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2018年10月

2018年10月31日 (水)

自国第一主義の拡散と立ち込める暗雲/世界史の動向(66)

ブラジルで28日、現職テメル氏の任期満了に伴う大統領選の決選投票が実施され、ジャイル・ボルソナロ下院議員(63)が左派フェルナンド・アダジ元教育相(55)を破り、初当選を果たした。
ボルソナロ氏は、1955年ブラジル南部サンパウロ州カンピナス生まれで、1977年アグリャス・ネグラス陸軍士官学校を卒業した。
リオデジャネイロ市議を経て、1991~2018年下院議員を務めた。
軍事政権時代の称賛や差別的な言動など、過激な発言で「ブラジルのトランプ」と呼ばれている。
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日本経済新聞10月30日

中国、ロシアなどと共に新興5カ国(BRICS)の一角を占める南米の大国ブラジルにもポピュリスト(大衆迎合政治家)の指導者が誕生することになる。
一方、ドイツではヘッセン州議会選挙での大敗の結果、メルケル首相が党首を辞任すると伝えられている。
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東京新聞10月30日

ドイツはEUのかなめであるが、メルケルの与党党首辞任により、求心力は弱まるであろう。
世界的に中道退潮の様相である。
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日本経済新聞10月31日

世界は対立の時代に入ったのだろうか?

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2018年10月30日 (火)

高市早苗議運委員長の国会改革案/安部政権の命運(2)

国会論戦が始まった。
しかし 高市早苗議院運営委員長(自民)の国会改革案に野党が「勝手な提案だ」などと反発し、29日の衆院本会議が開会が予定より45分遅れるという事態となった。
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東京新聞10月30日

勝谷誠彦氏に『バカが国家をやっている』扶桑社(2008年10月)という著書があるが、安部首相のお気に入りには、どうしてこういう人間が多いのだろうか。
結局は撤回したのだが、高市氏の「改革私案」はとても国会議員によるものとは思えない。
三権分立の基本さえわきまえていないのではないか。

国会改革の必要性は当然あるだろう。
しかし臨時国会の冒頭で、衆議院の議事進行を担う議院運営委員会の委員長名で私案を出すというのは如何なものか。
高市議員は謝罪時のコメントで、私的な提案であった旨を発言している。
「私案」を議院運営委員会にぶつけているわけで、野党が反発するのも当然だろう。
高市議員が個人的に国会改革案を提案するのであればともかく、議院運営委員会委員長名で国会改革案を出したのである。

高市議員は総務大臣に抜擢されるなど、安倍総理の覚えも目出度い議院の一人である。
重要なポストに抜擢され舞い上がっていたのかも知れないが国会運営に不安を覚える。
代表質問の様子は以下のように報じられている。
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東京新聞10月30日

まさに『バカが国家をやっている』ではないだろうか。

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2018年10月29日 (月)

風力発電の可能性/技術論と文明論(116)

有限の地下資源に依存する文明から、持続可能な資源へのシフトが急そがれる。
2015年1月29日 (木) 「地上資源文明」の可能性/技術論と文明論(15) 
東日本震災からの復興は、再生可能資源を軸に進められるべきであろう。
⇒2011年3月22日 (火):津々浦々の復興に立ち向かう文明史的な構想力を

その観点からすれば、政府が東京電力福島第一原発事故からの復興の象徴にしようと福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設はの意図は理解出来る。
四方を海に囲まれていつ日本は特に洋上発電が向いているだろう。
中でも浮体式である。

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次世代電源の柱となるか 「浮体式」風力に熱視線

ところが 政府が東京電力福島第一原発事故からの復興の象徴にしようと福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設3基のうち、世界最大級の直径167メートルの風車を持つ1基を、採算が見込めないため撤去する方向であるという。
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東京新聞10月27日

しかし浮体式洋上風力発電そのものはギブアップするべきではないだろう。
短期的な利益にありつこうとするからうまくいかないのだ。
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同上

功を焦らず地道に地に足をつけた開発を期待する。

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2018年10月28日 (日)

片山さつき地方創生相は政権の命取りか?/安部政権の命運

安倍改造内閣の紅一点・片山さつき地方創生相が週刊誌の攻撃にさらされている。
発端は、10月18日発売の「週刊文春」誌が、片山氏の国税庁に対する口利き疑惑を報道したことだ。
2018年10月20日 (土) 火種の閣僚&自民党役員(3)片山さつき地方創生相/メルトダウン日本(58)

片山氏は、気象庁が異例の警戒を呼び掛ける中で行われていた自民党の飲み会で、はしゃいでいた様子を自らツイッターで拡散した張本人である。Photo

疑惑に対して、片山氏は「今、法廷闘争中なので余計なことはしゃべれません。弁護士に言われています」と言っているが、自分が訴訟を提起していながらこういうのは、逃げの常套文句であることは大方の人が知っている。

「週刊文春」の記事に対し、片山氏は会見で「100万円については関知しない」と語っているが、10月25日発売号では、片山氏と社長が直接やり取りしていたことを報道している。「(片山氏が社長に)『じゃあお金を返せば、それでいいんですか』などとやり取りしていました」という事務所関係者の証言なども掲載している。
しかも、ライバルの「週刊新潮」誌も参戦した。
やりたい放題の安倍政権の命取りになるとの見方も出てきた。181027
日刊ゲンダイ10月26日

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2018年10月27日 (土)

ミスター半導体・西澤潤一/追悼(132)

半導体の世界的権威で、文化勲章、米国電気電子学会(IEEE)エジソンメダルなどを受賞した元東北大総長の西澤潤一さんが、21日、仙台市内で死去した。
92歳だった。
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東京新聞10月27日

西澤さんは、何よりも独創性を重んじた人として知られる。
技術開発には、改良・応用技術開発=セカンダリーな独創と基礎からの開発=プライマリーな独創とがある。

たとえば、奇妙な現象にAが気が付き、Bが着目して、Cがアイディアを思いついて、Dが実験で確かめ、Eが理論的に体系づけて、Fが実用化し、Gが工業化した。
A、B、C、D、E、F、Gそれぞれが広義の独創者である。
それぞれが重要であるが、種子から育てていこうとする風土が日本には欠けている。
独創的な成果を生むには、思考の原点において自由でなければならない、というのが西澤さんの意見だ。
2009年10月10日 (土) プライマリーな独創とセカンダリーな独創

そしてそれは日本で初めてノーベル化学賞を受賞した福井謙一博士の理論のバックボーンでもある。
米沢貞次郎、永田親義『ノーベル賞の周辺―福井謙一博士と京都大学の自由な学風』化学同人(9910)によれば、「京都大学が伝統的に持つとされる自由な雰囲気」である。

2009年のノーベル物理学賞は、光ファイバーによる情報通信への貢献を評価された元香港中文大学長のチャールズ・カオ博士と電荷結合素子(CCD)センサーの発明を評価されたウィラード・ボイル博士、ジョージ・スミス博士の3人に与えられた。
光ファイバーが授賞対象になるのであれば、当然、西澤さんが受賞してしかるべきだったと思う。
2009年10月 7日 (水) 今年のノーベル物理学賞と西澤潤一氏の研究

ノーベル賞には恵まれなかったが、日本を代表する独創の研究者だったことは万人が認めるところであろう。
合掌。

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2018年10月26日 (金)

明治礼賛という時代錯誤/アベノポリシーの危うさ(339)

明治150年を祝う式典が、10月23日開催された。
安倍首相が出席して式辞を述べた。
ところが、この「明治150年」式典に、明仁天皇と美智子皇后の姿はなかった。
佐藤栄作内閣時の「明治100年」の政府式典には昭和天皇と香淳皇后が出席しているし、そもそも150年前の改元の詔は、王政復古の大号令ののち明治天皇によって出されたものだ。
その末裔である今上天皇が、明治改元を祝う式典に参加しないというのは、不自然である。

安倍首相の式辞を見てみよう。

 我が国の近代化は、西洋に比べて、極めて短い期間に行われました。それまでの歴史の礎があっての飛躍であろうことを併せ考えたとしても、それを成し遂げた先人たちの底力、道半ばで倒れた方々も含め、人々にみなぎっていた、洋々たる活力、志の高さに驚嘆せずにはいられません。同時に、今を生きる私たちも、これを誇りに力強く歩んでいかなければならないと思います。
 来年は、約200年ぶりに天皇陛下が御退位され、皇位の継承が行われます。その翌年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中の人々が我が国を訪れ、世界の関心が日本に集まります。我が国は、正に、歴史の大きな転換点を迎えようとしています。
 私たちは、平成のその先の時代に向けて、明治の人々に倣い、どんな困難にもひるむことなく、未来を切り拓いてまいります。そして、平和で豊かな日本を、次の世代に引き渡していく、その決意を申し述べ、式辞といたします。

