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2018年7月

2018年7月31日 (火)

稲田朋美が杉田水脈を批判/メルトダウン日本

さすがに杉田水脈氏の程度の低さは多方面から批判を浴びている。
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東京新聞7月25日

なんでこんな人間が国会議員なのかと思うが、比例候補だから当選が保証されているのだ。
その保証を与えているのは他ならぬ自民党総裁安倍晋三(首相)である。
2018年7月24日 (火) 杉田水脈議員の発言にみる自民党のホンネ/ABEXIT(77) 

意外だったのは、極右仲間の稲田朋美氏が批判の声を上げたことだった。Photo

たまにはまともなことを言うのかと思ったが、化けの皮が剥がれるのは早かった。
日本国憲法を「新興宗教」と言ってのけたのだ。
憲法遵守義務などまったく意に介さないようであるが、よく司法試験に通ったものだ。

稲田議員は7月29日、自身のTwitterアカウントにこう投稿したのだ。

〈日本会議中野支部で『安倍総理を勝手に応援する草の根の会』が開催され、私も応援弁士として参加しました。支部長は大先輩の内野経一郎弁護士。法曹界にありながら憲法教という新興宗教に毒されず安倍総理を応援してくださっていることに感謝!〉

 憲法教という新興宗教──。この発言はたとえば、憲法9条を改正すべき、という個別的な改憲論とはレベルが違う。憲法という存在そのものの全否定ともいえるものだ。
 国会議員は、憲法99条で定められている通り《憲法を尊重し擁護する義務》を負っている。にもかかわらず、よりにもよってこの国の最高法規である憲法を「新興宗教」「毒」扱いしたのである。これは、国会議員の憲法遵守義務違反以外の何物でもない。
 当然、この投稿に対して批判ツイートが殺到。すると、稲田議員は昨日(30日)の午後あたりに削除してしまった。
杉田水脈を批判した稲田朋美が「憲法教という新興宗教」暴言で炎上! カルトは安倍、稲田、杉田のほうだ

自民党からは、杉田議員に対してのお咎めはない。
稲田も杉田も安倍首相が自身で気に入って政界へ引き入れた人物である。
彼らの好きなようにさせては、日本という国がメルトダウンするのは必然である。

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2018年7月30日 (月)

モリカケ症候群(2)文科省の堕落/ABEXIT(78)

文部科学省科学技術・学術政策局長だった佐野太氏が受託収賄容疑で逮捕された事件は、政権の姿の反映ではないのか。
2018年7月 9日 (月) モリカケ症候群・東京医科大のブランディング/ABEXIT(69)
他人事のように「膿を出し切る」とか、「徹底して再発防止に取り組む」と言う言葉が虚しい。
元を絶たなければ同じことの繰り返しである。

東京医大は、「裏口入学リスト」を作っていたという。
具体的な選考調整の様子は以下のように報じられている。271807272
週刊文春7月27日号

まあ、我が子を希望の大学に入れてやりたいという親としての気持ちは分からないでもない。
しかし、裏口が本人のためにならないのは当然だ。
結果的に佐野氏の場合、子供の人生にも傷をつけてしまった。
悔やんでも悔やみきれないのではないか。
佐野氏の人物像は次のように語られている。
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週刊文春7月27日号

安倍御用達のコメンテーター・上念司は、「息子を東京医科大に裏口入学させた佐野太は前川喜平の直系とのこと。しかも前川喜平が天下り斡旋で処分されてた時期にやってた。文科省が前川喜平みたいになってる」と言って拡散しようとした。
しかしこれはまったくのフェイクだったことが明らかにされている。

「佐野はたしかに前川氏が官房長時代にも官房政策課長、総務課長などを歴任しているが、『前川の直系』なんて関係ではない。むしろ、関係が悪かったという話もあるほどだ。というのも、佐野は科学技術庁入庁組で、文科省内の旧科技庁グループ、 “旧科技庁のドン”とも呼ばれていた沖村憲樹氏の一派だった」
 冲村氏は国立研究開発法人・科学技術振興機構特別顧問に天下りしているが、高村正彦・自民党副総裁に極めて近く、官邸や自民党大物議員にも顔が利く人物。実際、冲村氏が仕切る旧科技庁グループは前川氏が引責辞任した文科省の天下り問題でも、まったく扱いが違っていた。
 そもそも、政権が率先して不正を明らかにしたこの文科省への天下り調査は、加計学園認可に反対していた文科省幹部への報復、狙い撃ちだったという噂もあり、事実、官邸が文科省の天下り問題調査でターゲットにした吉田大輔高等教育局長(当時)は、獣医学部新設に強硬に反対していたと報じられている。
 ところが、同じ文科省でも旧科技庁グループ、冲村派の天下り問題は一切表に出てこなかった。当時、会員制情報誌「FACTA」(2017年3月号)が、文科省の天下りは冲村氏が仕切る科学技術庁グループのほうがひどいのに、政権与党との関係からか、不問に付されているということを指摘。国会でも追及がおこなわれた。
 そして、冲村氏の利権を暴いた「FACTA」の続報(2017年8月号)では、今回、逮捕された佐野容疑者が〈「冲村派」の中核メンバー〉として名指しされていた。
 つまり、佐野容疑者は、前川氏の直系どころか、安倍政権に極めて近い派閥に属する官僚だったのだ。実際、佐野容疑者は加計問題で官房長として内部調査や大臣答弁などにかかわってきたが、完全に官邸の言いなりだった。
逮捕された文科省局長は安倍政権に近い官僚だった! 裏口入学の交換条件の支援事業に加計学園も選定

文科省ではJAXAを担当していた川端和明国際統括官が、コンサルティング会社役員から飲食の饗応を受けていた。
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東京新聞7月28日

川端氏も人脈的には佐野氏と同じであろう。
安倍首相のモラル喪失の悪影響は留まるところがない。

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2018年7月29日 (日)

処刑された豊田亨と伊東乾氏の友情/人間の理解(21)

オウム死刑囚の未執行者全員が7月25日に処刑された。180726
東京新聞7月26日

私は知人の1人が国選でオウム事件に係わっていたというが、もちろん特別の情報を聞いたことはない。
同時代を生きてはいたが、オウム真理教との接点はないといって良い。
しかし、今回処刑された豊田亨にはちょっと関心を持った。
それは東大で素粒子論を専攻した秀才だった。
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東京新聞7月26日

彼は、東大准教授の伊東乾氏(作曲家、指揮者)の同級生であった。
その経緯は、伊東乾『
さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生』集英社(2006年11月)に書かれている。
2018年7月 6日 (金) オウム真理教の死刑囚の死刑執行/戦後史断章(30)

私は、豊田亨こそ、知力のバランス感覚が偏っていた典型ではないかと思う。
端的に言えば(端的に言ってしまって良いかどうかは問題があるが)、出題されたことについては優れた解答をするが、自分の頭で問題を考えることが遅かったのである。
⇒2011年11月25日 (金):オウム真理教事件と知的基礎体力(?)

彼の処刑を受けて、伊東氏が「AERA」8月10日号に寄稿している。
ここでは「AERA dot.」の『オウム豊田亨死刑囚 執行までの3週間に親友が見た苦悩 麻原執行後に筆記具を取り上げられた』から引用する。

 7月26日、先週の約束通り小菅の東京拘置所に向かった。特別交通許可者として日常的に接見するオウム事件の死刑確定者、豊田亨君と面会するためだ。書類を窓口に提出すると程なく年配の刑務官から「面会は出来ません」と告げられた。私が待合室にいる間に、彼を含む6人のオウム事犯の死刑が執行された。
 大学1年で知り合い東京大学理学部物理学科、同大学院で共に学んだ親友が突然行方知れずになったのは1992年3月。次に彼が私達の前に現れたときは地下鉄サリン事件の実行犯となっていた。
・・・・・・
 6日金曜朝の「麻原執行」後、ご家族等と予定がぶつからないよう確認の上、週明けの9日月曜朝に小菅を訪ねた。さすがにやつれきっていた。彼も彼を囲む人々、私自身も大変に焦燥して厳しい一週間になった。覚悟して迎えた13日金曜、生存を確認して訪れた時の彼の表情を私は生涯忘れない。この金曜を乗り越えて明らかに彼は強くなった。こんな拷問に人は適応してよいのか?という疑問。そしてこんな状況にすら気丈に立ち向かう豊田君の姿。
「残された時間を精一杯生きる」と、落ち着いた表情で語る豊田君と、私はブロックチェーンや暗号の数理を考え、エジプト式分数を一緒に計算し、古代ハンムラビ法典の野蛮と中世イスラム法の寛容の差を議論した。
・・・・・・
 今だから記すが、兵庫出身の豊田君は手元にあった現金にいくばくか足し、匿名で西日本水害被害者救済の義援金に全額寄付して身辺を整理した。
 3月にオウムの死刑確定者が各地の拘置所に移された際、豊田君も東京拘置所内で収監される階が変わり、昔長らく在房した階に戻った。彼は明らかに看守諸氏から一目以上置かれ、大切に遇されていた。9日に面会したときは「命の限り贖罪し、社会に役立ちたい」と語っていた。こんな人を亡きものにしてはいけない、今後も再発防止などもっともっと働いて貰わなければならなかった。最期の2回の接見で彼はこう繰り返した。
「日本社会は誰かを悪者にして吊し上げて溜飲を下げると、また平気で同じミスを犯す。自分の責任は自分で取るけれど、それだけでは何も解決しない。ちゃんともとから断たなければ」
 大切な人を今日失った筈だが未だ全く実感ない。

私たちは、同じ空気を吸った中でも最良の人間を処刑してしまったのではないだろうか?
もちろん、彼自身が言っているように、犯した罪は償わなければならない。
しかし、処刑する代表者たちが、異例の警報が発せられるなかで、「赤坂自民亭」と称して酒宴を開き、その後、賭場法案を強行採決した退廃と比べてしまうのである。
2018年7月10日 (火) 西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)
2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71) 
2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73) 
⇒2018年7月15日 (日) 「赤坂自民亭」の耐えられない軽さ/ABEXIT(73) 
2018年7月21日 (土) カジノ法を成立させて国会閉会/ABEXIT(75)

死刑の廃止もしくは停止は世界の基本的な動向である。
142カ国が死刑の廃止・停止であり、欧州連合(EU)に加盟するには、死刑廃止国であるのが条件になっている。
OECD加盟国でも、死刑制度があるのは日本と韓国・米国だけで、韓国はずっと執行がない事実上の廃止国である。
米国も19州が廃止、4州が停止を宣言して、死刑を忠実に実行しているのは日本だけと言って良い。
人間の判断には誤りが避け得ず、万が一の冤罪は取り返しがつかない。
死刑は廃止し、終身刑を最高罰とすることを考えるべきチャンスではないか。

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2018年7月28日 (土)

異例の経路をたどる台風12号/技術論と文明論(104)

台風12号の進路が異例だ。
当初から東海沖を進む寒冷渦との相互作用で、28日(土)になると西よりに進路を変えると見られていたが、進路を変える位置が次第に比べると南にシフトし、東海沖から紀伊半島、西日本方面を通過するルートと予想を変えてきた。Photo_2
台風12号、西へ進む異例の逆走 高気圧と寒冷渦で複雑化

このまま進めば西日本豪雨被災地を再び直撃することが予想される。12
台風12号 東海に上陸の恐れ 警戒期間

通常はは日本の南の海上に太平洋高気圧が張り出すため、その北側を吹く西よりの風や、ジェット気流と呼ばれる上空の強い西風に流され、日本付近では北東方向に進む。
2016年8月の台風10号も、太平洋側から上陸するという珍しいルートを辿った。Photo_3
台風10号 史上初ルートで本州接近・上陸へ

台風10号は、東日本に接近すると、寒冷渦の反時計回りの風に乗ったことが原因だった。
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台風10号 史上初ルートで本州接近・上陸へ
2016年8月28日 (日) 台風10号の経路と狩野川台風/戦後史断章(25)

2016年の10号や今度の12号は、珍しい進路であるが、頻発する異常気象と関係があるかどうかはデータを積み重ねて判断すべきだろう。
大きな災害にならないことを祈るばかりである。

