治水政策の想定と想定外の事態/技術論と文明論(99)
「平成30年7月豪雨」による水害は、改めて治水政策の難しさを実感せざるを得ないものとなった。
工学的な対策は一定の設計条件を前提にするが、想定を超えるような事態が起きた場合にどうすべきか?
地球環境のためか、観測精度の向上のためかは別にして、「記録にないような事態」が頻発している。
倉敷市真備町や愛媛県西予市の様子には息を飲んだ。
真備町は高梁川支流小田川の決壊による。
⇒2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)⇒2018年7月14日 (土) 頻発する異常気象と遊水機能を考慮した治水対策/技術論と文明論(97)
西予市では、上流の野村ダムの放流が適切であったか否かが問われている。
大水害 愛媛県西予市野村
愛媛県西部の西予市と大洲市うぃ流れる肱川が氾濫し、約650戸が浸水した。
住民によると、午前6時半ごろから川は一気に増水して、津波のような濁流が押し寄せ、同7時半ごろには住宅の屋根まで水が及んだ。
気象庁によると、このときまでの24時間雨量は同市で観測史上最大の347ミリ。約3キロ上流の野村ダム(総貯水容量1600万立方メートル)は、午前6時20分から、緊急的に流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を開始。その水量は、直前の毎秒250立方メートルから一時、最大7倍近くに達した。
地区の約5100人に避難指示が出たのは、7日午前5時10分。市関係者によると、その約3時間前の午前2時半ごろ、ダムの管理所長から市役所野村支所長に「7時45分に過去最大の毎秒1000立方メートルを放水する」と通告があったという。国は最初の連絡で「6時50分に放水開始予定」と告げたとし、双方に食い違いが出ているが、国の放流時刻の前倒し連絡などもあり、市の避難指示は5時10分に早まった。
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ダムを所管する国土交通省治水課は「避難指示が出てから操作までの70分間、川への流量も少なく道路への浸水もなかった。避難行動に貢献できた」と回答。四国地方整備局の長尾純二河川調査官は「ダムの容量を空けて備えたが、予測を上回る雨だった。規則に基づいて適切に運用した」と説明する。
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京都大防災研究所の角哲也教授(河川工学)は、予測を上回る降水時のダム操作の難しさを「ちょうど良く運用するのは神業」と表現。「現場の切迫感を、いかに早く住民に伝え、避難行動につなげてもらうかが大事」とし、非常時にどう動くのか日ごろから想定しておく重要性を訴える。
西日本豪雨/下 愛媛・西予肱川が氾濫 ダム放流、人災の声
想定していない局面は常に起こる可能性がある。
それに対処するのが人間の強みのはずだが、不完全AI「東ロボくん」ですら、一般的な人間を超えているのが実状である。
ダムはもちろん設計条件内ならば有効であるが、設計を超えた事態に対処する方法論は未確立ではないだろうか。
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