まあ常識的な見方かも知れないが、戦争被害者の慰霊を続けてこられた両陛下にすれば、侵略の反省の視点が欠けている安倍首相の歴史認識が相いれないものだと考えるべきだろう。
日本経済新聞は23日のコラム「春秋」で次のように書いている。181023_2

「維新の功臣、明治の賊将」の代表は「西郷どん」であろうか?
朝敵とされた会津等にしても実態は必ずしも朝敵とは言えない。
むしろ、首相が自慢する長州人は、無辜の庶民を蹂躙する乱暴狼藉集団だった性格が強い。

明治150年式典は盛り上がりに欠けたものだったが、「強い日本を取り戻す」などの空疎な言葉だけでは「国難」を克服することは難しいだろう。150181024
毎日新聞10月24日

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2018年10月25日 (木)

安倍所信表明演説批判/アベノポリシーの危うさ(338)

安倍首相が24日の臨時国会の所信表明演説で、憲法改正に強い意欲を示した。
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東京新聞10月25日

首相は「改憲発議は国会議員の責務」と言っているが、果たしてどうか?
憲法第99条は次のように規定している。Ws000000

「この憲法を尊重し擁護する義務」がどうして「改憲発議は国会議員の責務」になるのか?
おそらく憲法観によるだろう。
「憲法は国の理想を語るもの」と発言したくだりではかなりのヤジが飛んだ。
現在の多数説である「立憲主義=権力を制約するもの」からすれば間違いと言うべきである。
Photo

改めて、安倍首相がどんな勉強をしてきたか(してこなかったか)が気になるところだ。Photo_2

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2018年10月24日 (水)

免震・制振偽装と五重塔の技術/技術論と文明論(115)

免震・制振装置のトップメーカーKYBの検査データの偽装には驚ろかされた。
2018年10月17日 (水) 偽装国家の本領(10)免震制振偽装・KYB/メルトダウン日本(55)

しかし検査データの偽装はKYBだけではなかった。
東証2部上場の建材メーカーグループ・川金ホールディングス(HD、埼玉県川口市)の子会社が製造した免震・制振オイルダンパーの検査データを改ざんしていた。
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日本経済新聞10月24日

地震列島で免震・制振偽装はどこまで広がるのだろうか?

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免震は東京都、大阪府各2物件の計6本、制振は26都道府県の89物件に使われた計1423本が、いずれも顧客が指定した基準値を満たしていなかった。国土交通省は免震ダンパーに基準を設定しているが、不適合品はなかったという。
 検査データの改ざんが油圧機器メーカーKYB(東京都港区)以外にも拡大したことを重くみた国交省は、免震・制振装置メーカー88社に報告を求めていた不正の有無の調査について、報告期限を従来の12月下旬から今週内に前倒しした。
 問題のダンパーは、ともに川金HDの子会社の光陽精機(茨城県筑西市)が製造し、川金コアテック(川口市)が販売した。今月16日、KYBと子会社による検査データ改ざんが発覚したのを受けて社内調査し、不正が判明。21日に国交省に報告したという。国交省は23日、川金HD側に対し原因究明や再発防止策の報告を指示した。
 不正期間は、ダンパーの製造・販売を開始した2005年2月から今年9月までで、検査機のデータに特定の係数を入力し、顧客が求めた基準値の上下10%以内に収まっているように改ざんしていたという。免震用は総出荷数の1%余り、制振用は約25%が改ざんされていたとみられる。
 改ざん理由について、川金HDは「顧客に性能面、納期で満足いただくためだった」と説明した。今回の公表分とは別に、台湾に出荷した製品にも不正があったことや、データが基準内だったのに精度を高く見せようとして改ざんした製品もあったことを明らかにした。
免震・制振装置データ改ざん93物件1429本 

偽装を発表した川金HDはストップ安で引けた。Ws000002_2

まあ、当然の結果だろう。
それにしても、五重塔などが、美しい建築美と耐震性を両立させてきた伝統はどこへ行ったのか?
2012年5月22日 (火) 東京スカイツリーの開業/花づな列島復興のためのメモ(70)
⇒2011年5月24日 (火):五重塔の柔構造と震災復興構想/やまとの謎(31)
⇒2011年10月29日 (土):猿橋の「用」と「美」と「レジリエンス」/花づな列島復興のためのメモ(10)

五重塔の免震・制振については以下の説明を紹介しよう。
五重塔は耐震設計の教科書

五重の塔の構造
五重塔は、独立した5つの層が下から積み重ねられた構造をしています。各層が庇の長い大きな屋根を有していること、塔身の幅が上層ほど少しずつ狭くなっていること、中央を心柱が貫通していて、5層の頂部でのみ接していること、5層の頂部に長い相輪が取り付けられ、心柱の先端に被せられていることなど、他の建築物に見られない特徴を有しています。これらの構造的特徴の全てが、五重塔の耐震性に深く関っています。
塔の内部を見ますと、各層は軒、組物(柱上にあって軒を支える部分)、軸部(柱のある部分)より構成されています。上層の軸部から柱盤を介して軒の地垂木に伝えられた鉛直荷重は、軒荷重と共に組物に伝えられ、組物の繋肘木(力肘木ともいう)から軸部に伝えられ、そして当該層の荷重と合わせ、下層の軒の地垂木に伝えられていきます。
五重の塔の免震・制振とエネルギー吸収 
柔構造によって1次の振動モードが共振領域を外れたとしても、2次以上の振動モードが共振領域に入ることは避けられません。ここで問題になるのが、層の浮き上がり、飛び上がりです。
各層は積み重ねられているだけで、柱盤は下層の地垂木に緊結されてはいませんから、ロッキング運動が激しくなりますと、片側で浮き上がりを生じる可能性が出てまいります。後述の鉛直方向の振動の影響と重なって飛び上がるかもしれません。
2次の振動モードで共振しますと、3層から4層にかけて曲げモーメントが大きくなり、上方の層では上層からの自重による鉛直荷重が小さくなることと合わせ、4層あたりで浮き上がりを生じる可能性が高くなります。防災科学技術研究所の振動実験でも4層が浮き上がったことが報告されています。
4層で浮き上がりを生じ、心柱の支持点である5層頂部の変位が大きくなりますと、心柱が3層の頂部と接し、梃子の原理で変位に対する抵抗力が5層頂部に発生します。心柱の回転慣性は大きく、偶力だけでも抵抗力になるでしょう。心柱は“綱渡りの棒”のようなもので、上方の層がバランスを失ったときに力となり、同層がバランスを取り戻せば再び塔身に身を委ねます。心柱の繋部分に十分な強度が求められますが、鉛直上向きの力に対して抵抗力をもたない積み重ね式の弱点を、心柱が見事に補っています。
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テクノロジーとして、現代よりも進んでいたような気もする。
しかし、「偽装」は論外であろう。

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2018年10月23日 (火)

台湾で特急電車が脱線事故/技術論と文明論(114)

台湾北東部・宜蘭県で10月21日、台湾鉄道の特急「普悠瑪(プユマ)」号が脱線事故を起こした。
8人が死亡し、190人が負傷したものとみられる。
死者の多くは先頭から3両目までに集中していたことが分かった。

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 乗客は366人。台湾鉄道は当初、死者を22人と発表したが、その後、消防当局が18人に修正した。死者のなかには、韓国で英語スピーチ大会に参加し、台東市に帰る途中だった中学校の生徒3人と教師2人や、結婚式から帰る途中の親族8人も含まれるという。
 脱線現場は、宜蘭県蘇澳地区にある新馬駅にかかる右カーブ。列車は全8両が脱線してジグザグ状になり、そのうち5両は横転した。車両は日本製だった。
 台湾紙・聯合報(電子版)などによると、死者は先頭車両の8号車内で6人、7号車付近の外で7人、6号車付近の外で2人見つかった。車外で見つかった人たちは、脱線の衝撃で車外に飛び出したと消防当局はみている。
 運転士は負傷して病院に運ばれている。台湾鉄道当局者は22日、事故発生前に、運転士が緊急ブレーキをかけていたことや、電力が不安定になっていると訴えていたことを明らかにしたが、事故原因と関係しているかは分からないとしている。
 蔡氏は22日午前7時(日本時間同8時)ごろ、現場に到着。台湾鉄道幹部から状況の報告を受けた後、「関係当局には早急に原因を究明してもらいたい。ともに、この難関を乗り越えよう」と語った。
 日本台湾交流協会台北事務所(大使館に相当)によると、日本人が事故に巻き込まれたという情報はないという。
死者は先頭3両に集中 台湾脱線事故、蔡総統が 現地入り

