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2018年8月23日 (木)

スルガ銀行の蹉跌と「アベノミクス」/メルトダウン日本(16)

地方銀行が窮地に立たされている。
180812
「サンデー毎日」8月12日号

2017年10月に、金融庁が公表した「金融レポート」によれば、「2017 年3月期決算では、顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)から得られる利益は、過半数の地域銀行でマイナスとなっており、今後も低金利環境の継続を前提とすると、当該利益がマイナスになる金融機関が年々増加することが予測される」とされている。
その象徴的な姿がスルガ銀行であろう。

2018年1月、不動産会社のスマートデイズが運営する女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」が事実上経営破綻した。
スルガ銀行は、「かぼちゃの馬車」を一括で借り上げ、家賃を保証する「サブリース」について、1人当たり平均1億円と言われる個人投資家向け融資を実施していたのだった。
シェアハウス投資に絡む不正融資を巡り、スルガ銀行の第三者委員会が実施した調査の概要が21日、分かった。

 同行の融資総額は3兆1500億円で、このうち投資用不動産融資は約2兆円。不動産関連融資は1兆円程度とみられていたが、「住宅ローン」として公表していたものにも含まれており、2倍に膨らんだ。融資総額の3割超、不動産融資の半分程度が不適切に実行されていた。
 不適切な手法の一つが二重の売買契約書だ。行内ルールでは融資上限を物件価格の90%としている。販売業者が借り入れ希望者と結ぶ契約書には実際の物件価格を表記するが、販売業者がスルガ銀に出す契約書の物件価格は実際より高くする。それを行員が見逃すことで全額を融資していた。
 中古のアパートやマンションへの融資でも、入居率や家賃収入などを記載した書類が偽装されている事例が見つかった。空室率が高く、半ば不良化している物件でも、稼働率の高い優良な物件に見せる手口として使われていた。
 第三者委関係者によれば、借り入れ希望者の年収や預貯金残高を水増ししていた例も含め、手続きに何らかの不適切な行為が入り込んでいるのは投資用不動産融資の過半に達しているという。
 経営を監督する立場にある取締役らについては、民法上の規定で株主などから委託を受けて注意深く業務を遂行する「善管注意義務」に違反したと認定する方向だ。「毎月1億円の有担保ローンの実行」といった苛烈なノルマが行員を駆り立て、営業担当の元専務は不適切な融資を黙認。取締役らも見逃していたという。
 同行に立ち入り検査中の金融庁は、第三者委の調査結果も踏まえてスルガ銀の経営責任を厳しく追及する構え。スルガ銀は現在、新規の不動産融資の実行を事実上、止めている。不適切な営業や審査に関与した行員は全従業員の2割にあたる300人以上にのぼるとみられる。
スルガ銀、不適切融資1兆円 書類改ざんなど

銀行と言えばかつては堅実な業界であった。
「苛烈なノルマが行員を駆り立て」では、一時期のサラ金のようなものではないか。

バブル期には多くの地銀が堅実ではない融資に手を出して自滅していった。
私はあるプロジェクトの関係で、新潟中央銀行と縁があり、頭取の大森龍太郎氏とも面識があった

新潟中央銀行の頭取だった大森龍太郎は「銀行家は金の貸し借りの前に産業を起こすべき」という理念のもと、3つのテーマパークを開園・融資する3大融資プロジェクト、ゴールデンリング構想を実行した。
しかし・・バブルの崩壊とその煽りを受け、また行き過ぎた融資もあり新潟中央銀行は破綻。3つのテーマパークは資金繰りに苦しみ軒並み破綻してしまう。
大森龍太郎氏は自社銀行を破綻させたとして特別背任で刑事告発され、収監中に病死した。
バブルの残影、日本三大廃墟テーマパークについて

確かにワンマンで緻密さに欠けてはいただろうが、バンカーのイメージからは遠い起業家精神に富んだ人だった。
スルガ銀行はどうか?

創業家の岡野一族が強大な力を持っていたことは間違いない。
しかしゼロ金利時代という環境が、銀行という業態を不要なものにしたというべきであろう。
全国の地銀がどう生き残るのか?
書類を改ざんした民間企業は破綻の淵に立たされる。
監督官庁の財務省に比べ、余りに異なるような気がするが、「頭から腐る」ということか。
地獄のような時代がやってくるような気がする。

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