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2017年1月

2017年1月31日 (火)

原子力事業で破滅の危機の東芝(4)/ブランド・企業論(65)

東芝の危機は衝撃的である。
2015年に発覚した不正会計処理に対応するため、優良事業だった東芝メディカルシステムズの全株式を売却するなどろリストラを進めていたところだった。
約1兆円という巨額の資金を捻出し、社長を含む8人の取締役が引責辞任した。
16年3月期は、7000億円以上の営業赤字、医療機器子会社の売却益を加えた最終赤字は4600億円に達した。

それを底として、V字回復するはずだった。
それが一気に暗転である。
書店に、「東芝解体」と大きく書いた雑誌が平積みされている。
発売中の「週刊東洋経済」2017年2月4日号である。

同誌によれば、東芝解体は待ったなし!
選択肢としては、「優良資産の売却」「原子力事業の分離」「外部資本の受け入れ」があるが、これらを同時並行的に進めなければならない。
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グループ企業も合わせると19万人のマンモス企業である。
福島原発事故を教訓にして、原子力事業からの方向転換を図っていれば、と今更ながら思う。
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東京新聞1月28日

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2017年1月30日 (月)

恩田陸『蜜蜂と遠雷』/私撰アンソロジー(45)

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今期の直木賞受賞作。
第6回芳ケ江国際ピアノコンクールを舞台に、若きコンテスタントたちの戦いと友情を描く。芳ケ江は浜松がモデルで、随所にそれを思わせる描写が出てくるが、浜松とは無関係に楽しめる。
「ノスタルジアの魔術師」と言われ、青春群像の描写に定評がある著者の手練れの作品だ。
⇒2017年1月21日 (土):恩田陸『夜のピクニック』/私撰アンソロジー(43)

ちなみに浜松国際ピアノコンクールの概要は以下の通りである(Wikipedia)。

現在では、国際音楽コンクール世界連盟に加盟する国際コンクールである。第1回大会は浜松市市制施行80周年を記念して1991年(平成3年)に開催され、若手ピアニストの育成を図るとともに楽器の街から音楽文化の街への昇華を図る近年の浜松市政の代表的なものとなっている。第1回審査委員長は小林仁、第2回審査委員長は安川加寿子。安川の没後に中村紘子が後任に選ばれてからは、課題曲、審査員、コンテスタントの人選が以前よりも変化に富み、コンテスタントのレベルや選べるコンチェルトも次第に上がっていった。開始当初、レパートリーやコンチェルトの選曲の異様な狭さが問題となっていた。
開始当初はピアノの「ビッグスター」あるいは「スーパースター」が来場することで有名で、彼らはその後に国際コンクールの主要タイトルを連取した。ショパン国際ピアノコンクールやヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの優勝者すら複数名も輩出し、予選落ちですらチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門の優勝者やクリーブランド国際ピアノコンクール]やソウル国際音楽コンクールピアノ部門の優勝者を出すなど、華やかな激戦が繰り広げられた。ただし、中村紘子が審査から退任後は国際コンクールの「周遊組」が目立つようになり、2012年は優勝こそイリヤ・ラシュコフスキーであったものの、彼はその後チャイコフスキー国際音楽コンクールに失敗し、第二位第三位受賞者もことごとくメジャー国際コンクールで落選した。2015年度はヴィオッティ国際音楽コンクールピアノ部門、ショパン国際ピアノコンクール、ブゾーニ国際ピアノコンクールの予選落ち同士が本選で対決するなど、レヴェルの膠着化が顕著になってきている。
現時点で「メジャーデビュー」を成功させた優勝者は、チョ・ソンジンだけである。これも「メジャーデビューが難しい」とされているヴァン・クライバーン国際コンクールの在り方に酷似しているが、ツアーが3年ついて回るということはない。また、予選で落ちた人物の演奏CDを販売しており、人気のあるコンテスタントは即SOLD OUTになるなど、市民にピアニストの音が根付く仕掛けが施されている。

掲出部分は、かつて天才少女と言われた栄伝亜夜が、自然児的天才風間塵の才能に触れ、再び音楽に意欲を復活させるシーン。
コンクールの期間中に劇的に進化を遂げて行く若者たちが感動的だ。
音楽性の進化という不可視のテーマを、恩田さんは一幅の絵のように見事に描写している。
全日本卓球選手権で優勝した平野美宇選手が、「少女から勝負師に変身した」と言われているが、上達するときは昆虫の変態のように進化するのだろう。
コンクールが舞台だけに、ふんだんに楽曲名が登場する。

ちなみにファイナルに残った6人のコンテスタントの演奏する楽曲は、以下の通りである。
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http://ml.naxos.jp/playlist/naxos/565625

こんなことがアップされていることでも分かるように、クラシック音楽ファンには「一粒で二度も三度もおいしい」作品と言えよう。

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2017年1月29日 (日)

不適格大臣列伝(8)世耕弘成経済産業相/アベノポリシーの危うさ(126)

東芝が破滅の淵に立たされている。
原発事業の失敗が原因である。
⇒2017年1月28日 (土):原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)

福島原発事故はいつ収束するか、メドが立たない。
除染はしているものの、放射性物質が消えてなくなるわけではない。
しかし、飛び散った放射性物質は、法律上「無主物」という理屈で、国が除染費用を負担している。
つまり、国民の税金である。

東京電力は既に当事者能力を失っているのだ。
東芝もそうなる可能性がある。
かつてのエクセレント・カンパニーを破滅させつつある原発事業は、やがて国民全体を破滅させかねない。
にもかかわらず、世耕弘成経産相は相変わらず、「原発は安い」などと能天気なことを言っている。

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世耕大臣が廃炉費用増加でも「原発コスト安い」

また、東京電力福島第一原発の廃炉費用を巡り、世耕大臣は「誰が費用を負担するかは最終的に私が判断したい」と偉そうに言っている。
安倍首相の腰巾着のような大臣だ。

Wikipediaによれば、世耕氏の「出世」は安倍氏と連動している。

2006年9月26日、安倍内閣の内閣総理大臣補佐官として政権入り。各国首脳会談に随行し安倍をサポート。国内だけではなく、海外メディアの取材も積極的に受け、世界に向けた情報を発信する。また、安倍内閣の最重要プロジェクトである「『美しい国づくり』プロジェクト」を推進、各界有識者の意見を集約する。