まだ全容が明らかになったわけではないが、運転士が事故前に異常を通報していたという情報もある。
複合的な原因の可能性もある。
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東京新聞10月23日

現時点での情報は、JR西日本の福知山線脱線事故とそっくりであるといえよう。
文明は利便性を求めて発展する。
しかしそこには自ずから制約条件がある。
それを定めたのがルールや制度である。

福知山線の場合もそうだったが、そのルールを超えた運用はあってはならないことだろう。
運転士というあるいは運行会社というミクロな世界で良かれと思ってしたことが、より広い視点でみると、真逆の結果になることはしばしばある。
巨大文明の現代においては特に心すべきではないだろうか。

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2018年10月22日 (月)

敗者の戊辰戦争(2)奥羽越列藩同盟/幕末維新史(11)

戊辰戦争中の1868年(慶応4年/明治元年)5月6日に、陸奥国(奥州)・出羽国(羽州)・蝦夷地(北海道)および越後国(越州)の諸藩が、輪王寺宮・北白川宮能久親王を盟主とし、薩長中心の新政府の圧力に対抗するために、奥羽越列藩同盟を結成した。
薩長史観の教科書の世代の私は、あまり印象が残っていない。

最初は、奥羽諸藩が、会津藩、庄内藩の「朝敵」赦免嘆願を目的として結んだ同盟(奥羽列藩同盟)であった。
そのため、両藩は会庄同盟を結成して列藩同盟の盟約書には署名しなかった。
しかし、この赦免嘆願が拒絶された後は、列藩同盟は新たな政権(北日本政権)の確立を目的とした軍事同盟に変化した。
以下Wikipediaによる。

奥羽越列藩同盟の政策機関として奥羽越公議府(公議所とも)がつくられ、諸藩の代表からなる参謀達が白石城で評議を行った。
奥羽越公議府において評議された戦略は、「白河処置」及び「庄内処置」、「北越処置」、「総括」であり、全23項目にのぼる。
主に次のような内容で構成される。

・白河以北に薩長軍を入れない、主に会津が担当し仙台・二本松も出動する
・庄内方面の薩長軍は米沢が排除する
・北越方面は長岡・米沢・庄内が当たる
・新潟港は列藩同盟の共同管理とする
・薩長軍の排除後、南下し関東方面に侵攻し、江戸城を押さえる
・世論を喚起して、諸外国を味方につける
このほか、プロシア領事、アメリカ公使に使者を派遣し貿易を行うことを要請している。

石井孝『戊辰戦争論吉川弘文館(2008年1月)は、戊辰戦争の本質を「絶対主義形成の二つの途の戦争」と規定し、天皇制と大君制(徳川)の対立を幕末段階から説き起こした。
そして、戊辰戦争を以下の三段階に分けた。
1.「将来の全国政権」を争う「天皇政府と徳川政府との戦争」(鳥羽・伏見の戦いから江戸開城)
2.「中央集権としての面目を備えた天皇政府と地方政権・奥羽越列藩同盟との戦争」(東北戦争)
3.「封禄から外れた旧幕臣の救済」を目的とする「士族反乱の先駆的形態」(箱館戦争)

奥羽越列藩同盟は、第二段階における反政府行動であった。Photo
戊辰戦争

戊辰戦争は西南日本と東北日本の戦いという側面を持っていた。
2018年10月10日 (水) 敗者の戊辰戦争/幕末維新史(10)

そもそも西南日本と東北日本は成り立ちからして違うのかも。Photo_2
地球科学研究倶楽部編『日本列島5億年の秘密がわかる本 』学研プラス(2018年10月)

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2018年10月21日 (日)

サウジアラビア反体制記者抹消/世界史の動向(65)

サウジアラビア政府に批判的な米国在住のサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館を訪問後に行方不明になった。
サウジ検察当局は20日、国営メディアを通じて「カショギ氏が総領事館で死亡した」と公式に認めた。
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日本経済新聞10月21日

死亡を認めたことで幕引きを図ろうとしているのかもしれないが、総領事館内で起きた口論と殴り合いの結果で意図的な殺害ではなかったという主張をそのまま信じる人はいるまい。

外交特権がみとめられた総領事館内で何が起こったのか?

 カショギ氏は今月2日、トルコ人女性との再婚に向けた書類手続きのため総領事館を訪問後、消息を絶っていた。同じ日に総領事館に送り込まれたサウジ人の「暗殺チーム」がカショギ氏を殺害し、ばらばらにした上で遺体を運び出したとの見方もあり、トルコとサウジの合同捜査チームが15日に館内を捜索。トルコ高官はAP通信に「殺害の証拠が見つかった」と述べていた。
 当初、サウジ側は「カショギ氏は総領事館を立ち去った」と主張したが、映像などの証拠を示さず、事件現場となったトルコや同盟国・米国からも真相究明を求める声が高まっていた。事件を受け、23日からサウジの首都リヤドで開かれる経済会議にムニューシン米財務長官やラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事、欧米企業のトップが次々に欠席を決めるなど、国際的にも波紋が広がっていた。
 サウジでは現在、高齢のサルマン国王の実子のムハンマド皇太子が事実上の実権を握り、石油依存型の経済からの脱却を目指す改革を主導。今年に入り、従来は禁止だった女性の自動車運転や映画館上映を解禁するなど一定の自由化を推進してきた。その一方、政敵の王族や実業家を一斉に拘束する強権姿勢も加速させており、「言論の自由」を封殺する動きも指摘されていた。
 カショギ氏は昨年9月に渡米し、米紙ワシントン・ポストなどにサウジ政府の政策を批判する内容の記事を寄稿していた。

国際政治の1つの焦点となっていたサウジアラビアがよもやの展開である。
2018年9月11日 (火) 「9・11」とサウジアラビア/世界史の動向(64)

まさに生き馬の目を抜くような世界である。
トルコのしたたかさが印象的であるが、トランプ偏重の日本政府はどう存在感を示すのか?
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東京新聞10月21日

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2018年10月20日 (土)

火種の閣僚&自民党役員(3)片山さつき地方創生相/メルトダウン日本(58)

第4次安倍改造内閣の唯一の女性閣僚が片山さつき地方創生担当相である。
片山氏は問題発言のおおい人であるが、なぜ入閣させたのか?
本人が切望していたのはハシャギぶりから分かるが、志帥会(二階派)に所属しており、二階氏に報いるためだという。Post_24986_1_2
本人は颯爽と(?)認証式に臨んだつもりだろうが、待ち受けているのはスキャンダル情報だろう。

片山大臣といえば性格がキツいことで知られていますが、それを裏付けるようなエピソードには事欠かないようです。記者たちは「狙うは片山さつき」とも言っているようで、永田町では「うるさいから、とりあえずポストをあてがっておいた」「実際、まち・ひと・しごと創生なんて、とてもじゃないが無理でしょ」といった声が聞こえてきます。
片山さつき新大臣、安倍政権の「醜聞」の火種か

案の定、国税庁に対する口利き疑惑を18日発売の「週刊文春」10月25日号が報じている。

「週刊文春」取材班は、X氏宛ての「書類送付状」を独自に入手。この書類では“口利き”の対価として、100万円の支払いを求めている。日付は、〈15/07/01〉。差出人欄には〈議員名 参議院議員 片山さつき〉〈秘書名 秘書・税理士 南村博二〉とあり、議員会館の住所が記載されている。
 そして、書類の末尾には、こうあるのだ。
〈着手金100万円を、至急下記にお願い申し上げます。ご確認後、国税に手配させて頂きます〉
 片山事務所は次のように回答した。
「事務所にご質問の会社が税務調査を受けているようだとの連絡があり、当時の秘書が片山に相談し、知り合いの税理士である南村を紹介しました。南村税理士に聞いたところ、税理士報酬をもらった旨を知りました。事務所の認識では、南村氏は15年5月に私設秘書を退職しています」
片山さつき地方創生担当大臣に100万円国税口利き疑惑

