総選挙終盤の情勢/日本の針路(345)
安倍首相が「今なら勝てる!」と判断して解散したのだから、最初から与党有利のはずである。
それに、機会主義者の小池百合子都知事が都議選の味が忘れられずに乗っかり、バカな前原誠司民進党代表が取り込まれて、ますます与党有利になってしまった。
もはや首相として言ってはならない暴言さえも、問題にする人は少ない。
⇒2017年10月12日 (木): 安倍首相の暴言と衆院選序盤(?)の情勢/日本の針路(343)
そして早くも終盤である。
各紙とも与党堅調を報じている。
二十二日投開票の衆院選について、本紙は十七日、独自取材に、本紙や共同通信社が行った電話世論調査を加味し、終盤情勢を分析した。与党の自民、公明両党で、定数四六五の三分の二(三百十議席)以上を維持する情勢だ。希望の党と立憲民主党はそれぞれ四十議席超を確保する見通しで、野党第一党の座を争っている。
自民は今回から定数が六減された二百八十九の小選挙区のうち、二百超で優位に戦いを進めている。定数四減となった比例代表も全国各ブロックで堅調で、安倍晋三首相(自民党総裁)が勝敗ラインに掲げた与党過半数の目標に加え、国会運営の主導権を握る絶対安定多数(二百六十一議席)も単独で得る見通しだ。
公明は、自民とすみ分けて擁立した九つの小選挙区の一部で劣勢で、比例と合わせても公示前勢力を割り込む可能性がある。
小池百合子東京都知事が代表を務める希望は、多くの小選挙区で野党間の競合を招き苦戦している。小池氏が七月の東京都議選で旋風を起こした東京都でも、小選挙区での議席の確保に手が届いていない。与党と激しく争う小選挙区もあるが、比例が伸び悩んでおり、公示前勢力を割り込む可能性がある。
枝野幸男元官房長官が代表の立憲民主は、公示前勢力を三倍に増す勢いで自民に次ぐ第二党もうかがう。
共産党は、米軍新基地建設反対で一致する野党が支援する沖縄1区で優位に立つが、比例では他の野党の勢いに埋没し、前回衆院選の躍進で得た二十一議席の維持は難しい情勢。日本維新の会は地盤の大阪で存在感を示すものの、全国的な支持は勢いに欠け、公示前勢力を維持できるかが焦点だ。
社民党は小選挙区と比例九州ブロックで計二議席を獲得する見通し。比例で候補を出した日本のこころは議席獲得は見通せない。新党大地は比例北海道ブロックで議席が視野に入った。
無所属は、二十人以上が議席を獲得しそうだ。この中では、民進党出身のベテラン議員が目立つ。
自公2/3維持の勢い 希望、立民 野党第1党争い 終盤情勢
残念ながら大きくは変わらないだろうが、希望と立憲の争いを見ても、反安倍の野党共闘が成立していれば、情勢は変わっていただろう。
前原を代表に選んだ民進党の限界ということだろう。
その意味では、確固としたリベラル勢力が明確になったのは収穫である。
「週刊金曜日」のブログの山下芳生×中島岳志の対談『衆院選で問われる日本政治の新しい対決軸、リベラル陣営のリアリズムとは』に、中島岳志氏による明快な図が載っている。
横軸はリベラルとパターナルという価値観の問題です。リベラルは、基本的に個人の内的な価値の問題について権力は土足で踏み込まないという原則を持つ。これは寛容ということです。その反対語は、保守ではなくてパターナルで、価値を押しつける権威主義や父権制といった観念のこと。これは夫婦別姓、LGBT(性的少数者)の権利、歴史認識の問題などに現れやすい。
明らかに今の自民党は〈ローマ数字4〉の一番下のラインに位置すると思います。日本は、租税負担率や全GDP(国内総生産)に占める国家歳出の割合、公務員数などあらゆる指標がOECD(経済協力開発機構)諸国最低レベルとなっていて、もはや自己責任がいきすぎている社会です。
小池百合子さんも〈ローマ数字4〉に属します。彼女はかつて夫婦別姓に大反対しており(編集部注・「希望の党」は「寛容な保守」をアピールするために選択的夫婦別姓の導入に取り組んでいくとしている)、完全に思想的にはパターナル。極右的で歴史認識もひどい有様です。
まあ、小池百合子氏の本質は、関東大震災時の朝鮮人虐殺を認めない歴史修正主義や「排除」という言葉から明らかであって、前原誠司氏は、同類か騙されたかのいずれかであろう。
今更ではあるが、希望の党と自民党は無差別である。
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