日本一「美しい村」と言われた飯館村を破壊したのは、「『美しい国づくり』プロジェクト」チームであったことを銘記すべきだろう。
祖父の世耕弘一は経企庁長官などを務めた政治家だったが、M資金関係者の一人として有名である。

1947年3月の衆議院決算委員会で「日銀の地下倉庫に隠退蔵物資のダイヤモンドがあり、密かに売買されている」と発言。隠退蔵物資事件を暴露する。この軍需品払下問題にからむ大規模な詐欺横領事件は経済問題から保守政党の党費にからむ政治問題になった。
日銀の地下倉庫の隠退蔵物資が、その後も密かに運用され、俗にM資金と呼ばれるとの噂が絶えなかった。またこの噂を利用して多くの詐欺事件も発生した。
世耕弘一


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2017年1月28日 (土)

原子力事業で破滅の危機の東芝(3)/ブランド・企業論(64)

原子力事業を深追いした東芝が窮地に立っている。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
⇒2017年1月20日 (金):原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

経緯は以下の通りである。
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東京新聞1月27日

東芝「倒産」はついに秒読み段階か 〜取締役会議長が明かした内情」には、次のような記述がある。

そうした中、いま市場関係者の間で注目が集まっているのが東芝の「CDS値」。これは「企業の倒産危険度」をやり取りする金融商品で、値が高いほど危険度が高まっていることを示す。
東芝のそれを見ると、昨年12月には80台だったのが、年末の発表以降に急上昇し、一時は400を突破したほどだ。
「日立のCDS値は20台、ソニーは40台。比較すれば一目瞭然で、東芝は完全に『危険水域』に入った」(外資系証券債券アナリスト)
東芝破綻の一報をどこが最初に打つか――。

そして、ついに虎の子の半導体事業を切り売りせざるを得なくなった。
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東京新聞1月28日

世耕経産相は未だに「原発は安い電源」などと言っているが、東芝や東京電力という日本を代表するエクセレント・カンパニーを破綻の淵に立たせている原発事業は、まさに亡国の事業というべきであろう。

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2017年1月27日 (金)

安倍首相がフィリピンにミサイル供与提案?/アベノポリシーの危うさ(125)

まさかという気がするが、ひょっとしたらとも思わせる。
安倍首相が、フィリピンのドゥテルテ大統領にミサイル供与を持ち掛け、断られたという報道が流れている。

 報道のもとになったのは、ドゥテルテ氏が同日、ダバオ市商工会議所の総会で行ったスピーチ。英語とタガログ語で、首脳会談をしたばかりの安倍首相の名前を挙げ、「安倍にも言ったんだ、私はミサイルは必要としていないと」と述べた。その後、ロシアのプーチン大統領のハッキング疑惑やトランプ米次期大統領に触れ、「もし第3次世界大戦が始まれば、それはこの世の終わりを意味する」と話した。
 しかしドゥテルテ氏は、日本からミサイル供与を提案されたとは言っておらず、一連の発言が曲解されて報じられたとみられる。
 一方、その前段でドゥテルテ氏は、「安倍氏には軍事同盟は必要ではないと言った。私は外国の軍人がいない国を目指したい」とも述べた。
安倍首相にミサイル断る? 比大統領「発言」報道で波紋

英語版は以下のようである。

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President Duterte has declined an offer by Japanese Prime Minister Shinzo Abe to provide missiles to the Philippines, saying he does not want to see a Third World War.
Speaking at the 49th annual installation of trustees and officers of the Davao City Chamber of Commerce and Industry at Marco Polo Hotel in Davao, Duterte revealed the offer last night following Abe’s visit to Davao City on Friday.
“If we start a third world war, that would be the end (of the world),” he said.
“Actually, I told (Prime Minister) Abe, I don’t need missiles,” he said, noting that even leaders of the United States and Russia seem to be coming on good terms.
“If you just see now, Putin is conciliatory and now Trump (is reaching out to the world), “ Duterte said, referring to Russian President Vladimir Putin and incoming US President Donald Trump.
Japan’s offer came after Russia initiated an offer to provide the Philippines with submarines but Defense Secretary Delfin Lorenzana said the country couldn’t afford it.
With this, Duterte reiterated his intent to stop the country from having foreign military alliances with any country.
“I want the country free of foreign soldiers. Ayoko… sibat na kayo. (I don’t like it.. they have to go). We are good now, ” he said.
Duterte had earlier said he wanted the last American soldier to pack up and leave as a result of his anger against the US for allegedly meddling in the campaign against illegal drugs.
The President, however, has allowed the defense department to pursue exercises as long as the naval exercise will not be near or within the South China Sea.
Earlier, Japan Foreign Press Secretray Tasuhisa Kawamura said his country is keen on participating in the Balikatan exercises between the US and the Philippines.
Duterte: I rejected Japan missile offer

曲解かどうか、国会の質疑で明確にすべきではないのか。

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2017年1月26日 (木)

豊洲の病理と自公の責任/日本の針路(315)

築地市場の豊洲移転問題で、小池都知事が石原元知事の責任を問題にし始めた。
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東京新聞1月21日

そもそもは、石原元知事の不適切な判断が原因と考えられるから、当然であろう。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

同時に、石原氏の近況をTVで見ると、明らかに老化が進んでおり、責任能力すら疑問が湧いてくる。
⇒2014年3月 9日 (日):石原慎太郎の耄碌/人間の理解(3)

石原氏だけでなく、同氏を擁立し、石原都政の与党だった自公両党の責任の有無も明確化すべきではないか。
都議会公明党は自民離れが進みつつあり、それはそれで結構なことであるが、豊洲の問題が関係ないでは済まされない。
それにしても、豊洲への移転は常識的に考えれば、あり得ないであろう。
今の時点で、環境基準の79倍という数値なのだ。
⇒2017年1月15日 (日):混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

そもそもなぜ豊洲移転なのか?
いろいろな利権が取りざたされており、その闇は、おいおい明らかにされて行くであろう。
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東京新聞1月20日

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2017年1月25日 (水)

横浜市教育委員会の信じられない判断/日本の針路(321)

東京電力福島第1原発事故で、福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒がいじめを受けていた。
⇒2016年11月17日 (木):原発避難者いじめは社会の反映/原発事故の真相(148)

男子生徒はいじめを受けていた小学5年の時、同級生から「賠償金をもらっているだろう」と言われ、同級生らの遊ぶ金として自宅から現金を持ち出して1回5万~10万円を渡しており、その総額は150万円にも上っていた。
この金銭問題について、横浜市教育委員会は「金銭要求をいじめと認定するのは困難」とした。
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東京新聞1月21日

横浜市の第三者委員会が2016年11月にまとめた報告書では「金銭授受はいじめから逃れるためだった」と指摘しながらも「おごりおごられる関係で、いじめとは認定できない」と判断していた。
しかし、男子生徒は、「だれが出す?」「賠償金もらっているだろ?」とか「次のお金もよろしくな」などと言われ、今までにされてきたことも考え、威圧感を感じて、家からお金を持ち出してしまったという、と書いているのである。
誰が、どう考えたって、いじめそのものではないのか。
これをいじめと認めないとしたら、どういう事態をいじめというのか?

