歴史資料(史料)を軽視する風潮/メルトダウン日本(9)
最初は中学生になった年だったと思う。
富士山測候所に勤めていた兄の知人が同行してくれた。
非常にゆっくりと一歩一歩踏みしめるような歩き方で、高い山の登り方を教えられたように思う。
ふり返ってみれば、人生もそのように生きるべきだった。
しかし現実にはジェットコースターに乗っているようになってしまった。
富士山測候所の職員がつづった「カンテラ日誌」というものがある。
それが「文書整理の一環」で廃棄されていたことが分かった。
同気象台総務課によると、日誌は昨年11月までは倉庫にあったが、他の行政文書と一緒に溶解処分したという。取材に対し同課担当者は「毎日の出来事や感想を個人的に書き留めたもの。職務ではなく、行政文書に当たらない。庁舎内のスペースは有限で、必要ないものを無尽蔵に保管できない」と説明した。
日誌は、測候所が山頂(3776メートル)に移転した1936年から無人化された2004年まで書き継がれ、その後の大半は東京都内の同気象台に保管されていた。毎日新聞は今年1月、情報公開法に基づく開示請求で「不存在」の通知を受け、取材で「庁舎内にない。これ以上分からない」と説明された。3月の報道後、廃棄が分かったという。
日誌は一部が一般書籍や気象庁発行の冊子、研究論文などに引用されている。観測奮闘記のほか、戦時中は南から飛来する米爆撃機B29の編隊や、空襲に遭った街が赤々と燃える様子を描写。「中都市が攻撃を受け、毎晩一つ、二つと焼土となる。これが戦争の現実」などと記していた。
NPO法人「富士山測候所を活用する会」理事の鴨川仁(まさし)・東京学芸大学准教授は「世界でも珍しい資料。なぜ廃棄したのか理解できない」と落胆。「戦争被害調査会法を実現する市民会議」(東京都)の川村一之事務局長は「戦争に翻弄(ほんろう)されながら気象観測をしたことが分かる唯一無二の記録。もう読めないのは残念だ」と批判する。
富士山測候所 日誌を廃棄 68年間つづった貴重な40冊
気象専門家ならずとも、ナマの歴史資料(史料)の重要性は共通認識であろう。
そう言えば、猪瀬氏は東京五輪招致が決まった後、降って湧いたような資金疑惑で都知事の座を追われることになったが、今考えてみれば謀略の臭いが充満している。
私は桑原武夫氏の蔵書を廃棄するのと共通の、知的営為に対するリスペクトの欠如を感じる。
⇒2017年5月 4日 (木) アホな内閣(8)学芸に対するリスペクトの欠如/アベノポリシーの危うさ(199)
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