伊都国の位置論(続)/やまとの謎(119)
「伊都国=糸島半島」説が定説になっていることは、例えば福岡マラソンの以下のようなアピールからも窺える。
奴国から伊都国へ駆け抜ける!! 福岡マラソン
とはいえ、「伊都国=糸島半島」説には致命的な弱点がある。
「東南陸行五百里到伊都國」であって、伊都国はその前の末盧国から「東南」の方角のはずである。
末盧国を松浦半島唐津付近だとすれば(これにも高木彬光『邪馬台国の謎』のように異論はあるにしても、唐津は他の記述との整合性という点で不合理とは言えない)、糸島半島は、「東南」ではなく「(東)北東」と言うべきである。
定説は、誤差、誤記、誤認・・・としているが、伊都国の位置は重要である。
戦後間もなく、榎一雄氏により「放射説」が発表され、「魏志倭人伝」の読解に画期をもたらした。
榎一雄氏は、次の点に着目した。
伊都国までと、伊都国以降で記述のスタイルが異なる。
伊都国以前 →方位、距離、国名
伊都国以降 →方位、国名、距離又は日数
これは、伊都国以降の記述が、「伊都国を起点に、それぞれの国の方位等を個別に記述したもの、すなわち放射状に書かれていると解釈すべきである。
放射説によれば、邪馬台国は伊都国の南であるし、順次式に読んでも、大略南であるから、邪馬台国比定の上で伊都国をどう考えるかは重要である。
第320回 邪馬台国の会 出雲神話と邪馬台国 『魏志倭人伝』を徹底的に読む
また、伊都国には、以下のような記述があって、伊都国自身が重要な国であったと思われる。
たーさんの部屋
伊都国のプロファイルを以下のように論考している論者もいる。
魏誌倭人伝の検証に基づく 邪馬台国の位置比定
このような位置づけを持つ伊都国については慎重に比定すべきではなかろうか。
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