない、不思議な出来事・現象」の意味であるのに対し、「奇蹟」は「キリスト教など、宗教で、神の超自然的な働きによって起こる不思議な現象」を意味する。
「週刊新潮」の竹内薫氏のコラムに紹介があった。
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週刊新潮10月13日号

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2016年11月11日 (金)

人脳と人工知能/「同じ」と「違う」(99)

中国語でコンピュータのことを電脳という。
人工知能とは電脳であるが、電脳とヒトの脳(人脳)はどう違うか?

この問題に1つの指針を与えたのが、アラン・チューリングであった。
チューリングが興味を持ったのは、脳の構造と機能であった。
ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに入学して数学を専攻した彼は、1936年に「計算可能な数について原題:On computable numbers, with an application to the Entscheidungsproblem」という論文を書いた。
人間の論理思考を機械に喩えたモデルを考えた。
「チューリング・マシン」と呼ばれるものであるが、これは現在のコンピューターの基本的なアーキテクチャーを決めたと言って良い。
⇒2015年6月18日 (木):チューリングと『イミテーション・ゲーム』/技術論と文明論(27)

1)無限に続くテープ。このテープ上には離散的にデータを書き込んだり読んだりできる領域がある。
またテープは左と右に動く。
2)そのテープ上にデータを書いたり読んだりできる機械。
構成は上記述べた物だけ。あたかも簡単な算盤みたいな物を想像してください。
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アラン・チューリング(1):コンピュータサイエンスの父

現在実用化されているコンピュータは、事実上チューリングとフォン・ノイマンという2人の天才科学者に負っていると言って良い。
チューリングが提案した方法は、2台のチャットシステムを用意し、1台は人間が回答し、もう1台は人工知能が回答する。
複数の人間がチャットを介していくつかの質問を行い、どちらが人間でどちらが人工知能か識別できるかどうかで、人工知能と人脳の判別するということである。
Turingtest
チューリングテスト

囲碁は最高の知能ゲームとして、コンピュータが人間には当分適わないだろうと言われていた。
しかし、グーグルのグループのアルファ碁が、世界最強と言われるイ・セドル九段を下したことが囲碁界を震撼させた。
⇒2016年2月21日 (日):AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)
分野を限定すれば、明らかに電脳(人工知能)は人脳を凌駕している。
それはディープラーニング(深層学習)という手法によってもたらされた。
⇒2016年5月24日 (火):ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)

ロボットいう言葉は、チェコの作家カレル・チャペックが戯曲『R・U・R』(Rossum's Universal Robots:ロッサム世界ロボット製作所)で使ったのが最初である。
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チャペックは、進化したロボットが人間に反乱を企て、掃討するというストーリーを創作した。
⇒2010年5月23日 (日):「恐竜の脳」の話(4)山椒魚
⇒2011年7月28日 (木):小松左京氏を悼む/追悼(13)

チャペックの着眼は、AIの発展を100年ほど先取りしたとも言える。
しかし、フレキシブルに汎用に考えるという点では、未だに人間の方が優位であることは間違いないだろう。

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2016年11月10日 (木)

「鬼十則」と「戦陣訓」/「同じ」と「違う」(98)

電通の新入女性社員・高橋まつりさんが昨年末に自殺したのは、過労が原因であるとして「労災」が認められた。
「電通」に対して、当局が立ち入り検査する事態となり、電通も深夜残業の禁止などの改善策を講じている。
⇒2016年10月18日 (火):電通の光と影/ブランド・企業論(58)

そんな中で、第4代社長が定めた「鬼十則」といわれる規範がやり玉に挙がっている。

 特に電通においては、「過労体質」とも言うべきフィロソフィーが根深く存在していた。それを如実に示しているのが、電通の4代目社長・吉田秀雄によって1951年に作られ、電通の行動指針として伝えられている「鬼十則」である。
「電通」過労死の背後にある「鬼十則」! もはや「KAROSHI」は世界共通語に

女子社員の過労死が報じられた時、私は反射的に「鬼十則」が頭に浮かんだ。
上記記事などのように、根源に「鬼十則」の存在を考えた人は多いのではないかと思う。
同時に、「鬼十則」を「戦陣訓」と同じであると見なす人も多いようである。
戦陣訓は、1941年(昭和16年)、陸軍大臣・東条英機の名の下に出された将兵のための道徳書である。

特に本訓其の二第八の『生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ』は有名で、結果的に全将兵に死を強制する役割を果した。つまり、戦死者は英雄だが、捕虜になることは最大の屈辱であるという価値観の形成だった。捕虜になった者は、「非国民」と非難された。
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1月8日、『戦陣訓』の布告

確かに、多分にファナティックな精神主義への傾斜など、共通性は多いように感じる。
特に第5条などが評判が悪いようだ。

5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。

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東京新聞11月9日

しかし、本質において、ビジネスと戦争は異なる。
電通は企業理念として、「Good Innovation.」を掲げている。
⇒2016年10月30日 (日):電通「鬼十則」の功罪/日本の針路(301)

『その手があったか』と言われるアイデアがある。『そこまでやるか』と言われる技術がある。『そんなことまで』と言われる企業家精神がある。私たちは3つの力でイノベーションをつくる。人へ、社会へ、新たな変化をもたらすイノベーションをつくってゆく。

「Good Innovation.」のためには、自由闊達な風土が重要であり、およそ「戦陣訓」の世界とは遠いと言うべきだろう。

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2016年8月20日 (土)

SaaSとIaaSとPaaS/「同じ」と「違う」(97)

急速に市場が拡大したクラウドコンピューティング・サービスは、「提供対象」によって次のように分けられる。
(1)不特定多数を対象として提供されるパブリッククラウド(public cloud)
(2)同一企業内または共通の目的を有する企業群を対象として提供されるプライベートクラウド(private cloud)
(3)パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて利用するハイブリッドクラウド(hybrid cloud)

クラウド・サービスの代表例がSaaSと呼ばれるものである。
「SaaS」(Software as a Service:「サース」あるいは「サーズ」と発音)は、ソフトウェアをユーザー側に導入するのではなく、ベンダ(プロバイダ)側で稼働し、ソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形態を指す。
このようなサービスを従来はASP(Application Service Provider)と呼んでいた。
SaaSとASPの間に本質的な違いはない。
⇒2012年9月 2日 (日):ASPとSaaS/「同じ」と「違う」(51)

似たような概念にPaaS、IaaSがある。
PaaSは「Platform as a Service」の頭文字を取った略語で「パース」と読む。
アプリケーションソフトが稼動するためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。

IaaSは「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った略語で「イァース」と読む。
情報システムの稼動に必要な仮想サーバをはじめとした機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。
これまでホスティングサービスと言われてきたサービスとほぼ同じである。

IaaS、PaaS、SaaSは、ソフトウェアサービスを提供するのに必要な構成要素の提供段階によって区別することができる。
構成要素は大きく分けて、ネットワーク、ハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーション、の5つである。
基本的にはこの5つはこの逆順に依存関係にある。
アプリケーションはミドルウェアが無いと動作せず、ミドルウェアはOSが無いと動作しない。
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知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い

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