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2018年11月 3日 (土)

外国人就労拡大と徴用工賠償問題/世界史の動向(67)

政府が外国人就労を拡大することを閣議決定した。
介護職などの人不足は深刻であり、現実問題として外国人は必須化している。
そのため、介護福祉士養成校などは軒並み外国人を就学させる体制を拡大している。181015
日本経済新聞10月15日

主として東南アジアやネパールなどの出身者が多いが、概して向上心がありまじめに仕事に取り組むので、施設や利用者の評価も高い。
優秀な人材が流入することは基本的に好ましいことであろう。
しかし政府の対応はいかにもご都合主義と言うべきである。

人手不足を言われている業界はいわゆる3K(危険、汚い、給料が安い)職場である。
先ずは待遇改善を図らなければ、外国人による充当は一時的な弥縫策でしかない。
拙速に人材拡大策に走れば将来の禍根は必至である。
折しも、韓国最高裁が元徴用工裁判で原告の請求権を認め、新日鉄住金に賠償を求める判決を出した。
1810312
毎日新聞10月31日

日本政府は、元徴用工の対日賠償請求権問題に関しては1965年の日韓国交正常化に伴って結ばれた請求権協定で「完全かつ最終的に解決した」ことを確認している。
今回の判決はこの政府の立場と齟齬を来す。

私の周辺にいるネトウヨ的傾向の人たちは一斉に「韓国人は約束が守れないのか」と嫌韓感情をあからさまにしている。

 ただ、日本政府は国会答弁で、個人が賠償を求める「請求権」自体は残っているとも説明してきた。個人が賠償を求めて提訴はできるが、日本側には賠償責任はない、との考え方だった。
 韓国の政府、司法も同じ解釈を取っていた。ところが韓国大法院(最高裁)が二〇一二年五月、元徴用工の請求権を初めて認める高裁差し戻し判決を言い渡し、問題が再燃した。
 この日の判決も、「賠償請求権は、協定には含まれない」と踏み込んでおり、日本側からは、請求権協定を否定したものだとの批判が出ている。

安倍首相も、もちろん賠償請求権問題は「完全かつ最終的に解決した」立場である。1811022
東京新聞11月2日

しかし孫崎亨氏の言葉を借りれば、「韓国が条約守らないと大騒ぎの日本国民は、今日本政府が沖縄に何をしているかを直視したらいい。法律に基づく埋め立て承認撤回処分の効力を、本来政府の行為から国民を救済する行政不服審査法を使ってその効力を剥奪する、限りなく恥ずかしい行為から目そらすな」ではなかろうか。

元徴用工による裁判は新日鉄住金、三菱重工業など約70社を相手取って計15件、原告は千人近くになる。
その背景に、過酷な環境で強制的に働かされ、謝罪されていないという思いがあるだろう。
安倍首相が、「募集に応じた」と強調するのは、下世話に言えば、強姦を訴えられて「合意の上(和姦)だ」と言っているのと似ている。
被害者に対する想像力や相手に対するリスペクトを欠いては判断を誤る。

この問題は日韓固有の問題ではなく、植民地が当然だとされていた時代の世界の後遺症とでもいうべき性格を持っている。1811022_2
東京新聞11月2日

沖縄に対する処遇を見ていると、まるで植民地かという感じである。
2018年9月28日 (金) 沖縄県知事選の政治思想的意味/メルトダウン日本(42)
先ずは、反省すべき点を謙虚に反省し、いたずらに法的正当性を主張するのではなく、冷静に原告と被告企業が折り合える着地点を探るべきではなかろうか。

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