横浜市教育委員会の岡田優子教育長は「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」と述ているが、これでは「おごってもらったと言おうぜ」という抜け道を指南しているようなものではないか。
慄然とするような感覚である。

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2017年1月24日 (火)

東京五輪のために共謀罪は必要か/アベノポリシーの危うさ(124)

安倍政権が今国会での成立に意欲を示しているのが、「テロ等準備罪」すなわち「共謀罪」である。
東京オリンピックが開けないとまで言う。
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東京新聞1月24日

しかし、武田砂鉄さんは次のようにツイートしている。
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「テロ等準備罪」は、稀代の悪法と言われている「治安維持法」の再来とも言われている。
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東京新聞1月19日

ちなみに「治安維持法」の解説は以下の通り。

 大正デモクラシーが進展した結果、1925(大正14)年、加藤高明内閣で普通選挙法(日本)が成立したが、それと同時に治安維持法も制定された。国体(天皇制)の変革や、私有財産制の否定を目的とした結社とその運動を禁止することを法律として可能とした。具体的には、はじめは共産党(1922年結成)などの社会革命をめざす運動を取り締まるものであったが、次第に政府の政策を批判する自由な発言も取り締まりの対象となり、穏健な自由主義者や労働運動なども取り締まりの対象となっていった。また1928年の田中義一内閣は、勅令で最高刑に死刑を加え、軍部に対する反対運動や反戦活動を厳しく弾圧する手段とされた。日本の天皇制軍国主義体制を支える立法であったので、1945年、日本の敗北とともに撤廃された。
世界史用語解説 授業と学習のヒント:治安維持法

拡大解釈によって運用が恣意化され、言論の自由が窒息させられていったのである。

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2017年1月23日 (月)

「バカの壁」と「バカの力」(2)/知的生産の方法(164)

「Think different」は、「ものの見方・考え方」すなわち思考技術の問題である。
荒俣宏『図像学入門―目玉の思想と美学 』集英社文庫(荒俣宏コレクション( 1998年4月)に、ものの見方として、以下の説明がある。

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 そして、とてもつもなく凄いと思ったのは、図像の見方を3分類するのだが、そのネーミングである。「バカの見方」「ボケの見方」「パーの見方」というのだ。ここでいう「バカの見方」とは、図像が見えるままに認識する。二つの丸の図をみて、大きな丸と小さな丸があると素直に読む。そこに、補助線を引いてみると、その大きな丸と小さな丸が立体になって、この二つの丸は同じ大きさの球体に見えたりする。でも、「バカの見方」をする人は、そんなことは度外視して、大きな丸と小さな丸があると平然といえるのだという。ところが、「ボケの見方」をするひとは、最初は大きな丸と小さな丸と思っていても、「補助線を引いたらどうだ?」と問われると、「そうだな、大きさは同じかもしれない」と考えが動いていく。どんどんと人のペースに乗せられるのがボケの特徴だという。そこへいくと、「パーの見方」というのは、見方がぶっとんでいて、斜線が引いた背景に大小の二つの穴があいていて、そこから向こう側の空白が見える、という見方をしたりするというのだ。
第274歩『図像学入門』荒俣宏著、マドラ出版

クリエイティブとは、「パーの見方」ができるかどうかである、ともいえる。
それは、生田幸士『世界初をつくり続ける東大教授の 「自分の壁」を越える授業 』ダイヤモンド社(2013年7月)流に言えば、どこまで「バカ」になれるか、である。
⇒2017年1月12日 (木):「バカの壁」と「バカの力」/知的生産の方法(163)

差別的な言葉遣いを避けるならば、「馴質異化・異質馴化」である。
人間の視覚は上下反転しただけで、違うように見える。
等価変換理論で有名な市川亀久弥元同支社大学教授は以下のような図を示していた。
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あるいは古代史を考える場合に必須の環日本海という視点。
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環日本海諸国図

ちょっと視線をずらせば、地政学的状況も違って見えて来るかも知れない。
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226.マッカーサーの世界地図

それにしても、「Think different」は容易ではないのが実感だ。

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2017年1月22日 (日)

トランプ大統領誕生と日本/世界史の動向(52)

トランプ氏の大統領就任演説がいやでも耳に入ってくる。
アメリカを連呼し、「米国第一」主義で自国の利益を最優先することを強調した。
私はあまりにも自国利益を強調する様子に気持ちが悪くなったが、日本政府は、想定の範囲内で驚きはない、と冷静を装っている。
しかし日本に大きな影響を及ぼすことは必至だ。
従来の日本政府の外交は、いわゆる「アーミテージ報告」に沿ったものだったが、トランプ路線はそれとは異なる。
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東京新聞1月20日

安倍政権が重視してきたはずの環太平洋経済連携協定(TPP)については、離脱を明言しており、表面上、発効の見込みはなくなった。
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東京新聞1月22日

もちろん、トランプ大統領が、アメリカに有利な条件になったと判断し、豹変する可能性はある。
安倍首相は、施政方針演説で、微妙にプライオリティを変化させた。
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東京新聞1月21日

アベノミクスの破綻もしくは限界が明らかになっている現在、TPPに依存してきた経済政策をどう再構築するのか。
日米同盟への固執がより強まっているが、アメリカの行方をじっくりと見極めない限り、共に世界から孤立していく可能性が高い。

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2017年1月21日 (土)

恩田陸『夜のピクニック』/私撰アンソロジー(44)

