原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
昨年暮れ、東芝は原発事業に関し、数千億円規模の減損損失が出る可能性があると発表した。
多くの人が大晦日の準備を始めていた先月27日、東芝は米国の原発事業において数千億円の損失が発生する可能性があると発表しました。しかも、正確な金額が確定しておらず「数千億円という段階までしか言えない」というかなりずさんな内容でした。
損失が発生するのは、米子会社のウェスチングハウス(WH)社が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)です。東芝の説明によると資産価値を精査したところ想定よりも大幅に価値が下回ったとのことです。
米国の原子力事業で巨額の損失が発生する可能性があることは、以前から指摘されていました。同社は累計で数千億円の金額を投じてWH社を買収しましたが、東芝による買収後もWH社の経営は安定しませんでした。WH社は状況を打開するため、米国の原子力サービス企業S&Wと提携し、原発建設のプロジェクトを積極的に進めてきましたが、プロジェクトがうまく進まず、S&Wは巨額の損失を抱えてしまいます。
東芝グループとS&Wの親会社であるCB&Iは損失処理をめぐって対立するようになり、一部では訴訟に発展しました。各種報道によると今回の買収は、S&Wの損失処理をめぐる紛争解決の手段だったとされています。損失を抱えた会社を買い取ったわけですから、買収が行われた段階で、相応の損失が発生することはある程度、予見できていたことになります。東芝経営陣の見込みはかなり甘かったといってよいでしょう。
東芝が巨額損失問題、自己資本はすべて吹き飛び、債務超過に転落の可能性も
債務超過になれば、東証のルール上2部に転落し、東芝株の買い手は極端に少なくなる。
まさに危機的状況であるが、その原因は、原子力事業である。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
「見切り千両」という言葉があるが、原子力事業を見切ることができなかった必然的な結果である。
⇒2016年7月19日 (火):原子力を死守する東芝の未来/ブランド・企業論(55)
しかし原子力事業は国策としての側面が強いので、何らかの政府主導の救済が模索されるだろう。
日立製作所やNECとの経営統合が囁かれている。
東芝は、リストラクチャリングとして半導体事業の分社化を発表した。
米原発事業で多額の損失が出る見通しの東芝が、半導体事業の主力製品「フラッシュメモリー」を分社化する本格検討に入ったことが17日、分かった。損失の規模によっては債務超過となる可能性もあるため、外部資本の導入によって財務基盤を強化する準備を急ぐ。
外部から数千億円規模の出資があれば、原発事業の損失を吸収できそう。分社化の対象製品は、三重県の四日市工場で生産している。中でもスマートフォンなどの記憶媒体として使われる「NAND型フラッシュメモリー」のシェアは世界トップクラスで、今後の成長も見込まれる。「市場価値は2兆円」(金融機関)との見方もある。
東芝、半導体分社化を本格検討
原発事業はブラックホールである。
一時的にしのいでみても、原発事業を続けている限り、東芝の危機は去らない。
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