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2017年9月13日 (水)

安倍首相の教育改革認識/アベノポリシーの危うさ(294)

安倍政権は、教育を重要施策として位置付けていたはずである。
しかし、森友・加計と教育に係わる疑惑で安倍政権の信頼性は失墜した。
最近、ドイツメルケル首相との対比で、安倍首相の教育認識を問うた西川伸一氏の『ドイツ科学の卓越性の秘密:Nature 最新号の記事を読んで』が話題になっている。
政府の高等教育政策の政府の見識の低さを嘆いたものだ。

安倍首相の認識が端的に表出されているのは、平成26年5月6日にOECD閣僚理事会で行った「安倍内閣総理大臣基調演説」である。
その中に次のような言葉がある。

 日本では、みんな横並び、単線型の教育ばかりを行ってきました。小学校6年、中学校3年、高校3年の後、理系学生の半分以上が、工学部の研究室に入る。こればかりを繰り返してきたのです。
 しかし、そうしたモノカルチャー型の高等教育では、斬新な発想は生まれません。
 だからこそ、私は、教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています。

もっともらしいような言葉が並んでいるが、「あっ」と驚くような内容である。
「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」と、堂々と高等教育の職業教育化を宣言しているのである。
加計学園グループの獣医学部が掲げた「国際的なライフサイエンス分野での競争力向上」という大義は、便宜的に言ってみただけ、と言えよう。
⇒2017年7月10日 (月):加計疑惑(30)今治獣医学部はライフサイエンスの拠点になる得るか/アベノポリシーの危うさ(251)

文科省方針も一切顧慮することなく「腹心の友」への便宜を図ったのも、高等教育に学術研究を深める意図がないとすれば、ある意味納得できる。
⇒2017年8月24日 (木):加計疑惑(50)獣医学部整備の文科省方針/アベノポリシーの危うさ(282)

もちろん、首相演説はしかるべきスピーチライターが起案したのであろうが、経産省辺りの官僚によるものであろう。
「Nature」誌が今年3月、「日本の科学力が14分野中11分野で大きく低下している」ことを指摘した背景に、「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う」という実態があったのである。
ドイツのメルケル首相の高等教育政策は対極的である。
メルケル政権は2つの改革を行った。

一つは大学改革で、これまで州政府の予算で運営されてきた大学に、連邦政府も「卓越クラスター」として直接予算を導入し大学の学術研究を促進する政策、そしてもう一つは大学やマックスプランクやヘルムホルツなどの研究機関を競わせるだけではなく、垣根を払った共同研究を促進するために行った政策だ。
この結果、先に述べた学術研究が急速に進展しただけでなく、もう一つ我が国の大学の凋落を印象付けたタイムズ高等教育トップ200に、なんと22大学がランクイン(2005年には9校だけ)している(我が国では東大と京大の2校だけ)。この結果ドイツの大学の魅力は増して、今や外国人教員数は全体教員数の12.9%に達している。
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ドイツ科学の卓越性の秘密:Nature 最新号の記事を読んで

メルケル首相は、元博士号を持つ物理学者である。
首相が学者である必要はないが、学術に対するリスペクトは必要だろう。
遠くない将来、日本の大学のレベルは大幅にダウンすると思われる。

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