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第156回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が1月19日で開かれ、芥川賞に山下澄人さんの「しんせかい」(新潮7月号)が、直木賞に恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)が選ばれた。
恩田さんは6回目の候補であり、実力はよく知られている。
私は若い人たちが本屋大賞の話で、小川洋子さんの『博士の愛した数式』と共に、恩田さんの『夜のピクニック』の支持が高かったので読んでみた。
『小説新潮』誌に、2002年11月号から2004年5月号まで連載。
2004年7月、新潮社から刊行され、第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞を受賞した。

ストーリーは、以下の通り(Wikipedia)。

全校生徒が24時間かけて80kmを歩く高校の伝統行事「歩行祭」。3年生の甲田貴子は、最後の歩行祭、1年に1度の特別なこの日に、自分の中で賭けをした。それは、クラスメイトの西脇融に声を掛けるということ。貴子は、恋心とは違うある理由から西脇を意識していたが、一度も話をしたことがなかった。しかし、ふたりの不自然な様子をクラスメイトは誤解して…。

モデルは、著者の母校である茨城県立水戸第一高等学校の名物行事「歩く会」であるが、いわゆる伝統には似たような行事が少なくないと思われる。
掲出したように、普通の高校生の会話が中心で、それをどう感ずるかが評価の分かれ目だろう。
私は、遠い日の、甘いような切ないような気分が蘇ってきた。
瑞々しい秀作だと思う。

直木賞受賞作の『蜜蜂と遠雷』はモデルは浜松で開催されている)国際ピアノコンクールだ。
まだ読了していないが、ドキドキワクワク感がある導入部である。
「郷愁を誘う情景描写に巧みで「ノスタルジアの魔術師」と称される」と紹介されているが、「むべなるかな!」であろう。

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2017年1月20日 (金)

原子力事業で破滅の危機の東芝(2)/ブランド・企業論(63)

東芝の米原発事業での損失が最大で7000億円規模に膨らむ恐れが出てきた。

Photo不正会計が発覚した2016年3月期、東芝はリストラ費用や米原発事業の損失により、株主資本が3289億円に落ち込んだ。キヤノンに6655億円で医療機器子会社を売却した利益がなければ、負債が資産を上回る債務超過に陥るところだった。
 成長事業と不採算事業を切り離し、新生東芝として再出発したはずだったが、原発で再び損失が発覚した。損失発覚前の予想では、期末の株主資本は3200億円の見込み。最大7000億円の損失を考えれば、事業売却による資金調達や金融支援がなければ、債務超過に陥りかねない。
 2年連続で巨額損失を出す原発事業のために稼ぎ頭の半導体に外部資本を入れる。インフラやIT関連についても、金融筋は「売却できる事業がある」と指摘する。
 損失額は現在精査中の監査を経て、2月中旬に発表する16年4~12月期決算で確定する。事業を縮小したパソコンやテレビ、損失続きの原発で成長の絵図を描くのは難しく、前途が見えない。
近づく「東芝解体」=相次ぐ事業売却

東芝の株主資本は、原子力事業によって大きく毀損されている。
年9月末時点で東芝の自己資本は3600億円強あり、本業の回復と円安進行による外貨建て資産の価値の増加により、米原発事業による損失が無ければ今期末の自己資本は5000億円前後に膨らむ可能性があった。
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東芝、米原発事業の損失5000億円超も 政投銀に支援要請

東京証券取引所は、東芝を投資家に注意を促す特設注意市場銘柄に指定しており、一般の投資家から幅広く資本を募る公募増資などは困難だ。
東芝は日本政策投資銀行に資本支援を要請すると共に、他の取引銀行にも協力を求め、財務や事業構造の立て直しを急ぐという。
事業構造の見直しを迫られているなかで、主力のフラッシュメモリーを含む半導体事業は分社化するという。
⇒2017年1月18日 (水):原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)
しかし、原発事業を温存するのでは、解決にならないのではないか。

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2017年1月19日 (木)

トランプ氏大統領就任の影響/世界史の動向(51)

いよいよトランプ大統領が誕生する。
2017年が世界史にどう位置づけられることになるのか、まあ、私の生きている間にある程度の評価が定まるものかどうかも分からない。
初めての記者会見で、CNN記者に質問をさせない姿を見たが、いささか不安になるのは私だけではあるまい。
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東京新聞1月13日

「Wedge」誌の1月号が「トランプ革命-期待と不安が渦巻く世界」という特集を組んでいる。
その中に、佐伯啓思『行き詰まるアメリカ近代文明/「普遍的価値」を転換できるか』が載っている。
佐伯氏は、トランプ現象を生み出した背景として、次の2つを挙げる。
1.アメリカ国内における所得格差の拡大、および雇用不安に悩まされる中間層・低所得層の白人労働者層の不満
2.アメリカ人の内向した「本音」を代弁したトランプの「野蛮さ」

1.については、経済的グローバリズムと民主的な政治体制の間の矛盾が格差を生み出した。
先進国のなかで、グローバリズムや金融経済から置き去りにされた層は、政治に不満をぶつけるようになる。
この不満や鬱憤のはけ口は、既存の「体制的」な政治家であり、競合する移民層である。
鬱憤を代弁する政治家が、政権に押し上げられた。

トランプ氏に敗れた側は、アメリカの覇権を確立するため、経済的グローバリズム、IT革命、金融経済化などを推し進めてきた。
しかし、その果実を享受できない国民は、保護主義的な政策を支持したのであり、それは民主主義の帰結であった。
かくして民主主義体制とグローバリズムは矛盾に陥っている。

2.については、アメリカ民主主義の基盤である平等主義、人権主義、多文化主義を「正義」とみつ価値観は、多くのアメリカ人に共有されてきた。
リベラリズムである。
しかし現実には、富裕なエリート層と人種的マイノリティの間には、構造的な格差がある。
これは欺瞞であり、トランプ氏の言動は「本音」のように受け止められた。
これはトランプ氏の見解云々というよりも、アメリカ民主主義の根本的な矛盾である。
ポピュリスト大統領は「パンドラの箱」を開けたのだが、ポピュリズムにしっぺ返しを受ける可能性がある。

問われているのは何か?
富の増大によって人間の幸福を増大しようという近代文明のあり方である。
アメリカ主導で発展してきた近代文明は行き詰っている。
近代社会の「価値」が揺らいでいるのである。

