思考技術

2018年11月19日 (月)

自己責任論の起源/世界史の動向(69)

 シリアで拘束されていた安田純平さんが解放され、記者会見をした。
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読売新聞11月3日

日本では、いわゆる「事故責任論」で批判する風潮が根強い。
しかし、紛争地帯で、何がどう行われているかという実態を、誰かが取材して報道しなければ、情報が遮断されたままである。
紛争を無くし、平和を実現するためには、先ずは紛争の実態を知らなければならない。
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毎日新聞11月19日

紛争地帯の取材は公益性の高い仕事と考えるべきである。
紛争は常に拡大していく契機を内蔵している。
誰にとっても、紛争地帯の出来事は無関係ではないのである。

行くか行かないかは、もちろん本人の判断である。
しかし、取材に出かけた人が危険に晒されたら全力で救出する国でありたいと思う。
自己責任論=自分が勝手に行ったんだから税金を使うな、という議論は浅薄である。

いつから日本は利己的なセコイ考えが幅を利かせる国になったのか?
2004年に、イラクで拘束された日本人3人に対して、「自己責任」という言葉が投げかけられ、流行語大賞のトップテン入りした。
「自己責任論」の起源と系譜を検証した『14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?』によると、政治家では、環境相だった小池百合子氏が最初だということだ。

《小池環境相は「(三人は)無謀ではないか。一般的に危ないと言われている所にあえて行くのは自分自身の責任の部分が多い」と指摘した》
・・・・・・
 読売新聞・夕刊(4月16日)の一面トップは「3邦人 あすにも帰国」とある。しかしそのすぐ横は「閣僚から苦言続々」という記事だった。
「自己責任という言葉はきついかも知れないが、そういうことも考えて行動しないといけない。」(河村建夫文部科学相)
「どうぞご自由に行ってください。しかし万が一の時には自分で責任を負ってくださいということだ」(中川昭一経済産業相)
 このほか《「損害賠償を三人に求めるくらいのことがあっていい」との声も》という記載もあった。

救出には税金の投入も含め、全力を挙げるべきだ。

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2018年11月18日 (日)

キログラムの定義の変更/技術論と文明論(119)

「国際度量衡総会」が16日、フランスで開かれ、約130年ブルにキログラムの定義の改定案が可決された。
従来の「国際キログラム原器」と呼ばれる分銅から、光に関する物理定数「プランク定数」を基に定める。
測定技術の進歩などを受けて物理定数を基準にした値になる。
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東京新聞11月18日

「歌は世に連れ、世は歌に連れ」と言われるが、単位もまた、世に連れ変化するのは当然であろう。
従来は、1キログラムは、19世紀末に作られた白金イリジウム合金製の分銅の質量が基準とされてきた。
分銅はパリ郊外の国際度量衡局に厳重に保管されているが、年月とともにわずかに質量が変化していることが判明し、精密な測定に支障が起こる可能性がある。

人工物からより普遍性の高い自然定数に変更されたわけで、必然的な流れと言える。
日本の産業技術総合研究所もシリコン球の測定からプランク定数を求める研究に貢献した。
新しい定義は来年5月から実施される。

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2018年11月17日 (土)

外国人就労拡大の前提データの杜撰/安部政権の命運(11)

ビジネススキルの解説書には、事実(fact)と意見(opinion)を峻別せよ、というようなことが書いてある。
また主張は正しい根拠に基づいて行えともいう。
正しい根拠の第一の要件は、正確性であろう。
その1町目1番地をおろそかにするのは安倍政権だ。

経済界の要請を受けて前のめりになっているのが、外国人の就労拡大である。
介護等の分野では、本当に人手不足が深刻である。
しかしそれは多分に低賃金を余儀なくせざるをえないような制度上の問題であろう。

技能実習ということで来日した外国人を、実習させて技能を習得させるというよりも、安い労働力として考えているのだ。
その劣悪な労働条件に耐えかねて疾走するケースが多い。1811172_3
東京新聞11月17日

そして、その集計データに誤りがあり、適切な判断ができない。1811172_2
東京新聞11月17日

こんなおざなりな調査をもとに法案を出しているのだから舐めて居るとしか言えないだろう。

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2018年11月16日 (金)

凡庸な人が大臣をやる害悪/安部政権の命運(10)

櫻田義孝五輪相のお粗末さが止まらない。
2018年11月11日 (日) お粗末な答弁連発の櫻田義孝五輪相/安部政権の命運(8)

五輪相ということでサイバーセキュリティの担当でもあるのだが、パソコンの経験を問われ、「自分で打つことはない」と答えた。
この答弁を聞いて不安にならない方がおかしいだろう。
海外からも厳しい目が向けられている。
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日刊ゲンダイ11月16日

