小池都知事の中立性という名目の政治性/日本の針路(351)
小池氏が急速に支持を失ったことは、選挙前の言動によるところが大きいだろう。
しかし、それは上手に迷彩を施していた小池氏の本質が、都知事選、都議会選の圧勝で気が緩み、表面に露出したに過ぎない。
⇒2017年10月26日 (木): 小池都知事の錯覚・錯誤・蹉跌/日本の針路(350)
小池氏は緑をイメージカラーにしていた。
緑はエコロジーの象徴であり、支持の拡大に効果的であった。
しかし小池氏が特にエコロジーにこだわりを持っていたは思えない。
小池氏は、核武装や他国への先制攻撃を主張する幸福実現党と共闘していたし、自身も核保有論者だったことを忘れてはならない。
⇒2009年8月22日 (土):小池百合子氏と幸福実現党が共闘!
⇒2016年7月22日 (金):緑を冒涜する小池百合子/日本の針路(277)
都知事選で急遽脱原発を持ち出したりしたが、付け焼き刃もしくは偽装と見るべきであろう。
⇒2017年9月27日 (水):小池新党はポピュリストの本領か?/日本の針路(331)
⇒2017年9月28日 (木):衆院解散は「倭国大乱」に似ているか?/日本の針路(332)
小池氏の本質は、選挙前にも現れていた。
それは関東大震災が起きた時に発生した朝鮮人虐殺の犠牲者に対する都知事としての追悼文を送付しなかったことである。
その理由は、都知事としての追悼文は東京都慰霊堂で行う式典に送っており、「知事は朝鮮人も含め全ての犠牲者に追悼の意を表しているので、個別の慰霊式への追悼文送付は見合わせることにした」と説明されている。
東京新聞8月24日
追悼文を送らないことが話題になっても、特別に対応しなかったのであるから、これは小池氏自身の意思であると考えて良いだろう。
小田嶋隆氏は「日経ビジネスオンライン9月1日号」の『追悼文をやめて何を得るのか』で次のように言っている。
あまりにもさらりと言ってのけているので、こちらもついさらりと聞き流してしまいそうになるが、この短い質疑応答の中で、小池都知事は、実に空恐ろしい言葉を連ねている。
「民族差別という観点というよりは……そういう災害で亡くなられた……様々な被害によって亡くなられた方々」
というこの言い方は、知事が朝鮮人虐殺について、民族差別とは無縁な偶発的な出来事である旨の認識を抱いていることを物語っている。
「民族差別というよりは」
というよりは、何だ?
民族差別でないのだとすると、あの集団殺戮は、いったいいかなる心情がドライブした動作だったというのだろうか。
同じ町で暮らしている隣人を、同じ町の住人が多数の暴力によって殺害することが、差別以外のどういう言葉で説明できるのだろうか。
6000人以上と言われている虐殺の犠牲者は、民族差別による殺人の犠牲者ではなくて、一般の災害関連死と同じ「様々な被害」として一緒くたにまとめあげることのできる死者だというのか?
至極真っ当な意見であるが、こういうことを言うと昨今は「極左」などと言う人がいるから、日本の右傾化も相当のものだ。
中島岳志氏は、虐殺死を災害死に包含するような考え方を「中立性という名の政治性」と呼んでいる。
さいたま市の公民館が「9条デモの俳句」を中立でないという名目で掲載しなかったのも同じことだろう。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)
この不掲載という判断は、今年話題になった妙な「忖度」のハシリと言うべきだろう。
小池氏の反安倍の言動に幻惑されてはならない。
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