書籍・雑誌

2017年10月16日 (月)

親安倍のイデオローグ(3)高橋洋一/アベノポリシーの危うさ(307)

大蔵相(財務省)出身の経済学者に高橋洋一嘉悦大学教授がいる。
経済学者としての専門分野は財政学である。
数学科出身であるが、年金数理等に詳しいことがウリになっている。
第一次安倍政権の経済政策のブレーンを務めた。

経歴からしてもう少し骨のある人かと思っていたが、加計疑惑で墓穴を掘った。
私が違和感を持ったのは、安倍晋三首相が5月8日の衆院予算委員会で憲法改正への見解をただされ、「自民党総裁としての考え方は詳しく読売新聞に書いているので、熟読していただければいい」と答えた時である。
この答弁を、高橋氏は「弁えた答弁」と評価した。

なぜ、安倍首相が総理大臣としての立場と自民党総裁の立場を使い分ける必要があるかというと、憲法第99条の関係があるからだ。同条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と書かれている。
安倍首相「『読売』熟読を」の深層 国会で説明しなかった理由

「深層」などと大仰な言葉を使うからよほどのインサイダー情報かと思えば、憲法99条の規定のことである。
首相には憲法遵守義務があるから、自民党総裁として考えを披瀝したということを「弁えた」と評価したらしい。
これほどの形式論理はあるまい。
⇒2017年5月14日 (日):アホな内閣(13)読売新聞を熟読せよ、だと/アベノポリシーの危うさ(207)

高橋氏は、加計疑惑に関して、一貫して政権よりの発言に終始している。
「政権に都合の悪いニュースが出ると、さまざまなメディアに「駆け付け擁護」する有識者の一人として」有名らしいが、国家戦略特区特別委員会の資料にある「民間有識者」の原英史氏が社長を務める「株式会社政策工房」という会社の会長である。
つまり高橋氏は自分の会社を通して加計学園獣医学部の認可問題の関係者そのものである。
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政府の駆けつけ擁護で有名な高橋洋一氏、加計学園獣医学部の認可関係者でした


前川喜平前文科事務次官の発言に関して、「文科省は三流官庁」などと下らないエリート意識丸出しの言い方で批判した。

はっきりいえば、勝負のついた後に、文科省は言い訳を言っているだけにすぎないのだ。「文書」にある「総理の意向」という文言は、文科省側のでっち上げ・口実の可能性さえあると、本コラムでは前から書いている。
いずれにしても、官邸としては文書が発見されたところで何の不都合もないのだ。むしろ文書が見つかれば、これらの経緯が明らかになり、文科省がまともな政策議論ができない「三流官庁」であると分かってしまうことになる。
加計学園問題は、このまま安倍官邸の「圧勝」で終わる

弁護士の郷原信郎氏は次のように書いている。

国家戦略特区によって、不当な規制を正し、新たな事業領域を拡大していくこと自体は、決して間違っていない。しかし、それが、権限を有する側とそれに近い人達の意向に強く影響された場合には、一部の人や組織を優遇する「新たな利権」を生むことになりかねない。それだけに、規制緩和の手続の中立・公正がとりわけ重要である。
加計問題での”防衛線”「挙証責任」「議論終了」論の崩壊

また、安倍首相が、「獣医学部特区を全国展開し、1校でも2校でも認める」と言ったことに関し、ツイッターで「特区は全国展開できればするもの。何がおかしいのか」とフォローした。
しかし安倍首相の発言の文脈は、「1校に限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果 として国民的な疑念を招く⼀因となった」から、全国展開をして2校でも3校でも認めたら良いのではないか、という趣旨である。
獣医師の需要やレベルなど無関係に、自分の疑惑を払拭するためにした発言である。
高橋氏には「何がおかしいのか」分からないのだろう。

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2017年10月 9日 (月)

希望の党の支持基盤としてのB層/日本の針路(342)