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2018年7月27日 (金)

世界的な猛暑の原因/技術論と文明論(103)

7月23日に埼玉県熊谷市で観測史上最高となる41.1度の気温を記録するなど、7月中旬以降、東日本から西日本までの広い範囲で、平年値に比べて3度以上も高い気温が続いている。
2018年7月25日 (水) 災害としての酷暑/技術論と文明論(101)
しかし、このような記録的猛暑は日本だけにとどまらない。
米国では、7月8日にカリフォルニア州デスバレー国立公園で最高気温52度を記録するなど、世界各地で記録的猛暑が起きている。

また、ヨーロッパでは、アイルランド、イングランドの東部および南部、スカンジナビア半島南部、バルト諸国などを中心に、平年値より3度から6度ほど高い気温が継続している。
北極圏に位置するノルウェーのテュスフィヨール市ドラッグ村で7月18日に最高気温33.7度を記録した。
スウェーデンでは、記録的な猛暑と乾燥により、北西部のイェムトランド、中部のイェヴレボリやダーラナなど、これまでに50地点以上で森林火災が発生している。
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東京新聞7月26日

熱波や猛暑の原因が何であるかは軽々に結論を出すべきではないだろうが、異常気象が人間の活動に起因している可能性は大きいであろう。
米エネルギー省(DOE)傘下ローレンス・バリモア国立研究所の研究チームは、7月20日、米学術雑誌「サイエンス」で「人間が対流圏温度における季節循環に影響を及ぼしている」との研究論文を発表した。

衛星が実際に観測した温度データと、気候モデルに基づきシミュレーションした人為的要因のフットプリント(痕跡)を分析し、対流圏温度の季節循環において、人間活動に起因するフットプリントを、自然変動によるものから分離して示すことに成功した。対流圏温度の季節変動幅は、とりわけ中緯度において大きくなっており、水陸分布の違いにより南半球よりも北半球でより大きくなっているという。
・・・・・・
また、海洋の循環流が地球温暖化に影響を及ぼしているとの指摘もある。米ワシントン大学と中国海洋大学との共同研究プロジェクトは、7月18日、学術雑誌「ネイチャー」において「大西洋循環の弱体化が地表温度の上昇を招く」との研究論文を公開した。
これによると、大西洋循環の減速化は、地球温暖化によるものではなく、数十年規模の自然変動サイクルによるものだが、これによって、今後、気温が上昇する可能性があるという。
海流のスピードは海洋表層の熱が深層にどれだけ多く移動するかによって決まり、早く循環するほど多くの熱を深層に送り込むことができる。裏を返せば、海流が遅くなると海洋での熱の蓄積量が少なくなり、大気の温度が上昇しやすくなるというわけだ。

地球温暖化についても結論が出ているわけではない。
しかし「かけがえのない惑星」であることだけは間違いがない。
私たちが「文明のあり方」を再考すべき時期に来ているのは間違いないのではないか。

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2018年7月26日 (木)

櫻井よしこ氏の「美しき勁き」間違い/技術論と文明論(102)

よく、「野党は反対ばかりでなく、対案を出せ」という人がいる。
実は、対案を出していないのではなく、与党が審議に応じていない法案が多数ある。Photo_2

「原発ゼロ基本法案」はその典型であろう。
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東京新聞7月20日

櫻井よしこ氏が産経新聞の「美しき勁き国へ」という欄に、「小泉純一郎元首相の脱原発・・・壮大な間違い エネルギー政策は「科学の視点」で考えよ」という一文を寄せている。
「エネルギー政策は「科学の視点」で考えよ」には賛成であるが、私には、櫻井氏の論は感情的な「反・脱原発」のように見える。
彼女は小泉元首相の原発政策を批判して、次のように言う。

 だが、「日本は単純計算で太陽光だけで原発27基分を出しており、原発ゼロでも自然エネルギーだけで十分にやっていける」という氏の主張が壮大な間違いであることは明確に指摘したい。
 氏の主張は、わが国の太陽光発電は平成26年度末で2688万キロワット、1基100万キロワットの原発に置きかえれば約27基分との計算から生まれたものだろうか。同じ論法で計算すれば28年度末での太陽光発電は原発43基分だ。
 しかし、「それは、kW(キロワット)の数字、つまり、性能上の発電能力の数字だけを見たもので、実際に発電した時間を乗じたkWh(キロワットアワー)の数字を見なければ実態はわかりません」と、東京工業大学特任教授の奈良林直氏は語る。
 kWで示された性能上の能力は晴天時の瞬間的な出力を示す。太陽が強く輝くのは1日の内6時間、24時間の25%だ。しかし雨の日、曇りの日、雪の日、台風の日もあり、25%の半分、13%ほどの時間しか発電できない。太陽光発電の稼働率は13%前後にとどまるのだ。残りは火力発電に頼るしかない。
【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】小泉純一郎元首相の脱原発…壮大な間違い エネルギー政策は「科学の視点」で考えよ

しかし、小泉氏も直ちに今現在、自然エネルギーだけでやっていけるとは考えていないであろう。
重要なことは、将来へ向かってのベクトルである。
世界の趨勢は再生エネルギーに向かっている。
それは核廃棄物の処理が難しいからであると共に、再生エネルギーはイニシアルコストは必要であるが、限界コストが0に接近していくからである。
2018年7月 2日 (月) スマート化に逆行する日本/技術論と文明論(95 

政府が閣議決定した「エネルギー基本計画」は、依然として原発ありきである。
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東京新聞7月4日

私は、今こそエネルギー政策について、議論を深める時ではないかと思う。
例えば、「限界費用ゼロ社会」を提唱しているジェレミー・リフキン氏は『スマート・ジャパンへの提言』を発表している。
スマート・ジャパンが、原発よりも再生エネと親和することは、言うまでもない。
2018年7月 2日 (月) スマート化に逆行する日本/技術論と文明論(95)

しかしながら、政府・与党にエネルギー政策を再考すべきがという問題意識はない。
国の政策を追認する櫻井氏の論は、「美しき勁き」間違いと言うべきであろう。
もっと柔らかな思考に立たないと、先見的な議論はできないのだ。
杉田水脈氏と同レベルでは視野狭窄に陥るのは止むを得ないが。
2018年7月24日 (火) 杉田水脈議員の発言にみる自民党のホンネ/ABEXIT(77)

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2018年7月25日 (水)

災害としての酷暑/技術論と文明論(101)

異常気象という言葉には不感症気味であるが、この暑さは「半端ない」であろう。180724
東京新聞7月24日

7月23日、日本列島のほぼ全域が猛烈な暑さに見舞われた。
埼玉県熊谷市で午後2時23分、観測史上最高の41.1度を記録した。
熱中症が原因と思われる症状で亡くなった人は、少なくとも30都府県で94人に上る。

 連日の暑さの要因は、気圧配置にある。気象庁によると、日本の東海上から張り出している太平洋高気圧の勢力が今月上旬から衰える気配がなく、さらに、その上空をチベット高気圧が覆う「高気圧の2層構造」が続いている。加えて、23日に40度を超えた熊谷市と青梅市など関東地方の内陸部では、乾いた風が山から吹き下ろす際に熱を帯びて気温を上昇させる「フェーン現象」も猛暑に拍車をかけている。
 気象庁は同日、猛暑について異例の記者会見を開いた。少なくとも8月上旬までは、西日本から東日本にかけての広い範囲で同じような暑さが続くと予想している。同庁気候情報課の竹川元章予報官は「経験したことがないほどの暑さになっている地域がある。命に危険を及ぼすレベルで、災害と認識している」とした上で、「特に環境が変わった西日本豪雨の被災地では、できる限りの対策をして熱中症予防に努めてほしい」と呼び掛けた。
象庁「災害と認識」熱中症死の疑い6日で90人超

「高気圧の2層構造」および「フェーン現象」とは下図のような状態である。

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40度越え フェーン現象が「ひと押し」

日本はもはや温帯とは言えないのかも知れないし、日本だけでなく世界各地で異常気象が発生している。
異常気象は常態化しているのであり、新たな発想による対応が必要ではなかろうか。

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2018年7月24日 (火)

杉田水脈議員の発言にみる自民党のホンネ/ABEXIT(77)

自民党に杉田水脈という衆院議員がいる。
差別発言で知られているが、バカバカしいような内容が多いので、無視してきた。
しかし、「新潮45」8月号に寄稿した『「LGBT」支援の度が過ぎる』という文章は余りにひどい。
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「生産性がない」寄稿 先輩議員が擁護と投稿 LGBT支援団体は抗議

 杉田議員は文章のなかで〈子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります〉とした上で、LGBTにこう言及するのだ。
〈LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女たちは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか〉
 子どもをつくらない=生産性がないから税金を投入するのは問題。──この主張は、明確にLGBTに対する差別だ。
 あらためて言うまでもなく、憲法では〈すべて国民は、個人として尊重される〉と謳われている。この国に生きるすべての人は独立した個人であり、どんなセクシュアリティをもっていても、あらゆる人が基本的人権を有する者として社会的保障や支援を受ける権利があり、性的指向や性自認によって差別することはけっして許されない。にもかかわらず、子どもをつくらないことを「「生産性」がない」などと言い、為政者が税金を投入することに疑義を呈するというのは、完全に差別を助長するものだ。
 そして、この「生産性」という言葉は子どもの有無にかぎらず、杉田議員の文脈では、さまざまな理由から働くことができない人や障がいをもつ人などにも当てはまるだろう。こういった主張の行き着く先は「弱者に権利を与えるな」「国の役に立たない者に生きる価値はない」という極論であり、相模原事件のようなジェノサイドをも煽動しかねない。そんな危険性を大いに孕むものだ。

常識ある人ならばトンデモ発言と眉を顰めるだろう。
「子どもをつくらない=生産性がない」というのは、女性を子供を生む機械にたとえた柳沢伯夫元厚労相と瓜二つである。
柳沢氏はこの発言で辞職せざるを得なかった。
2015年10月 1日 (木) 「女性の活躍」=出産と考える愚/日本の針路(236)

ところが杉田議員には強い味方がいるのだ。
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二階幹事長も、何が問題なのか分かっていないようである。
 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が寄稿で同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまり『生産性』がない」と記述した問題で、二階俊博幹事長は24日の記者会見で「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と述べ、問題視しない考えを示した。
 二階氏は「右から左まで各方面の人が集まって自民党は成り立っている。(政治的立場での)そういう発言だと理解したい」とした。一方で、「当事者が社会、職場、学校の場でつらい思いや不利益を被ることがないよう、多様性を受け入れていく社会の実現を図ることが大事だ。今後も努力していきたい」とも述べた。
人生観の問題ではない。
人権の問題なのだが、自民党の重鎮(?)には、人権という概念がないのだ。
杉田氏は次のように書いている。

「ネットで叩かれてるけど、大丈夫?」とか「間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ」とか「杉田さんはそのままでいいからね」とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること。〉
〈LGBTの理解促進を担当している先輩議員が「雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから」と、仰ってくれました。自民党の懐の深さを感じます。〉(22日のツイート、現在は削除)
つまり、杉田議員のLGBT差別は、「自民党公認」だと言うのである。自民党は一昨年の参院選の公約でも〈社会全体が多様性を受け入れていく環境を目指します〉などと表向きはLGBTフレンドリーを装っていたが、このような差別発言を容認するとは、一体どういうことなのか。

杉田氏は昨年の衆院選で自民党から出馬し比例で当選を果たした。
スカウトしたのは安倍首相である。
櫻井よしこは、『言論テレビ』の中で「安倍さんがやっぱりね、『杉田さんは素晴らしい!』って言うので、萩生田(光一・自民党幹事長代行)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田氏は)『自民党、このしっかりした政党から出たい』と」と証言している。
要するに安倍首相自身のお気に入りで、絶対に当選するであろう比例から出ているのだ。
自民党候補でなければ当選するような人ではない。

衝撃的な相模原の障害者施設の無差別殺傷事件から2年経つ。
今ではすっかり忘れ去られてしまった「一億総活躍社会」というスローガンであるが、LGBTなど「生産活動」に無縁の人は、納税者であっても活躍してはならないのだ。
ナチスの「優生思想」そのものであるが、そう言えば、相模原事件の実行犯・植松聖は安倍首相に傾倒していた。