とすれば、それぞれの国がそれぞれ固有の価値・文化に基づいた多様で多相的な政治・経済を相互に承認しつつ共存するしかない。
佐伯氏は、日本はその先陣を切れるはずだ、というが果たしてどうであろうか。

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2017年1月18日 (水)

原子力事業で破滅の危機の東芝/ブランド・企業論(62)

昨年暮れ、東芝は原発事業に関し、数千億円規模の減損損失が出る可能性があると発表した。

 多くの人が大晦日の準備を始めていた先月27日、東芝は米国の原発事業において数千億円の損失が発生する可能性があると発表しました。しかも、正確な金額が確定しておらず「数千億円という段階までしか言えない」というかなりずさんな内容でした。
 損失が発生するのは、米子会社のウェスチングハウス(WH)社が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)です。東芝の説明によると資産価値を精査したところ想定よりも大幅に価値が下回ったとのことです。
 米国の原子力事業で巨額の損失が発生する可能性があることは、以前から指摘されていました。同社は累計で数千億円の金額を投じてWH社を買収しましたが、東芝による買収後もWH社の経営は安定しませんでした。WH社は状況を打開するため、米国の原子力サービス企業S&Wと提携し、原発建設のプロジェクトを積極的に進めてきましたが、プロジェクトがうまく進まず、S&Wは巨額の損失を抱えてしまいます。
 東芝グループとS&Wの親会社であるCB&Iは損失処理をめぐって対立するようになり、一部では訴訟に発展しました。各種報道によると今回の買収は、S&Wの損失処理をめぐる紛争解決の手段だったとされています。損失を抱えた会社を買い取ったわけですから、買収が行われた段階で、相応の損失が発生することはある程度、予見できていたことになります。東芝経営陣の見込みはかなり甘かったといってよいでしょう。
東芝が巨額損失問題、自己資本はすべて吹き飛び、債務超過に転落の可能性も

債務超過になれば、東証のルール上2部に転落し、東芝株の買い手は極端に少なくなる。
まさに危機的状況であるが、その原因は、原子力事業である。
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2016年1月 4日 (月):経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)
⇒2016年5月 1日 (日):原発事業によって生じた東芝の深い傷/ブランド・企業論(52)

「見切り千両」という言葉があるが、原子力事業を見切ることができなかった必然的な結果である。
⇒2016年7月19日 (火):原子力を死守する東芝の未来/ブランド・企業論(55)

しかし原子力事業は国策としての側面が強いので、何らかの政府主導の救済が模索されるだろう。
日立製作所やNECとの経営統合が囁かれている。
東芝は、リストラクチャリングとして半導体事業の分社化を発表した。

Ws000000 米原発事業で多額の損失が出る見通しの東芝が、半導体事業の主力製品「フラッシュメモリー」を分社化する本格検討に入ったことが17日、分かった。損失の規模によっては債務超過となる可能性もあるため、外部資本の導入によって財務基盤を強化する準備を急ぐ。
 外部から数千億円規模の出資があれば、原発事業の損失を吸収できそう。分社化の対象製品は、三重県の四日市工場で生産している。中でもスマートフォンなどの記憶媒体として使われる「NAND型フラッシュメモリー」のシェアは世界トップクラスで、今後の成長も見込まれる。「市場価値は2兆円」(金融機関)との見方もある。
東芝、半導体分社化を本格検討

原発事業はブラックホールである。
一時的にしのいでみても、原発事業を続けている限り、東芝の危機は去らない。

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2017年1月17日 (火)

不適格大臣列伝(7)高木毅前復興相/アベノポリシーの危うさ(123)

情けないニュースである。
自民党福井県連の山本拓会長(衆議院議員)が、地元選出の高木毅前復興大臣が「女性の自宅に住居侵入し、逮捕されていた」と、県連の調査結果を発表した。

これは自民党福井県連会長の山本拓衆議院議員が、13日、福井県庁で報道各社に対して述べたものです。
それによりますと、おととし、一部の週刊誌がおよそ30年前に高木前復興大臣が女性の自宅から下着を盗んだなどと報じたことを受け、県連が独自に調査を行った結果だとして、「女性の自宅に住居侵入し、逮捕されていた。そのあと、女性と示談になったので問題とはならなかった」と述べました。
これについて高木氏は、NHKの取材に対し、「これまで国会や記者会見で申し上げているとおり、そのような事実はない」と話しています。
自民 福井県連会長「高木前復興相は逮捕されていた」本人は否定

高木前復興相は、「パンツ大臣」の異名(?)で知られるが、自民党サイドの調査で裏付けられたことになる。
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略歴は以下の通りである。
生年月日:1956年1月16日
所属政党:自由民主党
出身地 :福井県敦賀市
初当選 :2000年
当選回数:6回(衆議院)
高木毅復興相の経歴は?

ちなみに自民党福井県連の役員名簿は以下のようである。
Ws000000
http://www.jimin-fukui.jp/kenren-syokai/yakuin.html

稲田朋美防衛相や)、国家公安委員会委員長、拉致問題担当大臣、海洋政策・領土問題担当大臣、国土強靭化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災担当)等を歴任した山谷えり子が顧問に名を連ねている。
どの県も大同小異であろうが、特にヒドイ県という印象を受ける。

高木前大臣の父親(孝一)は元敦賀市長であるが、、1983年1月26日石川県羽咋郡志賀町で開かれた「原発講演会」(地元の広域商工会主催)で、次のような発言をしていた。

「100年経って片輪が生まれてくるやら、50後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ。わかりませんけど、今の段階では(原発を)おやりになった方がよいのではなかろうか…。こいうふうに思っております。どうもありがとうございました。(会場、大拍手)』」

この親にして、ということであろうか。

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2017年1月16日 (月)

百人一首と後鳥羽・順徳父子/天皇の歴史(15)

かつては「百人一首」のかるた取りが正月の風物詩であった。
核家族化やデジタルゲームの普及により、すっかり廃れたかと思っていたが、小学校でやっているという。
短歌や俳句などの短詩系文芸は、音韻が決めてなので、大いに結構なことだと思う。

1951(昭和26)年、「百人一首」と酷似している「百人秀歌」が存在することが確認された。
「百人秀歌」と「百人一首」を比較すると、以下のような小異がある。
①配列がかなり異なる
②「百人秀歌」は、「百人一首」における99・後鳥羽院、100・順徳院の歌がない。
⇒2008年7月26日 (土):「百人一首」の成立事情