劇場型政治が世界を席巻している。
典型はツイッターでの情報発信の余念がないトランプ大統領であろう。
劇場型政治を動かしているのは、いわゆるB層である。
2004年に自民党が広告会社につくらせた企画書に登場した概念であって、郵政民営化戦略に使われた。

日本をダメにしたB層の研究』などの著書がある適菜収氏が、「週刊新潮」10月12日号に「小池劇場に熱狂」しているのがB層であると喝破している。
B層の概念は下図のマトリックスで示される。
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この「B層」が日本の有権者のマジョリティである。
⇒2016年7月23日 (土):有権者のマジョリティはB層/日本の針路(278)
⇒2015年7月 4日 (土):柳の下に二匹目のB層はいるか?/日本の針路(189)
⇒2016年7月26日 (火):マジョリティとしてのB層とヤンキー/日本の針路(280)

私の周りにもB層は多い。
基本的に安倍シンパであり、他人をリスペクトする気持ちに乏しい。
私は民進党解体によって大政翼賛会的状況になだれ込んでいく状況を、恐ろしいような気持ちで眺めている。
そう言えば、ヒトラーと小池氏は似ていると思う。
芸能界と政界を知悉している山東昭子氏は以下のように言う。
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適菜氏のまとめは次のようであった。
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しかし、柳の下に何匹ものドジョウはいないと思う。
小池氏の化けの皮は剥がされつつあるのだ。

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2017年9月25日 (月)

日本の研究力を回復するために・基礎と自由/日本の針路(330)

ここ数年、着実にノーベル賞受賞者を輩出してきた日本も、急速に科学技術論文数の低下が指摘されている。
⇒2017年9月23日 (土):日本の研究力(知的生産力)の低下を憂う/日本の針路(329)
このままでは将来におけるノーベル賞受賞者の激減が心配される。

その要因はいろいろ考えられようが、政策的な影響は無視できない。
国家のリーダーの見識の問題である。
⇒2017年9月13日 (水):安倍首相の教育改革認識/アベノポリシーの危うさ(279)
安倍首相は「人づくり革命」という言葉を掲げながら、その具体策について何の国会論議も行わないまま、衆議院解散だという。
⇒2017年8月18日 (金):改造内閣(4)内閣の基本方針/アベノポリシーの危うさ(278)

重要なことは、安倍首相が強調するような「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」ではなく、基礎力を向上させることではないか。
昨年ノーベル賞を受賞した大隅良典博士は「基礎科学は文化」と喝破している。
⇒2016年10月 3日 (月):大隅良典氏にノーベル医学生理学賞/知的生産の方法(161) ⇒2016年12月 9日 (金):「基礎科学は文化」by大隅良典/知的生産の方法(165)

基礎研究には何が必要か?
日本で初めてノーベル化学賞を受賞した福井謙一博士の理論が生まれる過程を解説した米沢貞次郎、永田親義『ノーベル賞の周辺―福井謙一博士と京都大学の自由な学風』化学同人(1999年10月)は、自由な学風を強調している。
⇒2009年10月10日 (土):プライマリーな独創とセカンダリーな独創

すなわち「基礎と自由」が研究力向上のキーワードと言えよう。
今年のノーベル賞シーズンが近づいてきた。
受賞候補者名もあれこれ論議されている。
もちろんノーベル賞だけが栄誉ではないが、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞以来、科学界が1つの目標にしてきたことは事実である。
「週刊現代」10月7日号が、ノーベル賞候補をノミネートしている。
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石野良純(ゲノム編集)、北川進(多孔性物質)、香取秀俊(光格子時計)、松村安広(ドラッグデリバリーシステム)、吉野彰(リチウム電池)、細野秀雄(鉄系超伝導体)、佐藤勝彦(インフレーション宇宙論)、坂口志文(免疫力)の8人の方が取り上げられている。
この中からノーベル賞受賞者が出るのか、あるいはこの他の研究者が栄誉を得るのか?
ちなみに上記の中で、北川、吉野両氏は、工学部ではあるが、福井謙一博士の学統に属する人である。
「基礎と自由」を重視する「化学における京都学派」である。
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職業教育を重視する学校を否定しないが、高く聳える山作りが決定的に重要だろう。