当の片山氏は、現時点では全面否定しているが、いずれ真相は明らかになるであろう。
それにしても大蔵省主計官の経歴は、学力の証明にはなるのかも知れないが、知力とは無関係であることを体現している。
もう一度、西日本豪雨に対して気象庁が厳戒を呼び掛けている中で、赤坂自民亭と称する飲み会でハシャイデツイートしていたことを思い出そう。
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2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73)

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2018年10月19日 (金)

原発事故の直接的責任と間接的責任/メルトダウン日本(57)

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故は、取り返しのつかない出来事だった。
日本史上の大事件である。
2011年4月 9日 (土) 福島原発事故の失敗学

事故が起きたのは民主党政権の時だったが、事故の根本は自民党政権時代に作られている。
特に第一次安倍政権の責任は大きい。
原子炉の冷却ができない事態を想定していないのだ。
2016年8月29日 (月) 『東京ブラックアウト』と国会質疑/原発事故の真相(147)

市民が強制起訴した福島第一原発事故の刑事裁判で、東電幹部が証言台に立った。
検察審査会による強制起訴での刑事裁判では、JR西日本の福知山線脱線事故の例があるが、歴代3社長の無罪が確定した。
JR西の場合は、歴代社長は必要な安全対策を講じていたか否かが問われていたが、直接的な責任は、制限速度を大幅に超過し、脱線転覆させた運転士にある。

福島の原発事故の場合はどうか。
問題は、大津波の襲来の予見可能性であり、必要な対応をしていたか否かである。
これについて、東電幹部は部下の証言を否定する証言に終始した。
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日本経済新聞10月18日

大津波に対しては防潮堤を高くするなど、経営トップらの決断で対策のゴーサインが出せる工事があるが、武藤栄副社長らは語気を強めて自らの責任を否定した。
モリカケ疑惑があぶり出した政権幹部の姿とそっくりではなかろうか。
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日刊ゲンダイ10月19日

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2018年10月18日 (木)

偽装国家の本領(11)地面師詐欺/メルトダウン日本(56)

まったく詐欺集団が後を絶たない。
不動産を対象にした詐欺を行う地面師のグループが、積水ハウスを見事に(?)騙したという。
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東京新聞10月17日

地面師事件の舞台となったのは五反田駅近くの一等地にある旅館跡地だ。
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なりすまし容疑者 本人確認で「えと」間違う

土地の所有者の女性は、当該地の旅館の元おかみであるが、所有者になりすましたのは、羽毛田正美容疑者である。

積水ハウス側にパスポートを提示したというが、偽造されたものだった。

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顔バレ警戒? 積水ハウスとの内覧、所有者役ドタキャン

TVで見る限り「普通のオバサン」である。
現場の廃業した老舗旅館を内覧した際に、羽毛田容疑者が案内する予定だったが、当日は「体調不良」を理由に姿を見せず、事件の主導役の一人とされるカミンスカス操容疑者らが立ち会った。
積水ハウスと同じ取引を持ちかけられていた別の業者は、羽毛田容疑者が女性になりすました偽造パスポートのコピーを周辺住民に見せて確認し、なりすましを見破っていたという。

羽毛田容疑者の知人女性によると、羽毛田容疑者は東京都足立区の借家に家族と住んでおり、生命保険会社の営業の仕事をしていた。女性は「事件後に生活が派手になった様子はなかった」と話す。
羽毛田容疑者と地面師グループとの接点は明らかになっていないが、同容疑で逮捕された職業不詳、秋葉紘子容疑者(74)=豊島区南池袋3=がスカウト役だったという。所有者と年齢が近く見えることから目を付けたとみられる。
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なりすまし容疑者 本人確認で「えと」間違う

10人以上が関与していたグループらしいが、地面師とは何とも妙なネーミングだと思う。
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日本経済新聞10月18日

M資金詐欺と同様に成功すれば美味しい行為なのだろう。
2009年5月14日 (木) 大型詐欺の事例(4)M資金 
2009年1月15日 (木) 「M資金」の謎
2009年1月16日 (金) 「M資金」のルーツ

欲のあるところに詐欺話は尽きない。
「浜の真砂は尽きるとも・・・」である。
2018年7月18日 (水) 可算無限と非可算無限/知的生産の方法(179)

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2018年10月17日 (水)

偽装国家の本領(10)免震制振偽装・KYB/メルトダウン日本(55)

油圧機器のトップメーカーのKYBが、地震時にビルの揺れを抑える免震・制振装置の検査データを15年以上にわたり改ざんしていたと発表した。
改ざんの疑いを含めると、全国のマンションや病院、自治体庁舎など計986件の建物で使われていた可能性がある。
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東京新聞10月17日

KYBは元々萱場工業の社名であったが、1985年にカヤバ工業に変更し、2005年にKYB株式会社を通称名称とした。

 不正が発覚したのは、油圧を利用し揺れを吸収するオイルダンパーと呼ばれる装置。建物の地下部分に使われる免震用と、地上部分に使われる制振用がある。
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 不正な装置が取り付けられた建物は免震用が三百八十四件、制振用が二十六件。不正の疑いを含めると、それぞれ九百三件、八十三件に上り、過去にKYBの装置を採用した建物のうち、免震用は約83%、制振用は約23%を占める。
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不正はKYBの岐阜南工場(岐阜県可児市)で免震・制振装置を製造していた2003年に始まったと見られる。
2007年に子会社のカヤバシステムマシナリー(東京)の津市の工場に製造が移ったが、今年8月、この子会社の組み立て部門の社員が指摘して発覚した。
10月17日の同社株はストップ安で値が付かず、直近1カ月のチャートは以下のようである。

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KYBブランドの毀損は評価不能なほどだろう。

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2018年10月16日 (火)

偽装国家の本領(9)福島・高野病院長の焼死/メルトダウン日本(54)

痛ましいが、疑わしいとも思える焼死と言えよう。、
福島県広野町で子供たちの治療にあたってきた医師が、病院、カルテごと火事になり焼死した。
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厚生省は、福島県だけを甲状腺がんの統計から外したが、高野病院は原発の至近距離にありながら、地域住民のために避難しないで治療にあたってきた病院である。Ws000001

福島県は、県内全ての子ども約38万人を対象に甲状腺検査実施をしているが、その集計から漏れていた甲状腺がん患者が11人いることが7月7日に分かった。

 福島市で八日に開かれる県の「県民健康調査」検討委員会の部会で報告される。県の検査は二〇一一年度に開始、今年五月から四巡目が始まった。これまでがんと確定したのは百六十二人、疑いは三十六人に上る。 昨
年三月、子どもの甲状腺がん患者を支援する民間非営利団体が集計漏れを指摘し、検査の実施主体の福島県立医大が、一一年十月から昨年六月までに同大病院で手術を受けた患者を調べていた。 関係者によると、集計されなかった十一人の事故当時の年齢は四歳以下が一人、五~九歳が一人、十~十四歳が四人、十五~十九歳が五人。 
事故との因果関係について、検討委員会の部会は「放射線の影響とは考えにくい」とする中間報告を一五年に取りまとめた。この時、被ばくの影響を受けやすい事故当時五歳以下の子どもにがんが見つかっていないことを根拠の一つとしていたが見直しを迫られそうだ。
 県の検査は、超音波を用いた一次検査で甲状腺に一定の大きさのしこりなどが見つかった場合、血液や尿を詳細に調べる二次検査に移り、がんかどうか診断される。十一人のうち七人は二次検査の後に経過観察となったが、その後経過がフォローされなかったため集計から漏れた。二次検査を受けなかった一人も集計から漏れた。残り三人は県の検査を受けずに県立医大を受診した。
福島で甲状腺がん集計漏れ11人 検査の信頼性揺らぐ

「放射線の影響とは考えにくい」とした検討委員会の部会の判断は妥当だったのか?
「福島県小児甲状腺がん異常多発について」 医療問題研究会・入江紀夫医師』は以下のような指摘をしている。
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2014.10.31から2順目で、2順目で増えているということは、良性だった子が悪性に変わったということである。
以下のようにまとめている。
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子どもの甲状腺がんの発見率が有意に高いことが指摘されており、原発事故との因果関係を調べる検査の信頼性が問われている時に、中心になって献身してきた医師の死とデータの消失(焼失)は偶然だろうか。
都合の悪い情報は隠蔽してきた政府であり、どうしても疑いを持って見てしまう。

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2018年10月15日 (月)

偽装国家の本領(8)森友ゴミ資料/メルトダウン日本(53)