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2018年7月23日 (月)

官僚の作文を棒読みするだけの安倍首相/ABEXIT(76)

6月23日の「沖縄慰霊の日」に朗読された「平和の詩」は多くの人に感動を与えたことであろう。

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東京新聞6月24日

作者の相良倫子さんは浦添市の中学三年生である。
瑞々しい感性と豊かなレトリックによる見事な作品と言えよう。
素晴らしい詩作品というだけでなく、彼女の朗読はプレゼンテーションという意味でも素晴らしいものだった。

プレゼンのコーチングを業としている岡本純子さんは、東洋経済オンラインの連載「コミュ力は鍛えられる」に、『沖縄14歳少女が読み上げた「平和の詩」の衝撃 』という記事を寄せ、次のように書いている。

株主総会シーズン真っ盛りである。エグゼクティブへのコミュニケーションコーチングなどを生業としている筆者は、超少数株主の一員として、趣味と勉強を兼ね、役員たちの生プレゼンを見学に行き、勝手に採点して回っている。
残念ながら、まるでロボットのように無表情、無感情、無味乾燥のプレゼンと応答ぶりに、がっくりと肩を落として会場を後にすることがほとんどだ。典型的なおじさんプレゼンに食傷していたところ、たまたまつけたテレビで、衝撃的なシーンを目にした。
 6月23日、沖縄慰霊の日に、自作の詩を披露した浦添市立港川中学校3年生の相良倫子(りんこ)さんの朗読シーンだった。ピンと背中を伸ばし、始まった瞬間から、その場の空気を支配する堂々としたたたずまいにくぎ付けになった。
 この詩の巧拙については、専門家ではないので、評する立場にはないが、隠喩、倒置、反復、対照法、畳みかける、列挙法、省略法、韻などといったレトリック(修辞法)を余すところなく活用していることは見て取れた。しかし、こうした技巧を超越して、聞き手の心をとらえたのは、何よりも五感を刺激するその言葉と伝え方だ。

「まるでロボットのように無表情、無感情、無味乾燥のプレゼンと応答ぶり」の代表例は安倍答弁だろう。
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そして、平然とウソを並べるのだ。
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今国会を通じて、サイコパスの一種ではないかという思いを強くした。
2015年6月 2日 (火) 安倍晋三=サイコパス論/人間の理解(13)

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2018年7月22日 (日)

シナリオ界の巨人・橋本忍/追悼(128)

黒澤明監督の「羅生門」や「七人の侍」など数多くの名作を手掛けた脚本家の橋本忍さんが19日、肺炎のため東京都世田谷区の自宅で死去した。
100歳だった。
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東京新聞7月21日

昔、リサーチの仕事をやっていた頃、訴求力のある報告書を作成するため、シナリオ・ライティングの技法を学ぼうという話になった。
新井一『シナリオの基礎技術』ダビッド社(1968年)等を参考にしようとしたが、メンバーの歩調が合わず、長続きしなかった。
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橋本さんのシナリオの技術研鑽の方法として、次のようなことが伝えられている。1807222
東京新聞「筆洗」7月22日

日本映画の黄金期を支えた脚本の巨人であり、私も思い出の作品がいくつかある。

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 名作の数々を手がけた橋本さんは、骨格のしっかりした構成とスリリングなストーリー展開で知られた。「砂の器」(74年)に代表される回想形式で時間軸を巧みに交錯させる手法は圧巻。小説を映画化する際、原作にとらわれない構成の妙は、まさに“脚本の巨人”として他の追随を許さなかった。
 黒澤明監督との出会いが、脚本家人生の礎となった。初めて脚本化に取り組んだ芥川龍之介の短編「藪の中」を目にした黒澤監督が気に入り、映画化が浮上した。だが「(脚本が)ちょっと短いんだよな」と言われ、とっさに思いついて「羅生門」を入れ込み改稿。満足いかない出来だったところ、黒澤監督が手を入れた脚本に驚かされたという。橋本さんのひらめきを黒澤監督は見事に脚本に反映させていた。以降、黒澤監督の鋭い洞察で磨かれた橋本さんは「世クロサワ」を“黒子”として支えた。
 脚本だけでなく、マルチな才能の持ち主だった。無類の競輪好きとしても知られ、勝負事に強く、実業家としても頭角を現した。独立プロダクションを設立し、それまで“量産主義的”だった日本映画に、脚本重視の流れを生みだした。師である伊丹万作監督の教え通り「字を書く職人」に徹し「良い脚本から悪い映画ができることはあるが、悪い脚本から良い映画はできない」が信条だった。

平成が終わるのと同期するように、昭和の巨人たちが亡くなっていく。
当然ではあるが、やはり寂しいものだ。
合掌。

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2018年7月21日 (土)

カジノ法を成立させて国会閉会/ABEXIT(75)

今国会は歴史に記録されるべきだろう。
昨年来の懸案テーマだった「モリカケ疑惑」は、「膿を出し切る」どころか、大量の膿を残したままである。
象徴的だったのは、事実上の最終日に「カジノ法」を成立させたことである。
多くの懸念や疑問が残る中で、災害対策を置いてまで邁進した政府与党は不自然で、異常なものだった。
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山本太郎氏らが垂れ幕 

カジノとは「賭場」である。
現在の法律では禁止されている。
それには当然理由がある。
なぜそんなに急ぐのか?
トランプ大統領との約束なのか?
公明党は、胸を張って賛成できるのか?1807212
東京新聞7月21日

主務大臣は公明党の石井国交相である。
もちろん災害対策にこそ邁進すべき時だった。PhotoPhoto_2

「赤坂自民亭」ご称する宴会のタイミングの悪さは弁解のしようがないはずだが、微塵の反省もないようである。
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政府・与党は、多くの被災者が避難生活を強いられている時に、カジノ法に邁進して成立させたのだ。
私はこの点については、山本太郎氏に100%同意する。
こんなことを許す空気があるとすれば、主権者もなめられたものである。

犬飼淳さんという人の「【平成30年7月豪雨】政府の『空白の66時間』を視覚化」の記事は、ヘタな弁解が通用しなことを雄弁に語っている。
2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71) 
2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73) 
⇒2018年7月15日 (日) 「赤坂自民亭」の耐えられない軽さ/ABEXIT(73) 

にもかかわらず、この宴会の様子を拡散した西村康稔官房副長官は、みっともない弁解をしてヒンシュクの上塗りを重ねている。

西村氏は、7月11日に「多くの方々に不快な思いをさせてしまい、おわびを申し上げたい。反省もしている」とTwitterで陳謝しました。
さらに翌日7月12日にも「本日の国会質疑において厳しいご指摘を頂きました。私のツイートで多くの方に不愉快な思いを抱かせたこと強く反省しています。お詫び申し上げます。ご批判を真摯に受け止め、今後慎重に情報発信を行ってまいります」と述べています。
豪雨災害中に自民党宴会、謝罪文の酷さを可視化してみた

上記サイトの筆者・勝部元気氏は、これは謝罪とは言えないと批判している。

2年ほど前にブログ記事「『不快な思いをさせて申し訳ございません』は謝罪ではない」で書いた時から繰り返し指摘していることですが、これらは「Non-apology apology」です。「謝罪」とは「罪を謝る」と書くように、犯した罪や不適切な対応そのものに対して謝るべきです。ところが、不快にさせたという批判する人々の二次的な感情についてしか謝っていないわけですから、これは「罪を謝った」とは言えません。

まったく同感である。
勝部氏は犬飼氏の信号無視話法にも倣っている。
2018年6月27日 (水) 「ごはん論法」と「信号無視論法」では議論にならない/ABEXIT(62)

青字が批判された点に関してしっかりと応答して謝罪をしている箇所、黄色が批判されている点とは全く異なる点について謝罪をしている箇所、赤色が事実を捻じ曲げたり、批判者側に過失があるかのような見解を述べている箇所です。
豪雨災害中に自民党宴会、謝罪文の酷さを可視化してみた
当然青字はゼロ。何一つ謝っていません。それどころか、批判をした人々のほうに責任転嫁をしているわけですから、かなり悪質な言い訳と言えるでしょう。犬飼さんのフレーズを借りれば、まさに「信号無視謝罪」です。
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このように、自分達の何が問題だったのかすら全く認識できない政治家に、災害対応を任せていることは、甚だ不安でしかありません。そしてマスコミの追求力もあまりに弱く、一連の政府対応を批判する声はほとんど聞こえてきません。地球環境が激変する中、今後も大きな自然災害が発生することが見込まれますが、このままで良いのでしょうか?

まったくその通りとしか言いようがないが、驚くことに自民党の長老はいたって太っ腹(無神経)である。
麻生財務相や二階幹事長は、擁護したり大騒ぎすることではないと言う。

 大雨の予報が出ていた5日夜に自民党議員数十人が参加した飲み会「赤坂自民亭」への批判が続くことに関し、麻生太郎副総理兼財務相と二階俊博幹事長が17日、問題はなかったとの見方を示した。麻生氏は記者会見で「閣僚や閣僚経験者が若手の無派閥の人と懇親するのが目的だ。そういう意味では極めて有効な手段だ」と意義を語り、「あの日は行かなかったがほぼ毎回行っている。ああいう(批判)話に取られたのは、はなはだ残念だ」と述べた。
 二階氏は記者団に「ああいうことはなければなかった方がいいと思うが、目くじらたてて大騒ぎするほどのことではない」と指摘した。
麻生太郎氏「赤坂自民亭」を擁護 二階氏も問題なし

彼らは、「問題が露呈せず誰も不快に感じなければ、西日本が被災中でもどんちゃん騒ぎで酒を飲みます」と言っているわけである。
そして国会を閉じれば、国民の関心は他に向くだろうと考えているはずだ。
自民党総裁選に安倍首相は意欲的のようだが、そんなことになればこの国の未来は絶望的である。

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2018年7月20日 (金)

劇団四季という在野・浅利慶太/追悼(127)

劇団四季の元代表で、「キャッツ」「ライオンキング」のミュージカルを手掛けた演出家の浅利慶太さんが13日、悪性リンパ腫のため都内の病院で亡くなった。
85歳だった。
東京新聞のコラム「筆洗」(7月19日)は次のように書いている。

「モトシキ」という専門用語が演劇界にはある。ロシア語のようだが、日本語である。せりふが明瞭で鍛えられた俳優のことをそう呼ぶ▼「元四季」。劇団四季の出身者のことである。それほどその劇団の訓練は厳しい。「観客に聞き取れないセリフを話している俳優は舞台に上がってはならない」。そう語っていた、日本の演劇と興行を変革した演劇人が亡くなった。劇団四季の元代表で演出家の浅利慶太さん。

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東京新聞7月19日

 人脈の広さの原点は61年、開場を控えた日生劇場の役員に就任したことだった。28歳だった浅利さんは「ウエスト・サイド物語」の来日公演を企画したが、当時は外貨事情が悪く、政府の許可なくては外貨を使えなかった。そのため、浅利さんは大蔵大臣に直談判。じっくり話を聞いた大臣は「わがままはこれ限りにして」と言いながらも、関係部署に電話。「こういう質の高い作品を招くのは、意義のあること。希望に沿うようにしてあげてください」と指示した。故田中角栄元首相との出会いだった。
 58年に親友の石原慎太郎氏と安保反対の「若い日本の会」で活動。75年に石原氏が都知事選に出馬した時は選挙参謀を務め、さらに佐藤栄作元首相や中曽根元首相のブレーンになるなど、政財界に人脈を広げた。72年の佐藤元首相の退陣会見で「新聞記者は出て行け」と発言した時も、浅利さんが「1度だけテレビを通じて国民に語りかけられてはどうか」と進言したことが発端だった。83年にレーガン米大統領が来日した際、中曽根元首相との日の出山荘会談を演出した。

「石原慎太郎氏と安保反対の「若い日本の会」で活動」というのは時代の相として、若者は権力と対峙すべしという暗黙の了解があったのだろう。
石原慎太郎は老害とも言うべき存在になった。
2014年3月 9日 (日) 石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)