「百人一首」と「百人秀歌」の異同の謎を追及したのが草野隆『百人一首の謎を解く 』新潮新書(2016年1月)である。
著者は「百人一首の謎」として、次の12を挙げている。

1 いつ出来たのか
2 誰が作ったのか
3 何のために作られたのか
4 神様や神話時代の歌、また仏様、高僧の歌がないのはなぜか
5 賀の歌、釈教の歌がないのはなぜか
6 不幸な歌人が多いのはなぜか・幸福な歌人の歌が少ないのはなぜか
7 和歌史に残るような実績のない歌人の姿が見えるのはなぜか
8 「よみ人しらず」の歌がないのはなぜか
9 その歌人の代表作が選ばれていないのはなぜか
10 後鳥羽院、順徳院の歌は、なぜ入っているのか
11 『百人秀歌』と『百人一首』の関係はどのようなものなのか
12 近代の研究者は、なぜ『百人秀歌』・『百人一首』の理解を誤ったのか

この他にも、織田正吉『百人一首の謎』講談社現代新書(1989年11月)等の著書が先行して存在しているが、草野氏の著書では触れられていない。
「謎」の認識は、人それぞれであろうが、フェアでないという見方はある。

三嶋大社で行われている古典講座は2015年度から「百人一首」が題材であり、百人一首の中から菊池義裕東洋大学教授がテーマに即して選歌し、解説をする。
2016年5月は『人生への感慨-世を見つめて』ということで、次の3首が選ばれた。

93:世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも(鎌倉右大臣)
99:人もをし人もうらめしあじきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は(後鳥羽院)
100:ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり(順徳院)

カルタで遊んでいた頃には、歴史的背景とか作者の身上とかは殆ど関心の埒外であったが、上記の歌の作者はいずれも悲劇的な生涯であった。
鎌倉右大臣とは実朝であり、3代将軍でありながら鶴岡八幡宮で公暁に暗殺された。
後鳥羽院は、北条義時と対立して承久の乱を起こしたが、敗れて隠岐島に配流され、19年間を過ごし崩御した。
順徳院は後鳥羽院の子であり、承久の乱では父に従ったが、佐渡島に配流され、在島21年の後に崩御した。

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「承久の乱」は、鎌倉時代の承久3年(1221年)に、後鳥羽上皇が鎌倉幕府執権である北条義時に対して討伐の兵を挙げて敗れた兵乱である。

後鳥羽上皇が鎌倉幕府打倒の兵を挙げ、幕府に鎮圧された事件。後鳥羽・土御門(つちみかど)・順徳の三上皇が配流され、朝廷方の公卿・武士の所領は没収された。乱ののち、朝廷監視のため六波羅探題を置くなど、幕府の絶対的優位が確立した。
デジタル大辞泉

武家政権である鎌倉幕府の成立後、京都の公家政権(治天の君)との二頭政治が続いていたが、この乱の結果、幕府が優勢となり、朝廷の権力は制限され、幕府が皇位継承などに影響力を持つようになった。
山本七平氏は、貴族社会から武家社会への転換という意味で、「日本史上最大の事件」と見る。
後鳥羽天皇は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての第82代天皇である。
寿永2年(1183年)、太上天皇(後白河法皇)の院宣を受ける形で践祚した。

壇ノ浦の戦いで平家が滅亡した際、神器のうち宝剣だけは海中に沈んだまま遂に回収されることが無かった。
伝統が重視される宮廷社会において、皇位の象徴である三種の神器が揃わないまま治世を過ごした後鳥羽天皇にとって、このことは一種の「コンプレックス」であり続けた。その「コンプレックス」を克服するために強力な王権の存在を内外に示す必要があって、それが内外に対する強硬的な政治姿勢、ひいては承久の乱の遠因になったとする見方がある(Wikipedia)。

順徳天皇は、鎌倉時代の第84代天皇である。
後鳥羽天皇と、寵妃藤原重子(修明門院)の皇子として生まれた。
父上皇の討幕計画に参画し、それに備えるため、承久3年(1221年)4月に子の懐成親王(仲恭天皇)に譲位して上皇の立場に退いた。
父上皇以上に鎌倉幕府打倒に積極的で、5月に承久の乱を引き起こしたものの倒幕は失敗に終わり、7月、上皇は都を離れて佐渡へ配流となった。

「百人一首」は、冒頭に天智天皇、持統天皇を置き、最後を後鳥羽院と順徳院で締めた。
最初と最後に親子の作が並べられているわけである。
天智天皇は、中大兄皇子として大化改新を決行し、蘇我氏から権力を奪還して天皇家の権力を確立した。
後鳥羽・順徳の両院は、朝廷への権力の奪還を試みたが、逆に朝廷の権力を失う結果となった。
天智・持統の親子は、実質的な律令制の確立者であり後鳥羽・順徳の親子は、結果的に律令制を崩壊させることになったのである。
⇒2009年12月22日 (火):百人一首の構成

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2017年1月15日 (日)

混迷を深める築地の豊洲移転問題/日本の針路(320)

東京都の豊洲市場(江東区)の地下水調査で、環境基準を大幅に超える有害物質が検出された。
報告を受けた専門家会議のメンバーも、想定外の事態に「なぜ」と驚きの声を漏らしている。
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東京新聞1月15日

 築地市場(中央区)の講堂で開かれた14日の専門家会議。傍聴していた業者らに調査結果の報告書が配布されると、これまでとは桁違いの数値に会場はどよめきに包まれた。
 都の担当者は、激変したデータが「暫定値」であることを強調。平田健正座長は「どう評価していいのか、戸惑ってしまう」。
 会議のメンバーによると、考えられる可能性は大きく分けて二つあるという。一つは、9回目の採水が行われる直前に稼働した地下水排水システムの影響だ。稼働に伴い地下水が移動し、数値が上昇したという見立てだが、平田座長は「それならば、排水の数値も高いはずだ」と話す。
 もう一つは、採水方法のミスといった人為的な要因だ。今回は、1~8回目とは別の民間機関が担当。このため調査手法などを確認するとともに、今後は都環境科学研究所と民間機関2社で実施することにした。
 傍聴していた築地市場協会の伊藤裕康会長は「大変驚き、がっかりした」と動揺を隠せず、「早く実態をつかみ、包み隠さずにしてほしい」と要請。仲卸の男性は「(過去のデータに)改ざんがあったと疑われても、しょうがない」といぶかった。
 「都議会がこれまでどういう審議をしてきたのかも問われる」。小池氏は移転を推進してきた最大会派の自民党に矛先を向け、今夏の都議選での争点化は「避けられないのではないか」との見方を示した。
豊洲移転に黄信号=「桁違い」検出に衝撃-小池氏は疑義、業者憤慨

