日本の研究力を回復するために・基礎と自由/日本の針路(330)
ここ数年、着実にノーベル賞受賞者を輩出してきた日本も、急速に科学技術論文数の低下が指摘されている。
⇒2017年9月23日 (土):日本の研究力(知的生産力)の低下を憂う/日本の針路(329)
このままでは将来におけるノーベル賞受賞者の激減が心配される。
その要因はいろいろ考えられようが、政策的な影響は無視できない。
国家のリーダーの見識の問題である。
⇒2017年9月13日 (水):安倍首相の教育改革認識/アベノポリシーの危うさ(279)
安倍首相は「人づくり革命」という言葉を掲げながら、その具体策について何の国会論議も行わないまま、衆議院解散だという。
⇒2017年8月18日 (金):改造内閣(4)内閣の基本方針/アベノポリシーの危うさ(278)
重要なことは、安倍首相が強調するような「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」ではなく、基礎力を向上させることではないか。
昨年ノーベル賞を受賞した大隅良典博士は「基礎科学は文化」と喝破している。
⇒2016年10月 3日 (月):大隅良典氏にノーベル医学生理学賞/知的生産の方法(161) ⇒2016年12月 9日 (金):「基礎科学は文化」by大隅良典/知的生産の方法(165)
基礎研究には何が必要か?
日本で初めてノーベル化学賞を受賞した福井謙一博士の理論が生まれる過程を解説した米沢貞次郎、永田親義『ノーベル賞の周辺―福井謙一博士と京都大学の自由な学風』化学同人(1999年10月)は、自由な学風を強調している。
⇒2009年10月10日 (土):プライマリーな独創とセカンダリーな独創
すなわち「基礎と自由」が研究力向上のキーワードと言えよう。
今年のノーベル賞シーズンが近づいてきた。
受賞候補者名もあれこれ論議されている。
もちろんノーベル賞だけが栄誉ではないが、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞以来、科学界が1つの目標にしてきたことは事実である。
「週刊現代」10月7日号が、ノーベル賞候補をノミネートしている。
石野良純(ゲノム編集)、北川進(多孔性物質)、香取秀俊(光格子時計)、松村安広(ドラッグデリバリーシステム)、吉野彰(リチウム電池)、細野秀雄(鉄系超伝導体)、佐藤勝彦(インフレーション宇宙論)、坂口志文(免疫力)の8人の方が取り上げられている。
この中からノーベル賞受賞者が出るのか、あるいはこの他の研究者が栄誉を得るのか?
ちなみに上記の中で、北川、吉野両氏は、工学部ではあるが、福井謙一博士の学統に属する人である。
「基礎と自由」を重視する「化学における京都学派」である。
職業教育を重視する学校を否定しないが、高く聳える山作りが決定的に重要だろう。
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