九州と近畿の地名の類似性/やまとの謎(118)
記紀神話がまったくのフィクションではないとして、どの程度史実を反映したものだろうか?
シュリーマンは、幼少期に聞かされたギリシア神話に登場する伝説の都市トロイアが実在すると考え、実際にそれを発掘によって実在していたものと証明した。
同じことが記紀神話でも起こり得るだろうか?
天孫降臨は高天原から高千穂の降臨した。
高千穂については宮崎県の2カ所が有力であるが、高天原はどう考えられるか?
昔、安本美典氏の『高天原の謎―日本神話と邪馬台国 』講談社現代新書(1974年7月)を読んだことがある。
安本氏は古代史分野、特に邪馬台国問題に数理的方法論を取り入れたひとである。
⇒2008年11月16日 (日):安本美典氏の『数理歴史学』
邪馬台国と統計的推定という一種の「異質の組み合わせ」が魅力的だった。
『高天原の謎―日本神話と邪馬台国 』は既に処分整理して手許にないが、『天照大御神は卑弥呼である -真説・卑弥呼と邪馬台国 』心交社(2009年12月)に同様の内容が収録されている。
私が興味深く思ったのは、北九州と奈良県の地名の類似性である。
先行業績として、鏡味完二氏の『日本の地名』角川新書(1964年)があるが、安本氏は、福岡県朝倉郡の旧夜須町のまわりと大和のまわりの地名の驚くほどの類似性を指摘した。
多伎元達也『日本の地名の真の由来と神武東征のカラクリ仕掛け 』 たっちゃんの古代史とか出版(2014年2月)に以下のように図示されている。
多伎元氏も、九州と近畿の地名の相似性について最初に知ったのが、安本美典氏の著書だったという。
安本氏は、次のような例を挙げて、位置関係と音の類似性は、とても偶然とは思えないとしている。
・北方の笠置山。三笠山、御笠山。住吉(墨江)神社。
・西南方の三潴、水間。
・南方から東南方の鷹取山(高取山)。天瀬(天ヶ瀬)。玖珠(国ス(木偏に巣)。
また『記紀』では、高天原に天の安川という川が流れていたとされる。
安はもちろん夜須に通じる。
安本氏は、高天原は、甘木や高木などの地名に姿をとどめているのではないか、として、旧甘木市(現朝倉市)こそ、アマの地であると推測している。
そして、このような地名の類似性は、九州から近畿への集団的移住を示すものであり、邪馬台国が東遷したと考えるのがリーズナブルであるとした。
そして、神武東征神話は、まさに邪馬台国東遷のことではないかとした。
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