何のための「働き方改革」なのか(4)/日本の針路(379)
安倍首相の「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」という答弁は、実態を知らないからこその発言であった。
⇒2018年2月20日 (火) 何のための「働き方改革」なのか(2)/日本の針路(377)
ところが安倍首相は驚くような開き直りである。
「データを撤回すると申し上げたのではなくて、引きつづき精査が必要と厚労省から報告があったため、精査が必要なデータに基づいた答弁について撤回し、お詫びをした」と答弁する。
はて、どういうことかと思っていたら、「データを撤回したのではなく、データに基づいておこなった答弁を撤回しただけ。だからデータは撤回しない、ということだ。
開いた口が閉じられない。
政権御用達の読売新聞などは、社説でこの答弁を引いた上で、〈(裁量労働制は)漫然と残業するより、短時間で結果を出せる職種は少なくないなどと書いている。
これでは、本来ならば決して比較してはならないものを同列にしる首相答弁を追認するようなものである。
多少でも働いた経験のあるものならば、「?」と思うはずだ。
事実、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が調査した結果では、1カ月あたりの平均実労働時間は一般よりも裁量労働制のほうが長時間と出ているのだ。
しかし、私は労働「時間」に偏重して「働き方」を論ずるのにも違和感がある。
労働を「時間」で評価するのは、工業社会の発想である。
情報化が進展し、第4次産業革命と言われる現在、労働の評価もそれに対応すべきなのは当然であろう。
内閣府のHPの「第4次産業革命のインパクト」のページには次のようにある。
第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す。
一つ目はIoT及びビッグデータである。工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。
二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、更に複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。
シンボル化して描けば下図のようである。
日本企業の準備不足が顕在化?来たる「第四次産業革命」への他国との意識の差
「働き方改革」は、文明論的な視点と現場の実態との両方を踏まえなければならないが、まずは労働現場を知るべきであろう。
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