「空白の66時間」が映し出す思考と志向/ABEXIT(73)
「空白の66時間」と言われる豪雨災害の初動の遅れに対し、さまざまな見方が登場し、それが見解を表明した人の「思考・志向」を映し出す鏡となっている。
「空白の66時間」とは、平成最悪の水害となった「平成30年7月」豪雨に対する政府の初動対応の遅れを指す。
⇒2018年7月11日 (水) 豪雨被害を拡大した「空白の66時間」/ABEXIT(71)
例によって、財務省出身の嘉悦大学教授・高橋洋一氏は、政権擁護に必死であるが、言っていることは論旨不明と言わざるを得ない。
豪雨被害は、平成では最大級である。そのため、安倍晋三首相は、欧州訪問をとりやめ、被災地を視察することとしている。
その一方、立憲民主党など左派野党は、先週(2018年7月)5日夜に行われた安倍首相や自民党議員が衆院議員宿舎で開いた懇親会について、「赤坂自民亭」と批判している。
筆者の感想をいえば、こうした政治利用はどちらの側からみても見苦しく、やめた方がいい。被災地の当事者の方が不快に思うならやめた方がいいが、被災地ではそれどころではなく必死に対応しているはずだ。こうした会合などを批判するのは、政治的に利用したい第三者である。
政治家と官僚の「仕事」は違う 「赤坂自民亭」騒動への違和感
「よくも言ったり!」である。
「左派野党」が「赤坂自民亭」と名付けて批判しているような印象であるが、「赤坂自民亭」は自分たちの命名である。
⇒2018年7月 8日 (日) 緊急事態にもかかわらず「赤坂自民亭」で大宴会/ABEXIT(68)
高橋氏は次のようにも言っている。
政治家には会合はつきものである。もし会合なしの政治家がいるなら、民の声を聞かないという意味で政治家たる職務を果たしていないともいえる。 自民党や立憲民主党も、身内の会合を政治家が喜々としてSNSで発信することもいかがなものかという批判もあるだろうが、今やそうした時代である。
・・・・・・
被災地以外で妙な自粛ムードが広がると、経済的な「二次被害」になる可能性すらある。それは、自然災害を超えた「人災」にもなりうるので、よく注意したほうがいい。
何を言いたいのだろうか?
かつては大規模災害は「改元」の契機にすらなった。
「自粛ムード」が発生するのは当然であろうが、「政治家は率先してそのムードを打ち破れ」ということか?
それにしても「赤坂自民亭」が開催されたのは、気象庁が災害の発生についての警告を呼び掛けた直後のリアルタイムのことであり、自粛ムードと無関係であることは言うまでもない。
高橋氏は、ある部分の知能は高かったのだろうが、知性というものを感じられない。
AIに取って代わられるタイプの人だろう。
ごく簡単に経緯を振り返ってみよう。
気象庁は五日午後二時、緊急に臨時記者会見を開き「記録的な大雨となる恐れがある」と注意を呼び掛けた。豪雨警戒を理由に会見を開くのは過去に例がない。担当者は「かなりの危機感があった」と振り返る。五日午前中には近畿三府県で十六万人超に避難指示・勧告が出ていた。
宴会はその夜に開かれた。「赤坂自民亭」と銘打った宴会には安倍晋三首相や小野寺五典防衛相、西村康稔官房副長官ら官邸の危機管理を担う人物が出席。上川陽子法相、広島県選出で自民党の岸田文雄政調会長も参加し、談笑して、酒を酌み交わす姿を西村氏らがその日の夜にツイッターに投稿した。
豪雨対応「万全」だったか 野党は政権批判
昨日(11日)、甚大な被害を受けた岡山県を訪問。そこで初動対応が遅れたという指摘が出ていることについて記者から質問された安倍首相は、こう言い放ったのだ。
「政府として一丸となって、発災以来、全力で取り組んでまいりました」
「発災以来、政府一丸」とは、一体どこの国の話だろう。「全力で取り組んだ」と言えるのは、迅速に災害に対応するための非常災害対策本部を設置してこそのこと。だが、安倍首相が同本部を立ち上げたのは8日の8時の話であって「発災以来、政府一丸」というのは完全な嘘だ。
しかも、何度でも繰り返すが、気象庁が「厳重な警戒が必要」と異例の緊急会見を開いたのは5日14時のこと。同日、避難勧告が数十万人に及ぶなかで、安倍首相は総裁選対策で「赤坂自民亭」なる内輪の宴会に参加した。しかも、この宴会後、エプロン姿の自民党・石田真敏議員と左藤章議員はテレビの取材に対し、「みんなと写真撮ったりね、いろいろ人も変わってワイワイ声も聞こえないくらい」と赤ら顔で答え、こうダメ押ししている。
「酒飲んで、ワァーっというだけです」
安倍首相と仲良く写真を撮って「酒飲んでワァー」というだけの宴会……。「一丸となって全力で取り組んで」いたのは、実際のところ、自民党の子飼い議員たちとの酒盛りではないか。
安倍首相が豪雨災害66時間放置をなかったことに!和田政宗は朝日のただの被災地支援検証を「政権攻撃」と封殺
西村氏は、集合写真を自身のツイッターに投稿したことについて、「多くの方々に不快な思いをさせてしまい、おわびを申し上げたい。反省もしている」と陳謝した。
西村氏は東京・赤坂の衆院議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」に出席。首相のほか岸田文雄・党政調会長らが顔をそろえた。西村氏は懇親会終了後の午後10時ごろ、グラスを持った笑顔の集合写真とともに「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!」とツイッターに投稿した。西村氏は11日、BS11の番組で陳謝する一方、懇親会が開かれていた時点で「大雨特別警報」は出ていなかったことを念頭に、「大雨被害が出ている最中に会合をやっているかのような誤解を与えた」とも述べた。
誰も「大雨被害が出ている最中に会合をやっている」などと言ってはいない。
5日夜は、東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨になる恐れがあると気象庁が発表していたのにかかわらず、と批判しているのである。
不正確な表現で「誤解を与えた」というのは、稚拙なすり替えである。
まったく姑息としか言いようのない男であるが、誰に対して陳謝したのだろうか?
自民党を代表するネトウヨのひとりである和田政宗議員は、世間からの批判をかわそうと、矛先を報道に向けはじめたのだ。
和田議員がもち出したのは、今朝の朝日新聞。それは「国のプッシュ型支援、被災直後は歓迎でも ミスマッチも」と題されたもので、安倍首相が力を入れている「プッシュ型支援」の問題点を指摘した記事だ。
「プッシュ型支援」は、〈国が被災府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送〉(内閣府HPより)するものだが、記事では〈プッシュ型は被災直後の混乱期を乗り切るための措置〉であり、〈過剰に届いたりミスマッチが生じたりし、早い段階で被災地の求めに応じて物資を届ける「プル型支援」に切り替える必要がある〉と指摘。実際、愛媛県大洲市では、プッシュ型支援で届けられた仮設トイレが「管理方法が決まらず使っていない」状態にあるという。
安倍首相が豪雨災害66時間放置をなかったことに!和田政宗は朝日のただの被災地支援検証を「政権攻撃」と封殺
次のツイートの写真が、はしゃぐ西村官房副長官、片山さつき議員そして安倍首相らの発言をまとめている。
これが、政府・自民党の姿なのだ。
⇒2018年7月12日 (木) 失態を直視せず誤魔化そうとする政権/ABEXIT(72)
⇒2018年7月10日 (火) 西日本豪雨禍と不誠実な政治屋たち/ABEXIT(70)
誰が考えても、宴会などやっている場合でないことじゃ明らかであろう。
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