森友学園への国有地売却問題で、大幅な値引きの根拠となった地下のごみの深さについて、根拠資料に新たな疑惑が報じられている。
もういい加減に「膿を出し切れ」と言いたい。
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東京新聞10月12日

 ごみが深さ3メートルより深い場所にあることで、国は約8億2千万円の撤去費用が生じるとして値引きをしていたが、3メートルまでしか確認できなければ、値引きの正当性があらためて揺らぐことになる。
 森友学園との国有地取引は、もともと3メートルの深さまでごみがあることを前提に進められていた。しかし、2016年3月、学園側が3メートルより深い場所からもごみが発見されたと近畿財務局に連絡。財務局は学園の業者側が試掘した現場を確認し、業者側が写真付きの報告書を作成した。
 その報告書には、試掘した8地点のうち1地点で、深さ4メートルまで掘り下げたところ、「地表から1~3・8メートル」に「ごみの層」がある、と記されている。ただ、添付された写真では、試掘場所をメジャーで測定している様子が写っているものの、メジャーの目盛りは報告書からは読み取れない。
 この写真について、複数の関係者によると、ごみの層を示した数値は「地表からの深さ」ではなく、掘り下げた穴の底部分からの「高さ」の疑いがあるという。穴の深さは4メートルだったことから、実際にごみが確認されたのは底からの高さ1~3・8メートルで、地表からの深さでは3メートルまでだった可能性があるという。
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 国土交通省は昨年8月、この写真付き報告書を、ごみが3メートルより深い場所で確認された証拠として野党側に提出。野党側は「写真が不鮮明で根拠にならない」などとし、より鮮明な写真を提出するよう求めていた。ただ、「業者側の了解が得られない」として応じていなかった。国は値引きをした理由について「写真だけでなく、職員による現地確認などを踏まえて判断した」と説明している。

こんなゴマカシばかりでは、亡くなった近財職員も浮かばれない。

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2018年10月14日 (日)

偽装国家の本領(7)カジノの米資本/メルトダウン日本(53)

カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が、多くの疑念を積み残したまま、7月20日の夜の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立し、第196通常国会は閉幕した。
災害対策を置いてまで邁進した政府与党の姿は不自然で、異常なものだった。
麻生財務相や二階幹事長は、「赤坂自民亭」と称する飲み会が、災害が起きているさなかに行われていても、問題ではないとした。
彼らは、「西日本が被災中でもどんちゃん騒ぎで酒を飲みます」と言っているわけで、国会を閉じれば、国民の関心は他に向くだろうと考えているのだろう。
2018年7月21日 (土) カジノ法を成立させて国会閉会/ABEXIT(75)

驚くべきことに、この異常な国会運営の裏には、また安倍首相の大嘘が隠されていたことが判明した。
 安倍政権は、今年の通常国会で「カジノ法案」こと統合型リゾート(IR)実施法案を数々の問題点を追及されながらも十分な審議もおこなわないままに強行採決したが、このカジノ法案の審議でも、じつは「トランプ大統領からの口利きがあったのではないか」という問題が追及されたことがあった。
 この問題を安倍首相に突きつけたのは、共産党の塩川鉄也議員だ。6月1日に開かれた衆院内閣委員会で、塩川議員は昨年6月10日付けの日本経済新聞のある記事を読み上げた。その記事には、こう書かれている。
〈「シンゾウ、こういった企業を知っているか」。米国で開いた2月の日米首脳会談。トランプ大統領は安倍晋三首相にほほ笑みかけた。日本が取り組むIRの整備推進方針を歓迎したうえで、米ラスベガス・サンズ、米MGMリゾーツなどの娯楽企業を列挙した。政府関係者によると首相は聞き置く姿勢だったが、隣の側近にすかさず企業名のメモを取らせた〉
 そして、「この記事は事実か」と問われた安倍首相は、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、こう答えたのだ。
「まるでその場にいたかのごとくの記事でございますが(笑)、そんな事実は、これはまったく、一切なかったということをはっきりと申し上げておきたいと思います」
安倍首相がカジノ法審議でやっぱり大嘘答弁していた! 強行の裏にトランプ大統領“お友だち”優遇を要求と米メディアが暴露

だが、日経だけではなく、アメリカからも同様の報道が出てきた。
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東京新聞10月12日

この問題を報じた「プロパブリカ」は調査報道を専門とし、2010年にはネットメディアで初めてピュリツァー賞を受賞するなど高い信頼を得ている報道機関だが、安倍首相がトランプ大統領からラスベガス・サンズへの免許を与えるよう強く迫られたというのである。
つまり安倍首相は、カジノ法案を押し通そうとした背景にトランプ大統領からの強い要求があったということをひた隠し、国民に対して“ニヤニヤ笑い”で嘘をついたのだ。

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2018年10月13日 (土)

垣根涼介『信長の原理』/私撰アンソロジー(54)

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信長の原理』角川書店(2018年8月)

斬新な視点で織田信長像を描いたハードボイルドな時代小説といえよう。
イソップ寓話の「アリとキリギリス」のように、アリは勤勉な生き物の象徴と言って良い。
しかし、アリにも「働くアリ」と「働かないアリ」がいる。
「働くアリ」:「周りの状況次第のアリ」:「働かないアリ」は、2:6:2すなわち1:3:1になるというのが、掲出部分の信長が「蟻の試行」で得た結果である。
しかもこの比率は、「働くアリ」だけを集めて試行しても保存される。

信長と明智光秀は、その「何故?」を追求するタイプであり、木下藤吉郎(<羽柴→豊臣〉秀吉)は、2人と違って、プラクティカルである。

織田信長は尾張を領地に持つ戦国大名のOne of themであった。
1560(永禄3)年の今川義元を破った桶狭間(田楽狭間)の戦いが、全国大会へのデビュー戦であった。
しかし、翌1561年の勢力図は以下のようであり、周辺の諸大名に比べてもむしろ弱小だった。
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しかし短期間のうちに、隣国の美濃を併合し、岐阜を拠点として勢力を拡大し、さらには琵琶湖周辺の諸国を統合し、列島中央部に版図を築くのに成功した。
目の上のこぶのような存在だった石山本願寺(大坂)を退去させ、瀬戸内海の最深部を手中にし、甲斐武田氏を滅亡させて、1582(天正10)年には天下統一の目前まで来ていた。
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しかし、「本能寺の変」で有力家臣の明智光秀の謀反に遭い、人生を閉じる。
垣根氏は信長の成功と失敗の原因を、ビジネスでよく用いられる「パレートの法則」を援用して描き出す。
「パレートの法則」とは、2割の要素が、全体の8割を生み出しているというばらつきの状態を示す。
「20:80の法則」とか「パレート分布」など呼ばれているものである。
「選択と集中」戦略の基準を与えるものと言えよう。
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「パレートの法則」は、確かな論理や理論から成り立っているというよりも、ビジネスや生活の中で起きる現象を説明する経験則である。
「パレートの法則」は生物社会でも成立する。垣根氏は〈主要参考文献〉の1つとして長谷川英祐『働かないアリに意義がある』KADOKAWA(2016年6月) を挙げているが、短期的効率性だけを追求した組織は崩壊する。
一般に、短期的効率性と長期的安定性はトレードオフの関係にあるのだ。

信長は徹底した「成果主義者」だった。
しかし生物社会の中でも特に人間社会はメンタルという厄介な要素が重要である。
成果の効率を基準にしたことが光秀の謀反を招いたとも考えられる。
「売れ筋商品」の管理のような発想で部下を管理しようとしたことが信長の限界だったということであろう。
「働き方」の方向性についても重要なヒントになると思われる。

創造の要諦は「異質の要素の組み合わせにある」と言われる。
垣根氏は、ベストセラーになった『光秀の定理』角川書店(2013年8月)で、確率論と心理学に係わる「モンティホール問題」を応用して成功した。
2015年6月 1日 (月) 垣根涼介『光秀の定理』/私撰アンソロジー(38)

歴史と数学というかけ離れたジャンルを組み合わせることが、小説創作における「垣根の原理」かも知れない。

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2018年10月12日 (金)

火山リスクの社会的通念とは?/メルトダウン日本(52)

広島高裁の三木昌之裁判長は、伊方原発の火山リスクについて、「破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない」とした。
その前提は、「日本では1万年に1度程度とされる「破局的噴火」について、発生頻度は著しく小さく、国が具体的対策を策定しようという動きも認められない。国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」というものである。
しかし、「阿蘇カルデラ(阿蘇山、熊本県)の破局的噴火について社会通念上、想定する必要がない」とした広島高裁の判断は妥当だろうか?
2018年9月30日 (日) 火山リスクと伊方原発稼働/技術論と文明論(112)

