火山リスクの社会的通念とは?/メルトダウン日本(52)
広島高裁の三木昌之裁判長は、伊方原発の火山リスクについて、「破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない」とした。
その前提は、「日本では1万年に1度程度とされる「破局的噴火」について、発生頻度は著しく小さく、国が具体的対策を策定しようという動きも認められない。国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」というものである。
しかし、「阿蘇カルデラ(阿蘇山、熊本県)の破局的噴火について社会通念上、想定する必要がない」とした広島高裁の判断は妥当だろうか?
⇒2018年9月30日 (日) 火山リスクと伊方原発稼働/技術論と文明論(112)
自然災害に関する「社会通念」というものがあったとして、東日本大震災のような被害想定は「社会通念」の範囲内なのであろうか?
あるいは、日本の代表的名山である富士山について、どの程度の知見が得られているのであろうか?
日本経済新聞10月11日
富士山のように知名されている火山ですら未知の噴火がある可能性があるというのだ。
産総研の『湖底堆積物から探る富士山の噴火史-本栖湖に残されていた未知の噴火の発見-』と題する10月10日付の報文を見てみよう。
秋田大学大学院国際資源学研究科のStephen Obrochta(スティーブン オブラクタ)准教授および東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授らの研究グループは、国際共同研究「QuakeRecNankaiプロジェクト」(代表機関:ゲント大学、日本側パートナー機関:東京大学・産業技術総合研究所)で行われた富士五湖での科学掘削により本栖湖で初めて得られた4 mの連続コア試料を、詳細に分析・年代測定しました。それにより、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元しました。欠落のないコア試料で堆積年代を細かく調べることで、噴火の詳しい時期の特定、陸上で得られている火山灰の分布の見直しを行うことができ、未知の2回の噴火の発見がありました。富士山は噴火した場合の社会的影響が非常に危惧される火山であることから、本研究は、将来の噴火や災害の予測をする上で重要な成果となるものです。
火山列島と言われているが、火山の挙動について、未だ知られていない現象が多いのである。
そういう状態であるにも関わらず、「社会通念」を根拠に安全性を評価するのは無謀と言うべきである。
東京新聞10月6日
我々は、石黒耀『死都日本』のメッセージをもっと理解すべきであろう。
⇒2016年4月27日 (水) 石黒耀『死都日本』/私撰アンソロジー(43)
霧島火山の下に眠る加久藤カルデラが30万年ぶりに巨大噴火(破局的噴火)し、南九州は火砕流に飲み込まれて壊滅する、というストーリーであるが、熊本地震で注目された。
⇒2016年4月15日 (金) 熊本の地震と『死都日本』のメッセージ/技術論と文明論(48)
阿蘇カルデラが10年以内に破局的噴火を起こさないという保証などないのだ。
⇒2016年10月 9日 (日) 巨大噴火リスクにどう備えるか/技術論と文明論(77)
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