原子力事業で破滅の危機の東芝(8)2部降格と半導体事業の行方/ブランド・企業論(67)
東京証券取引所は23日、経営再建中の東芝の株式について、8月1日付で東証1部から2部に降格させると発表した。
今年3月末時点で、負債が資産を上回る債務超過の状態にあったことを東証が確認したためであり、予測はされていたが、「とうとう」という感慨新たである。
東芝は23日、2017年3月期の決算内容を記した有価証券報告書(有報)の提出期限の延長を関東財務局に申請し承認を受けたと発表した。新しい期限は8月10日。半導体メモリー事業の売却交渉で官民ファンドの産業革新機構などを優先交渉先に決めたばかりだが、その一方で有報提出は先送りせざるを得ないといった綱渡りの運営が続いている。
綱川智社長は東芝本社(東京・港)で会見を開いた。冒頭、有報の提出期限の延長などについて説明し「株主など利害関係者に多大な心配をおかけすることをおわびします」と謝罪した。15年春の会計不祥事発覚以降、有報の期限を延期するのは今回で5回目だ。
提出期限延長の主因は、3月下旬に法的整理に踏み切った米原子力事業会社のウエスチングハウス(WH)。WHは米連邦破産法11条の破綻手続きに入っているが、再生計画が固まるのは7月末がめどとなる。これに伴い決算や監査手続きの完了に時間がかかるほか、米国の原子力発電所建設プロジェクトの工事損失引当金について損失の認識時期が適切だったかどうかの確認も進めている。
監査法人のPwCあらたとは見解の対立が続いているが、協議を継続し、新しい有報提出期限までに「適正意見」の獲得を目指す。
東芝社長、日米韓連合と基本合意「28日までに可能」
東芝の失敗は、国策と一体化した原発事業への執着にある。
「週刊エコノミスト」6月20日号に、以下のような図が載っている。
その国策の推進者が現在の政権を支えているのだ。
政権を変えないと、10年後には日本全体が東芝化する蓋然性が高いと言えよう。
半導体メモリーの売却について東芝は革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタルの連合を優先交渉先に選んだ。
しかし、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が売却に反対の姿勢で法的手段にも出ており、前途は不透明だ。
東京新聞6月22日
半導体メモリーの売却についても、国を「忖度」するようでは、東芝は所詮、その程度の会社、ということになる。
残念であるが、そんな会社にイノベーションは期待できないだろう。
東芝が上場を維持するとしても、ウリという判断だろう。
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