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2018年1月 5日 (金)

貴乃花親方の相撲協会理事解任/日本の針路(363)

大相撲の元横綱・日馬富士による傷害事件で、日本相撲協会の臨時評議員会は、4日、貴乃花親方(元横綱)の理事解任を全会一致で決めた。
本件は既に国民的関心事になっており、TVや週刊誌が大きく取り上げている。
しかし、報道がTVと週刊誌で微妙に違うという指摘がある。

今回の騒動を週刊誌で読んでいる人と、新聞・テレビで見ている人とでは、明らかに違った印象を持っていると思われる。そしてこの奇妙な構図にこそ、大相撲をめぐる報道の構造的な問題が隠されているといえる。実はその構造的問題を把握することが今回の騒動の本質を理解する鍵でもあるように思うので、少し整理してみたいと思う。
 週刊誌が今のような白鳳と相撲協会に批判的な論陣を張るようになった端緒は、11月30日発売の『週刊新潮』12月7日号の記事だった。「『貴乃花』停戦条件は『モンゴル互助会』」と見出しはわかりにくいのだが、記事内容は明快だ。一言で言えば「この騒動の背景に八百長問題がある。それを理解しないと騒動の本質はわからない」というものだ。
 モンゴル人力士が部屋を超えて結束し親睦を深めているのは知られているが、同誌はそのモンゴル人力士同士の幾つかの取り組みを具体的に検証している。例えば2012年5月場所。横綱を目指していた大関の日馬富士が14日目を終えて7勝7敗。最後に白鵬に勝って勝ち越すのだが、その白鵬の負け方が不自然だとして、ベテラン相撲ジャーナリストの分析を紹介している。他にも幾つかの取り組みについて、同誌はそういう分析を行っていく。つまりモンゴル人力士同士の関係がある種のなれ合いを生み、八百長が疑われるような状況に至っているというわけだ。
日馬富士暴行事件をめぐる週刊誌とテレビの報道はなぜこんなに違うのか

なお同誌には以下のような「データ」が添えられている。
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これだけで有意性のある数値とは言えないかも知れないが、相撲協会としてはまず第一に、こういう疑惑を払拭することに集中すべきではないのか?
それを擱いておいて、池坊保子議長が「相撲は国技。相撲道は礼に始まって礼に終わる。貴乃花理事の言動は礼を失していたと思う。特に上司の八角理事長が電話しても応答なく、折り返しがないのは著しく礼を欠いていた」と非難するのは如何なものか、と思う。
また高野利男危機管理委員会委員長の調査報告も、例えば「貴ノ岩が「睨んだ」から日馬富士が殴った」など、事実と意見の区別が付け難いものだった。

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 評議員会は理事の選任や解任などの権限を持つ最高議決機関。現在、外部有識者4人と力士出身者3人の計7人で構成される。4人以上の出席で成立し、その過半数の賛成で解任を決議できる。この日は5人が出席し、海老沢勝二氏(元NHK会長)、千家尊祐氏(出雲大社宮司)の2人は欠席した。
 協会は昨年12月28日の臨時理事会で、貴乃花親方の理事解任を評議員会に提案することを全会一致で決めた。事件の報告義務を怠った上、全協会員が協力することを理事会で決議したにもかかわらず、被害者で弟子の貴ノ岩関(27)の聴取を拒否し続けた貴乃花親方について「被害者側の立場にあることを勘案してもその責任は重い」とした。
 事件を巡っては、元日馬富士の師匠だった伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)が理事を辞任し、役員待遇委員に2階級降格になった。現場の酒席に同席しながら暴力を止められなかった白鵬関(32)、鶴竜関(32)の両横綱は減給処分を受け、八角理事長(元横綱・北勝海)も残る任期3カ月の報酬を全額返上する。
貴乃花親方の理事解任、初の決定 臨時評議員会

気になるのは、評議員会7人のメンバーの内、外部委員(?)の海老沢勝二氏、小西彦衛氏が欠席したことである。

日本相撲協会評議員会メンバー
池坊 保子 元副文部科学相(議長)
海老沢勝二 元NHK会長
小西 彦衛 公認会計士
佐藤 忠博 大嶽親方(元十両・大竜)
千家 尊祐 出雲大社宮司
竹内 雅人 二子山親方(元大関・雅山)
南  忠晃 湊川親方(元小結・大徹)

池坊氏の見識がどれほどか、詳らかには知らないが、貴乃花処分には異論も多いようである。

 理事会が決議した2つの理由に「礼を欠いた」ことが付け加えられたことに協会や評議員会サイドの“本音”が見えたような気がしたが、実は、このことに協会が抱える本質的な“勘違い”や“一般社会とのズレ”が見え隠れしている。池坊議長は、貴乃花親方の「礼を欠いた」ことを問題にするよりも協会のガバナンスの欠如を問題にすべきだったのだろう。
 相撲ジャーナリストの荒井太郎氏も、「池坊議長の感情的な部分が出た発言でしたね。結果的にマスコミがとびつくようなリップサービスになってしまいましたが、解任理由とした“礼を欠いたこと”が、事件の報告義務を怠ったことや、その後の協会の聴取などに非協力的で公益財団法人の理事として忠実義務違反をしたことと、同列に受け取られるような発言をしたことは問題だったと思います。協会内の実態が露わになったような失言だったように感じました」という意見を述べる。
 協会の意向に沿わない“貴乃花親方嫌い”が、処分対象となるアラ探しに走っていたようにさえ思える。
池坊保子議長の発言をめぐりネット上で物議「論点がずれている」

協会にスタンダードがないことが構造的な原因であろう。
⇒2017年12月31日 (日) 「公正さ」が問われ続けた2017年/日本の針路(360)
「道」とか「礼」を言うならば、具体的な形を示さなければならないだろうが、比較論で言えば、この点に関しては貴乃花側に軍配を上げたい。
これで角界の「膿」を出し切ったとはとても言えないだろう。

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