「今は昔」のこととしか言いようがないが、石原慎太郎も文学者だったのである。
2010年9月 9日 (木) 江藤淳の『石原慎太郎論』
そして、あえて言えば、私は文学者としての石原慎太郎は嫌いではなかった。
浅利慶太さんは、権力に近くはあっても在野であることの矜持は失わなかったと思う。
合掌。

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2018年7月19日 (木)

東京都の自動運転実証実験/技術論と文明論(100)

囲碁の「アルファ碁」というソフト(AI)が、プロ棋士のイ・セドル氏を破ったというニュースは、私のように学生時代にヘボ碁を打っていただけのレベルの人間にとっても衝撃的だった。
2016年5月24日 (火) ディープラーニングの発展と脳のしくみ/知的生産の方法(150)

「アルファ碁」は、ディープラーニングによって急速に腕を上げたと言われる。
⇒2016年2月21日 (日):AIはクリエイティブ分野でもヒトに勝つか?/技術論と文明論(41)

将棋でも電王戦というプロ棋士とソフト(AI)が対戦するイベントがある。
2014年4月27日 (日) 電王戦の結果と2045年問題/知的生産の方法(93)

電王戦で圧倒的な強さを示した「ボナンザ」の開発者・山本一成氏の書いた『人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?』ダイヤモンド社 (2017年5月)という著書がある。
近くの書店で目にし、購入して即日読了した。
開発者ならではび視点が散りばめられていて、非常に面白い。
機械学習におけるディープラーニングの位置づけ、将棋や囲碁におけるAIの現在の到達点や課題などが平易に説明されている。

ところで、将棋や囲碁の他にAIの実用化の分野で興味深いのは、車の自動運転ではなかろうか。
超高齢社会になり、人口が減少する社会では、人の移動(パーソントリップ)の形も大きく変わるであろう。
雑誌「NEWTON」の2018年8月号が『人工知能と自動運転』という特集を掲載している。
2018年7月 4日 (水) AIの発展と自動運転への期待/技術論と文明論(96)

東京都では自動運転の実証実験に入るようだ。
小池知事は、6月8日の記者会見で次のように語った。

自動運転技術は、もう既に皆さん、ご存じだと思いますけれども、都市が抱えるさまざまな社会的な課題、例えば、交通渋滞とか、交通事故とか、高齢者をはじめとする移動制約者の増加、そしてまた、深刻化するドライバー不足など、今、日本の課題にもなっているわけであります。そしてまた、解決すべき先端技術として、今、国際競争のど真ん中にあるという課題であります。
そこで、都といたしまして、昨年9月の段階で自動運転の実証実験を行います民間事業者などを支援する「東京自動走行ワンストップセンター」を設置いたしまして、自動運転技術の実用化に向けた取組を推進してまいりました。
加えて、今年度は、新たに自動運転技術を活用したビジネスモデルの構築を支援しようということで、民間事業者によりますプロジェクトの公募を行いました。その結果、対象となる二つのプロジェクトが決定したので、お知らせでございます。
一つ目が、郊外型で、住宅団地での自動運転バスによります移動手段創出をテーマとするプロジェクト。これは、多摩ニュータウンのように、再生が求められている地域で、バス事業者によって、将来的な運行も見据えて、既存のバス路線を補完したり、かつ起伏が多い地域における住民などの移動支援とか、AIによって乗客の姿勢を検知しまして、転倒事故の未然防止を行う車内サービスなどを検証するというものでございます。
それから、二つ目でありますけれども、自動運転タクシーによるサービス実証をテーマとするプロジェクトでございます。特に、需要の多い都心部の路線でのドライバー不足の解消、それから、ICT技術を活用した自動運転タクシーの遠隔監視、そして、予約・配車・料金決済サービスなどの検証を行っていくというものであります。こちらのプロジェクトは、自動運転技術に強みを持つ事業者と、それから、サービスの担い手として期待されます交通事業者がチームを組んでいただいて、具体的なサービスを提案してもらうということであります。こうしたプロジェクトを支援する取組を行うことによって、生き馬の目を抜くような状況にあります、この自動運転技術をいち早く社会に浸透させて、ひいては東京が抱えるさまざまな都市の課題の解決につなげていきたいというものでございます。

実証実験は以下のようなスキームで行われる。Photo_2
報道発表資料

なお、プロジェクト①、プロジェクト②はそれぞれ次図のように説明されている。Photo_3

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2018年7月18日 (水)

可算無限と非可算無限/知的生産の方法(179)

非常に多いものの喩えとして、例えば「浜の真砂」がある。
大盗賊・石川五右衛門の時世の歌として有名な「石川や浜の真砂は尽くるとも世に盗人の種は尽くまじ」である。
「古今和歌集」の343番。

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言の葉の種

要するに「永遠に生きて下さい」ということだ。
浜の真砂は、非常に多いに違いないが、それでもことが1粒、2粒・・・と数えることができる・
すなわち可算であって、1粒、2粒、3粒・・・と数えて行けばいつか数え終わる。

数は以下のように分類される。
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整数は数えられる。
しかし、無限に存在する。
何故ならば、常に「最大の数+1」を考えれば、最大の数は決められない。

無理数を含む実数は数えられないので、当然カウンタブルではない。
それでは整数の比、すなわち有理数はどうか?
分数を規則的に並べ、番号を振る。
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約分して同じ数は飛ばす。
この方法でカウントして行くことができるので、有理数はカウンタブル(可算)である。
浜の真砂は有限であるが、有理数は数え切れない。
自然数も有理数も無限であるが、0と1の間を考えてみよう。

自然数は0と1の2個である。
しかし有理数は、1/2、1/3・・・と無限である。
2VS∞であるから、自然数より有理数の方が大きいように思う。
しかし有理数には番号を付けられるので、可算である。
つまり、無限といっても、可算な無限と非可算な無限があるのである。

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図表はすべて、神永正博『直感を裏切る数学』講談社ブルーバックス(2014年11月)

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2018年7月17日 (火)

治水政策の想定と想定外の事態/技術論と文明論(99)

「平成30年7月豪雨」による水害は、改めて治水政策の難しさを実感せざるを得ないものとなった。
工学的な対策は一定の設計条件を前提にするが、想定を超えるような事態が起きた場合にどうすべきか?
地球環境のためか、観測精度の向上のためかは別にして、「記録にないような事態」が頻発している。

倉敷市真備町や愛媛県西予市の様子には息を飲んだ。
真備町は高梁川支流小田川の決壊による。
2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)2018年7月14日 (土) 頻発する異常気象と遊水機能を考慮した治水対策/技術論と文明論(97)

西予市では、上流の野村ダムの放流が適切であったか否かが問われている。Ws000023
大水害 愛媛県西予市野村

愛媛県西部の西予市と大洲市うぃ流れる肱川が氾濫し、約650戸が浸水した。
住民によると、午前6時半ごろから川は一気に増水して、津波のような濁流が押し寄せ、同7時半ごろには住宅の屋根まで水が及んだ。

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 気象庁によると、このときまでの24時間雨量は同市で観測史上最大の347ミリ。約3キロ上流の野村ダム(総貯水容量1600万立方メートル)は、午前6時20分から、緊急的に流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を開始。その水量は、直前の毎秒250立方メートルから一時、最大7倍近くに達した。
 地区の約5100人に避難指示が出たのは、7日午前5時10分。市関係者によると、その約3時間前の午前2時半ごろ、ダムの管理所長から市役所野村支所長に「7時45分に過去最大の毎秒1000立方メートルを放水する」と通告があったという。国は最初の連絡で「6時50分に放水開始予定」と告げたとし、双方に食い違いが出ているが、国の放流時刻の前倒し連絡などもあり、市の避難指示は5時10分に早まった。
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・・・・・・
 ダムを所管する国土交通省治水課は「避難指示が出てから操作までの70分間、川への流量も少なく道路への浸水もなかった。避難行動に貢献できた」と回答。四国地方整備局の長尾純二河川調査官は「ダムの容量を空けて備えたが、予測を上回る雨だった。規則に基づいて適切に運用した」と説明する。
・・・・・・
 京都大防災研究所の角哲也教授(河川工学)は、予測を上回る降水時のダム操作の難しさを「ちょうど良く運用するのは神業」と表現。「現場の切迫感を、いかに早く住民に伝え、避難行動につなげてもらうかが大事」とし、非常時にどう動くのか日ごろから想定しておく重要性を訴える。
西日本豪雨/下 愛媛・西予肱川が氾濫 ダム放流、人災の声

想定していない局面は常に起こる可能性がある。
それに対処するのが人間の強みのはずだが、不完全AI「東ロボくん」ですら、一般的な人間を超えているのが実状である。
ダムはもちろん設計条件内ならば有効であるが、設計を超えた事態に対処する方法論は未確立ではないだろうか。

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2018年7月16日 (月)

水害はスーパー堤防の仕分けが原因か/技術論と文明論(98)

「平成30年7月豪雨」による水害を、民主党政権時が「スーパー堤防を事業仕分け」したからだ、という批判が流行しているらしい。
スーパー堤防のことを多少でも知っていたら起きるはずの主張である。
そもそもスーパー堤防とはどいうものか?

国交省が1980年代に整備を始め、首都圏、近畿圏の6河川で873キロ造る計画だったが、民主党政権の事業仕分けで「完成までに400年、12兆円かかり無駄」と批判され、「いったん廃止」となった。11年に5河川120キロに縮小された。このうち昨年度末までにできたのは、部分的完成を含めて12キロ。事業再開後の13年度に北小岩1丁目など2カ所が新たな着工区間に選ばれたが、その後、新規の着工はない。江戸川区内では江戸川、荒川の約20キロで計画があり、これまでに2カ所で計2.5キロできている。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説

イメージ的には下図のようなものである。
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「400年かかる公共事業」の現場をみる

国交省が進めていた6河川とは以下の河川である。
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完了まで400年、総事業費12兆円とされたため、2010年10月の事業仕分けで「廃止」の判定がでた。
「百年河清を俟つ」という言葉も真っ青の400年である。

常に濁っている黄河の澄むのを待つ。あてのないことを空しく待つたとえ。(大辞林)

コスト・パフォーマンスから見て、仕分けされるべき事業だったと言える。
400年前といえば江戸時代初期であって、これから先400年を予測するのは不可能だからである。
日本の人口はこれから急速に減少していく。
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人口減少社会とこれから起こる変化

上図から予測すれば、400年後の日本列島の人口は1000万人以下である。
にもかかわらず、江戸川区は廃止判定後もスーパー堤防事業を強引に進めてる。
「まちづくり整備事業」(土地区画整理事業など)との一体施工を基本としており、対象区域の住民は、工事期間中ほかの場所で仮住まいをし、盛り土と宅地造成が終わってからスーパー堤防の上に新居を建てて戻るわけである。
稠密な土地利用の江戸川でさえ、コストに見合う効果があるか疑問符を付けられた。

今回、破堤した小田川は高梁川水系の支流であって、スーパー堤防の対象になり得ない河川であ。
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6カ所決壊、真備支流 岡山県が20年放置

つまり今回の西日本豪雨による決壊とスーパー堤防事業仕分けはまったく関係がないのである。
真備川の場合、治水計画が大幅に遅れていたことが原因と言った方が的確だろう。
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遅れてきた期間のほとんどが自民党政権であったことは言うまでもない。
治水事業費は、民主党への政権交代以前から進んでいたのである。Photo_5

民主党政権主犯説のようなデマが流行っているのは、情報を読む力の欠如であろうが、スーパー堤防という語感から、以下のような勘違いをしているらしい。
こんな堤防を期待しているとしたら、それも問題であろう。
この堤防が決壊したら、被害ははるかに大きくなるはずだ。
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2018年7月15日 (日)

「赤坂自民亭」の耐えられない軽さ/ABEXIT(74)

「赤坂自民亭」を巡る騒動は、現在の政権の姿を象徴するものであった。1807152_2
山口二郎・東京新聞7月15日

気象庁が警戒を呼び掛けている最中である。

 酒宴が批判されるのは当然だ。気象庁が昼2時、わざわざ「記録的な大雨となる恐れ」と警告を発したのに、「関係ねーよ」とドンチャン騒ぎをしていたのだから言い訳は通じない。すでにその頃、河川は増水し、土砂崩れが起きていた。
西村氏の謝罪が火に油 安倍自民“言い訳”に嘘発覚で大炎上

