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2019年1月

2019年1月31日 (木)

統計不正に国政調査権の発動を!/安部政権の命運(56)

統計は調査の基本であり、調査無くしてはインテリジェンスはあり得ない。
勤労統計をめぐる厚労省の対応はお粗末かつ悪質である。1901312_3
毎日新聞1月31日

政権も統計の重要性を理解しているようには思えない。
国会で論戦が始まったが、安倍首相は例のごとく問題に誠実に向き合おうとしていない。
問題意識が著しく希薄な根本大臣に続投させようというのだ。
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毎日新聞1月30日

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「サンデー毎日」2月10日号

こんな無責任でかつ頼りない大臣を任命した責任も当然問われなければならない。
2019年1月27日 (日) 統計不正で根本大臣の責任は?/安部政権の命運(54) 

2018年賃金の伸びを、安倍首相は、アベノミクスの成果だとドヤ顔で説明していた。
しかし実際はほとんどの月がマイナスだった。
専門家の試算によれば、2018年度の実質賃金は大幅ダウンである。190131
東京新聞1月31日

世の中のウソには、「ウソ、大ウソ、統計」の3種類があるという。
31901302
毎日新聞1月30日

「アベノミクスの正体見たり」ということであろ。
2019年1月12日 (土) はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44)
2019年1月23日 (水) アベノミクス偽装としての統計不正/安部政権の命運(51)

粉飾決算が表面化すれば民間企業ならば当然トップは身を退くだろう。
しかも賃金統計の説明に虚偽があったというのだ。1901312_2
東京新聞1月31日

これでは政府への信頼性が薄れる一方だ。
2019年1月25日 (金) 不正統計の隠蔽を隠蔽!?/安部政権の命運(53)
2019年1月20日 (日) 政府統計の信頼性の失墜/安部政権の命運(48)

国会は威信をかけて国政調査権で解明すべきだろう。
2019年1月29日 (火) 今国会が果たすべき役割/安部政権の命運(55)

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2019年1月30日 (水)

「わからない」という方法・橋本治/追悼(135)

橋本治さんが29日亡くなった。
1948年生まれだから、70歳である。
平均寿命からしたら若過ぎるが、書かれた作品の量・質は十分とも言えよう。

東京都出身で、東京大在学中、学園紛争の渦中で行われた駒場祭で「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」のコピー入りポスターを手掛けた。
コピーライター兼デザイナーであり、デビュー時からクリエイティブ・ディレクターだった。
作家というより文筆家ないしはアーティストという方が適切であろう。
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毎日新聞1月30日

 エッセーや評論も膨大に残した。95~07年の「ひらがな日本美術史」(全7巻)では仏像や絵巻を大胆に読み解いた。オウム真理教事件を機に執筆した「宗教なんかこわくない!」で96年に新潮学芸賞。02年に「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」で第1回小林秀雄賞。04年、日本人の思考をたどる文化論「上司は思いつきでものを言う」はベストセラーに。短編集「蝶(ちょう)のゆくえ」で05年、柴田錬三郎賞。09年から10年にかけて刊行した「巡礼」「橋」「リア家の人々」は戦後史を市井の人々の人生に重ねた「戦後3部作」と呼ばれた。日本人の心性を探る試みは、18年に野間文芸賞を受けた長編小説「草薙の剣」に結実する。古典芸能にも造詣(ぞうけい)が深く、歌舞伎に関する著書もある。
 団塊の世代に属しながら、孤高を守り、独特のシニカルな視点で現代を見つめる作家だった。集団的自衛権や憲法改正などの時事的なニュースを受けて、本紙にたびたび寄稿やインタビューを掲載。政府や有権者にも苦言を呈した。
作家の橋本治さん死去 「とめてくれるな おっかさん」

評判になった「とめてくれるなおっかさん」のポスターは知っていた。
しかし「桃尻娘」で作家としてデビューした頃は違和感が先に立った。
それが先入観に過ぎないことは、『「わからない」という方法』集英社新書(2001年4月)を読んで知った。
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私が同感したのは、「なんでも簡単に“そうか、わかった”と言えるような便利な“正解”はもうない」ということであり、「重要なものは、身体と経験と友人で、それがなければ、脳味噌の出番なんかないのである。身体とは「思考の基盤」で、経験とは「たくわえられた思考のデータ」で、友人とは「思考の結果を検証するもの」である」という言葉だった。
私の経験とぴったり合っていた。
もう少し活躍して頂きたかったが病魔には勝てない。
合掌。

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2019年1月29日 (火)

今国会が果たすべき役割/安部政権の命運(55)

1月28日、平成最後の通常国会が始まり、安倍首相の施政方針演説が行われた。
安倍首相は施政方針演説で毎月勤労統計の不正を陳謝したが、形ばかりの陳謝では意味がない。
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毎日新聞1月29日

「5年連続で今世紀最高水準の賃上げ」と自慢していたが、違法な勤労統計の調査が15年間も行われていた。
なおかつ、昨年からはその隠ぺい工作までしていたのである。
2019年1月25日 (金) 不正統計の隠蔽を隠蔽!?/安部政権の命運(53)

安倍首相は、賃金水準が大幅に上昇したように見せかけてきたことには一切触れず、陳謝したのは「厚労省が悪かった」から、ということであろう。
昨年の自民党総裁選挙で、対立候補の石破茂氏が、「正直、公正」を掲げようとしたら、自民党内部から「個人攻撃はやめろ」の声が上がった。

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2018年8月30日 (木) 「モリカケ」疑惑を放置して総裁選か?/メルトダウン日本(20)

石破氏もその声を受け入れたのだから、ビックリである。
自民党は安倍首相が「正直、公正」ではないことを、公然と認めたのだ!
「森友疑惑」における公文書偽造に並ぶ統計不正ではないか。

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2019年1月28日 (月)

日韓関係はどうすべきか/世界史の動向(74)

日韓関係が悪化している。
竹島問題、慰安婦問題「徴用工に関する判決と賠償問題、韓国軍による海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射事件など、事態は深刻化している。
私の周りでも、“嫌韓”が流行である。
「韓国と国交を断絶するべき」などの強硬意見を吐く人もいる。

その気持ちが分からないわけではないが、近隣諸国とは基本的には仲良くしていたい。
歴史的に日韓関係を振り返ってみよう。
「NewsWeek日本版」1月29日号が『世界はこう見る日韓不振』という特集記事を載せている。
その中に「日韓関係100年史」という年表がある。
その冒頭部分をコピーしよう。
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つまり現在の諸問題の起点は、1910年の「大韓帝国併合」である。
「そんなに前のことはもう済んでいる」とか「韓国にとって悪いことではなかった」という意見があるが、戊辰戦争ですら勝者の側からしか考えられない人間には分からないルサンチマンも考慮すべきであろう。

より現在に引き付けて見る。
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司法先導的なように見える。
こうした流れを見ると、日本と韓国の一般世論は、感情的対立に発展しつつあり、両国の関係には改善の兆しが見えないと言わざるを得ないだろう。
しかし感情的に対立しているだけでは生産的ではない。
日韓関係のメリット・デメリットを冷静に見るべきだろう。
管見の範囲では、高村薫さんが「サンデー毎日」2月3日号で、冷静に事態を捉えている。1902032

日本国紀』で評判の百田尚樹より遥かに成熟した見解と言うべきだろう。

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2019年1月27日 (日)

統計不正で根本大臣の責任は?/安部政権の命運(54)

毎月勤労統計」の不正調査問題をめぐり、根本匠厚生労働相は25日午前の閣議後記者会見で、不正に関与した厚労省職員らへの聞き取り調査を一部やり直す方針を表明した。
24日の衆参厚労委員会の閉会中審査では、野党の追及で「身内」による聞き取りや、報告書の素案を厚労省が作っていたことが判明したが、与党からも不正の動機など「肝心な点」が解明されていないとの批判が相次いだ。
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2019年1月25日 (金) 不正統計の隠蔽を隠蔽!?/安部政権の命運(53)

