安倍首相の人権感覚と共謀罪/アベノポリシーの危うさ(306)
共謀罪の審議において、一般人が対象となるのか否かが議論されたが、一般か否かは文脈や立場による。
例えば小川洋子さんの『博士の愛した数式』では、何の変哲もないと思われる28が、重要な意味を持つ数字として描かれていた。
⇒2014年2月 4日 (火):小川洋子『博士の愛した数式』/私撰アンソロジー(31)
悪名高い治安維持法も、当初「国体」の変革と私有財産制度の否認を掲げた結社やそれへの参加の処罰を対象とするとされていた。
しかし対象範囲が拡大していき、宗教団体や俳句結社などを含む広範な団体が弾圧された。
捜査機関が「怪しい」と判断すれば、逮捕して「未決勾留」として長期間の拘束が可能になる。
冤罪で有名な松川事件では、多くの人が貴重な時間を奪われ、人生を台無しにした。新法はその可能性を高めるだろう。
推定無罪という考え方がある。
「推定無罪の原則」とは、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条等)。
⇒2010年10月 8日 (金):冤罪と推定無罪/「同じ」と「違う」(22)
しかし未決拘留によって、「推定無罪の原則」は実質的に無化しうることは、松川事件等が教えてくれる。
であるから共謀罪には慎重であるべきなのだ。
ところが安倍首相は、自ら「推定無罪の原則」を無視して憚らない。
逮捕拘留中の籠池氏を「詐欺を働く人間」と決めつけ、昭恵夫人も騙されたと言うのである。
⇒2017年10月12日 (木):安倍首相の暴言と衆院選序盤(?)の情勢/日本の針路(343)
共謀罪を強行成立に持ち込んだのも、加計疑惑隠しの疑いが濃厚だ。
⇒2017年6月15日 (木):共謀罪強行成立という極めて大きな汚点/アベノポリシーの危うさ(233)
日本は既に法治国とは言えないのではないか。
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