同紙には音楽家の三枝成彰氏が、ハンナ・アーレントの言葉を引いて、安倍内閣のお粗末な大臣は「凡庸」なだけだと書いている。
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まあ、確かに当選回数がそれなりになっているからという理由で大臣に選ばれたとしか思えない。
任命責任は重大である。

そもそも、今時、パソコンを「打つ」と表現する人も珍しいのではないか?
この人は未だにパソコンを清書するための道具だと思っているのではないか?
パソコンは今や思考のツールと言うべきであろう。
そもそも「書くこと」と「考えること」は密接に関連している。
バーバラ・ミント『考える技術・書く技術-問題解決力を伸ばすピラミッド展開』ダイヤモンド社(新版1999年3月)は、ビジネス書の古典ともいえる。
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セキュリティは重要であるが、不安に感じない政治家はより大きな脅威と言うべきだろう。

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2018年11月15日 (木)

外国人就労拡大と働き方問題/安部政権の命運(9)

政府が外国人労働者の受け入れ枠の上限を提示した。
入管法を改正して新しい在留資格を設けるに際し、受け入れを検討している14業種の受け入れ見込み人数を示したものである。
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介護6万人、外食も5.3万人受け入れへ

私も介護の業界の人と接する機会はあり、現実問題として、日本の新規就労希望者は極端にすくないので外国人に頼らざるを得ないのは良くわかる。
しかし政府の姿勢はあまりにも拙速ではないか。

人手不足の業界は概して待遇が悪い職種であろう。
介護業界は言われているほど低くはないが、「給料が安い」というイメージが定着してしまっている。
せっかく高校生が介護の専門学校へ進学したいと言っても、親や進路担当の教師が反対する事例も多い。

しかし外国人に働いてもらうためには様々な準備が必要である。
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東京新聞11月3日

今回、人数と業種についての数字を示したのだが、いかにもやっつけ仕事の感を免れない。
政府が韓国人徴用工問題について、「徴用工ではなく労働者だ」と強調する姿勢は、たとえ法的に正当性があるにしても、根底に労働する人に対するリスペクトが欠けているのではないか。
それでは同じ轍を踏むことになろう。
2018年11月 3日 (土) 外国人就労拡大と徴用工賠償問題/世界史の動向(67)

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2018年11月14日 (水)

組み合わせの論理(2)ポートフォリオ/知的生産の方法(181)

先日の『ブラタモリ』で有田をやっていた。
有田と言えばもちろん有田焼だが、何といっても柿右衛門であろう。

17世紀前半に、初代が酒井田柿右衛門を名乗り、代々子孫が襲名して当代は15代である。
柿右衛門様式と呼ばれる一目で分かる様式美を生み出した。
花鳥図などを題材として暖色系の色彩で描かれ、非対称で乳白色の余白が豊かな構図である。
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マイセンの磁器に似ているが、影響を受けたのはマイセンの方である。
面白かったというかなるほどと思ったのは、焼き物が市況産業であることから、安定的な売り上げを確保するためにガイシを産業化したという話である。
まさに事業ポートフォリオではなかろうか。

ポートフォリオには、いろいろな意味があるが、金融の世界では、資産(の割合)を一覧化したものを指す。
例えば
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これを会社の事業に応用して
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ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が、キャッシュフローと事業の成長性等を管理する手法としてPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を提唱した。
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各事業は以下のように位置づけられる。
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もちろん有田焼の窯元はPPMの概念がない時代に、共通資源を使った事業組み合わせに辿りついたのである。

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2018年11月13日 (火)

エネルギー政策の混迷/技術論と文明論(118)

9月6日、北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が発生した。
山が崩れた厚真町や札幌市内の液状化の映像は、地震の強さを物語っていた。
特に戦慄を覚えたのは、ブラックアウトという事態が起きたことであろう。
2018年9月 7日 (金) 大規模集中システムのリスク/技術論と文明論(110)

電力は現代生活に欠かせない。
全系統の電源が失われるブラックアウトという事態は、1977年のニューヨーク大停電が有名である。
日本でこれほど広範囲・長期間にわたり発生したのは初めてと言われる。
電力の供給には、発電システムと送電システムが必要であるが、需要にも供給にも変動があるので、需給バランスを調整する蓄電システムも重要である。

発電システムについては、一次エネルギー源の構成をどう考えるべきか?
池内了『科学・技術と現代社会 下 』みすず書房(2014年10月)に、「課外講義Ⅴ 地下資源文明から地上資源文明へ」という項目がある。
地下資源には、石油・石炭を始めとして、ウランなどが含まれる。
地上資源には、太陽光、水力、風力等が含まれる。
端的に言えば、地下資源は使い捨て、地上資源は再生可能である。