それにしても、今までのデータとの不整合の理由は何か?
専門家会議のメンバーの主な意見は次のようである。
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東京新聞1月15日

専門家たちも困惑している様子が窺えるが、そもそも豊洲は築地の移転先として適格であったのか?
石原都政時代に遡った検証が必要だと思われる。

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2017年1月14日 (土)

「日本3.0」と梅棹忠夫/日本の針路(319)

新年には、これからの日本がどう動いていくかが気にかかる。
特に、アメリカ大統領へのトランプ氏就任、イギリスのEU離脱、混沌が深まる中東情勢など、世界史との関係はどうなるか。
1939(昭和14)年8月28日、独ソ不侵条約が締結されると、平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇」という談話を発して総辞職した。
国際認識の欠如を示した言葉として有名であるが、平沼騏一郎ならずとも、「世界史の動向は複雑怪奇」と言いたくなる。

オックスフォード辞書は、2016年の「今年の言葉」に「post-truth」を選んだ。
最初に使われたのは1992年だというが、イギリスの国民投票やアメリカ大統領選によって使用頻度が急上昇したのが理由である。
いささか意味が取りにくい言葉であるが、同辞書は「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」を示す言葉だと定義している。
確かに、人間の脳の中で一番早く反応するのは、大脳辺縁系の感情を司る扁桃体だという。
⇒2013年3月 9日 (土):論理が先か感情が先か?/知的生産の方法(40)

ビジネススキルとして「エレベーターピッチ=エレベーターに乗っている15秒から30秒の時間内にプレゼンし、ビジネスチャンスをつかむテクニック」の重要性が指摘されているのもそのためであろう。
特に導入部の「つかみ」が決め手と言わるが、小泉純一郎元首相は名手であると思う。
郵政民営化に反対する人たちを「抵抗勢力」と命名し、「自民党をぶっ壊す!」と叫んで選挙で圧勝した。確かにワンフレーズでのアピールは、端的なエレベーターピッチであり、大きな効果を上げた。

安倍首相(のブレーン)も、エレベーターピッチを意識しているようである。
真珠湾での慰霊のスピーチも美しい言葉だ。

耳を澄ますと、寄せては返す、波の音が聞こえてきます。降り注ぐ陽の、やわらかな光に照らされた、青い静かな入り江……
安倍首相の真珠湾での演説全文

しかし、言葉が往々にして人を誤らせるのも事実だろう。
五輪招致の際の安倍首相の言葉を忘れまい。
⇒2015年6月 2日 (火):安倍晋三=サイコパス論/人間の理解(13)

団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年に向かって、日本は大きな曲がり角を曲がることになるだろう。
日本の総人口は既にピークアウトしているが、一極集中の弊害を言われてきた東京都も、間もなく人口減少に転じる。
近代日本は、敗戦までの第1サイクル、敗戦後からの第2サイクルの後の第3サイクルに入るのだ。
「日本3.0」である。

長いスパンでの歴史認識において突出していたのが梅棹忠夫さんだった。
「文明の生態史観」「情報産業論」「知的生産の技術」「中洋という視点」などを次々と提起し、鮮やかな論理を展開した。
それは探検家として、世界各地を実際に足で感得した知見と豊富な文献渉猟や多彩な人脈から得られる情報を反応させ、熟成させた思考である。
鳥の目と虫の目を両立させ得た稀有な学者であった。

例えば、社会発展を生物の発生のアナロジーで説明し、情報社会の到来を論じた。
Photo
東谷暁『予言者 梅棹忠夫』文春新書(2016年12月)

2010年に亡くなった梅棹さんは東日本大震災を知らない。
⇒2010年7月 7日 (水):梅棹忠夫さんを悼む/追悼(8)

つまり、もう6年半が過ぎたことになるが、梅棹さんの論説に対する評価は高まりこそすれ、減じてはいない。
震災が発生した時、脳裏に浮かんだのは1973年すなわちオイルショックの年に刊行された小松左京さんの『日本沈没』だった。
日本列島がマントル対流によって太平洋プレートの下に引きずり込まれるという設定は、プレートテクトニクス理論を世に知らしめたが、型破りの科学者・田所博士は、梅棹さんがモデルだと言われる。

情報爆発と呼ばれている現象が加速し、「日本3.0」の主役は、情報を対象とする知的労働になると思われる。
果たして、働き方改革が実効性をあげ、苦役としての労働から解放される社会が到来するのだろうか。

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2017年1月13日 (金)

三菱電機元社員の労災認定と働き方改革/日本の針路(318)

三菱電機で、違法な長時間労働が行われたとして、厚生労働省神奈川労働局が11日に同社を書類送検した。

 男性の労働環境は過酷だった。平成25年4月に入社後、先進的な研究の発表を促されていたのと同時に、製品のトラブル対応を求められ、26年1月から業務が膨大になった。
 翌月は2日しか休みがなく、食事がのどを通らなくなり、手が震えるようになった。残業時間は月160時間に上ったが、会社への申告は「59時間」しか認められなかった。
 配属先の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では、名札だけで姿を見せない社員が何人もいた。尋ねてみると、休職している人たちだったという。
 上司からは厳しい叱責が飛んだ。「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」
 不眠を訴えても仕事は減らなかった。26年4月に鬱病になり、薬を飲みながら仕事をしていたが、同年6月には医師から勤務停止を求められた。
 男性は「何度も言い続けてきたが無視されてきた。会社はきちんと考えを改め、日本の社会も変わってほしい」と話した。
三菱電機元社員を労災認定

実態が良く分からないが、上記の情報だけでもいろいろ考えなければならない問題がある。
「先進的な研究の発表」とは?
先進的かどうかは相対的である。
企業の研究であるから有用性が求められるのは当然である。
例えば、特許権になるような研究ということであろう。
Photo
発明塾式 ビジネスのための知財講座

産業上の有用性は当然として、問題は新規性と進歩性の判断である。
俳句を例にして、この問題を考えたことがある。
「新規性」というのは、特許を出願する時点で、「公知」でないこと、つまり今までに発表されていないことであり、「進歩性」というのは、誰でもが簡単に思いつくようなものではない、ということである。
問題は、「進歩性」の「誰でもが簡単に思いつくようなものではない」という基準をどう考えるか?