しかし、自民党の森山裕国会対策委員長は26日、鹿児島県鹿屋市で講演し、厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる不正調査について、「今回はさほど大きな問題はないように今のところ思う」と述べた。
自民党国対責任者がこの程度の認識では、次期国会でのさらなる追及は必至だろう。1801272
東京新聞1月27日

再調査するのは当然だとして、根本大臣は当然引責辞任すべきだろうが、安倍政権の閣僚は責任感がマヒしているようだ。

悪いのは官僚か、政治家か?
本経産相官僚の古賀茂明氏は次のように書いている。1902042
「週プレ」2月4日号

統計は政策の基本であり、根拠である。
基本統計の4割が不適正だったという笑えぬ「統計」もあった。
1902043
同上

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2019年1月26日 (土)

日ロ領土問題の経緯と落としどころ/世界史の動向(73)

安倍首相とプーチン大統領が、22日、北方領土問題の解決に向けてモスクワで会談した。
Ws000001
日露首脳、平和条約前進で一致 領土「解決は可能」

両者は交渉継続で一致したというが、膠着状態の打開を目指した日本側の期待からすると、進展はなかったようにも見える。1901242_2
毎日新聞1月24日

そもそも日ロの間で今までどのような合意があったのだろうか。1901233
毎日新聞1月23日た。

最近は余り耳にしなくなったが、「戦後レジーム」の一例と言えよう。
過去稿を再掲する。

8月8日にクレムリンを訪れた佐藤大使に対して、モロトフ外相は、日本がポツダム宣言を拒否したこと、ソ連が連合国から対日参戦を提案されていることを理由に、ソ連がポツダム宣言に参加し、日ソ中立条約を破棄して対日参戦することを伝えた。
ソ連の仲介に一縷の望みを託していた日本は、冷たく突き放されたのだった。佐藤-モロトフ会談の1時間後には、ソビエト極東軍は満州の日本軍への攻撃を開始した。さらに10時間後には、長崎に原爆が投下された。
8月14日に、日本はポツダム宣言を受諾し、これを受けてアメリカは停戦命令を発したが、ソ連は攻撃を緩めることなく、南樺太、千島への侵攻を開始した。ソ連は、北海道の北半分を占領する分割案を提案していたが、アメリカはこれを拒否した。
8月22日、ソ連は北海道分割案を撤回し、部隊を国後・択捉・歯舞・色丹に転戦させ、全千島を占領した。現時点で、どこで戦争を終結すべきだったかを言うのは後知恵というものかも知れないが、最後の何日間かの終戦の遅延が、今日に至る北方領土問題を生みだしたのだとは言えよう。

2007年8月10日 (金) ソ連の対日参戦

私などは、小学校以来、日本の終戦の日は8月15日と教わってきた。
しかし国際法上の終戦は、むしろ1945年9月2日にミズーリ号上で降伏文書に似サインした日という方が正確かも知れない。
調印の日本側代表は重光葵だった。
重光の終戦工作に日本がもっと重点を置いていれば、終戦は早まり犠牲も少なくて済んだはずである。
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2014年8月15日 (金) 重光葵による終戦工作と終戦遅延責任/日本の針路(27)

この8月15日と9月2日の時間差が「北方領土問題」の根底にある。
Wikipesia:北方領土問題に載っている図を示す。Demiskurilsrussian_names

つまり終戦を8月15日だという認識と、9月2日だという認識のギャップである。
それにしても、9月2日以降に占拠された歯舞・色丹はルール違反であろう。

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2019年1月25日 (金)

不正統計の隠蔽を隠蔽!?/安部政権の命運(53)

勤労統計不正の底が抜けた。
毎月勤労統計の不正問題を調査した特別監察委員会は、初会合からわずか5日で公表した報告書で厚生労働省の組織的隠蔽を「認定できない」と結論付けた。
2019年1月23日 (水) アベノミクス偽装としての統計不正/安部政権の命運(51)

 厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」の不正調査問題を審議した24日の衆参両院厚労委員会の閉会中審査で、有識者で作る同省の特別監察委員会が22日に公表した報告書について、一部の調査対象者への聞き取りは同省職員が行っていたことが明らかになった。監察委は設置から1週間で「組織的隠蔽(いんぺい)は認められなかった」と結論付けたが、厚労委員会では与野党双方の議員から、監察委の第三者性や信頼性を疑問視する声が相次いだ。
 根本匠厚労相は両委員会の冒頭、「こうした事態を起こしたことは極めて遺憾であり、国民の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」などと改めて謝罪した。
 同省は調査の中立性や客観性を保つため、弁護士や公認会計士ら有識者をメンバーとする監察委を16日に設置した。同省は昨年12月の問題発覚後から、省内常設の弁護士や職員からなる監察チームで調査し、この調査内容を引き継ぐ形で監察委が設置された。
 監察委は報告書で、監察委と監察チームで延べ69人の職員や元職員に聞き取り調査をしたと説明していたが、同省は24日の厚労委で実人数は37人だったと明らかにした。監察委が対象にした31人のうちの課長補佐以下11人と、監察チームが対象にした6人に対しては同省職員が聞き取りをしていた。また、監察委の報告書の原案は同省の事務方が作成していたことも明らかにした。
 これに対し、野党議員から批判の声が上がった。立憲民主党会派の大串博志衆院議員は「第三者の土台が壊れている。虚偽報告書だ」と述べ、報告書の撤回を求めた。同党の石橋通宏参院議員は「こういうのをお手盛りという。厚労省の内部調査だ」と突き放し、共産党の倉林明子参院議員は「看板だけが第三者だったのでは」と疑問を呈した。根本厚労相は「監察委が最終的な判断をした」などと釈明を繰り返した。
統計不正報告、信頼性揺れ 閉会中審査で身内調査に批判

特別監査委員会(=厚労省)に対する見方は厳しい。2Photo

常識で考えれば、長期間にわたって行われていた不正を、わずか5日間で解明できるはずがないと思うべきだろう。
統計の誤魔化しは最大級のイカサマと考えるべきだ。
2019年1月20日 (日) 政府統計の信頼性の失墜/安部政権の命運(48)

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毎日新聞1月25日

アベノミクスと称する政権の看板政策の効果をアピ-ルしたかったのだろうが、それが裏目に出たということだろう。
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東京新聞1月25日

第三者委員会と言って客観性を装いながら、身内の委員会で早急に幕を引こうと姑息な手段に出るから余計墓穴が広がるのだ。1901252
東京新聞1月25日

主権者が覚醒しないと、泥沼の泥をかき回すだけになるが、公文書偽造に加え、統計の不正の隠蔽をさらに隠蔽するのだから、底が抜けていると考えるべきだ。

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2019年1月24日 (木)

胡散臭さが抜けない馬毛島買収/安部政権の命運(52)

防衛省が鹿児島県の馬毛島を買収することになったという。
島の大半を所有する開発会社から約160億円で買収する契約を結ぶことで大筋合意したと、NHKニュースなどが1月9日に報じた。

馬毛島の位置は下図の通りである。Ws000000

種子島の西方12キロにある約8平方キロの小さな島で、種子島に市役所を置く西之表市に所属している。
最高地点は71メートルと平坦な土地で、マゲシカと呼ばれる野生のシカが生息している。
バブルの頃の「馬毛島事件」で名前を知った。

1974年、平和相互銀行(平和相銀)により馬毛島開発株式会社が設立され、1975年に島ごと買収した。当初はレジャー施設の建設を計画していたが挫折。馬毛島が国の石油備蓄基地の候補地になったことから土地買収が進んだが、石油備蓄基地は鹿児島県志布志湾に決定、志布志国家石油備蓄基地が整備され、島は放置されることとなった。
このあと馬毛島は、日本の無人島の中では北海道の渡島大島に次いで2番目に面積が大きい島とされていた。
1983年、右翼活動家の豊田一夫が、馬毛島の土地を自衛隊の超水平線レーダー用地として防衛庁に売却するという話を平和相銀に持ちかけ、不正経理によって用意させた巨額の資金を政界にばら撒いたとされている。1986年にこの件が馬毛島事件として発覚、経営が悪化していた平和相銀は住友銀行に救済合併された。
馬毛島