地下資源が大規模集中になじみ、地上資源が小規模分散になじむことは明らかである。
そしてブラックアウトが発生したのは、基本的に北海道の電力供給が極端に集中型であったことも明らかであろう。
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東京新聞11月4日

ブラックアウトを教訓とするならば、集中から分散へにシフトを考えるべきである。
しかし泊原発再稼働に必死である。
ネトウヨまで動員したのも如何かとは思うが、動員されたネトウヨが揃って「泊」を「柏」とミスっていたのはお粗末であった。
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2018年9月12日 (水) ネトウヨ的原発推進派のお粗末さ/メルトダウン日本(29)

一方の九州電力では、発電量の過剰を抑えるため、太陽光発電を抑制した。
本末転倒のような気がする。

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2018年11月11日 (日)

お粗末な答弁連発の櫻田義孝五輪相/安部政権の命運(8)

第4次安部内閣は、発足当初から危うい顔ぶれであった。
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日刊ゲンダイ10月4日

安部首相は「いぶし銀」だとか「全員野球」などと言うが、なぜそのポジションに就いたのか基準が不明である。
首相自身が政権発足前の調査では、何を期待するかといいう問いに対して、「首相辞任」が最も多かった。
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日刊ゲンダイ10月2日

中でも、大臣の資質を問われているのが櫻田義孝五輪相である。
自分だけでは質問に答えることができず、毎回事務方がメモを渡すが、そのメモを読み間違えるという体たらくである。
東京五輪の基本コンセプトすら答えられないのだから大臣不適格は明らかである。
しかも、事前に内容を知らされていなかったという苦しい言い訳である。
事前通告もされていたということで発言を撤回したが、予め決まった質疑応答だけならば国会審議など不要というしかない。
まさにポンコツ大臣である。

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2018年11月 9日 (金)

消費税は米製兵器の購入に消えるのか/安部政権の命運(6)

安倍首相が来年10月からの消費税率のアップを改めて宣言した。
消費税を上げれば消費は冷え込むのでそのための対策に躍起である。
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東京新聞10月15日

景気対策を考えるのは結構だが、還元セールは意味が分からないし、プレミアム商品券なども如何なものかと思う。
公明党などは軽減税率を手柄にしたいようだが、滑稽なことが多い。
例えば、コンビニやスーパーなどの軽食などを、店内で食べるか持ち帰るかで、軽減するか否かを区別するという。
しかし、店内の定義などに曖昧さが残り、混乱が予想される。
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東京新聞11月9日

社会保障の増大に対処するために消費税のアップは暗黙の前提のようになっているが、このさい「税の集め方と使い方」について、精細な検討を行うべきではないか。
2013年10月 2日 (水) 消費税増税に大義はあるか?/アベノミクスの危うさ(13)

逆進性の消費税に頼ろうとするから、軽減税率のような不自然な対策を講じなければならなくなる。
大企業の内部留保はかつてなく積みあがっているし、使途もアメリカの言いなりに兵器を買っていては消費税の効果など吹き飛んでしまうだろう。1811013
東京新聞11月1日

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2018年11月 8日 (木)

原子力規制委の存在意義/技術論と文明論(117)

「原則40年」の運転期限が迫る東海第二原発(茨城県)について、原子力規制委員会が20年の運転延長を認めた。
規制委はあくまで技術的な基準との適合性を審査するのであろうが、運転延長を認めるのが妥当な判断と言えるだろうか?
今後20年という期間の変化を見通した結論とは思えない。

先ず第一に、周辺の環境条件の変化である。
東海第二原発の立地は、人口密集地域に変貌している。
万が一の事故の場合、避難は著しく困難だと考えるべきであろう。
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地元は早くも「反対」の声 東海第二原発の運転延長認可

原電は今年3月に、周辺6市村と新たな安全協定を結んだ。
「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」と表記されているが、自治体間で賛否が分かれた場合に再稼働を止められるかどうかが曖昧で、判断が分かれている。
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6市村に事前了解権 拒否権有無で溝

協定の趣旨からすれば1自治体の反対があっても再稼働すべきではないと考えるが、曖昧さは残る。
原電の和智信隆副社長は「拒否権という言葉は新協定の中にはない」と述べているが、一方的な判断だろう。
そもそも老朽原発を、原則を超えて長く動かす正当な理由は何だろうか?

規制委が認めれば20年の延長もできるというルールもは当初の政府の説明通り「極めて限定的なケース」と考えるべきではないか。
東海第二がそのような稀なケースに該当するとは思えない。

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