『万引き家族』の評価を巡って/ABEXIT(49)
是枝和裕監督の『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに選ばれた。
慶賀すべき快挙である。
公開されたら観たいと思っていたら、近くのシネコンで先行公開するというので、6月3日に一般公開(8日)より一足先に観てきた。
期待に違わない素晴らしい作品で、審査員たちは、日本的な情感が詰まった作品をよくぞ選んだと思う。
ところが、安倍首相とその周辺には評判が良くないようだ。
この快挙に、ふだん「日本スゴイ」話が大好物の人たちが、いつもとまったく違う反応を見せている。
その筆頭が総理大臣の安倍晋三だ。是枝監督の受賞は日本人監督としては今村昌平監督『うなぎ』以来21年ぶりなのだから、普通なら何かコメントを出しそうなものだが、一切無視。フランスの「フィガロ」紙にも「日本人が国際的な賞を受賞したら必ず賛辞を送るはずの安倍首相が沈黙を保ったまま」と皮肉られる始末だった。
これはもちろん、安倍首相が『スターウォーズ』シリーズと山崎貴監督の映画にしか興味がないからではなく、是枝監督が安倍政権の姿勢を何度か批判しているからだろう。
カンヌ受賞でもネトウヨは是枝裕和監督と『万引き家族』が大嫌い! 安倍首相は無視、百田尚樹と高須克弥はバッシング
安倍一派の文化芸術理解の程が知れるというものだろう。
安倍首相に近い自民党の若手議員らが立ち上げた「文化芸術懇話会」という勉強会に触れたことがある。
何しろ最初の講演会の講師があの百田尚樹氏だったということで、この人たちの「文化芸術」観が分かるだろう。
⇒2015年6月26日 (金) 亡国の自民党「勉強会」の中身/日本の針路(185)
クールジャパンなどと言ってもその程度のことなのだ。
東京新聞6月2日
林文科相が慌てて祝意を伝えたいと表明したが、是枝監督は拒否した。
フランスで先月開かれた第71回カンヌ国際映画祭で、メガホンを取った「万引き家族」が最高賞「パルムドール」を受賞した是枝裕和監督に対し、林芳正文部科学相が文科省に招いて祝意を伝える考えを示したところ、是枝監督が自身のホームページ(HP)に「公権力とは潔く距離を保つ」と記して辞退を表明した。
林文科相 カンヌ最高賞で祝意を 是枝監督は辞退表明
芸術の担い手の矜持として当然であろうが、筋の通った行動は気持ちが良い。
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