在日米軍の空母艦載機訓練の移転候補地として、政府は引き渡しを受けたあと、自衛隊とアメリカ軍が共同で使用できる施設を整備する方針だという。1901162
東京新聞1月16日

しかし無人島に160億円とはいかにも法外である。1901222
東京新聞1月22日

平相以来の胡散臭さが付きまとうし、日本政府が米軍ファーストなのはどんなものだろうか。
素朴な疑問である。

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2019年1月23日 (水)

アベノミクス偽装としての統計不正/安部政権の命運(51)

毎月勤労統計の不正問題を調査した特別監察委員会は、初会合からわずか5日で公表した報告書で厚生労働省の組織的隠蔽を「認定できない」と結論付けた。
問題を審議する24日の衆参両院での閉会中審査を前に幕引きを急ぎたい政府の思惑があるのだろうが、簡単に幕を引くわけにはいかない。

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 根本匠厚労相は二十二日の臨時記者会見で、報告書を受け「しっかり調査していただいた」と強調した。
 報告書によると、一七年冬ごろには局長級の政策統括官が担当室長から不正な抽出調査の報告を受け、修正を指示した後、対応を一任したまま放置。室長は一八年から全数調査に近づける補正処理を部下に指示していた。
 監察委は「法令順守意識が欠如している」と指摘する一方で、「意図的な隠蔽とまでは言えない」との評価を下した。
 だが、省内で担当室長以下が不正を認識しながら対応しなかったのは、紛れもない事実。しかも、決裁権を持っていた上司は監察委の聴取に「統計技術的な問題となる復元(修正)は当然行われると思い込んでいた」と、関与について不自然な話をしている。幹部を含めた組織的な「意図」がなかったと断言はしにくい。
 報告書は抽出調査が始まった〇四年から一一年にかけての統計データの存在が一部確認できないことにも触れた。統計法や公文書管理法が定める保存期間に達していないものもあり、監察委は「不適切」と認定した。
 この点では、資料がなくなった当時の詳しい経緯や廃棄の指示の有無などについては、報告書には書かれていない。意図的な資料廃棄などの疑念は残ったままだ。
統計不正 国会審議前、幕引き急ぐ

組織的な隠蔽がないのか?
「統計法や公文書管理法が定める保存期間に達していないもの」を廃棄するのは組織的隠ぺい以外に何と呼ぶのか?
データ改変ソフトまで用意していたというのに、組織的ではないというのか?
隠蔽でなく過失なのか?
2019年1月11日 (金) 勤労統計の怪/安部政権の命運(42)
2019年1月12日 (土) はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44)
2019年1月20日 (日) 政府統計の信頼性の失墜/安部政権の命運(48)

権力監視をミッションとする田中龍作氏は、次のように書いている。

「賃金上昇、21年ぶり記録的な伸び」。2018年10月7日の夕刊と翌8日の朝刊で新聞各社が一斉に報じた。
 「21年ぶり」などという数字を記者が調べきれるはずがない。各社一斉横並びは、記者クラブメディアが役所の広報を受けて書いた時の常だ。
 きょう国会内であった政府からのヒアリングで官僚出身の野党議員は「厚労省の広報じゃなかったら、各社一斉に同じ内容になるはずがない。(広報した時の)ペーパーが残っているはず」と追及した。
 各社一斉でも報道が正しければよいが、そうではない。拙ジャーナルが21日付けでお伝えしたように、麻生財務大臣が抽出企業のサンプルを変えて賃金が上昇する統計値となるよう暗黙の指示を出していた。
 給料が高い会社を選りすぐって、それほど高くない会社を抽出していた前回の調査と比べる。前年同月比がハネ上がるのは当然だ。
 「21年ぶりの記録的な伸び」という厚労省発表の数字に接した時、記者クラブの記者は変だと思わなかったのか。父ちゃんの給料が記録的に上がっていたら、全国各地に子供食堂が雨後のタケノコのごとくできるか? 母ちゃんがスーパーで第3のビールをまとめ買いするか?
 貧困報道で定評のある西日本新聞はすぐに「この統計はおかしい」と指摘した。
・・・・・・
「賃金上昇、21年ぶり記録的な伸び」。2018年10月7日の夕刊と翌8日の朝刊で新聞各社が一斉に報じた。
 「21年ぶり」などという数字を記者が調べきれるはずがない。各社一斉横並びは、記者クラブメディアが役所の広報を受けて書いた時の常だ。
 きょう国会内であった政府からのヒアリングで官僚出身の野党議員は「厚労省の広報じゃなかったら、各社一斉に同じ内容になるはずがない。(広報した時の)ペーパーが残っているはず」と追及した。
 各社一斉でも報道が正しければよいが、そうではない。拙ジャーナルが21日付けでお伝えしたように、麻生財務大臣が抽出企業のサンプルを変えて賃金が上昇する統計値となるよう暗黙の指示を出していた。
 給料が高い会社を選りすぐって、それほど高くない会社を抽出していた前回の調査と比べる。前年同月比がハネ上がるのは当然だ。
 「21年ぶりの記録的な伸び」という厚労省発表の数字に接した時、記者クラブの記者は変だと思わなかったのか。父ちゃんの給料が記録的に上がっていたら、全国各地に子供食堂が雨後のタケノコのごとくできるか? 母ちゃんがスーパーで第3のビールをまとめ買いするか?

まあ、政府の発表をそのまま垂れ流すメディア(殊にNHK)は、自分のミッションとリテラシーを深く反省すべきであろうが、意図的にフェイクを発表する政権だということを改めて記憶に留めるべきだろう。

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2019年1月22日 (火)

辺野古赤土土砂投入と設計変更/安部政権の命運(50)

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に関し、政府は埋め立て予定区域の一部で確認された軟弱地盤を改良するため、設計計画を変更する方針を決めた。

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 軟弱地盤が確認されたのは、埋め立て予定区域の北東側の部分。沖縄防衛局による2014~16年のボーリング調査で明らかになった。地盤が軟弱だと、飛行場を建設しても地盤沈下の恐れがあるため、防衛省は追加調査に着手した。結果は3月にまとめる予定だ。
 防衛省は昨年末、追加調査の中間報告を国土交通省に提出。政府関係者によると、すでに複数の地点で軟弱地盤が確認されており、軟弱地盤の改良は避けられない状況だという。
 軟弱地盤の改良に伴い、政府は県に計画変更の申請が必要になるが、移設に反対する玉城デニー知事は承認しない考えだ。政府関係者は「県側が変更を承認しなければ、また法廷闘争になるだろう」としており、国は県を相手取って違法確認訴訟などを起こす構えだ。県は現時点で完成まで10年以上かかると見込んでいるが、法廷に持ち込まれれば、さらなる工事の長期化につながるとみられる。
 さらに軟弱地盤を改良するため、総事業費も膨らむ。県の試算では、軟弱地盤の改良費などを含めると、移設工事費は防衛省の当初計画の約10倍、2・5兆円にのぼるとしている。
辺野古工事の設計変更申請へ 軟弱地盤改良で長期化必至

政権の態度は余りにも無責任・不誠実というべきであろう。
沖縄県が埋め立てに慎重な姿勢を取っていたことの理由の1つが軟弱地盤であった。Photo_23

県が設計変更に簡単には同意しないと承知していながら、赤土交じりの土砂投入を続けているのは犯罪的ではなかろうか。
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東京新聞1月22日

直ちに埋め立て工事を中断し、県民投票の実施を待つべきだ。
2019年1月21日 (月) 「嘘つきは戦争の始まり」とNHKの忖度/安部政権の命運(49)

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2019年1月21日 (月)

「嘘つきは戦争の始まり」とNHKの忖度/安部政権の命運(49)

安倍首相の虚言壁が止まらない(昂進している)。
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だけどこの人はいっこうに反省する風には思えない。
それは周辺の「忖度」があることが大きいのではなかろうか。
その筆頭にNHKが挙げられる。

