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2017年1月 3日 (火)

岐路に立つ日本と満州国論/日本の針路(317)

2017年は、様々な点で日本が岐路に立つだと思われる。
日本が再び戦前、戦中のような社会に回帰するのではないか?
第2次安倍内閣が発足した2012年以降、情報の統制が進み、反対意見を言いにくい雰囲気が強まった。

2014年の特定秘密保護法施行による政府に不都合な情報の国民からの遮断、2015年のマイナンバー法施行による国民の一元管理に加え、2016年の改正通信傍受法の施行により、捜査機関による傍受(盗聴)の縛りが大幅に緩和し、市民活動の監視が強化された。
の目が及ぼうとしている。
安倍政権はメディア介入も強めている。高市早苗総務相は昨年、放送局に電波停止を命じる可能性に触れた。政府が放送局に電波停止をちらつかせるようでは放送の自由は死んでしまう。
メディアへの介入も強く、高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に触れたたが、政府が放送局に電波停止を以て恫喝することにより、放送の自由は実質的に死んだ。

これらの事態は、満州事変以降の歴史を想起させるものである。
鶴見俊輔は1956年(昭和31年)に「知識人の戦争責任」(『中央公論』1956年1月号)のなかで「15年戦争」という言葉提起した。
それは以下の3つの段階で進んだ。
1.満州事変:1931年(昭和6年)9月18日 ~
2.日中戦争(支那事変):1937年(昭和12年)7月7日 ~
3.太平洋戦争(大東亜戦争):1941年(昭和16年)12月8日 ~

年表風にまとめれば以下のようになる。
昭和 6年 9月18日 満州事変
昭和 7年 1月 8日 桜田門天皇狙撃未遂事件
             1月28日 上海事件
             3月 1日 満州国建国宣言
             5月15日 5・15事件(犬養首相殺害)
昭和 8年 3月27日 国際連盟を脱退
昭和11年 2月26日 2・26事件
昭和12年 7月 7日 蘆溝橋事件
昭和13年 4月 1日 国家総動員法公布
昭和16年12月 8日 日本軍真珠湾を奇襲
⇒2013年2月27日 (水):石原莞爾と2・26事件/満州「国」論(15)

満州事変は1933年に塘沽協定により停戦が成立し、中国軍による偶発的発砲から起こったとされる盧溝橋事件(日中戦争)についても日本は「局面不拡大」「平和的折衝の望みを捨てず」と閣議決定[2]をしているが、鶴見は満州事変から日中戦争を経て太平洋戦争に至る(大東亜戦争)過程を日本の連続的な対外膨張戦略ととらえて14年間(15年にわたる)に及ぶ戦争を「十五年戦争」として総括しており、現実の歴史を振り返れば重要な視点であろう。

満州国という「国」は、様々に論じられてきた。
例えば、宮下隆二『イーハトーブと満洲国-宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』PHP研究所(0706)などは、意外な視点だと思われる。
文学者が岩手県を理想化して描いた仮想的なユートピアと日本の侵略の象徴ともいうべき「国」である。

満州国は国家だったのか?
武田徹『偽満州国論』河出書房新社(1995年12月)は、「満州国の興亡をテキストに、国家を規定する幻想性を追求する。石原莞爾の「最終戦争論」、甘粕正彦の満州政策。そしてインターネット、デジタルキャッシュ、オウム王国の建設へ。満州国のデザインは戦後も生き続ける。」ことを描いた書である。
「満州国」と「」付きで表記され、「なかった」ことになっているが、壮大な社会実験とみることもできる。

あるいは「評論自体が「ジャズ的なノリ」で書かれることが多く、あまり論理的な文章ではない。平岡の感性でとらえた、「辺境的なもの、マイナーなもの」を、ことさらに称揚しているだけとも受け取れる」と評された平岡正明『石原莞爾試論』白川書院(1977年5月)は、現在でも一部にカリスマ的人気を持つ石原莞爾を「武装せる右翼革命家」として論じている。
⇒2009年7月10日 (金):平岡正明さんを悼む/追悼(7)

同書の装丁に使われている満州国図は以下のようである。
2

もう一度、満州国の興亡を辿ることを今年の1つの課題としたい。

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