何のための「働き方改革」なのか(2)/日本の針路(377)
「働き方改革」は安倍政権が目玉にしている政策である。
しかし、そもそも「働く現場」について、どの程度の認識を持っているのだろうか?
首相は1月29日の衆院予算委で、働き方改革関連法案による裁量労働制の対象拡大の意義を説明した際、「厚労省の調査によれば、裁量労働制で働く人の労働時間の長さは、平均的な人で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」と述べた。
この「厚労省の調査」とは「労働時間等総合実態調査」のことであるが、厚労省の13年度労働時間等総合実態調査のデータには、平均的な労働者の1日の労働時間が23時間を超える事業場が9カ所含まれるなど問題点が次々に浮上している。
立憲民主党の長妻昭代表代行が2月13日の衆院予算委で答弁の撤回を求めた。
それでも首相は「答弁した段階ではそういうデータがあった」と応じなかったが、14日の衆院予算委員会の集中審議で、裁量労働制に関する1月29日の答弁を撤回した。
東京新聞2月20日
撤回して謝罪するのは当然であるが、勘違いというよりも「世間知らず」と言うべきであろう。
私の経験からすれば、「裁量労働制で働く人」が「一般の労働者」に比べて労働時間が短いということは考えにくい。
そういう「調査結果」があれば、まずその調査を疑うだろう。
よく言われるように、ロジカル思考の最も重要な基礎は「空・雨・傘」の比喩で言われる。
⇒2017年6月20日 (火) 加計疑惑(23)萩生田新証拠と文科省の逆襲?/アベノポリシーの危うさ(238)
目玉政策とする割には、現実を知らない。
裁量労働制の対象となるのは、そもそも時間で測ることのできない仕事が多いのである。
「無限定・無定量」、言い換えれば「キリがない」仕事なのだ。
「仕事とは何か?」を踏まえないと、とんだ見当違いになるだろう。
法案を取り下げてじっくり検討すべきである。
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