森友事件をスクープしたことでNHKを退職せざる得なくなった相澤冬樹氏が、(安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』文藝春秋(2018年12月) でその一端を明かしている。
2018年12月21日 (金) ゴーン拘留延長不許可と再逮捕/ブランド・企業論(83) 
2018年12月29日 (土) 2018年の回顧(1)/安部政権の命運(37)

そのNHKが垂れ流したのが、で安倍首相の「辺野古のサンゴ移殖」発言である。
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東京新聞1月17日

永田浩三武蔵大学は、「自主自立」と言いながら、権力者に「忖度」してウソを検証することなくそのまま放送するNHKを批判して次のように書く。
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東京新聞1月20日

また、元KHKのスクープ記者・立岩陽一郎氏は、そのまま垂れ流す体質を批判している。
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日刊ゲンダイ1月16日
2019年1月 9日 (水) 辺野古のサンゴは移植されたか?/安部政権の命運(42)

沖縄の県民投票実施を求めて元山という青年がハンストに入っていたが、105時間を経過したところでドクターストップになった。
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投票という民主主義の最も基本的なツールを行使するためにハンストまでしなければならないのか?
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東京新聞1月20日

先日、宝島社が「嘘つきは、戦争の始まり。」という見開き広告を打った。Photo

今年は選挙の年である。
こんな日本でいいのかどうか。

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2019年1月20日 (日)

政府統計の信頼性の失墜/安部政権の命運(48)

勤労統計の杜撰さがクローズアップされている。
2019年1月11日 (金) 勤労統計の怪/安部政権の命運(42)
2019年1月12日 (土) はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44)
2019年1月15日 (火) 事実を見ないで正しい判断はできない/安部政権の命運(46)

しかし当事者の厚労省は、何とか正当化しようと苦しい言い訳を続けている。1901182
東京新聞1月18日

政府統計の怪しさについては、昨年の10月の統計委員会で、日銀の統計について疑義が呈されていた。
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日本経済新聞2018年11月13日

世論調査でも「問題だ」とする回答が86%に上っている。Photo_4

さすがに政権も慌てて収束を図ろうとしているようであるが、膿の根源は政権にあるのだから、簡単に幕を引けないだろう。
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2019年1月19日 (土)

東大安田講堂封鎖解除から50年/戦後史断章(33)

1969年の東大闘争の安田講堂の封鎖解除から50年経つ。
節目ということだからであろうが、雑誌や単行本などで、当時を回顧するようなものが目に付く。
例えば「週刊現代1月19・26日号」には『1969年、ニッポンの青春に逢いに行こう』という特集があって、そこに1969年1月19日の朝日新聞が載っている。Ws000004

社会的に大きな関心を持たれていたから、メディアの扱いも大きかった。
私は関西圏にいたがテレビでリアルタイムで視聴していた記憶がある。
1月18日の毎日新聞では、当時の活動家学生の「今」を好意的に紹介している。501901182

単行本としては、和田英二『東大闘争-50年目のメモランダム』ウェイツ(2018年11月)が目に入った。
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奥付を見ると、和田氏は安田講堂の最後の攻防戦に参加し、1972年に東京高裁で執行猶予付判決を受けた。
ご多聞に漏れず長期拘留だったから、実刑判決と大差ないだろう。
解除した側からの著書として、機動隊の陣頭指揮を執っていた『東大落城-安田講堂攻防七十二時間』文藝春秋(原著1993年、文庫版1996年1月)が多くの読者を得たようであるが、まじめなノンポリ学生が闘争が問いかけた問題を正面から受け止め、ついには籠城・逮捕されて行く内面が、もちろん主観的ではあるが、50年後にできるだけ冷静に回顧したものである。

著名な政治学者・丸山眞男法学部教授が東大全共闘を「ナチもしなかった」と非難したと報じられた事件が当時話題になった。
著者はこの報道の真偽を執拗に追いかけた。
結果的には、世に伝えられる「史実」が危ういものであることを示したものと言えよう。

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2019年1月18日 (金)

英下院EU離脱案を大差で否決/世界史の動向(72)

英下院は、政府と欧州連合(EU)との離脱合意案を大差で否決した。
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毎日新聞1月17日

反対432票、賛成202票で、倍以上の大差である。
離脱案は、かつて紛争があった英領北アイルランドと、地続きのEU加盟国アイルランドとの国境管理をどうするかが決まるまで、英国はEUの関税同盟にとどまる「安全策」を盛り込み、EU側は「安全策は一時的」と強調する文書を出したが、与党保守党内の強硬離脱派が「EUに永久に縛られる」と反発した。
しかし、安倍首相は離脱案を支持すると公言した。Eu

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首相個人の意見ならばともかく、英議会で否決されるであろうことを「全面的に支持」と言ってしまうところが「軽い」のである。

 これらの難しさはプーチンが2016年12月15、16日の長門での安倍晋三との首脳会談後の共同記者会見で、1855年2月7日に伊豆下田で締結された日露和親条約から第2次世界大戦集結までの歴史を紐解き、1905年の日露戦争から「40年後の1945年の戦争の後にソ連はサハリンを取り戻しただけでなく、南クリル諸島も手に入れることができました」との物言いで、このことが最終決着であるかのように発言しているところに現れている。
このプーチンの北方四島を返還する気はない難しさを踏まえるなら、平和条約締結交渉だけではなく、安倍晋三自身が締結の前提とした共同経済活動のための「特別な制度」に関わる議論も難しいことは当然であって、このような難しさを抜きにして、それとは反対の前進させることが可能であるかのように聞こえる言い方を用いたのである。
言葉の軽さは人間の軽さに対応する。相当に人間が軽く出来上がっているように見える。

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2019年1月17日 (木)

東京五輪招致のいかがわしさ/安部政権の命運(47)

いよいよ安倍政権のいかがわしさが全開である。
東京五輪招致のプレゼンにおいて、安倍首相は、福島原発事故について、「状況はコントロールされている」「汚染水は港湾内で完全にブロックされている。健康問題は今もこれからも全く問題ないことを約束する」とスピーチした。
2014年5月17日 (土) 汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)

これがまったくのウソ・虚言であることは、増え続ける汚染水タンクを見ても明らかであろう。
2015年12月 7日 (月) 原発再稼働の前に汚染水統御を/技術論と文明論(36)

もっともこの人の虚言は、先日の辺野古のサンゴ移殖問題でも示された。
2019年1月 9日 (水) 辺野古のサンゴは移植されたか?/安部政権の命運(42)

もはやサイコパスのレベルと言ってよい。
2015年6月 2日 (火) 安倍晋三=サイコパス論/人間の理解(13)

案の定、招致活動に重大な疑義が呈されていることがフランス当局により明らかになった。
竹田恒和JOC会長が弁明のための記者会見会見を開いたが、質問を許さないで切り上げるなど、却って疑惑を深まるだけに終わった。190116
毎日新聞1月16日

まあ弁解しようもなかったのであろう。
これだけ不祥事が重なれば、やけくそになった挙句の国会冒頭解散もあるかも知れない。1901162_2
日刊ゲンダイ1月16日

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2019年1月16日 (水)

人文知の大輪の花・梅原猛/追悼(134)

哲学者の梅原猛さんが12日、肺炎のため亡くなった。
93歳だった。
京都大学文学部を卒業し、長く立命館大学で教育と研究に携わった。
「梅原日本学」と称される独自の日本学を構築し、国際日本文化研究センターの初代会長や日本ペンクラブ会長を務めた。

非合理・理不尽さの体験が、物事を根源から疑う姿勢を生み、大胆な仮説の構築に繋がった。
そのバックグラウンドには戦争体験がある。
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東京新聞1月15日

年譜が読売新聞にまとまっていた。
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「怨霊なしに日本文化論じられず」…梅原猛さん

