安全保障の戦略と戦術/日本の針路(376)
安倍首相のホンネが出たということだろう。
14日の衆議院予算委員会で、「専守防衛は防衛戦略としては苦しい。相手からの第一攻撃を甘受し、戦場になりかねない。」と述べた。
先制攻撃の容認と言って良い。
次のような意見がある。
安倍は、現代国際法のjus ad bellumつまり戦争正当性理由がまったく理解できいない。安倍は他国の武力攻撃=自国の被害と考えているから、19世紀の戦争史観から抜け出せない。
先制攻撃は二種類あり、予防攻撃(preventive attack)と先取攻撃(pre-emptive attack)である。
予防攻撃とは、相手がまだ攻撃の態勢になく、その意思もしめさない状態で相手を攻撃することである。先に攻撃すれば侵略戦争である。1980年代、イスラエルは疑心暗鬼に駆られて、建設中のイランの原発を空爆した。これが予防攻撃であり、国際社会から非難された。
先取攻撃とは、相手が攻撃準備に入り、唯一の手段が攻撃であるとわかったら、攻撃が開始される前に、相手を攻撃することである。西部劇やゴルゴ13の決闘シーンを想像すればわかりやすい。相手が拳銃に手をかけた瞬間に相手よりも早く拳銃を抜いて発砲するのである。先に動いたほうが負けなのである。
国際法、国連憲章51条で認める自衛権は後者で、前者は1920年代から侵略戦争とみなされている。
安倍は、2015年8月、戦後70年の内閣総理大臣談話で自ら述べたことが頭に入っていない。
安倍晋三が”専守防衛”を否定、”先制攻撃”が有利と発言、武力による威嚇しか考えてない
70年談話でどう語っていたか?
「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と書いてはあるが、政権支持率の低下や公明党からの要求で、キーワードらけ盛り込んだことが明白である。
談話の作成に携わった1人は「首相は本音は納得していないんじゃないか」との見方を示している。
⇒2015年8月15日 (土) 安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
まったく「敗戦」の教訓を理解していないのだ。
元落語家の作家・立川談四楼さんは次のように批判している。
東亜・太平洋戦争の見方はいろいろあるだろうが、現在から振り返ってみると、日本軍のは戦術はあったが、戦略がなかったと言える。
戦略の失敗は、戦術では補えない!
安倍首相が同じ轍を踏もうとしているのは明らかではなかろうか。
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