だいたい国会議員が内輪の酒宴の様子をSNSで拡散するセンスを疑う。
特に西村康稔官房副長官は、「獺祭-山口-安倍と賀茂鶴-広島-岸田のどっちだ?」「正に自由民主党」というはしゃぎようであり、「良いこと」をしたと思っていたはずであるる。
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2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73)

この認識というかセンスのギャップはどうしようもない。

 飲み会の様子を5日夜、ツイッターに写真付きで投稿し、批判を浴びている西村氏は12日の参院内閣委員会で、「大雨による災害発生時に会合をしていたかのような『誤解』を与え、多くの方が不愉快な思いをされた。反省している」と謝罪。10日にも同趣旨の反省の弁をツイッターに投稿したが、これが猛批判を招いている。西村氏のツイッターには、「なんだ、その開き直り」「誤解じゃなくて事実だったでしょ? 何を今更」「誤解って日本語の意味知ってますか」と批判が殺到している。
西村氏の謝罪が火に油 安倍自民“言い訳”に嘘発覚で大炎上

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日刊ゲンダイ7月13日

西村康稔という人物の履歴を、Wikipediaで見てみよう。

兵庫県明石市生まれ。実家は時計店で、父親はサラリーマン。神戸大学附属明石中学校、灘高等学校、東京大学法学部卒業。1985年、通商産業省入省。経済企画庁への出向や、石川県商工課長を経て、アメリカ合衆国メリーランド大学大学院で国際政治経済学を専攻し、1992年5月に修士号を取得した。1999年、通商産業省環境立地局調査官を最後に退官。
・・・・・・
2003年、第43回衆議院議員総選挙に再び無所属で兵庫9区から出馬し、前回敗れた宮本を下して初当選。無所属の新人議員5人で院内会派「グループ改革」を結成後、自民党に入党し、森派(当時)に入会。2005年の第44回衆議院議員総選挙では、新党日本公認の宮本、民主党公認の畠中光成を破り再選。
・・・・・・
2009年9月、自由民主党総裁選挙に町村派の一部議員から推される形で出馬(総裁選出馬に際し、町村派を退会した)したが、谷垣禎一に敗れた。

灘高→東大法→通産省という受験エリートである。
学力優秀だが、知性を感じられないタイプで、高橋洋一氏の同類と言えよう。
2018年7月13日 (金) 「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73)

もう一度「空白の66時間のタイムテーブル」を見てみよう。
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「赤坂自民亭」と浮かれているのも問題であるが、安倍首相が7月7日の11時49分に私邸に帰宅して後、翌朝まで災害対応の行動を取らなかったことはより本質的な問題である。
既に犠牲者が発生していたことが報じられているのである。
「政府として一丸となって、発災以来、全力で取り組んでまいりました」などという言葉がいかに虚しく響くか。
まったく「耐えられない軽さ」である。
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山口二郎・東京新聞7月15日

山体の崩壊と政治の崩壊に因果関係はないが、異常気象が環境政策と関連すると言えば、まったく無関係とは言えない。

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2018年7月14日 (土)

頻発する異常気象と遊水機能を考慮した治水対策/技術論と文明論(97)

平成史上最悪の水害となった今回の西日本豪雨は、「平成30年7月豪雨」と命名されたが、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)は、6~7日にかけて中国・四国地方周辺に大雨をもたらした雨雲を解析した三次元動画を公表した。
積乱雲が数珠つなぎに次から次へと生じる「バックビルディング現象」が各地で多発し、同じ場所に長時間、激しい雨を降らせていたことが確認された。

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 気象庁や国土交通省の気象レーダーの記録から解析した。南西から暖かく湿った空気が流れ込み、最大高度約7キロの積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が多発していた。さらに、積乱雲の成り立ちを詳しく見ると、積乱雲の風上に次の積乱雲が連鎖的に発生するバックビルディング現象がみられた。
 同研究所によると、積乱雲の寿命は30~60分程度だが、この現象が起きると、地上からは、あたかも一つの積乱雲が同じ場所に長くとどまり、激しい雨を降らし続けるように見えるという。2014年8月の広島土砂災害や、昨年7月の九州北部豪雨でもみられた。
 広島県では6日午後6時以降、局地的に1時間に100ミリ超の猛烈な雨が降り続いた。同研究所の清水慎吾・主任研究員は「広島県の上空で南風と西風がぶつかり合って生まれた強い上昇気流が、線状降水帯を長時間維持させた可能性がある」と分析する。
「バックビルディング現象」各地で多発が判明

バックビルディング現象によって猛烈な雨が長時間継続した。1807102_3
東京新聞7月10日

バックビルディング現象は、4年前の広島を襲った豪雨禍の時にも言われた。
2014年8月21日 (木) 豪雨禍の傾向と対策としての古人の知恵/日本の針路(30)

改めて解説を見てみよう。

激しい雨を降らせる積乱雲が連続して発生し線状に並びその規模が幅20〜50km、長さ50〜200kmになるものが線状降水帯と呼ばれています。
停滞性の線状降水帯は同じ場所で激しい雨が3時間を超えて降り続けることもあり、まさにその場所に居る人にとっては経験したことのない大雨となります。
停滞性の線状降水帯の発生要因のひとつにバックビルディング現象があります。次のような流れで線状降水帯を作り出します。
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最初に風の収束や地形効果などによって積乱雲が発生します。激しい雨を降らせながら上空の風に流されてゆっくりと移動して行きます。風上側のこの積乱雲が発生した場所で新たに積乱雲が発生し、またゆっくりと風下へ移動して行きます。この流れが繰り返され、発達した積乱雲が世代交代を繰り返しながら組織化されて線状降水帯を作り出します。積乱雲させる、水蒸気の供給や上昇気流を引き起こす要因の解消、積乱雲を移動させる上空の風の流れの変化がない限りこの状況が続きます。
集中豪雨をもたらす線状降水帯とは?

継続した豪雨により、小田川が高梁川に合流する地点で小田川がバックウォーターで水位が上昇し、破堤に至ったと理解される。

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 岡山県倉敷市真備まび町で被害が拡大した背景について、専門家は高梁たかはし川の増水で支流の水が流れにくくなる「バックウォーター現象」が、堤防の決壊を誘発したと指摘する。
 国土交通省によると、高梁川の支流・小田川などで少なくとも計3か所の堤防決壊が発生し、広範囲にわたる浸水の原因となった。
 現地調査した岡山大の前野詩朗教授(河川工学)によると、高梁川と小田川の合流点の下流は、川幅が狭く湾曲し、水が流れにくい「ボトルネック」になっている。今回の豪雨では、高梁川の水位が合流点付近で急激に上がり、傾斜が緩やかな小田川の水が流れにくくなって水位が上昇。高馬川など小田川の支流の水位も上がり、堤防が次々に決壊した。前野教授は「高梁川の水位上昇の影響がドミノのように支流に広がり、水位が高い状態が長時間続いた」と推測する。
「バックウォーター現象」で支流の水位急上昇か

記録的な豪雨であったことは確かであるが、異常気象が異常ではなくなりつつあるともいえるのではないか。
洪水防御の切り札のように言われてきたダムも、想定以上の降雨の場合には危険を増す可能性がある。
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東京新聞7月13日

想定以上の現象に対して危険を増すというのはハード的対策に共通である。
基本的には堤内の土地利用を含めた総合的な対策ということになるが、人口減少時代においては、かって行われていた霞提のような遊水機能を持たせる対策を考えることも必要だろう。

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2018年7月13日 (金)

「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73)

「空白の66時間」と言われる豪雨災害の初動の遅れに対し、さまざまな見方が登場し、それが見解を表明した人の「思考・志向」を映し出す鏡となっている。
「空白の66時間」とは、平成最悪の水害となった「平成30年7月」豪雨に対する政府の初動対応の遅れを指す。
2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71)

例によって、財務省出身の嘉悦大学教授・高橋洋一氏は、政権擁護に必死であるが、言っていることは論旨不明と言わざるを得ない。

   豪雨被害は、平成では最大級である。そのため、安倍晋三首相は、欧州訪問をとりやめ、被災地を視察することとしている。
   その一方、立憲民主党など左派野党は、先週(2018年7月)5日夜に行われた安倍首相や自民党議員が衆院議員宿舎で開いた懇親会について、「赤坂自民亭」と批判している。
   筆者の感想をいえば、こうした政治利用はどちらの側からみても見苦しく、やめた方がいい。被災地の当事者の方が不快に思うならやめた方がいいが、被災地ではそれどころではなく必死に対応しているはずだ。こうした会合などを批判するのは、政治的に利用したい第三者である。
政治家と官僚の「仕事」は違う 「赤坂自民亭」騒動への違和感

「よくも言ったり!」である。
「左派野党」が「赤坂自民亭」と名付けて批判しているような印象であるが、「赤坂自民亭」は自分たちの命名である。
2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)

高橋氏は次のようにも言っている。

政治家には会合はつきものである。もし会合なしの政治家がいるなら、民の声を聞かないという意味で政治家たる職務を果たしていないともいえる。  自民党や立憲民主党も、身内の会合を政治家が喜々としてSNSで発信することもいかがなものかという批判もあるだろうが、今やそうした時代である。
・・・・・・
被災地以外で妙な自粛ムードが広がると、経済的な「二次被害」になる可能性すらある。それは、自然災害を超えた「人災」にもなりうるので、よく注意したほうがいい。

何を言いたいのだろうか?
かつては大規模災害は「改元」の契機にすらなった。
「自粛ムード」が発生するのは当然であろうが、「政治家は率先してそのムードを打ち破れ」ということか?
それにしても「赤坂自民亭」が開催されたのは、気象庁が災害の発生についての警告を呼び掛けた直後のリアルタイムのことであり、自粛ムードと無関係であることは言うまでもない。
高橋氏は、ある部分の知能は高かったのだろうが、知性というものを感じられない。
AIに取って代わられるタイプの人だろう。

ごく簡単に経緯を振り返ってみよう。

1807133
 気象庁は五日午後二時、緊急に臨時記者会見を開き「記録的な大雨となる恐れがある」と注意を呼び掛けた。豪雨警戒を理由に会見を開くのは過去に例がない。担当者は「かなりの危機感があった」と振り返る。五日午前中には近畿三府県で十六万人超に避難指示・勧告が出ていた。
 宴会はその夜に開かれた。「赤坂自民亭」と銘打った宴会には安倍晋三首相や小野寺五典防衛相、西村康稔官房副長官ら官邸の危機管理を担う人物が出席。上川陽子法相、広島県選出で自民党の岸田文雄政調会長も参加し、談笑して、酒を酌み交わす姿を西村氏らがその日の夜にツイッターに投稿した。
豪雨対応「万全」だったか 野党は政権批判

安倍首相自身はどう「反省」しているか?

