共謀罪強行採決と民主主義の危機/アベノポリシーの危うさ(212)
まったくヒドイ国会である。
安倍首相は、「我が党においては結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と述べたたことがある。
しかし、憲法違反の疑いも指摘されている集団的自衛権の行使容認をはじめ、強行採決のオンパレードではないか。
考えたことはないが、したことはある、とでも言うのであろうか。
「共謀罪」法案についても、19日の衆院法務委員会で、採決を行い、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決してしまった。
与党が一方的に採決の目安と定めた30時間という審議に何の意味があると言うのか?
むしろ、ますます法案への疑問が深まったところではないか。
しかも採決を促したのは、委員でもない維新の丸山穂高氏だ。
衆院法務委員会で与党が採決を強行した背景には、日本維新の会の存在もある。この日、最後に質問に立った維新の丸山穂高氏はもともと委員外の議員。維新が修正案を共同提出したために代打で質疑に立ったが、最終盤に「ピント外れの質疑ばっかり繰り返し、足を引っ張ることが目的の質疑はこれ以上必要ない。直ちに採決に入って頂きたい」と促した。
与野党が対決する法案であれば、問題点を指摘しながら、質疑時間をできるだけ確保しようと努めるのがこれまでの野党の姿だった。自公との修正に合意した維新は、矛先を他の野党に向け、与党との一体化を演出する役割を担った。
自公維3党は4月27日に修正協議のテーブルについた。焦点は維新が要求した取り調べの可視化だったが、実際には、思想の自由を制約しかねない法案の根幹部分は変えず、政府が受け入れ可能な範囲の修正だった。公明幹部は「こんな程度の修正で満足するんだと思った」と振り返る。
この間、5月3日の憲法記念日に安倍晋三首相が憲法改正について、9条への自衛隊明記と共に、維新が主張する教育無償化を盛り込んだビデオメッセージを公表。自民の二階俊博幹事長は8日、維新の馬場伸幸幹事長らと幹部同士で会食した。国会での改憲発議をにらみ、衆参各院で3分の2以上を占める3党の枠組みがますます強まりつつある。自民にとっては、野党の一角である維新が賛成すれば、採決強行に対する批判もかわしやすいという計算も働いた。
「共謀罪」強行劇、維新が採決促す「これ以上必要ない」
このまま、衆参の本会議で可決されれば、議会政治も民主主義も死んだと言わざるを得ないだろう。
改めて、維新の与党化がはっきり出た委員会だった。
それにしても論点が積み残された法案である。
質疑が打ち切られた19日の審議でも、野党側は具体的な事例を示し、法案の必要性の有無や矛盾点、処罰対象の範囲のあいまいさを指摘。根本的な疑問が解消していない実態を浮き彫りにした。
「論点が満載だ。採決は絶対に認められない」
民進党の逢坂誠二氏は約25分間の持ち時間で「一般人は捜査対象か」という論点を繰り返し問い、質疑終盤に語気を強めた。
約1カ月の衆院委の審議で、「一般人」問題は最大の論点になったが、政府側の答弁が二転三転した。金田勝年法相はこの日、政府見解通り「捜査対象にならない」と答弁。捜査前に犯罪に関与した疑いを調べる「調査・検討」の対象にもならないと強調した。
逢坂氏は「共謀罪」の捜査にからみ、警察による「情報収集活動」の対象に一般人が含まれるかを質問した。警察庁の白川靖浩・長官官房審議官が「情報収集は特定の犯罪の捜査を念頭に置いたものではない」とかわすと、逢坂氏は「広く多くの人が対象になる。ずっと(議論を)やってきたが釈然としない」と不満をあらわにした。
最近の審議で新たな論点に浮上した「刑の重さの不均衡」にも明快な答弁はなかった。判例上、具体的な危険性が要件の予備罪に比べ、準備行為それ自体には危険性がない「共謀罪」の方が罪が重くなり得るという矛盾だ。
「共謀罪」強行劇、維新が採決促す「これ以上必要ない」
「一般人は対象にならない」と言われて、安心するのはよほどのお人好しであろう。
一般論として言っても、「一般」の対語は「特殊」あるいは「特別」であろうが、一般と特殊の差異は相対的である。
言い換えれば、視点を変えれば、一般にも特殊にもなるのである。
東京新聞5月20日
小川洋子さんの『博士の愛した数式』に、28が完全数だというエピソードが出てくる。
⇒2014年2月 4日 (火):小川洋子『博士の愛した数式』/私撰アンソロジー(31)
28という数字は、江夏の背番号でもあって、この小説で重要な意味を背負っているが、素数でもないし、「一般には」平凡な数字と言えよう。
何が一般で、何が特殊かは、何に着目するかによるのである。
そして、一般人かどうかを決めるのは捜査機関であることを銘記したい。
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