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2017年10月11日 (水)

福島原発事故賠償の論理/原発事故の真相(158)

東京電力福島第一原発事故被災者約3800人が、国と東電に損害賠償を求めた訴訟の福島地裁の判決が出た。
津波の予見性とその対策をしなかった責任を明確にし、国と東京電力の両方に賠償を命じた。
明快な法理である。

地震や津波は自然現象である。
しかし、災害は自然現象と人間の生活との係わりから発生する社会現象である。
福島原発事故の場合、地震とそれに伴う大津波は予見されていたことであった。
刑事責任に対する強制起訴裁判の大きな争点でもある。
⇒2016年3月 4日 (金):東電強制起訴の意味と意義/原発事故の真相(138)
⇒2017年7月 3日 (月):原発事故刑事裁判と大津波の予見可能性/原発事故の真相(157)

政府の地震調査研究推進本部が2002年に「三陸沖から房総沖にかけて巨大津波が発生しうる」と指摘した「長期評価」がある。
それを「大津波は来ないだろう」という根拠のない楽観論で済ませてきた。
最後は神風が吹くに違いないという思想である。
⇒2015年8月19日 (水):福島原発事故の予見可能性/原発事故の真相(134)

 08年3月。東電子会社は長期評価を基に、第1原発に最大15・7メートルの津波が来るとの試算を本社に報告。津波対策を担う原子力設備管理部の担当者がすぐに浸水を防ぐための防潮堤の高さについて子会社に検討を指示したところ、敷地の高さ(海面から10メートル)に加えて10メートルの高さの防潮堤が必要との報告を得た。
 この想定は、同部部長だった吉田昌郎(まさお)・元福島第1原発所長(故人)と、担当幹部だった元副社長の武藤栄被告(67)に上げられたが、武藤元副社長は土木学会に想定津波に関する再検討を依頼し、東電としての対策は「先送り」された。
 さらに指定弁護士はこの方針変更が社内でくすぶり続けた点も指摘。08年9月の社内会議では「津波対策は不可避」とのメモが配られ、09年2月には、元会長の勝俣恒久被告(77)や元副社長の武黒一郎被告(71)、武藤元副社長も参加する幹部打ち合わせで、吉田氏が「もっと大きな14メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいる」と発言したことも明かした。
強制起訴初公判 津波対策「先送り」争点 東電旧経営陣は否定

国会においても、原発事故の想定は議論されていたのである。
2006年12月22日、第1次安倍政権当時の第165回国会において、吉井英勝衆議院議員が質問し、安倍晋三首相が答弁した。
⇒2016年8月29日 (月):『東京ブラックアウト』と国会質疑/原発事故の真相(147)

Q質問1-7(質問者:吉井英勝衆議院議員/日本共産党)
停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら、核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているか。
A回答(回答者:内閣総理大臣/安倍晋三)
経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
吉井英勝VS安倍晋三→あまりに酷すぎる原発事故前の国会答弁2006年

安倍首相の根拠のない楽観論に大きな責任があると言ってよい。
また、賠償責任を定めた国の指針では、救済が不十分であることも指摘されている。
21710112
東京新聞10月11日

補償の問題については、半世紀前からダムの補償問題等で論じられてきた。
華山謙『補償の理論と現実―ダム補償を中心に』勁草書房(1969年)は、実証的な労作である。
しかし未だに不十分なままであることは、国の責任は免れない。
一方で、原発によって不当な利益を得ている受益者がいるのだ。
この不公平を無くしていくことこそ、「正義」というものだろう。

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