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2017年9月16日 (土)

サン=テグジュベリ『星の王子さま』/私撰アンソロジー(49)

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サン・テグジュベリ/浅岡夢二訳『星の王子さま』

サハラ砂漠に不時着した飛行機の操縦士が、砂漠で一人の男の子(星の王子さま)に出会う。
王子さまは操縦士に、自分が生まれた星のことや、色々な星を旅したときの話をする。
2人は8日間一緒に過ごし、絆を深める。

Wikipedia:サン=テグジュベリから引用する。

1926年、26歳で作家として本格的にデビューし、寡作ながら以後、自分の飛行士としての体験に基づいた作品を発表。著作は世界中で読まれ、有名パイロットの仲間入りをしたが、仲間のパイロットの間では反感も強かったという。後に敵となるドイツ空軍にも信奉者はおり、サン=テグジュペリが所属する部隊とは戦いたくないと語った兵士もいたという。1939年9月4日、第二次世界大戦で召集され、トゥールーズで飛行教官を務めた。前線への転属を希望したサン=テグジュペリは、伝手を頼り、周囲の反対を押し切る形で転属を実現させる。
・・・・・・
大戦中、亡命先のニューヨークから、自ら志願して再度の実戦勤務で北アフリカ戦線へ赴き、1943年6月に原隊である II/33 部隊(偵察飛行隊)に着任する。新鋭機に対する訓練期間を経て実戦配置されたが、その直後に着陸失敗による機体破損事故を起こし、1943年8月に飛行禁止処分(事実上の除隊処分)を受けてしまう。必死の尽力により復帰を果たすと、爆撃機副操縦士としての着任命令(I/22部隊)を無視する形で、1944年5月、サルデーニャ島アルゲーロ基地に進出していたII/33部隊に戻った。部隊は後にコルシカ島に進出。1944年7月31日、フランス内陸部グルノーブル、シャンベリー、アヌシーを写真偵察のため、ロッキード F-5B(P-38の偵察型)を駆ってボルゴ飛行場から単機で出撃後、地中海上空で行方不明となる。

掲出部分は、「大切なことは、目に見えない……」というフレーズで有名である。
「見える化」という奇妙な言葉が使われているが、人間の情報伝達のほとんどが視覚情報であるから、「目に見えない」ものも、それを「見える」ようにすることも重要だということだろう。

『星の王子さま』は1943年4月に出版された。
子供にも大人にも、それぞれの読み方が可能だろう。
読者に応じた読み方をされるものが古典になる。

また、「使った時間が長ければ長いほど、大切な存在」は、経済学の労働価値説の表現であろうか。
Wikipedia:労働価値説は以下のように説明している。

労働価値説(ろうどうかちせつ、labour theory of value)とは、人間の労働が価値を生み、労働が商品の価値を決めるという理論。アダム・スミス、デヴィッド・リカードを中心とする古典派経済学の基本理論として発展し、カール・マルクスに受け継がれた。

図で示せば以下のようである。
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人間機械と失業 第三次産業革命からみた社会・経済論

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2017年9月15日 (金)

インテンシブとエクステンシブ/「同じ」と「違う」(106)

台風18号が接近している。
「非常に強い」勢力で上陸すれば、24年ぶりのことだという。
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24年ぶり非常に強い上陸?台風18号

台風には「大きさ」と「強さ」がある。

 気象庁は台風のおおよその勢力を示す目安として、下表のように風速(10分間平均)をもとに台風の「大きさ」と「強さ」 を表現します。 「大きさ」は強風域(風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、 「強さ」は最大風速で区分しています。
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台風の大きさと強さ

18号は、「大型」ではなかったが、夜のニュースの時点で大型に発達した。
私は台風の「大きさ」と「強さ」は、学生時代に学んだ「示量変数」と「示強変数」に相当すると思う。