自然災害に関する「社会通念」というものがあったとして、東日本大震災のような被害想定は「社会通念」の範囲内なのであろうか?
あるいは、日本の代表的名山である富士山について、どの程度の知見が得られているのであろうか?
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日本経済新聞10月11日

富士山のように知名されている火山ですら未知の噴火がある可能性があるというのだ。
産総研の『湖底堆積物から探る富士山の噴火史-本栖湖に残されていた未知の噴火の発見-』と題する10月10日付の報文を見てみよう。

秋田大学大学院国際資源学研究科のStephen Obrochta(スティーブン オブラクタ)准教授および東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授らの研究グループは、国際共同研究「QuakeRecNankaiプロジェクト」(代表機関:ゲント大学、日本側パートナー機関:東京大学・産業技術総合研究所)で行われた富士五湖での科学掘削により本栖湖で初めて得られた4 mの連続コア試料を、詳細に分析・年代測定しました。それにより、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元しました。欠落のないコア試料で堆積年代を細かく調べることで、噴火の詳しい時期の特定、陸上で得られている火山灰の分布の見直しを行うことができ、未知の2回の噴火の発見がありました。富士山は噴火した場合の社会的影響が非常に危惧される火山であることから、本研究は、将来の噴火や災害の予測をする上で重要な成果となるものです。

火山列島と言われているが、火山の挙動について、未だ知られていない現象が多いのである。
そういう状態であるにも関わらず、「社会通念」を根拠に安全性を評価するのは無謀と言うべきである。
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東京新聞10月6日

我々は、石黒耀『死都日本』のメッセージをもっと理解すべきであろう。
2016年4月27日 (水) 石黒耀『死都日本』/私撰アンソロジー(43) 

霧島火山の下に眠る加久藤カルデラが30万年ぶりに巨大噴火(破局的噴火)し、南九州は火砕流に飲み込まれて壊滅する、というストーリーであるが、熊本地震で注目された。081114
2016年4月15日 (金) 熊本の地震と『死都日本』のメッセージ/技術論と文明論(48)

阿蘇カルデラが10年以内に破局的噴火を起こさないという保証などないのだ。
2016年10月 9日 (日) 巨大噴火リスクにどう備えるか/技術論と文明論(77)

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2018年10月11日 (木)

火種の閣僚&自民党役員(2)麻生副総理・財務相/メルトダウン日本(51)

これほど期待感のない内閣改造も珍しいのではないか。
9日の翁長雄志前知事の県民葬に出席した菅義偉官房長官は、安倍晋三首相の弔辞を代読した。
普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設阻止を掲げた翁長県政と激しく対立してきた菅氏の言葉に対し、一般参列者の席から「帰れ」など激しい怒声が飛び交え、騒然となった。
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東京新聞10月10日
火種が揃っている内閣で、最も発火点に近いのは麻生副総理・財務相であろう。
2018年10月 4日 (木) 火種の閣僚&自民党役員・柴山昌彦文科相/メルトダウン日本(46)
「森友疑惑」で、決裁文書の改ざんを強要された近財職員は、深い苦悩の中で自ら命を絶った。
しかし当該責任者は「内閣人事は総理の専権事項だから」とうそぶいて、居座る
麻生氏に対し、国民の怒りは頂点に達している。

どの世論調査でも、麻生氏に対して、国民の多くが“ノー”を突きつけている。
財務省の決裁文書改ざんを主導した佐川宣寿前国税庁長官についても、「極めて有能な行政官だった」と言い、自身の監督責任を棚に上げたままだ。

「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」は10日から、麻生氏辞任を求める署名を始めた。

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麻生さんの辞任要求については、森友問題の徹底解明や佐川前長官の辞任要求と合わせて、すでに1万3719筆の署名を財務省に提出していますが、新たに麻生さんの辞任に的を絞った署名を集め、来月に提出しようと考えています。麻生さんは安倍政権のアキレス腱。文書改ざんが行われ、職員が自殺する事態になったのに、財務省の対応を『適正』などとトンチンカンなことを言っている。これは財務省のトップがガバナンスを踏みにじっている異常事態であり、徹底して辞任を求めていきます。
日刊ゲンダイ10月11日

こんな男を大臣において置いたら世界の笑いものになるだけだろう。

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2018年10月10日 (水)

敗者の戊辰戦争/幕末維新史(10)

いささか古い論文であるが一橋大学経済研究所が出している「経済研究」という雑誌の1975年1月号に、梅村又次氏の『治水と利水』というレビューが掲載された。
梅村氏は経済学者で、執筆当時経済研究所の所長を務めていた。
水問題に関しては圧倒的に理・工学系の論文が多く、社会科学の専門家による包括的なレビューは珍しく、コピーを取っておいた。
その一節である。
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これは以下の図の説明である。
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2011年4月23日 (土) 暘谷(フォッサマグナ)論/やまとの謎(30)

何でこの論文を思い出したかと言えば、「・SPA!」誌の9月18・25日号の『敗者の戊辰戦争』の図を見たからである。
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戊辰戦争は、新政府軍VS幕軍の戦いであると同時に、西南日本と東北日本の戦いであった。
安倍首相のように官軍史観でしか考えられない人間は、一度石光真人編著『ある明治人の記録 改版 - 会津人柴五郎の遺書』中公新書(1971年5月)に目を通すべきである。
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柴五郎は明治維新の際に朝敵とされた元会津藩士である。¥明治維新の際に青森に移封されたが、旧領と職封を合わせると、70万石に達する大藩が、わずか3万石に減封されたのである。
苛酷な処遇であったが武士としての矜持・誇りを失わず、「西南の役」で薩摩軍を殲滅して快哉を叫んだ。
苦難の末に陸軍学校に入学し、陸軍大将となった。
明治人の魂の記録である。

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2018年10月 9日 (火)

エネルギー革命は電池から/技術論と文明論(113)

今年の受賞はならなかったが、ノーベル化学賞の有力候補にノミネートされているのが、リチウムイオン電池の吉野彰博士である。
吉野彰博士は、日本にノーベル賞に擬せられる「Japan Prize:日本国際賞」の受賞者である。
リチウムイオン電池の用途は、電気自動車(EV)向けがIT機器向けを上回っているという。
かつて電気はためられな いもの、と考えられていたが、近未来に数千万台に上ると予測されている電気自動車が蓄電の役割を担うと想定される。
そうすれば、電気の需給は劇的に変化するのだろう。
2018年4月 2日 (月) 吉野彰博士が日本国際賞受賞/知的生産の方法(174) 

エネルギー革命のきっかけはIT革命だった。
1995年のWindows95の発売は、様々な要素技術が結集する結節点だった。
そこから始まった「IT革命」は自動車産業を巻き込み、ついにトヨタ自動車とソフトバンクがジョイントベンチャーを設立するまでに至った。
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日本経済新聞10月5日

東電福島第一原発を契機として、脱原発は喫緊の課題であることは多くの人の共通認識となっているが、期待されるのは「蓄電池」である。181008_7
東京新聞10月8日

可及的速やかに「脱原発」でまとまれば、自公政権は終わるのではないか。


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2018年10月 8日 (月)

偽装国家の本領(6)加計理事長再会見/メルトダウン日本(50)

加計理事長が愛媛県文書との齟齬をめぐり再度記者会見した。
獣医学部の設置をめぐっては今年5月、県の文書に「加計氏が安倍晋三首相と面会し、計画を説明した」という記載があると判明し、政権側の説明と食い違う内容だったが、学園側は「県に誤った情報を与えた」と主張した。
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東京新聞10月8日

説明責任を果たすことを求めた愛媛県議会の決議を受けての会見だったが、焦点の質問には「わからない」「記憶にない」と繰り返した。
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東京新聞10月8日

記者会見では改めて愛媛県の記録を否定したが、その根拠は「記憶がないし、面会した記録もない」からというものだった。
記憶で記録を否定するもので、「記録がない」というのも不自然で隠ぺいを疑われても仕方がないだろうし、否定する記録がないのと同じではないか。
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東京新聞10月8日

だいたい、記者会見をするというのに愛媛県の当該文書を読んでいないというのはナメタ話だ。
のらりくらりとやり過ごして既成事実を積み重ねようという魂胆だろうが、偽装国家の本領の典型である。

