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2018年7月16日 (月)

水害はスーパー堤防の仕分けが原因か/技術論と文明論(98)

「平成30年7月豪雨」による水害を、民主党政権時が「スーパー堤防を事業仕分け」したからだ、という批判が流行しているらしい。
スーパー堤防のことを多少でも知っていたら起きるはずの主張である。
そもそもスーパー堤防とはどいうものか?

国交省が1980年代に整備を始め、首都圏、近畿圏の6河川で873キロ造る計画だったが、民主党政権の事業仕分けで「完成までに400年、12兆円かかり無駄」と批判され、「いったん廃止」となった。11年に5河川120キロに縮小された。このうち昨年度末までにできたのは、部分的完成を含めて12キロ。事業再開後の13年度に北小岩1丁目など2カ所が新たな着工区間に選ばれたが、その後、新規の着工はない。江戸川区内では江戸川、荒川の約20キロで計画があり、これまでに2カ所で計2.5キロできている。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説

イメージ的には下図のようなものである。
Photo_2
「400年かかる公共事業」の現場をみる

国交省が進めていた6河川とは以下の河川である。
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完了まで400年、総事業費12兆円とされたため、2010年10月の事業仕分けで「廃止」の判定がでた。
「百年河清を俟つ」という言葉も真っ青の400年である。

常に濁っている黄河の澄むのを待つ。あてのないことを空しく待つたとえ。(大辞林)

コスト・パフォーマンスから見て、仕分けされるべき事業だったと言える。
400年前といえば江戸時代初期であって、これから先400年を予測するのは不可能だからである。
日本の人口はこれから急速に減少していく。
Photo_3
人口減少社会とこれから起こる変化

上図から予測すれば、400年後の日本列島の人口は1000万人以下である。
にもかかわらず、江戸川区は廃止判定後もスーパー堤防事業を強引に進めてる。
「まちづくり整備事業」(土地区画整理事業など)との一体施工を基本としており、対象区域の住民は、工事期間中ほかの場所で仮住まいをし、盛り土と宅地造成が終わってからスーパー堤防の上に新居を建てて戻るわけである。
稠密な土地利用の江戸川でさえ、コストに見合う効果があるか疑問符を付けられた。

今回、破堤した小田川は高梁川水系の支流であって、スーパー堤防の対象になり得ない河川であ。
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6カ所決壊、真備支流 岡山県が20年放置

つまり今回の西日本豪雨による決壊とスーパー堤防事業仕分けはまったく関係がないのである。
真備川の場合、治水計画が大幅に遅れていたことが原因と言った方が的確だろう。
Photo_4

遅れてきた期間のほとんどが自民党政権であったことは言うまでもない。
治水事業費は、民主党への政権交代以前から進んでいたのである。Photo_5

民主党政権主犯説のようなデマが流行っているのは、情報を読む力の欠如であろうが、スーパー堤防という語感から、以下のような勘違いをしているらしい。
こんな堤防を期待しているとしたら、それも問題であろう。
この堤防が決壊したら、被害ははるかに大きくなるはずだ。
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