西郷隆盛のイメージ/幕末維新史(4)
今年は「明治150年」にあたることから、各種の記念行事が企画されている。
NHKの大河ドラマも西郷隆盛を主人公に『西郷どん』である。
原作林真理子、脚本中薗ミホという女流コンビが担当し、時代考証は『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』NHK出版 (2017年5月)の磯田道史氏である。
西郷は、戊辰戦争を主導し、勝海州との会談で江戸無血開城を決めるなど、明治維新の顔であることは間違いないだろう。
大河ドラマのオープニングで、上野恩賜公園の西郷像の除幕式で、西郷の妻が「ちごっ、ちごっ! こんな人でなか」と叫んでいたシーンがチラッと映されたが、実際に西郷隆盛とは似ていないそうである。
作者は高村光雲、つまる光太郎の父で、近代彫刻の父である。
なぜ似ていない像が作られたのか?
西郷隆盛の肖像画はよく見る。
例えば以下の貌である。
西郷隆盛
西郷の現存する写真はなく、お雇い外国人のキヨッソーネが西郷従道と大山巌をモデルにして作り上げたという。
要するに実像は謎である。
加治将一『西郷の貌-新発見の古写真が暴いた明治政府の偽造史』祥伝社 (2012年2月)という小説がある。
以下のような紹介文である。
なぜ、維新の英傑の顔っは消されたのか?歴史作家・望月真司は、一枚の古写真に瞠目した。 「島津(しまづ)公(こう)」とされる人物を中心に、総勢13人の侍がレンズを見据えている。 そして、その中でひときわ目立つ大男……かつて望月が 「フルベッキ写真」で西郷隆盛に比定した侍に酷似していたからだ。 この男は、若き日の西郷なのか? 写真はないとされている西郷だが、この大男が彼だとしたら、この写真はいつ、何のために撮影 されたのか?誰が、何のために合成の肖像画、似ても似つかぬ銅像を造ってまで偽のイメージを植えつけようとしたのか? 謎を解明するために望月は鹿児島へ飛んだ。
テーマは面白いが、文章が粗い感じなのが残念だ。
しかし僅か150年ほど前のことではあるが、幕末維新には多くの謎がある。
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