Wikipediaでは次のように説明している。

状態量すなわち状態変数は示量変数 (extensive variable) と示強変数 (intensive variable) の2種類に分けられる。
示量性の定義は文献により、「系全体の量が部分系の量の和に等なること」という定義と「系の大きさ、体積、質量に比例すること」という定義とがある。厳密には前者の性質は相加性、後者の性質は示量性として区別する。均一系の状態量は相加性ならば示量性となるが、部分系ごとにその量の密度が異なる不均一系の場合には相加性であっても示量性とはならない。しかし熱力学では部分系として均一なものを取ることが普通であり、部分系においては相加性と示量性が一致するようにできる。従って、相加性と示量性は区別しない流儀の方が多い。
示量性(相加性)を持たない状態変数を示強変数という。示量性状態量と示強性状態量の中には、体積と圧力のように互いに掛け合わせるとエネルギーの次元をもった示量性の量となるものがある。このような関係を(互いに)共役な関係または双対な関係と言う。

具体例で考えた方が分かりやすい。
比熱と熱容量は次のような関係である。

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このように比熱は物質由来であり質量に依存しないですが、熱容量は物質の質量に依存します。
前者のような質量を始めとした物質の各種の量に依存しないものを示強変数と呼び、
後者のように質量を始めとした物質の各種の量に依存するものを示量変数と呼びます。
電池の知識 比熱と熱容量、電圧と電位、示強変数と示量変数

私の知り合いのやっている英会話学校に、インテンシブコースというのがある。
集中的に叩き込むというイメージである。
私が現代文のお手本と位置づけている掛谷誠氏の「伊谷純一郎『アフリカ紀行』の解説」に、次のような一節がある。

こうしたエクステンシヴな広域調査と、タンガニイカ湖畔の村カソゲでの餌づけによるインテンシヴな調査があいまって、チンパンジー社会における単位集団、自在にそのメンバーが離合集散する社会構造、メスの単位集団間の移籍など、驚くべき実態が明らかにされていった。この調査の過程で、伊谷さんは、チンパンジーの社会がヒトの社会につながるという確信を強め、ヒトについての生態人類学的研究を具体的に展開する構想を育てておられたにちがいない。
⇒2015年4月20日 (月):掛谷誠・「伊谷純一郎『アフリカ紀行』」の解説/私撰アンソロジー(35)

私はこの箇所を目にしたとき、遠い教養部時代の授業を思い出して、懐かしくなった。

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2017年9月 7日 (木)

加計疑惑(47)ルーツとしての加計勉氏/アベノポリシーの危うさ(290)

加計学園の獣医学部新設に関する疑惑について、安倍首相が自ら丁寧な説明をする機会はいつになるだろうか?
獣医学部については白紙撤回によって失地回復を図るというウルトラCも検討されているらしい。
170901
「週刊朝日」9月1日号

まあ、国家戦略特区WGに怪しげな動きも炙り出されつつあるし、いい加減な図面も流出しているので、白紙撤回も一案ということだろう。
1709012
同上

⇒2017年8月21日 (月):加計疑惑(47)獣医学部の設計図面/アベノポリシーの危うさ(279)
⇒2017年8月23日 (水):加計疑惑(49)設計図面の施設レベル/アベノポリシーの危うさ(281)
⇒2017年8月13日 (日):加計疑惑(45)特区WGのいかがわしさ(2)/アベノポリシーの危うさ(276)
⇒2017年8月 7日 (月):加計疑惑(42)特区WGのいかがわしさ/アベノポリシーの危うさ(272)

加計学園はしばらく眠らせておき、米朝の緊張の高まりに乗じて軍事体制を確立した方が得策だと判断してもおかしくはない。
⇒2017年8月15日 (火):再び戦争体制に向かう「母國」/永続敗戦の構造(10)

しかし、加計疑惑は国家運営の基幹に関わる問題である。
決して軽視すべき問題ではないし、水に流して済む問題もない。

ここで、「加計疑惑」について振り返ってみたい。
そもそも加計学園とは如何なる存在か?
「西日本有数の私学」と言われ、約2万人の学生が通う割りには、今まで余り目立った存在ではなかった。
加計学園創立者は、孝太郎氏の父である加計勉氏である。
勉氏は、どのような経緯で学園を創設したのか?