代表作に『神々の流竄』『隠された十字架ー法隆寺論』『水底の歌ー柿本人麿論』の古代三部作がある。
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私は、高松塚被葬者との関係で、黄泉の王―私見・高松塚』新潮社(1973年6月)を面白く読んだ。
2008年9月21日 (日) 地下の朝賀…梅原猛説
~⇒2008年10月 2日 (木) 高松塚の被葬者は弓削皇子か?…梅原猛説(ⅹⅱ)

専門家から見ると批判すべき点もあろうが、人文知の面白さを社会に広めた功績は大きい。
「人麻呂終焉の地論争」を含め、梅原日本学にもう少し接近したいと思う。
2013年1月 8日 (火) 人麻呂終焉の地論争/やまとの謎(77) 

合掌。

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2019年1月15日 (火)

事実を見ないで正しい判断はできない/安部政権の命運(46)

厚労省が15年前から「毎月勤労統計」のデタラメ調査を行っていた問題では、賃金などが低めに出たため、約2000万人に雇用保険など総額530億円も少なく支給されていた。
2019年1月12日 (土) はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44) 
2019年1月11日 (金) 勤労統計の怪/安部政権の命運(42)

さらに加えて、意図的なデータ改ざんの疑惑が浮上している。
厚労省は昨年、調査結果を統計処理し、賃金額を引き上げているが、ちょうど安倍首相が3%賃上げの「官製春闘」に血眼になっているタイミングだ。
「毎月勤労統計」は500人以上の規模の事業所は全数調査を行うことになっているが、2004年から東京都だけ全数ではなく、3分の1程度の抽出調査を行っていた。
500人以上の企業の賃金は相対的に高いから、そこの2/3が抜けると全体の賃金は押し下げられる。
金額ベースで平均0.6%引き下げられたという。

 ところが昨年、厚労省は抽出した調査結果を全数検査に近づける統計処理をしている。計算上、東京の3分の2も反映するので当然、賃金額はアップする。
「昨年1月以降、0.6~0.7%程度、勤労統計の賃金が上がりました。1月は定期昇給もなく、上がる時期ではなく、私を含め不自然さを指摘してきましたが、今回カラクリが分かった格好です。統計処理をするなら、過去の分も行うか、『今回分は統計処理をした』と断らなければ、純粋に賃金が上がったように見えてしまいます。実際、内閣府は18年の賃金上昇をアベノミクスの成果として喧伝していました」(経済評論家の斎藤満氏)
 安倍首相は14年の春闘から企業に賃上げを求めてきたが、思ったように上がらない。シビレを切らした安倍首相は、18年春闘に向けて、初めて「3%」という具体的な数値目標まで口にした。
「官邸が明確に指示をしたのか、厚労省が“忖度”したのかは分かりません。ただ、首相が数値目標まで掲げる中、厚労省に相当なプレッシャーがかかっていたことは間違いありません。その流れで、18年から勤労統計が統計処理され賃金上昇のデータが公表されていったのです。15年前からの厚労省のデタラメ調査だけでなく、官邸も含めた意図的な統計処理も問題にされなければなりません」(斎藤満氏)
 閉会中審査に自民も前向きだという。ヒアリングで原口一博衆院議員は「安倍首相がいつ知ったのかも重要だ」と語った。
厚労省「毎月勤労統計」デタラメ調査は安倍首相への忖度か

辺野古のサンゴ移植問題でも正確に事態を認識していない。
2019年1月 9日 (水) 辺野古のサンゴは移植されたか?/安部政権の命運(42)
今更ではあるが、正しい判断は、事実の正確な把握から始まる。O_2
2010年9月22日 (水) クリシンはどこへ行った?

しかし、安倍政権の下ではそれは期待する方は間違いのようである。
2019年1月12日 (土) はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44)
2019年1月11日 (金) 勤労統計の怪/安部政権の命運(43)
2019年1月 9日 (水) 辺野古のサンゴは移植されたか?/安部政権の命運(42)

法政大学山口二郎教授は、『事実を直視する』(東京新聞「本音のコラム」欄)で、次のように書いている。
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それでも「支持する」という人の思考回路が分からない。

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2019年1月14日 (月)

辺野古に見る政権の本質/安部政権の命運(45)

政府の無法ぶりが目に余る。
辺野古では玉城知事の「県民投票まで待って」という要請にも拘わらず、辺野古への土砂投入が続けられている。190114_4

東京新聞1月14日

そして自治体に圧力を加え、県民投票不参加を誘導している。
沖縄市、宜野湾市、宮古島市などが不参加を表明しているが、市民の判断を封殺する行為と言えよう。
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東京新聞1月11日

政府の様々な補助金等による揺さぶりである「分割してかつして統治せよ」という植民地支配の古典的方策である。
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2018年9月28日 (金) 沖縄県知事選の政治思想的意味/メルトダウン日本(42)

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しかし県民の間には意思表示の方法の探る運動が続いている。

 政党や沖縄県政与党の県議会会派、企業、労組などでつくる「辺野古埋め立て・新基地建設反対の民意を示す県民投票連絡会」が、県民投票への不参加表明や態度未表明の5市で、住民の意思表示の手段として県条例に基づかない自主投票や模擬投票、ネット投票のほか投票実施を求める署名運動など実施できるか検討していることが12日、関係者への取材で分かった。
県民投票不参加でもあきらめない 自主・模擬・ネット投票や署名運動を検討

物理的な埋め立ては「粛々と」進められても、「心」まで埋め立てることはできないのだ。
2018年12月16日 (日) 心の埋め立てはできない/安部政権の命運(29)

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2019年1月13日 (日)

海外紀行番組の草分け・兼高かおる/追悼(133)

「兼高かおる世界の旅」(TBS系)の案内役として約150カ国を巡った旅行ジャーナリストの兼高(かねたか)かおる(本名兼高ローズ)さんが5日、心不全のため死去した。

90歳だった。葬儀・告別式は近親者で行い、後日「しのぶ会」を開くという。

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 東京の香蘭女学校を出た後、米国のロサンゼルス市立大に留学。帰国後、英字紙でフリー記者として活動した。航空機を乗り継ぎ、世界一周の速さを競うコンテストで約七十三時間の記録を樹立し、有名になった。
 日本人の海外渡航が自由化される前の一九五九年に紀行番組「兼高かおる世界飛び歩き」がスタート。六〇年にタイトルが「世界の旅」となり、海外旅行ブームに先駆けた名物番組として、九〇年まで約三十年間放送された。
 番組出演・ナレーターのほか、ディレクターやプロデューサーも兼務。行動力と語学力を武器に各国で取材、南極や北極も訪れた。スペインの画家ダリやケネディ米大統領、英国のチャールズ皇太子ら著名人とも面会。総移動距離は約七百二十一万キロ、地球百八十周分というテレビ史上例を見ないスケールになった。
 兵庫県淡路市の「兼高かおる旅の資料館」名誉館長や横浜市の「横浜人形の家」初代館長も務めた。著書に「私の好きな世界の街」「スーツケースのティー・タイム」など。菊池寛賞、紫綬褒章などを受けた。
兼高かおるさん死去 90歳「世界の旅」放送30年

まさに草分けであるが、当然だ草分けには草分けの苦労がある。
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毎日新聞1月10日「余禄」

酷使したであろう羽根を休めて安らかに。
合掌。

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2019年1月12日 (土)

はびこる政府統計のウソ/安部政権の命運(44)

政府統計の杜撰(さもしくは積極的なウソ)が続いている。
2019年1月11日 (金) 勤労統計の怪/安部政権の命運(42)

特に「働き方改革国会」と銘打った先の国会はひどかった。
2018年2月27日 (火) 何のための「働き方改革」なのか(6)/日本の針路(381) など

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東京新聞1月12日

根本厚労相は「組織的な隠ぺいではない」と言っているが、ソフトまで用意しているのだから通用しない。
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東京新聞1月10日

竹内薫『統計の9割はウソ』徳間書店(2014年2月)という本があるが、統計以前のウソと言うべきであろう。
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2019年1月11日 (金)

勤労統計の怪/安部政権の命運(43)

