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2017年12月22日 (金)

エルサレム問題の「義」と「利」/世界史の動向(58)

国連総会(UN General Assembly)で21日、エルサレムをイスラエルの首都と認定した米政府の決定を無効とする決議案の採決が行われ、賛成128、反対9、棄権35の圧倒的多数で採択された。
安倍首相は、涙ぐましいほどにトランプ大統領との蜜月を演出してきたので心配だったが、賛成票を投じた。
外務省幹部は「あえて反対する理由が見当たらないし、棄権という選択肢は米国との関係でも何らプラスに働くものではない」と説明している。
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米のエルサレム首都認定「無効」国連決議、賛成128反対9で採択

エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3大宗教の聖地である。
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東京新聞12月7日

このように微妙な問題に、思いつきのように判断を出すのがトランプ流であろうか?
米国の決定に反対するなら、財政支援をやめるというスタンスのトランプ大統領の言辞が諸国の批判を招いている。
そんなことは織り込み済みで、トランプ大統領は米国が他国のために財政を支出することに消極的であるから、財政援助を減らす理由にしたいという見方もできよう。
しかし人間にとって経済はもちろん重要であるが、場合によっては敢えて経済的に不利な選択を取る場合もある。

 パレスチナ自治政府のハムダラ首相は21日、ツイッターに「エルサレムの保護とパレスチナの人々の権利を支持するため、法的、道義的責任を果たすよう望む」と投稿し、決議案に賛成票を投じるよう訴えた。
 トルコはイスラム諸国でつくるイスラム協力機構(56カ国とパレスチナ)の議長国として、国連総会の開催を求めた。チャブシュオール外相は国連総会へ出発前の20日、イスタンブールで会見し、「名誉ある国は米国の圧力に屈しない」と強調した。ユルドゥルム首相も21日、首都アンカラで講演した際、「トランプ大統領はすべての国が自己決定できることを理解すべきだ。強者が必ずしも正しいわけではない」と訴えた。
 対イスラエルでアラブ諸国を牽引(けんいん)してきたエジプトは、米国がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことの撤回を求める国連安保理(15理事国)の決議案を作成。同案は18日に採決され、エジプトを含む14理事国が賛成したが、米国の拒否権行使で廃案になった。
 政府系アハラム紙の政治記者アルアザブ・アルタイーブ氏は「エジプトは国連総会でも決議案に賛成する。米国の脅しには屈しない」と語る。同国市民の間では「米国の支援は無意味」など反米姿勢が目立つ。
 だが、エジプトはシナイ半島でイスラム過激派に対する掃討作戦を進め、米国から毎年13億ドル(約1470億円)の軍事支援を受けており、米国との関係悪化は避けたいのが本音だ。シーシ大統領はトランプ氏のエルサレム首都宣言を「拒否する」と述べたが、その後は発言を控えている。
「札束でほおたたく」トランプ流外交術 中東で強い反発

「利」と「義」をどうバランスさせるかは価値観の問題である。
サムライを自負するならば、「義」に傾くところだが、わが国のリーダーは「利」に傾いているように見える。

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