獣医学部の設置主体である岡山理科大は、岡山市「理大町1丁目1番地」にある。
日本三名園の一つとして名高い後楽園の近く、岡山市北区に位置する。
かつて鐘淵紡績の全盛時代には、全国にいくつかの鐘紡町や鐘紡通りがあったが、同様に「理大町1丁目1番地」が示すのは、岡山市における同大学の存在感である。

しかし、加計一族のルーツは岡山県ではなく広島県にある。
加計学園の創設者である加計勉氏は、広島県東広島市安芸津町に1923年(大正12年)3月に生まれた。
安芸津町の北部には加計という地名が残っている。
加計家は、大地主であり名家であることが分かる。

ところが戦後の農地改革で、所有していた土地のほとんどを手放し、現在は本家も分家も取り壊されてしまっている。
勉氏は広島県立忠海中学校(旧制中学。現在の広島県立忠海高校)を卒業後、教員を志し、1941年に広島文理科大学(戦後に広島大学に吸収)附置・広島高等師範学校へ進んだ。
旧制中学への進学者は、現在では有名大学進学者以上のエリートだった。

高等師範学校を修了した勉氏は、姫路工業学校の教を務めていたが、教育召集で福岡県小倉の航空機工場での勤務を命じられた。
目立たない青年が、終戦を機に一変した。
原爆投下により広島は無惨に破壊され、加計家は農地解放で土地を失ったのだから、衝撃は大きかっただろう。

終戦後まもない1946年、広島文理科大学へ入り直すことを決意し、母校に戻る。
大学を卒業後、中学校教諭を経て教育出版事業会社を起業した。
勉氏が通った忠海中学校は、池田勇人氏の母校であった。
勉氏は池田氏の自宅や事務所をたびたび訪れていたが、そうした中で、当時蔵相だった池田氏のもとで秘書官を務めていたエリート大蔵官僚の宮澤喜一氏と親しくなる。

教員を辞して教育出版事業を興した勉氏は、次に大学受験予備校を設立した。
現在も加計学園グループの1つになっている「広島英数学館」である。
さらに、「岡山予備校」を設立して岡山県へ進出した。
かくして岡山理科大創立の足がかりを作ったのである。

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2017年9月 5日 (火)

かかる時かかる首相をいただきて・・・/アベノポリシーの危うさ(288)

北朝鮮が3日、6回目の核実験を行なった。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載できる水素爆弾の実験を成功させたと主張しており、もちろん強く批判されなければならない。1709043
東京新聞9月4日

核兵器は非人道の極であり、いかなる理由があろうとも、いかなる国の保有や使用には反対である。
核兵器の被爆国である日本は、核兵器廃絶の先頭に立つべきである。
しかし、世界の120余国が参加した核兵器禁止条約の参加しなかった。
⇒2017年8月 6日 (日):今こそ、主導して核兵器禁止を前に進めるべきだ/日本の針路(325)

安倍首相は、米朝の緊張緩和に努力すべきなのに、トランプ大統領に追従して、一緒に軍事的緊張を高め続ける姿勢をとってきた。
時事通信によれば、ホワイトハウスが本日書面で発表した日米首脳電話会談の内容には「両首脳は2国間の断固たる相互防衛の約束を確認した」と説明されていたという。他方、日本政府は、核実験後の電話会談で「相互防衛」について話したことを明かしていなかった。