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2018年10月 7日 (日)

偽装国家の本領(5)スルガ銀融資/メルトダウン日本(49)

地銀のスルガ銀行が、個人向け不動産投資に不正な融資をしていたという問題で、金融庁から行政処分を受けた。
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日本経済新聞10月6日

スルガ銀の不動産融資の問題が表面化したのは今年1月だった。

 シェアハウス「かぼちゃの馬車」を手がける東京の不動産会社スマートデイズの事業が行き詰まったのがきっかけだった。
 同社は2013年、トイレや浴室が共用のシェアハウスを都内に建て、家賃収入を得られる投資事業を始めた。「賃料保証30年」をうたい、サラリーマンをオーナーに勧誘。資金はスルガ銀の首都圏の支店が、1棟あたり1億円前後を貸しつけた。
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 入居率は9割だとPRしたが、急ピッチの拡大に入居者が追いつかず、実際は3~4割台で低迷。新たな物件販売で得た利益を、保証した賃料の支払いに充てる「自転車操業」だった。
「優等生」称賛の裏で恫喝や重圧 スルガ銀、不正の構図

スルガ銀の不正は許されるものではない。
特に、創業家の岡野家の権力が強く、取締役会が機能していなかったのが問題だとされる。

一方で、処分を下した金融庁も、同行を地銀の優等生と評価していたのだから、責は免れない。
より根本的には、いわゆる「アベノミクス」の名の下の大規模金融緩和が、銀行の本来的ビジネスモデルを崩壊させてしまったことが原因であろう。
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マイナス金利、地銀を直撃=大規模緩和の副作用拡大

スルガに限らず、地銀は軒並み苦境に陥っている。
地銀の崩壊は地域経済に深刻な影響をもたらすであろう。
地域創生などは空疎なスローガンになっている。

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2018年10月 6日 (土)

偽装国家の本領(4)貿易交渉/メルトダウン日本(48)

安倍首相は、9月26日、トランプ大統領と会談し、貿易に関し2国間交渉に入ることで合意した。
これは米国から要求されていた自由貿易協定(FTA)ではなく、物品貿易協定(TAG)であると説明している。
何が、どう違うのか?
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東京新聞9月27日

アメリカとの貿易交渉のスタンスは巧妙に変わってきている。
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同上

素人でも推察できるのは、自動車産業などの新たな関税を回避する目的である。
それではその代償はなにか?
規模はともかく、農産物であることも容易に推察できる。
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日刊ゲンダイ9月27日

苦し紛れの造語:TAGを持ち出すところが怪しいと思っていたら、英文ではこういう略語は用いていなかった。1810042
東京新聞10月4日

隠ぺいや言い換えはこの内閣の常套手段であるが、アメリカ側と認識が違う?1810062
東京新聞10月6日

FTAなのか否かは二者択一である。
曖昧な言い方で言い逃れすることはもう通用しない。
農業関係者は果たして黙って受容するのであろうか?

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2018年10月 5日 (金)

偽装国家の本領(3)賃金統計/メルトダウン日本(47)

偽装国家は古代以来の伝統であるという説がある。
例えば永躰典男『日本古代史に偽装の源流を求めて―官僚の元祖・藤原不比等の野望』牧歌舎(2008年1月)は、『日本書紀』編纂の中心にいた藤原不比等を偽装の源流に位置づける。
2008年8月18日 (月) 軽皇子の立太子をめぐって 

官僚の元祖とされる不比等の伝統は、安倍政権下で偽装・隠蔽を本格化させている。
2018年9月 3日 (月) 公文書管理と偽装国家の本領/メルトダウン日本(24)
2018年9月 4日 (火) 偽装国家の本領(2)障害者雇用/メルトダウン日本(25)

安倍首相は「アベノミクスの成果」を強調している。
しかし賃金は上昇していないというのが多くの国民の実感であろう。
驚くべきことに厚生労働省が賃金統計上、伸び率が実態よりも高くなるように算出方法を変えながら、それを説明していないことを、「統計委員会」に指摘された。
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東京新聞9月29日

賃金統計の数値については疑義が呈されていた。

 「今年に入り勤労者の賃金は大幅に増えた」との結果が出ている厚生労働省の賃金調査を巡り、調査の信用性を疑問視する見方が広がっている。一月からは、中小企業より給料が高い会社が多い大企業の金額をより多く反映させているのに、その影響を考慮せず、伸び率を算出しているからだ。「給与の推移を正確に把握できない」との批判は根強く、政府の有識者委員会は今月中に見直しの是非を含めた議論を始める。
 問題になっているのは民間企業の賃金などを調べる「毎月勤労統計調査」。二十一日に公表された七月の確報値では、給料・ボーナスや手当を含めた「現金給与総額」が前年同月に比べ1・6%増えた。六月は3・3%増と二十一年五カ月ぶりの高い伸びとなった。
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2018年10月 4日 (木)

火種の閣僚&自民党役員・柴山昌彦文科相/メルトダウン日本(46)

第4次安倍内閣は、「お友達の」「お友達による」「お友達のための」内閣と評されている。
それだけに、いつ、誰が失言し、炎上するか分からない。
早速、柴山昌彦文科相が、「教育勅語」を評価するかのような発言をした。181004
朝日新聞10月4日

柴山氏は日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会のメンバーであり、まさに首相の「お友達」である。
教育勅語は森友学園の幼稚園で、園児らが暗唱させられていたことが記憶に残る。

教育勅語(教育ニ関スル勅語)は、山縣内閣の下で起草され、明治天皇の名によって山縣有朋内閣総理大臣と芳川顕正文部大臣に下された教育に関する勅語で、以後の大日本帝国において、政府の教育方針を示す文書となったものである。
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教育勅語暗唱のきっかけは?

教育勅語の精神(キモ)は、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」の部分にあることも、普通の読解力があれば分かる。
2017年5月 9日 (火) 森友疑惑(52)教育勅語をめぐって/アベノポリシーの危うさ(203)

三原じゅん子というオッチョコチョイが参院予算委で「八紘一宇」という言葉を称賛したことがある。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)
柴山氏は、東大法学部出身で弁護士だと言うが、三原じゅん子と同じ程度の読解力ということだろう。
問題山積の文科相に、こんな柴山氏を充てるというのが安倍人事ということだ。

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2018年10月 3日 (水)

「膿」を表面に出した第4次安倍内閣/メルトダウン日本(45)

自民党総裁選を制した安倍首相が、第4次安倍内閣をスタートさせた。
総裁選で圧勝し、沖縄知事選で弾みをつけるつもりが、思わぬ(というか当然の)躓きの中での船出である。
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毎日新聞10月3日

首相自身は「全員野球内閣」と言っているが、この陣容をどうみるか?
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日刊ゲンダイ10月4日

確かに、一連の不祥事の総元締めの麻生財務相の留任など「酷い顔ぶれ」である。
党役員人事には、加藤勝信総務会長、下村博文党憲法改正推進本部長、荻生田光一幹事長代行、稲田朋美総裁特別補佐と仲間を集めた。
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東京新聞10月3日

党側に側近を置いて改憲ムードを高めて行こうという目論見だろうが、いかにも胡散臭いメンバーである。
注目すべきは、閣僚の紅一点片山さつき地方創生・女性活躍相である。
「女性が輝く社会」などと単なるスローガンに過ぎないことは明らかだったが、よりによって片山氏だけが入閣するとは。
「赤坂自民亭」騒動で、若女将を気取ってはしゃいでいたのは簡単に忘れられるものではない。
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「安倍総理初のご参加で大変な盛り上がり!」「若手と総理とのお写真撮ったり忙しく楽しい!」とツイートしていたのである。
2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71) 
2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73) 
⇒2018年7月15日 (日) 「赤坂自民亭」の耐えられない軽さ/ABEXIT(73) 

「膿を出し切る」と安倍首相は何回も口にしてきたが、いよいよ「膿を表に出した」のであろうか。
火種があちこちにある布陣で、どこから炎上するか分からない。

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2018年10月 2日 (火)

祝・本庶佑京大特別教授ノーベル賞受賞/知的生産の方法(180)

ノーベル賞シーズンが始まった。
その第1報が、京都大高等研究院特別教授の本庶佑氏と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授に決定した。
医学生理学賞で、免疫チェックポイント分子「PD-1」を発見した業績である。1810022
日本経済新聞10月2日

