恩田陸『蜜蜂と遠雷』/私撰アンソロジー(45)
今期の直木賞受賞作。
第6回芳ケ江国際ピアノコンクールを舞台に、若きコンテスタントたちの戦いと友情を描く。芳ケ江は浜松がモデルで、随所にそれを思わせる描写が出てくるが、浜松とは無関係に楽しめる。
「ノスタルジアの魔術師」と言われ、青春群像の描写に定評がある著者の手練れの作品だ。
⇒2017年1月21日 (土):恩田陸『夜のピクニック』/私撰アンソロジー(43)
ちなみに浜松国際ピアノコンクールの概要は以下の通りである(Wikipedia)。
現在では、国際音楽コンクール世界連盟に加盟する国際コンクールである。第1回大会は浜松市市制施行80周年を記念して1991年(平成3年)に開催され、若手ピアニストの育成を図るとともに楽器の街から音楽文化の街への昇華を図る近年の浜松市政の代表的なものとなっている。第1回審査委員長は小林仁、第2回審査委員長は安川加寿子。安川の没後に中村紘子が後任に選ばれてからは、課題曲、審査員、コンテスタントの人選が以前よりも変化に富み、コンテスタントのレベルや選べるコンチェルトも次第に上がっていった。開始当初、レパートリーやコンチェルトの選曲の異様な狭さが問題となっていた。
開始当初はピアノの「ビッグスター」あるいは「スーパースター」が来場することで有名で、彼らはその後に国際コンクールの主要タイトルを連取した。ショパン国際ピアノコンクールやヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの優勝者すら複数名も輩出し、予選落ちですらチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門の優勝者やクリーブランド国際ピアノコンクール]やソウル国際音楽コンクールピアノ部門の優勝者を出すなど、華やかな激戦が繰り広げられた。ただし、中村紘子が審査から退任後は国際コンクールの「周遊組」が目立つようになり、2012年は優勝こそイリヤ・ラシュコフスキーであったものの、彼はその後チャイコフスキー国際音楽コンクールに失敗し、第二位第三位受賞者もことごとくメジャー国際コンクールで落選した。2015年度はヴィオッティ国際音楽コンクールピアノ部門、ショパン国際ピアノコンクール、ブゾーニ国際ピアノコンクールの予選落ち同士が本選で対決するなど、レヴェルの膠着化が顕著になってきている。
現時点で「メジャーデビュー」を成功させた優勝者は、チョ・ソンジンだけである。これも「メジャーデビューが難しい」とされているヴァン・クライバーン国際コンクールの在り方に酷似しているが、ツアーが3年ついて回るということはない。また、予選で落ちた人物の演奏CDを販売しており、人気のあるコンテスタントは即SOLD OUTになるなど、市民にピアニストの音が根付く仕掛けが施されている。
掲出部分は、かつて天才少女と言われた栄伝亜夜が、自然児的天才風間塵の才能に触れ、再び音楽に意欲を復活させるシーン。
コンクールの期間中に劇的に進化を遂げて行く若者たちが感動的だ。
音楽性の進化という不可視のテーマを、恩田さんは一幅の絵のように見事に描写している。
全日本卓球選手権で優勝した平野美宇選手が、「少女から勝負師に変身した」と言われているが、上達するときは昆虫の変態のように進化するのだろう。
コンクールが舞台だけに、ふんだんに楽曲名が登場する。
ちなみにファイナルに残った6人のコンテスタントの演奏する楽曲は、以下の通りである。
http://ml.naxos.jp/playlist/naxos/565625
こんなことがアップされていることでも分かるように、クラシック音楽ファンには「一粒で二度も三度もおいしい」作品と言えよう。
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