昨日(11日)、甚大な被害を受けた岡山県を訪問。そこで初動対応が遅れたという指摘が出ていることについて記者から質問された安倍首相は、こう言い放ったのだ。
「政府として一丸となって、発災以来、全力で取り組んでまいりました」
「発災以来、政府一丸」とは、一体どこの国の話だろう。「全力で取り組んだ」と言えるのは、迅速に災害に対応するための非常災害対策本部を設置してこそのこと。だが、安倍首相が同本部を立ち上げたのは8日の8時の話であって「発災以来、政府一丸」というのは完全な嘘だ。
 しかも、何度でも繰り返すが、気象庁が「厳重な警戒が必要」と異例の緊急会見を開いたのは5日14時のこと。同日、避難勧告が数十万人に及ぶなかで、安倍首相は総裁選対策で「赤坂自民亭」なる内輪の宴会に参加した。しかも、この宴会後、エプロン姿の自民党・石田真敏議員と左藤章議員はテレビの取材に対し、「みんなと写真撮ったりね、いろいろ人も変わってワイワイ声も聞こえないくらい」と赤ら顔で答え、こうダメ押ししている。
「酒飲んで、ワァーっというだけです」
 安倍首相と仲良く写真を撮って「酒飲んでワァー」というだけの宴会……。「一丸となって全力で取り組んで」いたのは、実際のところ、自民党の子飼い議員たちとの酒盛りではないか。
安倍首相が豪雨災害66時間放置をなかったことに!和田政宗は朝日のただの被災地支援検証を「政権攻撃」と封殺

そして、首相側近の西村康稔官房副長官は、「赤坂自民亭」の様子を、グラスを持った笑顔の集合写真とともに「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!」とツイッターに投稿していた張本人である。
Photo

西村氏は、集合写真を自身のツイッターに投稿したことについて、「多くの方々に不快な思いをさせてしまい、おわびを申し上げたい。反省もしている」と陳謝した。

西村氏は東京・赤坂の衆院議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」に出席。首相のほか岸田文雄・党政調会長らが顔をそろえた。西村氏は懇親会終了後の午後10時ごろ、グラスを持った笑顔の集合写真とともに「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!」とツイッターに投稿した。
 西村氏は11日、BS11の番組で陳謝する一方、懇親会が開かれていた時点で「大雨特別警報」は出ていなかったことを念頭に、「大雨被害が出ている最中に会合をやっているかのような誤解を与えた」とも述べた。

誰も「大雨被害が出ている最中に会合をやっている」などと言ってはいない。
5日夜は、東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨になる恐れがあると気象庁が発表していたのにかかわらず、と批判しているのである。
不正確な表現で「誤解を与えた」というのは、稚拙なすり替えである。
まったく姑息としか言いようのない男であるが、誰に対して陳謝したのだろうか?

和田政宗氏は、例の如くの朝日批判である。

自民党を代表するネトウヨのひとりである和田政宗議員は、世間からの批判をかわそうと、矛先を報道に向けはじめたのだ。
 和田議員がもち出したのは、今朝の朝日新聞。それは「国のプッシュ型支援、被災直後は歓迎でも ミスマッチも」と題されたもので、安倍首相が力を入れている「プッシュ型支援」の問題点を指摘した記事だ。
「プッシュ型支援」は、〈国が被災府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送〉(内閣府HPより)するものだが、記事では〈プッシュ型は被災直後の混乱期を乗り切るための措置〉であり、〈過剰に届いたりミスマッチが生じたりし、早い段階で被災地の求めに応じて物資を届ける「プル型支援」に切り替える必要がある〉と指摘。実際、愛媛県大洲市では、プッシュ型支援で届けられた仮設トイレが「管理方法が決まらず使っていない」状態にあるという。
安倍首相が豪雨災害66時間放置をなかったことに!和田政宗は朝日のただの被災地支援検証を「政権攻撃」と封殺

小野寺防衛相はどうか。
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もう一度「赤坂自民亭」の様子を晒しておこう。180710_2
日刊ゲンダイ7月10日

次のツイートの写真が、はしゃぐ西村官房副長官、片山さつき議員そして安倍首相らの発言をまとめている。
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これが、政府・自民党の姿なのだ。
2018年7月12日 (木) 失態を直視せず誤魔化そうとする政権/ABEXIT(72)
2018年7月10日 (火) 西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)

口先だけの災害対策は百害あるのみである。Photo_2

誰が考えても、宴会などやっている場合でないことじゃ明らかであろう。

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2018年7月12日 (木)

失態を直視せず誤魔化そうとする政権/ABEXIT(72)

「平成30年7月豪雨」災害が激甚になったのは、記録破りの豪雨であったことに加え、安倍政権の対応の拙劣さにあったことは否めない。
2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71)

しかし、「安倍政権は災害対応が66時間遅れたというのはデマだ」という説が流れている。
「2日の13時には内閣府は情報連絡室を設置していた」というのである。

「内閣府連絡情報室は、内閣府防災業務計画(http://www.bousai.go.jp/taisaku/keikaku/pdf/260618_cao_operation_plan.pdf)によれば、一定の気象状況が予測される場合、事務的に設置するのが『情報連絡室』です。設置責任者は、政策統括官(防災担当)付参事官(災害緊急事態対処担当)となっています。政策統括官は局長級、参事官は課長級です。これは閣僚の意志とは無関係に、自動的に設置されるものです。また、総理大臣官邸(内閣官房)の連絡室とは別物です。内閣府防災担当は、旧国土庁の組織で、官邸の対応とは言えません。それに、関係省庁災害警戒会議についても、国土交通省とか、総務省消防庁で対応しているからといって、官邸が主導して対応しているとは言えないですよね。それと同じです」
 つまり、内閣府情報連絡室の設置をもってして「政府はきちんと対応していた」というロジックが成立するならば、モリカケ問題で安倍政権があたかも「官僚の暴走」のように他人事を決め込んでいるのも無理筋だということになる。
「ちなみに、官邸の連絡室も、一定の災害の場合に、自動設置されるはずです。非常災害対策本部や総理を本部長とする災害対策本部の設置は、閣僚の了解が必要ですが、官邸連絡室の設置には、閣僚の意思は不要のはずです。閣僚が主導した対応は、8日の『非常災害対策本部』の設置からと考えるのが妥当です。なぜならば、非常災害対策本部とは、防災担当大臣の主導で、各省の幹部たちがタテ割りを超えて動く『装置』だからです」
 つまり、これらの連絡室設置=官邸が主導して対応というのは早計で、やはり官邸の対応は最大限譲歩したとしても官邸連絡室の設置である6日13時58分、きちんと縦割りを超えて動ける体制ができたのは非常災害対策本部設置は8日なのだから、やはり「遅い」ことには間違いないのだ。
 もし、各省庁や官邸主導ではなく、制度的に進んだ行政府の動きをもってして「安倍首相は対応していた」というならば、現政権が「官僚が勝手にやった不手際」としている文書改ざん問題などについても、「安倍首相は責任を取るべきだ」と主張するのが筋だろう。
「安倍政権は災害対応が66時間遅れたというのはデマ。2日からちゃんと対応していた」は本当か?

何でこんな無理をしてまで、政権を擁護しようというのだろうか?
安倍首相の初動対応を積極的に批判しているメディアは少数である。
TVはもともと期待できないにしても、新聞でも西日本新聞、中日(東京)新聞、静岡新聞等のブロック紙もしくは地方紙が中心のようである。
1807112
東京新聞7月11日

野党6党派は昨日、菅義偉官房長官に政府は豪雨災害対応に最優先で取り組むよう申し入れをおこない、安倍首相や石井国交相といった担当大臣が最優先で災害対応に当たることを求めた。
だが、安倍政権は内閣委員会の開催を強行し、災害対応の先頭に立つべき石井啓一国土交通相を、なんと6時間も委員会に張り付かせるた。
なんのためか?
カジノ法の審議のためという信じがたい理由である。
安倍政権はこの非常事態に「災害対応よりもカジノ審議」を優先させたのである。

「赤坂自民亭」に安倍首相と一緒に参加した西村康稔・内閣官房副長官が、宴会の模様を嬉々として投稿し、批判が高まると、被害状況や自衛隊の態勢にかんするデマを垂れ流したことを伝えたが(参照http://lite-ra.com/2018/07/post-4115.html)、この西村官房副長官が昨晩、『深層NEWS』(BS日テレ)に生出演。大雨特別警報が出ていながら犠牲者が多く出たことについて、西村官房副長官はこう主張したというのだ。
「それぞれの自治体が政府の呼びかけに対し、どう反応したか検証していくことが大事だ」
……
政府の呼びかけ、だと? 気象庁が大雨では異例の緊急会見を開いて「記録的な大雨となる恐れ」「厳重な警戒が必要」と警告したのは、5日の14時だ。なのに、その夜に何事も起きてないかのように宴会を開き、いまにも氾濫しそうな河川の状況に不安で怯える人びとがいることも無視したのは、安倍首相や西村官房副長官をはじめ、自民党の面々ではないか。
 いや、そればかりか、西村官房副長官は宴会後、言い訳するかのように〈地元明石淡路の雨は、山を越えた〉などと、現実とはかけ離れたデマまがいのツイートまでしていた。政府高官が公式アカウントで、警戒感を削ぐようなアナウンスをおこなっていたのである。
……
 だいたい、西村官房副長官は「大雨特別警報」の発令を「政府の呼びかけ」にすり替えているが、本来、政府が災害時におこなうべき「呼びかけ」とは、第一に、安倍首相がカメラの前で強い警戒を求め、勧告が出ている地域の住民に対してただちに避難を促すこと、そして菅官房長官が随時、把握している状況を伝えることだ。
 しかし、今回の安倍首相の対応はどうだったか。6日午後には福岡県、佐賀県、長崎県、広島県、岡山県、鳥取県、京都府、兵庫県に大雨特別警報が出され、気象庁も「重大な危険が差し迫った異常事態」と警戒を呼びかける異例の会見をおこなったが、安倍首相は会見を開くこともなかった。その上、菅官房長官の午後の定例記者会見では、注意喚起をすることもなかったばかりか、被害が出ているなかで宴会を開いて複数の参加議員がSNSに写真を投稿していた問題を問われると、「大雨は官邸でも対応している」「大きなやるべきことをしっかりやっていれば問題ない」などと答えた。
安倍首相の豪雨被災地ないがしろは続いている! 災害対応よりカジノ優先、宴会参加の官房副長官は自治体に責任転嫁

気象庁の緊急会見から約66時間、大雨特別警報の発令から約38時間、安倍首相は「緊急事態」であることを示さなかったのである。
西村官房副長官が「自治体が政府の呼びかけに対し、どう反応したか」などと言うのはとんだお門違いである。
「どのような非難も受ける。正直言って、これだけすごい災害になるという予想は私自身はしていなかった」と述べた竹下総務会長の方が率直だと言うべきであろう。
2018年7月10日 (火) 西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)

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2018年7月11日 (水)

豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71)

「平成30年7月豪雨」と命名された今回の西日本豪雨の被害が広がっている。
その大きな要因が初動の遅れであることは疑い得ない。
近年の大規模災害と比べて政府の初動が著しく遅いのである。66_2
【平成30年7月豪雨】政府の「空白の66時間」を視覚化

他の政党に比べ、政府・自民党の感覚は際立って鈍い。2

そのため初動の遅さを表す「空白の66時間」という言葉が生まれている。
具体的なタイムテーブルで示されている。66

【平成30年7月豪雨】政府の「空白の66時間」を視覚化

タイムテーブルに記されてもいるように、気象庁が異例の記者会見を開いて警戒を呼び掛けている最中、安倍首相をはじめとして政権幹部が参加して、「赤坂自民亭」と称する議員会館で自民党国会議員が「和気あいあい」と宴会を開いていた。
それをSNSで拡散してくれた。
2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)
2018年7月10日 (火) 西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)

つまりこういうことだ。
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さすがに自民党の中からも疑問視する声が上がっている。

 自民党の森山裕国会対策委員長は10日の記者会見で、記録的な大雨になる恐れがあると気象庁が発表した5日の夜、安倍晋三首相らが自民党議員の懇親会に出席したことについて「大雨や災害が予測される時は、できるだけ、そのようなことは慎んだ方がいい」と苦言を呈した。
 衆院議員宿舎で開かれた懇親会「赤坂自民亭」は、首相のほか、岸田文雄政調会長、竹下亘総務会長、小野寺五典防衛相らが出席。森山氏は出席していなかった。
 西村康稔官房副長官が5日夜、グラス片手に笑顔の集合写真を添え、「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!」とツイッターに投稿すると、ネット上で「この非常時に懇親会!」「中止に出来なかったのか?」と批判が広がった。
豪雨前の赤坂自民亭「慎んだ方がよかった」自民・森山氏

