かぐや姫の物語・高畑勲/追悼(122)
「火垂るの墓」「アルプスの少女ハイジ」などアニメの名作で親しまれた高畑勲監督が、5日に82歳で死去した。
私は余りアニメを見ることはないが、『かぐや姫の物語』は、素材に興味があって足を運んだ。

【高畑勲監督死去】「かぐや姫の物語」「アルプスの少女ハイジ」…映像表現に強いこだわり
私は余りアニメを見ることはないが、『かぐや姫の物語』は、素材に興味があって足を運んだ。

【高畑勲監督死去】「かぐや姫の物語」「アルプスの少女ハイジ」…映像表現に強いこだわり
『竹取物語』は日本人ならば、誰でも知っているだろう。
作者の候補として名前が挙げられているのは、源順(三十六歌仙の一人)、源融(嵯峨天皇の皇子で臣籍に下った)、僧正遍昭(六歌仙の一人)、紀貫之(三十六歌仙の一人、『古今和歌集』の編纂者の一人)、紀長谷雄(漢学者で大学頭)などで、いずれも仏典・漢書・和歌などに造型が深いが、誰かに特定できるだけの根拠がない。梅澤恵美子さんは、『竹取物語と中将姫伝説 』の中で、紀貫之や紀長谷雄などの紀氏説を推している。
『竹取物語』に登場する5人の貴人の中で、特に悪意をもって描かれている感じがするのは、不比等がモデルとされる車持皇子だろう。
『源氏物語』に「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」とあるように、日本最古の物語といわれる。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされるが、成立年、作者共に不詳であり、謎の多い物語だ。
9世紀後半から10世紀前半頃に成立したとされるが、成立年、作者共に不詳であり、謎の多い物語だ。
私は昔『竹取物語』の作者を知りたいと思ったことがある。
作者の候補として名前が挙げられているのは、源順(三十六歌仙の一人)、源融(嵯峨天皇の皇子で臣籍に下った)、僧正遍昭(六歌仙の一人)、紀貫之(三十六歌仙の一人、『古今和歌集』の編纂者の一人)、紀長谷雄(漢学者で大学頭)などで、いずれも仏典・漢書・和歌などに造型が深いが、誰かに特定できるだけの根拠がない。梅澤恵美子さんは、『竹取物語と中将姫伝説 』の中で、紀貫之や紀長谷雄などの紀氏説を推している。
『竹取物語』に登場する5人の貴人の中で、特に悪意をもって描かれている感じがするのは、不比等がモデルとされる車持皇子だろう。
車持皇子は、「心にたばかりある人にて」と書かれている。
<たばかり>というのは、「相手に誘いかけて自分の思うようにさせる。また、だまし欺く。ごまかす」の意味であり、要するに、卑劣でずるがしこい人物ということである。
こういう書き方から、作者は、藤原氏と対立し、政界を追われた大伴、石川、阿倍、石上、多治比、紀、巨勢のいずれかではないか、とする推測が生まれる。
⇒2007年9月20日 (木) 『竹取物語』の作者は誰か?
<たばかり>というのは、「相手に誘いかけて自分の思うようにさせる。また、だまし欺く。ごまかす」の意味であり、要するに、卑劣でずるがしこい人物ということである。
こういう書き方から、作者は、藤原氏と対立し、政界を追われた大伴、石川、阿倍、石上、多治比、紀、巨勢のいずれかではないか、とする推測が生まれる。
⇒2007年9月20日 (木) 『竹取物語』の作者は誰か?
まあ、史実と照合してあれこれ推理するのは、邪馬台国論争に共通する楽しみではある。
『かぐや姫の物語』は、製作に8年、製作費約50億円を投入したという。
高畑さんは公開時、「これを作ることでアニメーションはひとつ先に進めた気がする」と手応えを語っていた。
高畑さんは公開時、「これを作ることでアニメーションはひとつ先に進めた気がする」と手応えを語っていた。
実写では描けない世界があることを示した作品と言えよう。
合掌。
合掌。
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コメント
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)
読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
投稿: omachi | 2018年6月23日 (土) 00時55分
omachi様
ご教示有難うございます。『北円堂の秘密』は知りませんでした。早速読んでみたいと思います。歴史は「学」でなくても、十分に存在意義があると思っています。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 夢幻亭 | 2018年6月23日 (土) 18時34分