際立つ今上天皇のリベラル性/戦後史断章(31)
ごく当たり前のようにも思えるが、毎年同じわけではない。
東京新聞8月16日
明確な戦争に対する反省と今年新たに戦後の平和が強調された。
現在、「昭和天皇に戦争責任はない」という考えが多数説であろう。
それは立憲君主制においては「君主無答責」という考え方があるからである。
日本大百科全書の解説を見てみよう。
君主は、その行為について、だれに対しても政治上・法律上の責任を負わない、という原則。イギリスでは古くから「王は悪をなさず」King can do no wrong.ということばによってこの原則が憲法上の慣習として認められてきた。したがって中世以来、イギリスにおいては、悪政に対する責任は大臣が負うものとされ、大臣に対する弾劾制度が発達した。こうして君主無答責の原則は、立憲君主制をとる国に共通なものとなった。戦後の日本では、天皇は国政に関する権能は有せず、天皇の行う国事行為については内閣が責任をとるとされる。国事行為には内閣の助言と承認が必要である(憲法3条)ということがその法的根拠と考えられる。また、天皇は、象徴的地位にあること(憲法1条)、摂政(せっしょう)は在任中訴追されないこと(皇室典範21条)などから、刑事法の適用を受けることはない。しかし民事上の責任は免れないものとされている。
しかし、戦前・戦中の最高意思決定者は天皇だったのであり、昭和天皇の戦争責任は免れないのではないか。
東条英機から開戦の手順を聞いた昭和天皇は、「うむうむ」と応じたという。
東条からその様子を聞いた湯沢三千男内務次官のメモを遺族が保管していた。
メモによると、東条は十二月七日夜、首相官邸に呼び出した湯沢に「戦争開始と国民の処置を決定した」と通告。「陛下の命令を受け一糸乱れることのない軍紀の下、行動できるのは感激に堪えない」と発言した。
昭和天皇については「いったん決めた後は悠々として動揺もない」「(報告には)うむうむとおっしゃられ、いつもと変わらなかった」「対英米交渉に未練があれば、暗い影が生じるだろうが、そんなことはなかった」と述べたとしている。
開戦前夜、東条首相「すでに勝った」 政府高官のメモ見つかる
東条の責任はもちろんであるが、やはり昭和天皇も無答責で済ませるわけにはいかないだろう。
今上天皇はその辺りの経緯も踏まえておられるのであろう。
今上天皇が敗戦を迎えたのは11歳の時であった。
東京新聞8月14日
現行憲法では天皇は「象徴」であるとされているから、名実ともに無答責であるが、この敗戦時の体験がリベラルの立場にたっていることの原体験であると思われる。
A級戦犯容疑者岸信介を敬愛する安倍首相と対極的である。
⇒2016年8月 9日 (火) 天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)
安倍政権に比べ、今上天皇リベラル性は際立っている。
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