ムーミン谷の入試問題/知的生産の方法(172)
2018年1月13日に行われたセンター試験地理Bで「ムーミン」に関する問題が出題された件が話題になっている。
「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」がそれぞれフィンランドとノルウェーのどちらかを舞台にした作品であると紹介した上で、正しい言語との組み合わせを選択するものである。
ムーミン公式が「ムーミン谷がある場所」について見解発表 センター試験地理Bの出題の件で
試験問題は、アニメの『ニルスの不思議な旅』がスウェーデンを舞台にしたものであることを紹介した上で、同じ北欧三国に関係する『ムーミン』と『小さなバイキングビッケ』の画像を見せ、それぞれが「ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメーション」であると紹介し、そのどちらが「フィンランドを舞台にしたアニメーションなのか」を考えさせる問題だった。
ただ、「ムーミン」は著者のトーベ・ヤンソンがフィンランド出身であるものの、あくまで舞台は仮想の世界「ムーミン谷」。そのため、「出題ミスではないか」という意見が出て、「ムーミン」の公式Twitterアカウントに意見するものが続出したり、大阪大学大学院にスウェーデン語研究室が「フィンランドとは確定できない」という見解を表明するなどの騒ぎになった。
私は、鈴木貴博・百年コンサルティング代表の『ムーミンの炎上入試問題が不適切どころか「良問」である理由』に同感するところが多い。
さらにこの問題は、実はムーミンを知っているだけでは正解にならない。それぞれ(タ)(チ)という番号が付いたムーミンとビッケの画像の横に、同じく(A)(B)という番号が付いたフィンランド語とノルウェー語のイラストが載っており、アニメの舞台とその国の言語として、(タ)(チ)(A)(B)のどのような組み合わせが正しいかを、選ばせる内容になっていたのだ。
その言語とは、「(それは)いくらですか?」という意味の「A:ヴァ コステル デ?」と「B:パリヨンコ セ マクサー?」である。
受験生にしてみれば、こっちのほうが「わかるわけない!」と憤りそうだが、親切なことに、Aのイラストには妖精のような小さな小人が描かれていて、Bのほうにはトナカイが描かれている。
トナカイと言えばサンタクロース。そして、サンタクロースが世界に向けて出発するサンタクロース村はフィンランドにある。また、サンタクロース村はムーミン谷と違い、実在している上に営業もしている。それを知っていれば、正しい組み合わせはBであることがなんとなく想像できる。
フィンランド大使館は「物語を愛する皆さんの心の中にある」とイキなコメントだし、スウェーデン大使館は「北欧は取り上げられるのは嬉しい」とオトナの対応だ。
見習うところが多いのでは?
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 内閣の番犬・横畠内閣法制局長官/人間の理解(24)(2019.03.13)
「思考技術」カテゴリの記事
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 横畠内閣法制局長官の不遜/安部政権の命運(91)(2019.03.12)
- 安倍首相の「法の支配」認識/安部政権の命運(89)(2019.03.10)
「知的生産の方法」カテゴリの記事
- 『日日是好日と「分かる」ということ/知的生産の方法(182)(2019.01.02)
- 祝・本庶佑京大特別教授ノーベル賞受賞/知的生産の方法(180)(2018.10.02)
- この問題は、本当の問題です/知的生産の方法(179)(2018.09.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント