世界のリーダーの誇りを捨てたトランプ大統領/世界史の動向(62)
先進国の間の対立が鮮明になったG7。
それを象徴するような写真が話題になっている。
世界に最も拡散されたのは、ドイツ政府が配信した写真だろう。9日午前、メルケル独首相がトランプ米大統領を説得する姿が写る。安倍晋三首相の同行筋によると、この場で話したのはイラン問題だった。
トランプ氏は首脳宣言にイランが「テロ支援国家」であると明記するよう求めた。しかしメルケル氏は認められないと説いた。イランとの良い関係を保ちたい首相も困った様子だ。最後は「イランが支援するものを含む、全てのテロリズムへの財政的支援を非難する」との表現で折り合った。
日本政府が首相官邸のフェイスブックに載せた写真は、安倍首相が米欧の橋渡し役を果たす構図だ。首相周辺はプラスチックごみを話した場面だと解説する。
漂流G7 ネット戦の裏側
「公正」とは何かが問われるが、「アメリカ・ファースト」に拘るトランプ大統領が「公正」を主張するのは疑問である。
日本は基本的に自由貿易立国のはずである。
トランプ追従で「自由と公正」と立派な言葉ではあるが、具体的にどうするかが曖昧な立場の安倍首相の姿勢が際立つ。
政府が説明する「プラスチックごみ」について、安倍首相は何をどう話したのか?
海のプラスティックゴミ問題は深刻である。
世界の海はプラスチックのごみに満ち、生態系の乱れを加速させている。事態は深刻なのである。
国連環境計画(UNEP)が五日公表した報告書によると、世界のプラスチックの廃棄量は年々増え続け、二〇一五年には三億トンに達している。このうち約半分を、レジ袋やペットボトルといった使い捨て製品が占めている。
使い捨てプラ製品の廃棄量は中国が最も多い。しかし一人当たりでは米国が世界一、次いで日本、欧州連合(EU)の順である。
海を漂うプラごみは、紫外線や波の力で分解されて微小な粒子に変わる。直径五ミリ以下のものをマイクロプラスチックと呼び、洗顔料や歯磨き粉などに含まれるもの(マイクロビーズ)もある。
これらはポリ塩化ビフェニール(PCB)のような有害物質を吸着する性質があり、のみ込んだ魚を食べた人間への影響も懸念されている。今や廃プラ問題は、温暖化に次ぐ国際環境問題になったと言われており、危機感を抱いた欧米やアフリカなどは、使い捨てプラの規制強化を進めている。
EUは先月末、ファストフード店で使われるスプーンや皿、ストローなど、使い捨てプラ食器を禁止するよう、加盟国に提案した。
米国は一五年、マイクロビーズの配合の禁止を決めた。フランスは二〇年から、使い捨てプラ容器を禁止する。
日本では例えばレジ袋の削減は、企業や自治体の自主的な取り組み任せ。政府としては「プラスチック資源循環戦略」の策定は進めるものの、今のところ、国として使い捨て製品の流通規制にまでは踏み込むつもりがなさそうだ。
プラごみを作り、捨てるのは人だけだ。人の仕業は必ず人に環(かえ)るというのも温暖化と同じである。海洋国、そして廃プラ大国日本は、ここでも世界の大きな流れに取り残されていくのだろうか。
海のプラごみ 誰がクジラを殺すのか
安倍首相がこの問題で「米欧の橋渡し役を果たす」とは、とても思えない。
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