三菱電機元社員の労災認定と働き方改革/日本の針路(318)
三菱電機で、違法な長時間労働が行われたとして、厚生労働省神奈川労働局が11日に同社を書類送検した。
男性の労働環境は過酷だった。平成25年4月に入社後、先進的な研究の発表を促されていたのと同時に、製品のトラブル対応を求められ、26年1月から業務が膨大になった。
翌月は2日しか休みがなく、食事がのどを通らなくなり、手が震えるようになった。残業時間は月160時間に上ったが、会社への申告は「59時間」しか認められなかった。
配属先の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では、名札だけで姿を見せない社員が何人もいた。尋ねてみると、休職している人たちだったという。
上司からは厳しい叱責が飛んだ。「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」
不眠を訴えても仕事は減らなかった。26年4月に鬱病になり、薬を飲みながら仕事をしていたが、同年6月には医師から勤務停止を求められた。
男性は「何度も言い続けてきたが無視されてきた。会社はきちんと考えを改め、日本の社会も変わってほしい」と話した。
三菱電機元社員を労災認定
実態が良く分からないが、上記の情報だけでもいろいろ考えなければならない問題がある。
「先進的な研究の発表」とは?
先進的かどうかは相対的である。
企業の研究であるから有用性が求められるのは当然である。
例えば、特許権になるような研究ということであろう。
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産業上の有用性は当然として、問題は新規性と進歩性の判断である。
俳句を例にして、この問題を考えたことがある。
「新規性」というのは、特許を出願する時点で、「公知」でないこと、つまり今までに発表されていないことであり、「進歩性」というのは、誰でもが簡単に思いつくようなものではない、ということである。
問題は、「進歩性」の「誰でもが簡単に思いつくようなものではない」という基準をどう考えるか?
「特許法」では、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」は、「前項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」としている。
これを「進歩性」がない、と表現している。
しかし、「通常の知識」や「容易に」という概念には、裁量の要素が入ってくることを避けられない。
⇒2007年10月23日 (火):選句の基準…③新規性と進歩性
三菱電機社員のテーマが何だったのかは不明であるが、「進歩性」を問われるようなテーマであれば、そしてその可能性は高いであろうが、寝ている時も考えるような状態だったのかも知れない。
そして、それは誤解を恐れずに言えば「当たり前」かも知れないのである。
時間で規定される労働と、知的藤堂の根本的な違いである。
働き方改革は必要であると思うが、超過時間労働「だけ」を問題にすることには違和感がある。
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