厚生労働省の統計調査の不適切問題で、十数年間にわたり、抽出データを全数調査に近づけるための統計上の処理すらしていなかったことが分かった。1901102
東京新聞1月10日

過去の結果が大きく変動し、統計そのものの信頼性が大きく損なわれる恐れが出てきた。
算出方法が変わった昨年1月調査分から賃金が前年同月と比べて高い伸び率を示すようになり、一部のエコノミストなどから疑念の声が上がっていたが、厚労省が同じタイミングで本来の調査手法に近づける補正をしていたことも要因とみられる。

 厚労省によると、調査対象は無作為に抽出した約3万3千事業所。本来、従業員500人以上の大規模事業所はすべてを対象に、5~499人の事業所は抽出で調査が行われている。このうち30~499人の事業所は従来、2~3年に1度全てを入れ替えていた。しかし、政府の経済財政諮問会議などで「入れ替えの際に生じる結果の乖離(かいり)が大きくなる傾向にある」との指摘があり、見直すことになった。
 2020年1月分から、30~499人の事業所は、毎年3分の1ずつ入れ替える方法に変更する。その経過措置として、昨年と今年1月分は2分の1の事業所が入れ替えられる。そして昨年の入れ替え後、現金給与総額は昨年6月に前年同月比3・3%と21年5カ月ぶりの高い伸び率を示すなどした。一方、入れ替えがなかった事業所に絞った調査では、1・3%の伸びにとどまった。
 この点について、昨年9月の総務省の統計委員会で、厚労省は抽出調査から全体を推計する際に用いる、全事業所を対象とする「経済センサス」の最新結果を反映させたためだと説明。センサスで前回より大企業の割合が増え、毎月勤労統計を算出する際の労働者の企業規模別の比率で、給料が高めの大企業の比率が高まったとした。
 だが、厚労省が従業員500人以上の事業所について、東京都分は3分の1しか調査していなかったことが判明。関係者によると、昨年1月調査分から約3倍にして本来の調査対象数に近づける補正を始めた。それまでは抽出した少ない事業所数のまま集計しており、補正でも現金給与総額が押し上げられたとみられる。Ws000001
勤労統計、昨年1月から急変 算出法変更で賃金高い伸び

また、この問題で、この統計を基に算定する雇用保険と労災保険の過少給付総額は各数百億円に上ることが判明した。
厚労省は不適切な調査が始まった2004年にさかのぼり、対象者に不足分を支払う方針を決めた。
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毎日新聞1月11日

「また厚生労働省か!」というのが正直な感想である。
こんな役所の下で、「働き方改革」など実行して日しくない。

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2019年1月10日 (木)

元号と改元と日本建国/やまとの謎(125)

1979年に制定・公布された「元号法」によって、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める」とされた。
いわゆる「一世一元の制」の法制化であり、天皇が譲位される今年は改元の年でもある。
2017年12月 3日 (日) 改元のスケジュール/日本の針路(356)

 安倍晋三首相は4日、三重県伊勢市で年頭記者会見を開き、5月1日の新天皇即位に伴う改元について「国民生活への影響を最小限に抑える観点」から、4月1日に改元の政令を閣議決定した上で事前公表すると正式表明した。今の天皇陛下が政令に署名して公布する方針も示した。民間のシステム改修などを巡る混乱を避けるため、1カ月間の準備期間を設け、国民生活に配慮した。
・・・・・・
 改元発表時期を巡っては、自民党内外の保守派は当初「明治以来の一世一元(天皇1人に元号は一つ)に反する」と事前公表に反発。その後、事前公表容認に転じたが、「天皇と元号の一体不可分性」を維持するため、政令に新天皇が署名して公布することを求めていた。首相は会見で「公布は通常の政令制定の手続きに従って行う」と明言した。

明治以前は、天皇の在位中にも災害など様々な理由によりしばしば改元が行なわれていたし、寛永や慶長のように、新たな天皇が即位しても、元号が変わらない場合もあった
民間のシステム改修などを巡る混乱を避けるため、1カ月間の準備期間を設け、国民生活に配慮」するならば、もっと早く決めるべきであろうが、保守派に配慮したということであろう。

このように、日本の伝統と技術・文明の進歩はしばしば矛盾する。
それを弥縫的にやりくりしてきたのが、まあ「日本の智慧」ということだろう。
憲法9条と自衛隊の関係も、論理で割り切れない部分があるが、今まで何とか弥縫的にやってきたのである。
その矛盾が大きくなって現実とどうしてもフィットしなくなった時、どうするか?
それはケースバイケースというしかない。

ところで、元号はいつから使われたのか?
天皇制を神武にまで遡らせて考えたい三原じゅん子議員らの認識においても、大化以前の元号について言及はしていないと思われる(良くは知らない)。
2015年3月18日 (水) 確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)
現在の歴史教科書では「乙巳の変」で孝徳天皇になって、「大化」の年号が使われたということになっている。

初期の年号については謎が多い。
たまたま書店で手にした日本の元号研究会編『日本の元号』
池田書店(2018年12月)に以下の図がある。
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うまり、最初の元号と次の元号はいずれも孝徳朝であって、次の改元は「朱鳥」である。
天武紀15年(686)7月のことで、その年の9月9日に天武は亡くなっている。
そして朱鳥には、「阿訶美苔利(アカミトリ)」と和訓されているが、年号に和訓は施されないのが通例である。
2008年1月11日 (金) 「朱鳥」改元について

そして、「白雉」と「朱鳥」の間に、「白鳳」「朱雀」という謎の年号がある。
天皇紀で言えば、斉明、天智、弘文、天武であって、白村江の敗戦と壬申の乱という外・内の2つの戦争があって、日本列島が大きく変動した時代である。
この時期こそ、日本建国の本質があるのではないだろうか。

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2019年1月 9日 (水)

辺野古のサンゴは移植されたか?/安部政権の命運(42)

1月6日放送のNHKの日曜討論で、安倍首相が、沖縄・辺野古について、サンゴは移植したと発言した。
これについて、事実ではないと驚きの声が上がっている。
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安倍首相は、日程の都合で事前に話を聞いたとして、その発言を紹介した。

「土砂を投入していくに当たってですね、あそこのサンゴについては、移しております。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたんですが、これは砂をさらってですね、これもしっかりと別の浜に移していくという、環境への負担をなるべく抑える努力もしながら行っているということであります」   
 玉城デニー沖縄県知事は7日、ウソだとする他ユーザーの投稿をリツイートし、こう疑問を投げかけた。
「安倍総理...。それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです」
「辺野古のサンゴ」は本当に移植されたのか 安倍首相発言の真偽、地元に聞いた

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東京新聞1月9日

  沖縄県の水産課は1月7日、J-CASTニュースの取材に対し、絶滅危惧種になっているオキナワハマサンゴについては移植の事実はあると答えた。
   その説明によると、国の沖縄防衛局が埋め立て予定地で9群体を確認しており、県が2018年7月13日に特別採捕許可を出し、7月末ごろに近隣の同様な環境にある海に移植された。許可の条件とされた週2回のモニタリング調査も行われており、最新となる12月25日の調査では、9群体とも生息しているとする写真などでの報告が県にあった。
   埋め立て予定地には、ほかに大小のサンゴ約7万4000群体があると防衛局の調査が出ているが、これらはすべて、現在埋め立てしている辺野古地区ではなく、岬の反対側の大浦湾地区にあるという。
   このうち約4万群体について、県は9月3日、埋め立て承認の撤回で必要性がなくなったと国の申請を不許可にしている。これに対し、防衛局が12月6日に再申請して、19年1月7日現在も審査中だ。
「辺野古のサンゴ」は本当に移植されたのか 安倍首相発言の真偽、地元に聞いた

つまり、埋め立て予定地のすべてでサンゴの移植が終わったわけではない。
安倍首相がどういうブリーフィングを受けたのか分からないが、現時点で「あそこのサンゴについては、移しております」というのは、間違っていると言うべきだろう。

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2019年1月 8日 (火)

人口減少というトレンド/安部政権の命運(41)

