破滅文士型コラムニスト・勝谷誠彦/追悼(133)
コラムニストの勝谷誠彦さんが亡くなった。
57歳で、肝不全だった。
兵庫県尼崎市の開業医の家に生まれ、灘中・灘高を経て、早稲田大学第一文学部を卒業、文藝春秋社に入社。
退社後、フリーランサーとして活動した。
東京新聞11月29日
昨年の兵庫県知事選の出馬し、固い地盤を持つ現職の井田敏三氏に敗れたものの、65万票近くを獲得している。
今年8月21日に、激しい腰痛に襲われ、そのまま入院した。
劇症肝炎という病名だったが、アル中であり、入院中から隠れて飲酒していたらしい。
辛口で攻撃的な文章が多かったが、根は繊細な精神の持ち主だったはずである。
『いつか旅するひとへ』潮出版社(9808)という本を読んだとき、テレビでの印象とは異なり、フラジャイルな人だと感じた。
⇒2007年9月 2日 (日) 偽装国家
なお、『偽装国家―日本を覆う利権談合共産主義 』扶桑社(0703)という著書があり、何よりも偽装を侮蔑・嫌悪してきたはずの人が、「偽装国家」の元締めともいうべき安倍晋三首相とは意気投合していたようで、不可解である。
⇒2018年9月 3日 (月) 公文書管理と偽装国家の本領/メルトダウン日本(24)
政治的には右翼的な発言が多いが、田中康夫氏が当選した長野県知事選では田中氏を応援した。
⇒2010年8月 9日 (月) 長野県知事選をめぐる感想
市民派的感覚も持ち合わせていた。
灘中へ進学するほどだから、小学生時代は成績優秀だったはずである。
灘高時代の同級生に精神科医の和田秀樹氏、イスラム学者のハッサン中田氏等がいる。
東大も受験して失敗しているというから、コンプレックスを内蔵していたのかも知れない。
早稲田一文の同期生だった森谷明子さんと一時期結婚していた。
⇒2017年7月 7日 (金) 森谷明子『春や春』/私撰アンソロジー(48)
なお作家の小川洋子さんも同期である。⇒2014年2月 4日 (火):小川洋子『博士の愛した数式』/私撰アンソロジー(31)
早稲田一文というのは、作家・モノ書きの集まる学部だが、この学年は特に傑出していたと言えよう。
才能を評価する鑑識眼は一流だっただろうから、コンプレックスに輪をかけたのかも知れない。
最近はめっきり少なくなった太宰治や田中英光などと似ている破滅型文士と言えるが、天賦の才を破滅させたのは、自分に対する「甘え」ではないだろうか。
入院中も飲酒を断てなかったことが証明している。
天国ではきっぱりと断酒して才能を発揮されることを。
合掌。
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