新幹線通り魔殺人事件と不条理の模倣/戦後史断章(29)

東京新聞6月12日
駆けつけた県警小田原署の署員が、切りつけたとみられる男を現行犯逮捕し、刺された3人は小田原市内の病院に運ばれた。
男性1人が首の右側を切られて死亡し、20代とみられる女性2人が頭や肩に重傷を負った。
新幹線の車内では逃げようもない。
遭遇した乗客の恐怖はいかばかりだったか。
逮捕されたのは愛知県岡崎市蓑川町に住む、自称・小島一朗容疑者(22歳)だが、本名かどうかは不明である。
小島容疑者は、斧で殺害した動機を警察で聞かれ「むしゃくしゃしてやった」「誰でもよかった」と話しているという。
しかも殺害をしようと計画して東海道新幹線に乗ったとされており、無差別殺人をするのが目的だったことも判明している。
⇒2018年6月 8日 (金) アキバ通り魔事件と働き方の問題/戦後史断章(28)
現時点で報道されている小島容疑者の人物像は次のようである。
「(小島容疑者が14歳の時)しつけに関しては、何も私はしなくなりました」(小島容疑者の実の父親)両親と折り合いが悪く、祖母の養子になったという小島容疑者。中学生のときに不登校となり、その後、自立支援施設で6年以上生活したといいます。「うちにいたころは非常に真面目で、何か問題をおこすとか一切なかった」(自立支援施設代表)親族などによりますと、小島容疑者は3年前、高校卒業後に就職しましたが、1年足らずで退職したということです。この場所は、小島容疑者が去年まで使用していた部屋。「人生においてやり残したこと」として、「冬の雪山での自殺」などと自殺願望を示すメモが残されていました。そして・・・。「こんなところでごそごそしとるより、死んだ方がいいってね」(小島容疑者の祖母)去年12月、祖母の家を出ていったというのです。「仕事で挫折したもんだから、自信がなくなったんだろうな」(小島容疑者の祖母)
つまり、「家庭環境」と「仕事の挫折」である。
同様の要因が指摘されたのが、秋葉原事件であった。
「家庭環境の問題」は『万引き家族』が典型であるが、社会の縮図の凝縮のように思える。
⇒2018年6月11日 (月) 『万引き家族』の評価を巡って/ABEXIT(49)
安倍政権の苦手なテーマであるが、「仕事」についても心許ない。
今国会の最重要テーマと言っている割にお粗末な審議である。
⇒2018年2月18日 (日) 何のための「働き方改革」なのか/日本の針路(375)
⇒2018年3月 2日 (金) 何のための「働き方改革」なのか(9)/日本の針路(384)
⇒2018年3月12日 (月) 政府の「働き方改革」の馬脚/日本の針路(393)
⇒2018年5月27日 (日) 「働き方改革法案」を強行採決/ABEXIT(35)
労働体験の貧弱な世襲議員では「働き方」の本質に迫ることは難しいだろう。
「今年は明治維新150年」と同時に「マルクス生誕200年」である。
高プロを「残業代を払わなくて良い制度」と考えていると、手痛いしっぺ返しがある。
無差別通り魔殺人事件は、個人的な一過性の問題とは言えない。
今月のNHKEテレの『100分de名著』は、中条省平氏の解説による『アルベール・カミュ ペスト』である。
学生時代にかじった程度であるが「不条理」に向き合った作家として知られる。
この種の不条理は、社会のあり方を健全化して行かないと、増えこそすれ減ることはないだろう。
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