「わからない」という方法・橋本治/追悼(135)
橋本治さんが29日亡くなった。
1948年生まれだから、70歳である。
平均寿命からしたら若過ぎるが、書かれた作品の量・質は十分とも言えよう。
東京都出身で、東京大在学中、学園紛争の渦中で行われた駒場祭で「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」のコピー入りポスターを手掛けた。
コピーライター兼デザイナーであり、デビュー時からクリエイティブ・ディレクターだった。
作家というより文筆家ないしはアーティストという方が適切であろう。
毎日新聞1月30日
エッセーや評論も膨大に残した。95~07年の「ひらがな日本美術史」(全7巻)では仏像や絵巻を大胆に読み解いた。オウム真理教事件を機に執筆した「宗教なんかこわくない!」で96年に新潮学芸賞。02年に「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」で第1回小林秀雄賞。04年、日本人の思考をたどる文化論「上司は思いつきでものを言う」はベストセラーに。短編集「蝶(ちょう)のゆくえ」で05年、柴田錬三郎賞。09年から10年にかけて刊行した「巡礼」「橋」「リア家の人々」は戦後史を市井の人々の人生に重ねた「戦後3部作」と呼ばれた。日本人の心性を探る試みは、18年に野間文芸賞を受けた長編小説「草薙の剣」に結実する。古典芸能にも造詣(ぞうけい)が深く、歌舞伎に関する著書もある。
団塊の世代に属しながら、孤高を守り、独特のシニカルな視点で現代を見つめる作家だった。集団的自衛権や憲法改正などの時事的なニュースを受けて、本紙にたびたび寄稿やインタビューを掲載。政府や有権者にも苦言を呈した。
作家の橋本治さん死去 「とめてくれるな おっかさん」
評判になった「とめてくれるなおっかさん」のポスターは知っていた。
しかし「桃尻娘」で作家としてデビューした頃は違和感が先に立った。
それが先入観に過ぎないことは、『「わからない」という方法』集英社新書(2001年4月)を読んで知った。
私が同感したのは、「なんでも簡単に“そうか、わかった”と言えるような便利な“正解”はもうない」ということであり、「重要なものは、身体と経験と友人で、それがなければ、脳味噌の出番なんかないのである。身体とは「思考の基盤」で、経験とは「たくわえられた思考のデータ」で、友人とは「思考の結果を検証するもの」である」という言葉だった。
私の経験とぴったり合っていた。
もう少し活躍して頂きたかったが病魔には勝てない。
合掌。
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