安倍首相は、年頭の所感で次のように述べた。

本年は、最大の課題である、少子高齢化の壁に本腰を入れて立ち向かいます。
安倍内閣総理大臣 平成31年 年頭所感

「えっ、本年は?」と聞き返したくなる。
何というお気楽さであろう。
「少子高齢化の壁」は、「本年、本腰を入れ」るのではもう手遅れなのだ。
将来人口は、基本的に、出生率と平均寿命の関数である。
単純であるが、2つとも簡単には変わらない。
中原圭介『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』東洋経済新報社(2018年11月)から引用しよう。
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わが国人口は2008年にピークアウトした。Photo
2010年10月22日 (金) 国勢調査と人口減少社会
2013年8月30日 (金) 人口減少時代と加工貿易/花づな列島復興のためのメモ(254)

それは出生数を死亡数が上回る自然減によるものであり、この先差は必然的に拡大する。
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特に合計特殊出生率のグラフを見れば、「本年、本腰を入れ」るのではどうしようもないことが分かる。
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丙午という迷信から合計特殊出生率がトレンドを逸脱して1.58まで下がったが、1989年にはそれを下回り、「1.57」に下がり大騒ぎした。
2010年11月 4日 (木) 戦後日本における人口転換

今思えば、長閑な時代であり、少なくとも警鐘が発せられたと理解すべきであったが、30年間有効な対策は実行されなかった。

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2019年1月 7日 (月)

どんどん焼き・左義長/やまとの謎(124)

書初めをやっていた時、昔のどんどん焼きの話題になった。
正月に使った門松や注連縄などと一緒に燃やす。
どんどん焼きで、高く舞い上がれば字が上手になると言われていた。
最近は野焼きが禁じられているので、小学校などでやっているようである。
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東京新聞1月6日

ところが東北地方出身者が知らないという。
Wikipediaでは、「どんどん焼き」の項に「この項目では、小麦粉を主体とした日本の焼き物料理について説明しています。正月飾りや書き初めなどを燃やす日本の正月の年中行事については「左義長」をご覧ください。」とある。
左義長の項では以下のように説明されている。

1月14日の夜または1月15日の朝に、刈り取り跡の残る田などに長い竹を3、4本組んで立て、そこにその年飾った門松や注連飾り、書き初めで書いた物を持ち寄って焼く。その火で焼いた餅(三色団子、ヤマボウシの枝に刺した団子等地域によって違いがある)を食べる、また、注連飾りなどの灰を持ち帰り自宅の周囲にまくとその年の病を除くと言われている。また、書き初めを焼いた時に炎が高く上がると字が上達すると言われている。道祖神の祭りとされる地域が多い。
民俗学的な見地からは、門松や注連飾りによって出迎えた歳神を、それらを焼くことによって炎と共に見送る意味があるとされる。お盆にも火を燃やす習俗があるが、こちらは先祖の霊を迎えたり、そののち送り出す民間習俗が仏教と混合したものと考えられている。
とんど(歳徳)、とんど焼き、どんど、どんど焼き、どんどん焼き、どんと焼き、さいと焼きとも言われるが、歳徳神を祭る慣わしが主体であった地域ではそう呼ばれ、出雲方面の風習が発祥であろうと考えられている。とんどを爆竹と当てて記述する文献もある。これは燃やす際に青竹が爆ぜることからつけられた当て字であろう。
子供の祭りとされ、注連飾りなどの回収や組み立てなどを子供が行う。またそれは、小学校などでの子供会(町内会に相当)の行事として、地区ごとに開催される。

ほぼこの通りであった。
「全国で広く見られる」とあったが、「知らない」というのは地域差なのか時代差なのか。

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2019年1月 6日 (日)

アベノミクスという過ち//安部政権の命運(40)

大発会で株式市場が続落した。
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安倍政権終了の予兆であれば吉とすべきであろう。
2018年12月28日 (金) カジノ化する日本/安部政権の命運(36)

 年初の世界の金融市場は波乱のスタートとなった。前日の海外市場で円相場が一時1ドル=104円台を付け、日本で最初の取引となった4日の東京株式市場では、日経平均株価が前年末と比べ一時700円超下落した。
 こうした市場の動揺について全国銀行協会の藤原弘治会長は「リスクシナリオの一つとして織り込んではいたが、蓋然(がいぜん)性は低いと見ていた。サプライズだ」と指摘。クボタの木股昌俊社長は「株価や為替の変動が大きい年との前提で経営せざるを得ない」と厳しい表情を浮かべた。 
不安心理、急速に台頭=市場の動揺「サプライズ」―経済界

いまだにサプライズなどと言っているのは、感受性が鈍磨している証拠ではないか。
アベノミクスというイカサマ経済政策の行き詰まりである。
アベノミクスは新旧3本の矢で説明された。
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日銀が政策見直しを表明してからおよそ2年半経つが、いつまで経っても「道半ば」である。
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東京新聞8月29日
2016年8月30日 (火) いつまでも「道半ば」の経済政策/アベノポリシーの危うさ(95)

「トリクルダウン」という言葉が囃されたが、もう信じている人はいないようだ。
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【アベノミクス失敗?】トリクルダウン理論が崩壊中!
2016年6月11日 (土) トリクルダウンの幻/アベノポリシーの危うさ(79)

状況を見てフィードバックするというマネジメントの基本ができていないのである。
安倍政権のまやかしもそろそろ限界ではないか。

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2019年1月 5日 (土)

原発輸出という過ち/技術論と文明論(120)

原発輸出を成長戦略に据えるという安倍政権の愚策は頓挫した。
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毎日新聞1月4日

自国の原発事故が終息していないのに輸出っしようという発想が不思議である。
2018年12月19日 (水) 成長戦略としての原発輸出の破綻/安部政権の命運(30)

 事故収束作業中の福島第一原発は三月末、3号機の使用済み核燃料プールから核燃料五百六十六体の取り出しが始まり、六月以降に本格化する。当初は一八年十一月の取り出し開始予定だったが、機器類に不具合が頻発したため延期した。
 二月には、2号機の原子炉格納容器内を再調査。溶け落ちた核燃料(デブリ)に機器を接触させ硬さや動かせるかを把握する。一九年度後半に微量のデブリを採取予定だが、本格的な取り出しへの道は険しい。
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原発 東海第二の再稼働、岐路

さすがに経団連の会長を務める中西宏明会長も、この問題では政府と袂を分かつようだ。
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東京新聞1月5日

廃炉には膨大な時間と費用が必要である。
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毎日新聞12月27日

核廃棄物の処理方法も分かっていない。
冷静に考えれば脱原発しか道はないのだ。

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2019年1月 4日 (金)

探究と実践の往還/知的生産の方法(180)

昨年8月に掛谷誠氏の著作集全3巻が完結した。
第3巻は『探究と実践の往還』京都大学学術出版会(2018年8月)である。20190104_094120

主としてアフリカというフィールドで実証的な地域研究を行い、そこから理論を構築していった彼らしいタイトルである。
私には彼の専門領域における業績を紹介する能力はない。
しかし専門外の人間から見ても、彼の書く文章が論理と感性が見事に融合したものであることは理解できるだろう。
2015年4月20日 (月) 掛谷誠・「伊谷純一郎『アフリカ紀行』」の解説/私撰アンソロジー(35)

この第3巻には、「地域」というものについての彼の考え方が収録されている。
彼のフィールドは様々であったが、最終的には「アフリカ」である。
第1章の「アフリカ研究会のころ」は、1963年に京都大学の電気工学科に入学した彼が、ポスターを見て「アフリカ研究会」の存在を知り、飛び込み参加して気分が高揚したことから始まっている。
後に恩師となる伊谷純一郎氏から「これからは電子や電気の時代だから、工学部をやめるのはもったいない」とアドバイスを受けた。
当時は、高度成長期が本格化した頃であって、伊谷氏のアドバイスはもっともなものだった。