「慎んだ方がよかった」というレベルではない。
西村康稔官房副長官は安倍首相の最側近として知られ、なおかつ防災担当である。

被害拡大が懸念されていた5日の夜、西村官房副長官は安倍首相に迅速な対応を進言するでもなく、一緒に「赤坂自民亭」に参加。そして、安倍首相と岸田文雄・自民党政調会長の、あきらかに酒が入って陽気な様子のツーショットや、安倍首相を中心に参加者が乾杯ポーズで写った集合写真とともに、こんなツイートを投稿した。
〈参加した多くの議員は「(安倍総理が差し入れた)獺祭と(岸田政調会長が差し入れた)賀茂鶴とどっちを飲むんだ??」と聞かれ、一瞬戸惑いながらも、結局両方飲んでました。そして、お二人と写真を撮っていました笑笑 いいなあ自民党。〉
〈今日は、安倍総理、岸田政調会長、竹下総務会長が勢揃い。和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!まさに自由民主党党。〉(原文ママ)
・・・・・・
この宴会写真と被災者の不安を無視した投稿には非難が殺到したためか、同日23時45分には〈地元秘書から、地元明石淡路の雨は、山を越えたとの報告を受けました。秘書、秘書官と随時連絡を取り合いながらの会でした〉とツイートしたのだ。
 官房副長官ともあろう者が、自分の選挙区のある地域にしか目を向けていないことを露呈させるとは、これだけでも酷い話だが、その明石市や淡路島にしても〈山を越えた〉というようなことはなく、その後、6~7日にかけて避難勧告が出され、淡路市にいたっては本日21時16分まで大雨、雷注意報が出されていた。つまり、自分が飲み会で浮かれていたのを打ち消すために、災害を矮小化するデマを流したのである。
 さらに、西村官房副長官は7日の関係閣僚会議において安倍首相が発言している写真と合わせて、〈これまでに経験したことのない記録的な雨量〉と投稿。未曾有の雨量だと認めているのに、この時点で非常災害対策本部がいまだ設置されていないのはどう考えてもおかしいのだが、西村官房副長官がそうした安倍首相の失策を指摘するはずもなく、ただ写真だけで「やっている感」を演出しようとしたのだ。
 しかも、問題はこのあと。西村官房副長官は、投稿文をこう締めくくっているのである。
〈現在、京都、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県で自衛隊員約21,000名が人命救助など活動中。〉
 じつは、これもデマだった。実際、自衛隊の救助態勢について、8日の毎日新聞の朝刊は以下のように伝えている。
〈防衛省によると同日(注・7日)夕現在、京都、高知、福岡、広島、愛媛、岡山、山口の7府県からの災害派遣要請を受け、自衛隊は約600人態勢で、土砂崩れ現場での救助、孤立地域からの輸送、洪水対策などにあたっている。西日本の陸上自衛隊を中心に約2万1000人が救助要請などに即応できるよう待機している〉
 ようするに、実際に7日時点で救助などの活動に当たっていた自衛隊員は約600人に過ぎず、2万1000人は「待機」していただけだったのだ。それを西村官房副長官は、「約21,000名が人命救助など活動中」だとデマを喧伝したのである。
安倍首相の豪雨対策そっちのけ自民飲み会参加に非難轟々! 一緒に大はしゃぎの安倍側近は言い訳のためデマ拡散

さすがに安倍首相が見込んだ男である。
ウソ・出まかせの連発である。
安倍政権の大失態というコメントが使われているが、本質の露呈と考えるべきであろう。

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2018年7月10日 (火)

西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)

西日本を襲った豪雨の被害は平成史上最悪となった。
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東京新聞7月10日

この非常時に、議員宿舎で「赤坂自民亭」と称して酒盛りをしていた自民党議員がいたことは忘れるべきではないだろう。2_2

「楽しい!」とはしゃぎ、わざわざツイッターで宴会の様子を拡散した片山さつき議員が皮肉られるのは当然であろう。
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2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)

もちろん今回の豪雨は広がり、強さ等において記録的なものであることは確かである。
自民党の竹下亘総務会長は9日午後の記者会見で、自身も宴会に参加していたことについて、「どのような非難も受ける。正直言って、これだけすごい災害になるという予想は私自身はしていなかった」と述べた。
正直と言えば正直であるが、気象庁から最大級の警告が出ていたのである。Photo_4

要するに「軽い」のである。
ものごとをを考える習慣のない人たちが調子に乗って宴会をやっていたということである。
これでは気象庁がいくら警鐘を鳴らしても、ムダということになる。1807082
東京新聞7月8日

Jアラートを利用して北朝鮮のミサイル危機を煽ってきたので、警報を軽視してしまったのではないか。
参加者の中には上川法相もいたが、翌日の7人の死刑執行はいつ決まったのか?
命令書にサインをしていたはずであり、慄然とする。
安倍政権の酷薄さを見る思いがする。

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2018年7月 9日 (月)

モリカケ症候群・東京医科大のブランディング/ABEXIT(69)

公的な権限を私物化する「モリカケ症候群」が蔓延している。
文部科学省科学技術・学術政策局長だった佐野太氏が受託収賄容疑で逮捕された。
現職の本省局長が逮捕されるのは異例のことで、財務省と扱いが異なるような気もするが、容疑の内容は以下のようである。

佐野容疑者は1985年に旧科学技術庁に入庁。2005年に高等教育局私学部参事官、2012年に官房総務課長、2014年に官房審議官、2016年に官房長を務め、2017年に科学技術・学術政策局長に就任した。いわば私学行政のプロでもある。
そもそも「私立大学研究ブランディング事業」の選定は納谷廣美(公財)大学基準協会特別顧問を委員長とする同事業委員会が行うが、それは事実上の具申にすぎず、実際に最終的な裁可を下すのは旧文部系の文科省高等教育局長になる。
旧科技系の佐野容疑者はこのラインにはなく、直接の決裁権を持っているわけではなかったが、東京地検特捜部はその経歴から佐野容疑者が私立大学関連の監督行政などに通じていたと判断し、収賄罪成立に必要な「職務権限」内と見なしたようだ。
文科省エリート局長「受託収賄事件」の不可解

東京医大側で関与していたと言われる臼井正彦理事長と鈴木衛学長は共に辞職した。
大学の2トップである。

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「理事長は『オレに任せとけ』という親分肌の人」。臼井氏を、ある大学関係者はそう明かす。「よく言えば決断力はあるが、周りの声を聞かずに何でも自分で決める。ワンマン体質だ」と批判する。一方、学長の鈴木氏については「穏やかな印象。その分、学内での存在感は薄かった。そんな不正をするとは思えない」と驚いた様子。
東京医科大「ワンマン」学内から批判も

こういう関係は「あるある」の一種だろう。
臼井理事長は資金集めに長けていたようだ。

東京医科大学はここ最近は科研費の獲得に意欲的に取り組んでいた。
たとえば2013年度には140件だった科研費の採択件数(新規・継続)は2016年度は191件となり、2017年度には213件まで急伸した。科研費の金額も2013年度は2億6052万円だったが、2017年度には4億6436万円と急増している。
中でも「学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自性を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、施設費・装置費・設備費と経常費を一体的に支援」する「私立大学研究ブランディング事業」については、東京医科大学は非常に重要なことと位置づけていたに違いない。
もっとも2016年度は申請校数が198校で、選定されたのは40校のみ。非常に厳しい競争率の中で、東京医科大学は落選した。一方で新設された獣医学部が問題になっている加計学園は、岡山理科大学と千葉科学大学で選定されている。
岡山理科大学は「恐竜研究の国際的な拠点形成」として、また同学園の千葉科学大学は「『大学発ブランド水産種』の生産」研究で選定されており、初年度の交付金額はそれぞれ4221万円と3752万円にも上る。
金額は単年度ごとに見直されるものの給付は5年間続き、合計で1億5000万円支給される。7月5日夕方に国会内で行われた本件に関する野党ヒアリングで文科省の職員の口から加計学園の名前と交付された金額が出ると、出席していた野党議員から軽いどよめきが起こった。
文科省エリート局長「受託収賄事件」の不可解

事件の背景や全容は徐々に明らかにされていくであろうが、モリカケ症候群蔓延に第一に責を負っているのは安倍首相に他ならない。
「膿を出し切るために」どうすべきか、誰が考えても明らかである。

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2018年7月 8日 (日)

緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)

停滞する梅雨前線の影響による記録的な大雨は7日も、西日本を中心に降り続いた。
各地で河川の氾濫や土砂崩れなどの被害が拡大し、救助活動が続いている。
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東京新聞7月8日

被害の全貌は未だ把握できていないし、今後の降り方も予断を許さない。
まさに緊急事態である。

という状況にもかかわらず、安倍首相は自民党国会議員が懇親を深めるため衆院赤坂宿舎(東京都港区)で定期的に催している飲み会「赤坂自民亭」に参加した。
9月の党総裁選を意識した動きとみられるが、終了後、首相は「和気あいあいで良かった」と記者団に語った。
5日夜のことであるが、5日には記録的大雨になることが警告されていた。

片山さつぎ議員のはしゃぎようはどうか。
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オウム死刑囚の7人同時に死刑執行という異例の判断も合意されていたはずである。
「楽しい!」とか「和気あいあい」とか、品性も知性も想像力もそして志も感じられない集団ではないか。

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2018年7月 7日 (土)

「今後の会見予定なし」という加計理事長の不遜/ABEXIT(67)

加計学園が、加計孝太郎理事長が記者会見する予定はないと、県庁の記者クラブにファクスで伝えた。
何という不遜な態度だろう。
長い間逃げ回っていて、大阪北部地震とW杯の陰に隠れるように、形だけの記者会見を開いた。

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 学園のファクスはA4判1枚。参加者を限らない会見を記者クラブが6月28日と7月3日付で求めたのに対し、「6月19日、学園本部において、理事長及び学長が記者会見を行った」とし、「今後の記者会見について対応予定はございません」と回答した。また、学園は文部科学省の記者クラブに対しても同様に、会見予定がないことをファクスで伝えた。
 ファクスでは、岡山での会見について「多数のご質問を受け誠実に対応した」とし、「新たな質問が出なくなり、質問が出尽くしたことから記者会見を終えた」と記している。
 実際には会見は、開始の約20分後に学園の司会役が「質問はあと三つ」と打ち切りを宣言。その後も「あと一つだけ」「この辺で終わります」などと繰り返し、「後悔していることはあるか」と質問が飛ぶなか加計氏は会場を去った。
 一方、会見では「きちんとした形の会見を」と求める記者に対し、加計氏は「検討する」と回答している。これも含めて今後の会見予定はないのかを朝日新聞が4日尋ねたところ、学園は「質問、取材への対応を控える」と答えた。
 愛媛県の中村時広知事は学園のファクスの内容を受け、「最高責任者が対外的な説明責任をしっかりと果たすことにより、学園の信頼確保につながると確信していることに変わりはない。県民の代表である県議会での議論を注視したい」とのコメントを発表した。
「今後の会見予定はない」 加計孝太郎氏側が記者クラブにファクス通知

だいたい事務局長がウソをついていました、という説明で通用すると考えていることが信じられない。
今治市民も怒りの声を上げているのだ。180719
「週プレ」7月19日号

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2018年7月 6日 (金)

オウム真理教の死刑囚の死刑執行/戦後史断章(30)

オウム真理教の元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫死刑囚(63)らが、6日死刑が執行されたことが報じられている。
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【号外】オウム・松本死刑囚ら刑執行

未だに詳細が不明な部分も多く、不可解な事件であったが、一つの時代が終わったと言って良いだろう。
しかし、再び起こらないとは言えない。

オウム真理教の代名詞とも言える地下鉄サリン事件が起きたのは1995年3月であった。、
もう23年前になるが、記憶は明瞭である。
既に前年から、ヨガ同好会のような組織から生まれたオウム真理教という教団が関与したのではないかと推認される犯罪が連続していた。
物情騒然とした雰囲気のびきの年明けであったが、新年早々に阪神淡路大震災が起きた。
⇒2015年1月17日 (土):阪神淡路大震災から20年/日本の針路(99)

ますます社会不安的な状況人sっていた時、「地下鉄サリン事件」が起きた。
2015年3月20日 (金) 地下鉄サリン事件から20年/戦後史断章(19)

オウム真理教の特徴の一つは、代表(教祖)の松本智津夫が冴えない風貌であったのに対し、幹部に高学歴者が多いことだった。
・青山吉伸:京都大学法学部
・村井秀夫:大阪大学理学部物理学科→大阪大学大学院
・早川紀代秀:神戸大学農学部→大阪府立大学大学院
・中川智正:京都府立医科大学
・遠藤誠一:帯広畜産大学→京都大学大学院
・土谷正実:筑波大学農林学類→筑波大学大学院
・豊田亨:東京大学医学部
・富永昌宏:東京大学理学部→東京大学大学院
・廣瀬健一:早稲田大学理工学部応用物理学科
・林郁夫:慶應義塾大学医学部
・上祐史浩:早稲田大学理工学部電子通信学科→早稲田大学大学院
⇒2011年11月25日 (金):オウム真理教事件と知的基礎体力(?)

