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2017年5月 4日 (木)

アホな内閣(8)学芸に対するリスペクトの欠如/アベノポリシーの危うさ(199)

桑原武夫という碩学の名前も過去のものなのか?
京都市に寄贈した1万冊余の蔵書が無断で廃棄されていたことが報じられている。

 京都大人文科学研究所を拠点とした「新京都学派」を代表する仏文学者、故桑原武夫氏(1904~88年)の遺族が京都市に寄贈した同氏の蔵書1万421冊を2015年、当時、市右京中央図書館副館長だった女性職員(57)が無断で廃棄していたことが27日、分かった。市教育委員会は同日、女性を減給6カ月(10分の1)の懲戒処分とした。
 蔵書は1989年に市国際交流会館(左京区)が開館した際に寄贈され、一般公開されていた。市教委によると、2008年に京都に関する資料を収集する機能を備えた右京中央図書館がオープンしたのに合わせ、蔵書を同館に移動させたが、保存場所がないとして、向島図書館の倉庫に移した。15年に向島図書館の職員から、「置き場所がなく処分したい」と女性職員に相談があり、了承したという。
 今年2月、市民から「蔵書を閲覧したい」と右京中央図書館に問い合わせがあり、同館職員が「廃棄した」と答えたため、市民が市教委に連絡。市教委が調査し、発覚したという。市教委は「貴重な蔵書を廃棄してしまい、大変申し訳ない」と話している。
・・・・・・
 蔵書は日本文化研究、日本と世界の名著などの全集類のほか、政治や哲学の仏語原書など。右京中央図書館には、現在も「桑原武夫コーナー」として、桑原氏が生前に使用していた机や椅子、直筆のノートなど20点が置かれている。
 桑原氏は「赤と黒」で知られる小説家スタンダールや「社会契約論」を著したルソーなどフランスの文学や哲学、評論などの研究で知られる。研究対象は人文科学全般に及び、哲学者の故鶴見俊輔氏や民族学者の故梅棹忠夫氏ら多くの学識者に影響を与えた。国際日本文化研究センター(西京区)の創設にも尽力。京大学士山岳会の遠征隊長を務めるなど登山家としても知られる。
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桑原武夫氏の蔵書1万冊廃棄 京都の図書館、市職員処分

そのかみ、生島遼一氏との共同訳の『赤と黒』や、『日本の名著 — 近代の思想』中公新書(1962年)などを読んだ世代にとっては、桑原は真にリスペクトに値する知識人であった。
また「第二芸術論」には異論があるが、確かに一面の真実を衝いていると思った。
⇒2007年8月25日 (土):第二芸術論再読
⇒2007年8月26日 (日):第二芸術論への応答

組織としては、安倍親衛隊とも言うべき「文化芸術懇話会」が象徴するように、リベラル・アーツの欠如が日本社会を急速に覆いつつある。
⇒2015年7月12日 (日):「文化芸術懇話会」におけるリベラルアーツの欠落/日本の針路(195)
同会の勉強会で講師を務めたのが百田尚樹氏であった。
⇒2015年7月 2日 (木):百田尚樹という存在の耐えられない軽さ/人間の理解(14)
その百田氏が漢文授業廃止を説いている。

 そもそも、なぜ学校で「漢文」の授業があるのか。英語と違って使う機会なんてないし、あれは趣味の世界だと思うんです。子供の頃から誰でも知っている「中国4000年」という言葉も、あの国への無意味な憧れを生んでいます。
百田尚樹氏「中国文化は日本人に合わぬ。漢文の授業廃止を

もちろん、これはまったくの暴論というか無知(恥)の論である。

「漢文授業は趣味の世界で役に立たないから授業から外せ」という主張は、日本文化に対しても、日本の歴史に対しても、リスペクトの全く感じられない愚かな発言です。このような主張がまかり通れば、この国は「役に立つこと」「金になること」ばかりがもてはやされる、モノトーンのつまらない国になってしまうことでしょう。大体独裁国ってそうなってますよね。
当然のことながら、ネット上の反応は百田を嘲笑するものばかり。百田のような著名人が、こんな知性や教養の欠片のないことを堂々と言ってのけるということに驚愕ですが、同意する者がほとんど見当たらないのがせめてもの救いというものです。

安倍政権の下で、山本幸三地方創生相の「学芸員を一掃せよ」という発言が示すように、日本社会の「バカ化」が進んでいる。
⇒2017年4月22日 (土):アホな内閣(3)山本幸三地方創生担当相/アベノポリシーの危うさ(188)
⇒2017年4月18日 (火):不適格大臣列伝(17)山本幸三地方創生担当相/アベノポリシーの危うさ(184)

「バカ化」について、橋本治氏が次のように論じているらしい。
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東京新聞4月29日

言い得ていると思う。
「役に立つか役に立たないか」という尺度で教育を考えると、政府の考える「役に立つこと」だけが残り、自由な研究は失われるだろう。
しかしノーベル賞級の研究が、当初は役に立つ見込みが皆無だった例はいくらでもある、というか、純粋に知的好奇心に導かれた研究こそが大輪の花を咲かせると言えよう。
⇒2015年11月 9日 (月):素粒子論の発展と日本人(6)/知的生産の方法(135)
⇒2015年10月 6日 (火):祝・大村智氏のノーベル賞受賞/日本の針路(239)

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