北朝鮮のミサイル発射や核開発に対し、トランプ大統領は「世界史に類をみない炎と怒りで報いを受けるだろう」と発言をエスカレート。そして本来、同盟国の首相としてトランプをなだめ、平和的解決へ向けた交渉の仲介役を買ってでなければならない安倍首相は「私たちもさらなる行動をとっていかなければならないとの認識でトランプ大統領と完全に一致した」などと言って追従するばかり。軍事行動も辞さないとする米国の激昂に同調し、先週のミサイル発射の際も「わが国を飛び越えるミサイル発射という暴挙はこれまでにない深刻かつ重大な脅威」と述べるなど、自ら軍事衝突を煽りに煽っている。たとえばドイツのメルケル首相が「米国と北朝鮮の対立に軍事的な解決策はない」と表明したのとは対照的だ。
 しかも、このタイミングでわざわざ米側と「相互防衛」を確認したということは、仮に米国が軍事行動に出た場合、日本の米軍基地を攻撃の拠点とすることや、海上の米艦隊を自衛隊艦が援護することも、すでに決定しているという見方もできる。いや、北朝鮮からICBMが発射されれば、米国が軍事行動に出る以前に、日本がそのミサイルを迎撃することを約束した可能性もある。当然、北朝鮮が報復として在日米軍基地のある日本の都市を攻撃したり、自衛隊員が米軍と北朝鮮との戦闘に巻き込まれて戦死する可能性も高まっていく。
 これのなにが「抑止力」か。安倍政権が米国に恭順の意を示し、軍事的に一体化した結果、そのために日本が攻撃対象となるのだ。
安倍首相がトランプ大統領と“対北朝鮮戦争”への参加を勝手に約束! 米国との軍事一体化で日本も攻撃対象に

戦後73年目の最大の戦争の危機である。
俳人の長谷川櫂氏は、東日本大震災に際して、菅直人氏が首相であることを次のような短歌に詠んだ。

かかる時かかる首相をいただきてかかる目に遭ふ日本の不幸
⇒2011年7月 3日 (日):長谷川櫂『震災歌集』/私撰アンソロジー(3)

よもや6年後に、より切実な思いでこの歌を想起するとは思わなかった。

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2017年9月 2日 (土)

哲学は言葉だ・中村雄二郎/追悼(111)

哲学者の中村雄二郎さんが、8月26日、老衰のため死去した。
91歳だった。
中村さんは1952年に東京大学大学院を修了。
明治大法学部専任講師を経て専任教授を務め、1996年に退職後、名誉教授となった。

Photo_3 旧制高校まで理系だったが、敗戦の衝撃から哲学を志望した。一九五〇年に東京大哲学科卒。文化放送勤務を経て、哲学に専念。「現代情念論」「感性の覚醒」などで、近代合理主義を内側から乗り越える独自の思索を進めた。
 ミシェル・フーコーら同時代の西洋哲学を参照しながら構造主義やポストモダニズムの最先端の知を論じた。同時に、二十世紀前半の哲学者、西田幾多郎(きたろう)に新たな光を当てた。また「共通感覚論」で知の組み替えを提唱。「魔女ランダ考」などでは演劇、パフォーマンスを巡る斬新な議論を展開した。
 他の著書に「哲学の現在」やベストセラー「術語集」など。
中村雄二郎さん死去 91歳 哲学者「魔女ランダ考」

私は単行本は岩波新書の『術語集』しか読んでいないが、「哲学=考えること」とすれば、哲学にとって言葉は本質的である。
人類史を俯瞰したユヴァリ・ノア・ハラリ『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』河出書房新社((2016年9月)が評判である。
同書によれば、約7万年前の「認知革命」が今日の人類を造り出す出発点だった。
認知革命によって、ヒトはリアルと同じように虚構の世界を生きるようになった。
⇒2017年8月 9日 (水):『母と暮らせば』と『シン・ゴジラ』/戦後史断章(27)

「現実や世界を読み解いていくためのキー・ワード=術語。現在の〈知の組みかえ〉の時代にあって、著者は、記号、コスモロジー、パラダイム等、さまざまな知の領域で使われている代表的な四〇の術語と関連語について、概念の明晰化を試みながらそれを表現の場で生かそうとする。現代思想の本質が把握できる、〈気になることば〉の私家版辞典。」(「BOOK」データベースより)は哲学者の本領といえよう。