彼らのように、学力において秀でていると思われる人間がなぜ簡単にマインドコントロールされてしまったのか?
たとえば、富永昌宏は、高校時代(灘高)、3年連続で「大学への数学」誌の学力コンテストで全国1位になったというし、青山吉伸は在学中に司法試験合格している。
相当な秀才であったことは間違いないだろう。

毎日新聞社の牧太郎氏(サンデー毎日の編集長等を歴任)や菅直人元首相らは、「知的基礎体力」という言葉を使っているが、私は「知的基礎体力」という言葉がよく分からなかったし、今も分からない。
文脈からすると、「柔軟に幅広く状況に応じて判断する力」のようであるが、要は、自分で判断をすることを放棄し、他者の判断に身を委ねてしまっているからのように思える。

昨年の学習指導要領の改訂により、カリキュラムが段階的に改変されることになっている。
新しい学習指導要領の狙いはアクティブラーニングすなわち未知の問題に対して、自ら主体的に学習する姿勢の涵養である。
オウム真理教の幹部たちは、受験秀才ではあったが、問題意識を持って主体的に学ぶ能力に欠けていたように思える。
受験秀才はAIに叶わない。
もっとも「東ロボくん」プロジェクトが示すように、一般的な高校生がAI未満であることが深刻な問題であるが。

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2018年7月 5日 (木)

9条をカタキ視する「忖度」/ABEXIT(66)

国会でゾッとするような事件が起こった。
なんと、「9」とプリントされたTシャツを着た女性の国会傍聴を、参院警務部が制止したというのだ。
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東京新聞7月3日

彼女は以下のようにツイートしている。
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紫野さんが「1だったらいいですか」と質問すると、この職員は「1だったら大丈夫」と述べたという。
政治的なメッセージが、時や場所によって制限されることはあるだろう。
しかし「1はいいが9はダメ」というのは幼稚すぎないか。

さらに、東京新聞が参院警務部を取材したところ、サッカー日本代表・岡崎慎司選手の背番号「9」が入ったレプリカユニフォームの場合は「制止しない」し、九条ネギや「銀河鉄道999」のTシャツの場合も「政治的メッセージは含まれておらず、入場は拒まない」と回答している。
「憲法9条」が目のカタキにされているのだ。
しかし、「憲法99条」の憲法遵守義務がある。

 日本国憲法は、天皇・摂政、国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員に、「憲法を尊重し擁護する義務 obligation to respect and uphold this Constitution 」を課している(第99条)。憲法制定者である国民が、天皇や公務員に憲法尊重擁護義務を課しているのである。憲法制定者である国民は、憲法遵守義務を課せられる対象ではない。

参議院の係員には、当然憲法遵守義務があるはずだ。
 第99条にいう「この憲法」とは、日本国憲法の全体をさすのであり、自然権思想や社会契約論という日本国憲法の基幹をなす論理、ならびにそれを前提する具体的条文を度外視して、ただたんに憲法をほかのあらゆる法律のうえにたつ「最高法規」ととらえたうえで、「最高法規」であるから「尊重擁護」義務があるのだ、と解釈してはならない。
 この誤った解釈だと、「立憲主義的」憲法でない、たとえば大日本帝国憲法のように自然権や社会契約論を前提としない「憲法」に対する絶対的服従義務としての「尊重擁護義務」との区別がつかなくなる。

こういう観点からすると、主権者である国民の行動を制約する参議院係員の行動はおかしいと言わざるを得ない。
安倍首相をはじめとする9条改憲主義者に対する「忖度」であろう。
私には、さいたま市公民館が、「9条デモ」を詠んだ俳句を、月報に不掲載にしたことが思い出される。
2014年7月31日 (木) 「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)
⇒2014年7月 5日 (土) さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)

過剰な「忖度」が国を亡ぼすことは、現代史の教えるところではないのだろうか。

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2018年7月 4日 (水)

AIの発展と自動運転への期待/技術論と文明論(96)

さまざまな分野でAIの実用化が進んでいる。
2018年1月13日 (土) スマートフォンとAI/知的生産の方法(170)

AIは、長いこと産業界のリーディング産業として君臨してきた自動車産業の姿を一変させるだろうと予測されている。180421
「週刊現代」4月21日号

当然、花形だった機械工学の技術社の立場も変わってくるだろう。1804212
同上

車については、製造だけでなく自動運転分野への影響も大きい。
高齢者の運転する車の事故のニュースが多いが、体力の衰えた高齢者ほど自動車に頼るニーズは高いのである。
特に、限界集落化しているような地域では喫緊の課題と言えよう。¥
雑誌「NEWTON」の2018年8月号が『人工知能と自動運転』という特集を掲載している。

自動運転は、次のようなレベルで考えられている。Photo

ロードマップは以下のように想定されている。Photo_2

20204

東京都で、自動運転やビジネスモデルの実証実験も始まった。
高齢者のモビリティをどう確保するかは現在の重要テーマである。

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2018年7月 3日 (火)

「働き方」法の本質はどこにあるか/ABEXIT(65)

本会議へ上程する前の参院厚生労働委員会で、この法律の本質、言い換えれば法に賛成する人たちのホンネが浮き彫りになった。
26日の安倍首相が出席しての審議だった。
野党からの質問は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に集中したが、安倍首相はこれまでと同様の答弁に終始するだけであった。

議論すべきことが多い「高プロ制」であるが、安倍首相は法案の内容を熟知していないのか、トボケテいるのか分からない。
分かったのは、審議が一向に深まらないことだった。1806013
東京新聞6月1日

しかし、「高プロ制」については、竹中平蔵氏の発言の「残業代という補助金を無くせ」という意見が示しているように、労働コストの縮減がホンネであろう。
2018年6月26日 (火) 竹中平蔵氏の残業認識と高プロ制/ABEXIT(61)

私は、報酬が時間よりも成果に基づくべきであるという考え方には賛成である。1806292
「週刊現代」6月29日号

しかし成果の測定が主観的になりがちであるから、次善の策として時間で測らざるを得ないのではなかろうか。
議論に火が点いたのは、電通の新入社員・高橋まつりさんが過労自殺をしたことが大きい。
高橋さんは新入社員だったが、そのまま行けば「高プロ制」の対象になっていたはずである。

電通のライバルの博報堂は、電通の「働き方改革」の余波で仕事が増えているという。
同社も一斉消灯を実施しているらしいが実態は以下のようだという。
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「週刊現代」6月29日号

マルクス生誕200年というある種の記念年である。
改めて、誰のための、何のための「働き方改革」であるのか、もう一度立ち止まって考えてみるべきであったのではないか。
2018年2月18日 (日) 何のための「働き方改革」なのか/日本の針路(375) 

2018年3月 2日 (金) 何のための「働き方改革」なのか(9)/日本の針路(384)
2018年3月12日 (月) 政府の「働き方改革」の馬脚/日本の針路(393)
2018年5月27日 (日) 「働き方改革法案」を強行採決/ABEXIT(35)

しかし、真摯に審議するという姿勢がないまま、法律が成立したのは禍根を残すことになると思う。
安倍首相の答弁の「働き方」法の目的が時短ではないに象徴的にホンネが現れたのではなかろうか。
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東京新聞6月27日

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2018年7月 2日 (月)

スマート化に逆行する日本/技術論と文明論(95)

東京電力ホールディングス(HD)は29日、建設作業が中断している東通原発(青森県東通村)について、今年度後半から敷地内の地質調査を始めると発表した。
東電が福島第1原発事故後、建設再開に動き出すのは初めてである。

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 同原発は、1号機(138.5万キロワット)が11年1月に国の新設認可を受けて着工したが、原発事故後は世論に配慮して建設を中断。現状は更地のままだ。
 一方、福島事故を受けた規制強化で安全対策コストが膨らみ、地元同意のハードルも高まる中、電力各社も原発の新設を検討しづらい状況だ。そこで東電HDは、既に新設認可を得て「建設中」の段階にある東通原発の共同建設・運営を各社に提案。コストを分担しつつ新たな電源を確保し、建設や運用に関する最先端のノウハウも得られるとアピールしており、東電HDの小早川智明社長は29日の記者会見で「より安全性に優れたものをつくっていきたい」と意欲を示した。
建設再開へ 福島第1原発事故以来、東電で初

世界の趨勢は、脱原発・脱炭素である。
さらに日本はプレートの境界に位置するという地質学的特性を負っている。
本来ならば、世界に先駆けて自然エネルギーシフトを進めるべきである。
2018年6月25日 (月) 相次ぐ地殻変動にもかかわらず原発再稼働か?/ABEXIT(60)

東電東通原発建設再開は、政権の方向性に合わせたものであろうが、新しい文明に取り残されるであろう。
180630
東京新聞6月30日

「限界費用ゼロ社会」の提唱で知られるジェレミー・リフキン氏は『スマート・ジャパンへの提言』で次のように述べている。0012
「TOPPOINT]2018年7月

日本政府や東電は、明らかに「スマート化」に逆行している。

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2018年7月 1日 (日)

W杯西野采配とゲーム理論/知的生産の方法(178) 

W杯ロシア大会で、日本はグループリーグを突破し、決勝トーナメントに進んだ。
事前の予想では、大方の人がグループリーグ敗退であったようで、西野朗監督の手腕が賞賛されている。
その一方で、第3戦のポーランド戦の評価を巡っては、賛否が大きく割れている。
特に、終盤で、負けているにもかかわらず、パス回しという戦法を選んだことだ。

その時、日本の戦績は同じグループのコロンビア戦を戦っているセネガルと微妙な関係にあった。
最終的な結果は以下のようであった。
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東京新聞6月30日

日本とセネガルは共に1勝1分で、同時に戦っている第3戦の結果次第で、決勝Tに進めるか否かという状態だった。
それは自チームの結果のみならず、他チームの結果次第という典型的な「ゲーム理論」的な状況にあった。
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「生きのこり競争」から抜け出したい! ゲーム理論入門

「ゲーム理論」の父は、天才フォン・ノイマンンである。
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これでわかるゲーム理論①

グループリーグの最終戦「日本VSポーランド」と「コロンビアVSセネガル」は、同時刻キックオフであった。
「日本VSポーランド」の試合経過は以下のようであった。1806302

後半14分に、ポーランドに先制されて、そのまま行けば予選リーグ突破ができない状況になったが、「コロンビアVSセネガル」でコロンビアが先取点を上げた。

前半は縦へ鋭く攻めるセネガル優勢の中、0-0で折り返した。
 後半は攻守の切り替えが激しいテンポで入れ替わる。カウンターの応酬も決定機はなかなか生まれない。同19分、セネガルのゴール正面のフリーキックもFWマネが足を滑らせ、ボールは大きく枠の上の越えていった。均衡が破れたのは後半29分、右CKからコロンビアのDFミナが頭で合わせた。ゴールが決まり、均衡が破られた。
コロンビア、セネガル下し1位突破!日本アシスト

日本チームが決勝Tに進出できる条件は以下のようになった。Photo
サッカー日本代表 球回しは"勇気ある"ゲーム理論で分析

ここで日本は賭けに出たのである。
「コロンビアVSセネガル」が、それまでの経過等からして、そのまま推移するであろう。
その上で、「警告すくない日本突破」に。

パス回しに徹した日本の戦法は、一見消極策に思えるが、リアルタイムでえ考えれば「勇気ある」戦法だったのである。
決勝T進出を決めたのは、「フェアプレーポイント:イエローカードの差」という今大会から採用されたルール、すなわち史上初適用のルールであった。
負けている状況での「パス回し」がフェアでないという批判があるが、トータルの「フェア度」の差を見極めた西野采配である。
まさに日本サーカー史に残る試合だったと言えよう。

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