その時のことを、特修「掛谷誠追悼」で、田中二郎氏はつぎのように書いている。

彼が人文研をのぞきにきた日の夕方、ちょうど立ち上げたばかりのアフリカ研究会の初めての懇親会が行なわれることになっていた。それを聞いた掛谷は、「いきなりコンパに参加したら駄目でしょうか?」とおそるおそる尋ねたものである。「まだ 組織もなにもしっかり出来上がってない会やから 初めての人が飛び込みで入ってきてもかまいやしないよ。」わたしはそう言って、彼を誘ってコンパ会場に連れて行ったが、それがきっかけとなって掛谷がアフリカの世界にどっぷりとはまってしまうことになったのである。

結局理学部に転学部し、大学院で動物学専攻、自然人類学研究室に入った。
第2章は「座談会 霊長類学・生態人類学・人類進化論」である。
伊谷純一郎氏の白スリー記念賞受賞を祝って、伊谷純一郎・市川光雄・掛谷誠・河合雅雄・西田利貞・米山俊直の諸氏が語り合っている。
今西錦司氏によって始められた京都大学の自然人類学の研究の総括である。
伊谷氏は、今西氏の後を継いで、自然人類学を方向付け、確立された。

その業績を河合雅雄氏は3区分する。
第一の創生期は1948年に始まる霊長類グループの誕生と国内のフィールドで活躍し始めた時期である。
第二期は、モンキーセンターができた1956年以降で、世界に先駆けてプライトマトロジーを確立した時期である。
第三期は、1962年に京都大学に自然人類学講座ができ、1967年に霊長類研究所ができて、類人猿と生態人類学が進展を見た時期である。

掛谷氏は、第三期を実質的に担った1人である。
理学部にいた共通の友人の仲介で、アフリカに行く直前に彼とフィアンセと4人で歓談したような記憶がある。
それが彼と交わした会話が最後となったが、アフリカに赴くいたのは1971年のことだったようで、その頃私はビジネスの世界に入っていたので、もう少し前だったのかも知れない。
先日京都で旧左翼活動家の友人にあってその時がいつだったか確認しようと思ったが覚えていないようであった。
掛谷は新左翼だからなあ、と漏らしたが、活動家ではなく新左翼の方が心情的にフィットしたということだと思う。

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2019年1月 3日 (木)

森下典子『日日是好日』/私撰アンソロジー(55)

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掲出部分は、「まえがき」であるが、「お茶」が「わかる」過程のエッセンスといえよう。
「すぐにわからないもの」の典型例が「お茶」の世界とされているが、それは人生そのものとも考えられる。
森下典子さんは小5の時、親と一緒にフェリーニ監督の『道』を見た。
「ジェルソミーナのテーマ」には聞き覚えがあったが、内容は初めて見たも同然だった。
小5の時にはつまらなかった映画に、胸をかきむしられて、ボロボロ泣いた。

この間の「人生の時間」が彼女を成長させ、成熟させたのである。
その結果、感受性が変容したのである。
私は河上徹太郎の私の詩と真実講談社学芸文庫(0706)の一節を思い出す。

人は、その青春にあたって先ず情熱を注ぐことは、激しい自己鍛錬によって自分の感受性の形式を確定することである。そしてこの形式の独自性の中に、初めてその人の個性とか資質と呼ぶべきものが芽生えるのだという風に私は考えている。

激しい自己鍛錬かどうかは別として、人は「人生の時間」の中で、否応なく「自分の感受性の形式」を変容させて行く。
意識的に行われる場合「修行」である。
「お茶」の稽古も、継続して行えば「修行」であろう。
そこ結果、境地が変わり、見えるものが変わるのだ。
比喩的に言えば、高みに至り、俯瞰できるようになって見える視野が広がるのだ。

結果として、季節を感じるもが増え、自分を見る自分を意識できるようになる。Photo

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2019年1月 2日 (水)

『日日是好日と「分かる」ということ/知的生産の方法(182)

年末に近くのシネコンで『日日是好日』を観た。20190101_090716

私自身はまったく縁がない「お茶」の世界を淡々と描いた佳作である。
原作は森下典子さんの人気エッセイ『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15の幸せ』新潮文庫(2008年11月)である。
映画館の帰りにシネコンと同じショッピング・モールにある書店で買ったら、2018年11月で32刷だった。

主役の「典子」役は、『西郷どん』の妻役を演じた黒木華である。
私はそんなに映画好きということでもないが、彼女の出た「草原の椅子」「舟を編む」「小さいおうち」などを観ている。
いずれも印象に残っており、実力派の証明であろう。
「お茶」の先生役の「武田のおばさん」を演じているのが樹木希林である。
昨年『万引き家族』でカンヌ映画祭でパルムドールに選ばれたが、9月に亡くなっているので、これが遺作ということだろう。
2018年6月11日 (月) 『万引き家族』の評価を巡って/ABEXIT(49)
監督の大森立嗣氏は、大駱駝艦を率いた麿赤児氏の長男である。
大駱駝艦の舞台を観る機会は無かったが、前衛的なものというイメージである。
『日日是好日』の和の世界とは対照的なような印象だが、芸術家のDNAであろうか?
『日日是好日』で印象的だったのは「お茶」が(というよりも「和の世界」一般というべきだろうが)、季節の移ろいと密接に関連していることであった。
 
季節を分ける言葉は、四季や月など数多い。
映画では二十四節季の区分が随所に出てくる。
立春、雨水、啓蟄・・・である。
二十四節季は日常生活でも頻繁に登場するが、それぞれをさらに3分した七十二候についてはほとんど日常性がない。
 
さらに多様に季節感を表現するものとして、俳句の季語がある。
「プレバト」の夏井いつき氏のコメントでも、季語の豊富さが俳人の生命線であることが理解できる。
また「名人」「特待生」のタレントが必死で季語を勉強し、自分の言いたいことに相応しい季語を歳時記から引き出そうとしている。
 
この季節を細分することが、和の世界の本質ではなかろうか。
『日日是好日』に「世の中には「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある。」という言葉がある。
「すぐにはわからないもの」とは、「行ったり来たりするうちに、少しずつじわじわとわかりだし、「別もの」に変わって行く」ものである。
 
それは我々が全体の部分にしか触れ得ていないからである。
ニュートンの言葉を援用して、「知れば知るほど分からないことが増える」現象について考えたことがある。

I was like a boy playing on the sea-shore, and diverting myself now and then finding a smoother pebble or a prettier shell than ordinary, whilst the great ocean of truth lay undiscoverd before me.
発見されないままで拡がっている真理の大海、それを前にして、私は浜辺で、より美しい貝殻や、より滑らかな小石をあちこちさがして楽しんでいる子供のようなものだ。

blogs.yahoo.co.jp/tobetobetigers/52618191.html

ニュートンのこの言葉は、「より多く知っている人は、自分がいかに知らないかということを知っている」という真理を示した言葉であ2る。
自分が知らないことがある、という自覚(=問題意識)こそ、探究心を動かすエンジンということでもあろう。

ところで、新しく何かについて知るということは、この既知の小島の領域が拡大することである(図A→図B)。
つまり島の面積が広がるわけであるが、そうすると、当然海岸線も延伸することになる。
つまり、「未知」を意識するゾーンが拡大するというわけで、「知れば知るほど、知らないことが増える」というのは、こういうようなメカニズムではないかと考えられる。
つまり、好奇心は自己増殖するということだ。
2008年8月 8日 (金) 2年目を迎えて

それが自律的学習のメカニズムである。
「分ける」ことは「分かる」ことであり、「分かる」ことは「分ける」ことである。
細やかに季節の移ろいを「分ける」ことは、「和の世界」を理解するための前提条件といえよう。

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2019年1月 1日 (火)

Happy New Year

恙なく新年を迎えることができました。
ちょっと雲が多いですが、日中は晴れると思います。20190101_071332

今年は新しい元号になります。
平成の30年をどう総括するか、明治以降の歴史の中で考えて見たいと思います。

今年の 皆様のご健勝とご多幸を祈念します。
初日の出に負けないように、爽やかにおおらかに1年を過ごせることを願っています。
本年もよろしくお願いします。

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