「PD-1」は、がん治療薬「オプジーボ」の開発に繋がった。

 細菌やウイルスなどの異物が生体内に侵入したり、がん細胞が体内で生じたりすると、免疫細胞のリンパ球が異物と見なして攻撃する。逆に、免疫が暴走すると正常な組織を破壊することになる。
 がん治療の分野では、免疫の攻撃能力を高めてがん細胞を退治する「がん免疫療法」が考案されていたが、十分な効果を上げられずにいた。
 本庶氏らの研究グループは1992年、免疫の司令塔を担うリンパ球「T細胞」で働く「PD-1」遺伝子を発見。PD-1が免疫反応のブレーキに相当することが分かり、ブレーキを外せば免疫力が高まってがん治療に応用できるのではないかと考えた。
 その後の研究で、PD-1はT細胞の表面にあり、がん細胞の別のたんぱく質が結合してT細胞に攻撃を中止させていることが分かった。従来のがん免疫療法の効果が限定的だったのは、がん細胞がPD-1の仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけていたからだった。
 本庶氏の発見をきっかけに、PD-1をブロックするがん治療薬の開発が進み、小野薬品工業(大阪市)が14年9月、PD-1の抗体を利用した抗がん剤「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を発売した。世界各地の製薬会社がよく似たメカニズムのがん治療薬の開発に乗り出しており、新たな治療法としての普及が期待される。
 一方、アリソン氏も免疫のブレーキ役のたんぱく質「CTLA-4」を発見した。
本庶氏、新たながん治療に貢献 医学生理学賞

本庶特別教授らの業績は、手術、投薬、放射線に続く第4のがん治療法と言われる。
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日本経済新聞10月2日

「免疫」は、自分(自己)と自分ではないもの(非自己)を見分けるところから始まる。
体には免疫を担当する専門の細胞がいて、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や、体内で発生した異常細胞であるがん細胞など、自分ではないものを見つけると、それらを異物とみなして攻撃し、体から取り除く。
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Immuno-Oncology がん免疫とは?

がんの免疫療法と本庶教授の業績を振り返ってみよう。

1960年にノーベル賞を受賞したオーストラリアの免疫学者マックファーレン・バーネットは、50年代に「がん免疫監視説」を提唱した。ヒトの体内では毎日3000個ものがん細胞が生じているが、免疫系がこれを排除してがん発症を防いでいるという説だ。しかし、その現象は、長らく証明されなかった。
この説を支持する研究者たちは、がんを免疫で抑え込む治療法の開発に取り組んだ。だが、十分な成果が得られたとは言えない。本庶氏には、それは当然の成り行きと見えた。免疫応答は、まず抗原を認識することが火付け役(イグニッション)となる。ただ、そこに正の共刺激 (アクセル)がないと十分に活性化しない。
従来のがん免疫療法は、がん特異抗原を見つけ、それを体内に入れることでアクセルを踏み込もうというものだ。 しかし、体内にがんがあって抗原も膨大にある場合、わずか数ミリグラムの抗原を加えても効果は薄い。その上に負の共刺激 (ブレーキ)がかかっていれば、いくらアクセルを入れても免疫応答は起こらない。ブレーキを解除して免疫を再活性化することが治療につながる。ここにポイントがあることを、本庶氏は免疫の第一人者として見抜いていた。
一方、米国テキサス大学のジェームズ・アリソンも、CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)という別の分子が、やはり免疫細胞のブレーキ役として働くことを発見。96年、CTLA-4 の機能を阻害する抗体によりマウスの腫揚が消えたことを報告している。
2000年には、京大と米国Genetics Instituteなどとの共同研究で、PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)として、PD-L1とPD-L2が相次いで発見された。がん細胞表面にPD-L1が存在し、免疫細胞のPD-1受容体と結合した場合、免疫細胞の反応が抑制されてがん細胞を攻撃する力を失ってしまう。抗PD-1抗体によってこの結合を阻害すればブレーキが外れ、免疫細胞は再びがんを攻撃する可能性がある。
本庶研では動物実験を進め、期待された通り、抗PD-1抗体投与によりマウスの抗がん能力が著しく高まることを示し、02年に論文を発表した。さらに、移植したがんの転移の抑制などについても、様々な実験でデータを補強した。
並行して実用化の道を模索したが、当時の京大では特許出願のノウハウが不足しており、本庶氏は、恩師の時代から付き合いがあった小野薬品に共同出願を依頼。02年、PD-1による免疫治療の用途特許を仮出願した。
脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」

免疫は日本のお家芸とされる分野である。
2017年9月30日 (土) 日本の研究力を回復するために(続)免疫学/日本の針路(333)
ノーベル賞シーズンになると、受賞者の予想や関連銘柄が話題になる。
本庶教授は下馬評でも上位にノミネートされていた本命である。
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日刊ゲンダイ9月27日

小野薬品の業績は、「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)の発売により劇的に上昇した。
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朝日新聞10月2日

さすがに今日の小野薬品工業の株価は高かった。Ws000000

しかし、本庶教授は、「基礎も」ではなく「基礎が」重要であると言っている。
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朝日新聞10月2日

同感である。
実用化に力点を置く政策で、日本の科学の将来は大丈夫であろうか。

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2018年10月 1日 (月)

沖縄知事選の結果が国政に与える影響/メルトダウン日本(44)

沖縄知事選でオール沖縄=実質的な野党統一候補の玉城デニー氏が勝利した。
最終的な投票数は以下の通りだった。
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【知事選投票率速報】最終午後11時25分、63・24%

接戦と言われた割には大差である。
自公+維新+希望が総力を挙げても沖縄の民意を変えられなかったということだ。
一地方選には過ぎないが、国政にも影響することは必至と思われる。
総裁選に圧勝する予定が石破氏の「善戦」だったことに加え、沖縄知事選の敗北は政権のとっては想定外の痛手と思われる。
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静岡新聞10月1日

影響の第一は安倍政権の「一強体制」の揺らぎであろう。

安倍政権としては辺野古基地移転問題などを抱え、絶対に勝たなければならない選挙だった。自民党幹部がこう頭を抱える。
「4年前に翁長氏に負けた瞬間から、4年後に勝つためにやってきた。告示前から、二階幹事長を筆頭に、小泉進次郎氏も3回も沖縄入り。公明党も山口代表以下、幹部が続々と現地に入った。新潟県知事選挙で勝利したように、期日前投票で圧勝して貯金をつくり、当日は互角で勝つ戦術だった。だが、自民党、公明党の支援者でも辺野古など基地移転問題では反対を示す離反者が続出した。玉城氏の演説会に創価学会の三色旗を振る人まで出て、票が流れてしまった。とりわけ、これまで安倍首相に代わって厳しい姿勢を沖縄にとり続けていた菅官房長官が現地入りし、進次郎氏と一緒に演説したことが、失敗だった。辺野古のへの字も言わず、携帯電話の値下げの話などを延々と喋り、『帰れ』と怒号まで飛び交う始末だった」
沖縄県知事選 玉城デニー氏が初当選 「菅官房長官と小泉進次郎氏の演説で失敗」(自民党幹部)

知事に権限のない携帯電話料金で釣ろうとするのは県民を愚弄するものであろう。
第二には、公明党の存立基盤が問われるのではないか。
知事選には、公明党の山口那津男代表と創価学会の原田稔会長が同時に沖縄入りするなど、異例のテコ入れを図った。
しかし、32%の公明党支持者が玉城氏に投票したという出口調査もある。Photo

出口調査された経験がないが、どれくらい信頼性があるのだろうか。
共産支持者の8%が佐喜眞氏に投票したというのは、仕事がなくなると脅されてのことらしい。
それだけ締め付けがきつかったという。
公明党の山口氏は代表6選であるが躓きとなる可能性もあろう。

第三は、普天間基地移設問題そのものへの影響である。
選挙結果を踏まえた上で、菅官房長官は次のように語った。

 菅義偉官房長官は1日午前の記者会見で、沖縄県知事選で米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設に反対する玉城(たまき)デニー前衆院議員(58)が当選したことを受け「政府としては早期に辺野古移設と普天間飛行場返還を実現したい考え方に変わりはない」と述べ、移設計画を進める考えを強調した。
菅義偉官房長官「辺野古移設の考えに変わりない」

これは政府が選挙を「植民地の選挙」だとしている喝破した佐藤優氏の見方そのものである。
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2018年9月28日 (金) 沖縄県知事選の政治思想的意味/メルトダウン日本(42)

政府がそのような態度であり続ける限り、沖縄も反政府の姿勢を強めるだけではないだろうか。

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