代表的な四〇の術語とは、「アイデンティティ」「遊び」「エントロピー」「仮面」「狂気」「差異」「身体」「分裂病」「身体」etc.である。
九鬼周造『「いきの構造」』に比べると、一語の分量が少ない分だけ、読みやすい。
⇒2013年1月27日 (日):『「いき」の構造』に学ぶ概念規定の方法/知的生産の方法(33)

認知することは、概念の獲得である。
言葉に拘ることは哲学の王道と言えよう。
哲学なき政治家が横行している世相を嘆きつつ旅立ったのであろうか。
合掌。

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2017年8月26日 (土)

暗号革命と素数(2)大きな数の素因数分解/知的生産の方法(162)

【2017年7月12日 (水):暗号革命と素数(1)暗号化の基礎/知的生産の方法(161) 】から続く。

因数分解を初めて教わった時、何だか大人の世界の扉が開いたような気がしたことを覚えている。
算数から数学への変化の実感であったのだろうか。
因数分解の素因数分解がある。
正の整数、すなわち自然数を素数の積で表すことである。

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3分でわかる!素因数分解とはなんだろう??

つまり、自然数を素数の因数に分界することであり、素数の因数すなわち素因数である。
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例えば、35=5×7であるから
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自然数は正の整数のことであり、0や負の整数は含まない。Photo_3
中学1年生のガンバレ数学!90点コース

上図のように、0は自然数ではない。
素数とは、約数が1と「その数自身」の2つだけである自然数のことであり、2、3、13などである。
1は約数が1だけなので素数ではない。

12を素因数分解すると、2・2・3になる。
12=3×4であるが、4は素数ではないから素因数分解ではない。
12や35=5・7などの比較的小さな自然数ならば、素因数分解は容易である。

それでは、6887 はどう素因数分解されるだろうか?
2つの素数に分解できるが、簡単には思いつかない。
現在のところ大きな数を素因数分解できる効率的な方法は見つかっていない。
2つの素数 P と Qを掛けて P×Qを求めることは簡単にできるが、逆に掛けた結果の P×Q から P と Qを効率的に求めることは極めて難しいということである。

6887=71×97
であるが、簡単には思いつかない。
この素因数分解の難しいことが、現代の暗号技術の革命の基礎となった。

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2017年8月19日 (土)

表現の自由と共謀罪/日本の針路(326)

私が自主規制の嫌な感じを覚えたのは、さいたま市の公民館が、九条を詠んだ俳句の掲載を拒否した事件であった。
その時連想したのが「新興俳句事件」であたが、自主規制が昂進して他人に対する圧力に転化し、圧力が強制に転化していくことを危惧した。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)

その危惧は、委員会採決を省略するというおよそ「丁寧」の対極のような形で成立した共謀罪(組織的犯罪防止法改悪)であった。
⇒2017年6月15日 (木):共謀罪強行成立という極めて大きな汚点/アベノポリシーの危うさ(233)

今日の「平和の俳句」に次の句が選ばれた。
170819

「三鬼」「不死男」は「新興俳句事件」の犠牲者である。
⇒2007年10月26日 (金):新興俳句弾圧事件…①全体像
⇒2007年11月13日 (火):『群蝶の空』
⇒2007年10月27日 (土):新興俳句弾圧事件…②秋元不死男の「手記」

新興俳句弾圧事件の根拠としては、もちろん1925(大正14」)年に公布された「治安維持法」があるが、1938(昭和13)年4月1日に公布された「国家総動員法」によって増強された。
⇒2007年10月28日 (日):新興俳句弾圧事件…③国家総動員体制

内閣の基本方針の1つに掲げられている「一億総活躍」社会と「国家総動員」体制との類似性を指摘する人もいる。
今日の「平和の俳句」の作者・汲田隆彦さんは、風刺漫画家である。
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東京新聞8月19日

粘り強く共謀罪の廃止を求め、表現の自由が担保されている社会としなければならない。

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