「特許法」では、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」は、「前項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」としている。
これを「進歩性」がない、と表現している。
しかし、「通常の知識」や「容易に」という概念には、裁量の要素が入ってくることを避けられない。
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⇒2007年10月23日 (火):選句の基準…③新規性と進歩性

三菱電機社員のテーマが何だったのかは不明であるが、「進歩性」を問われるようなテーマであれば、そしてその可能性は高いであろうが、寝ている時も考えるような状態だったのかも知れない。
そして、それは誤解を恐れずに言えば「当たり前」かも知れないのである。
時間で規定される労働と、知的藤堂の根本的な違いである。
働き方改革は必要であると思うが、超過時間労働「だけ」を問題にすることには違和感がある。

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2017年1月12日 (木)

「バカの壁」と「バカの力」/知的生産の方法(163)

養老孟司さんの『バカの壁』新潮新書(2003年4月)は、新潮新書の創刊の1冊であり、大ベストセラーになってこの新書の成功を約した。
Photo_5「バカの壁」はこの年の流行語となったが、Amazonの紹介には次のようにある。

「人間というものは、結局自分の脳に入ることしか理解できない」、これが著者の言うところの「バカの壁」であり、この概念を軸に戦争や犯罪、宗教、科学、教育、経済など世界を見渡し、縦横無尽に斬ったのが本書である。

この本を意識して書かれたのが、生田幸士さんの『世界初をつくり続ける東大教授の 「自分の壁」を越える授業 』ダイヤモンド社(2013年7月)である。
Photo_6これもAmazonで、次のように紹介されている。

「自分の人生が平凡に思える」「どこかで見たようなアイデアばかり」「結局、二番手以降で終わってしまう―」そんな人にこそ効く。バカの力!「その他大勢」から突き抜ける頭の使い方を東大名物教授が初公開。

一読して共感する箇所が多かった。
例えば、「π型人間」論である。
昔、人間類型を示す言葉として、「T型人間」という言い方があった。
Tの字のタテの棒は、特定の領域における知識が深いことを意味する。
ヨコの棒は、周辺知識が浅いけれども広いことを意味している。

「π型」というのは、タテの棒が2本である。
複数の専門領域を持っていることを意味する。
生田氏によれば、アメリカのエリート層には、複数の学科を出ることはごく普通のことだという。
2つの学科を出ればダブルメジャー、3つの学科を出ればトリプルメジャーである。
生田氏自身は金属材料工学科と生物工学科で学び、大学院は理工学研究科に進んだ。

なぜ「π型人間」が好ましいか?
1997年のアップルコンピュータの広告キャンペーンのスローガンの「Think different」は広く知れている。
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Wikipedia

しかし、現実には「Think different」が難しい。
「同じ」と見るか、「違う」と見るかは相対的な問題である。
⇒2009年8月 8日 (土):「同じ」と「違い」の分かる男

生田氏は山登りを例に、次の3つを挙げる。
Photo_4
上掲書

企業戦略論の「ブルーオーシャン」は、「違う結果」が得られた場合であろう。
競争の激しい既存市場は「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」であるが、、競争のない未開拓市場は「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」である。
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任天堂を復活させた、ある戦略

「Think different」とは、まさに認識論の問題である。
「I型人間」のような「専門バカ」ではムリな世界と言えよう。

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2017年1月11日 (水)

九州と近畿の地名の類似性/やまとの謎(118)

記紀神話がまったくのフィクションではないとして、どの程度史実を反映したものだろうか?
シュリーマンは、幼少期に聞かされたギリシア神話に登場する伝説の都市トロイアが実在すると考え、実際にそれを発掘によって実在していたものと証明した。
同じことが記紀神話でも起こり得るだろうか?

天孫降臨は高天原から高千穂の降臨した。
高千穂については宮崎県の2カ所が有力であるが、高天原はどう考えられるか?

昔、安本美典氏の『高天原の謎―日本神話と邪馬台国 』講談社現代新書(1974年7月)を読んだことがある。
安本氏は古代史分野、特に邪馬台国問題に数理的方法論を取り入れたひとである。
⇒2008年11月16日 (日):安本美典氏の『数理歴史学』

邪馬台国と統計的推定という一種の「異質の組み合わせ」が魅力的だった。
高天原の謎―日本神話と邪馬台国 』は既に処分整理して手許にないが、『天照大御神は卑弥呼である -真説・卑弥呼と邪馬台国 』心交社(2009年12月)に同様の内容が収録されている。

私が興味深く思ったのは、北九州と奈良県の地名の類似性である。
先行業績として、鏡味完二氏の『日本の地名』角川新書(1964年)があるが、安本氏は、福岡県朝倉郡の旧夜須町のまわりと大和のまわりの地名の驚くほどの類似性を指摘した。
多伎元達也『日本の地名の真の由来と神武東征のカラクリ仕掛け 』 たっちゃんの古代史とか出版(2014年2月)に以下のように図示されている。
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多伎元氏も、九州と近畿の地名の相似性について最初に知ったのが、安本美典氏の著書だったという。
安本氏は、次のような例を挙げて、位置関係と音の類似性は、とても偶然とは思えないとしている。
・北方の笠置山。三笠山、御笠山。住吉(墨江)神社。
・西南方の三潴、水間。
・南方から東南方の鷹取山(高取山)。天瀬(天ヶ瀬)。玖珠(国ス(木偏に巣)。

また『記紀』では、高天原に天の安川という川が流れていたとされる。
安はもちろん夜須に通じる。
安本氏は、高天原は、甘木や高木などの地名に姿をとどめているのではないか、として、旧甘木市(現朝倉市)こそ、アマの地であると推測している。

そして、このような地名の類似性は、九州から近畿への集団的移住を示すものであり、邪馬台国が東遷したと考えるのがリーズナブルであるとした。
そして、神武東征神話は、まさに邪馬台国東遷のことではないかとした。

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2017年1月10日 (火)

川田順歌碑・裾野市/文学碑を訪ねる(5)

川田順は、戦前に住友財閥総本社の常務理事を務めたビジネスマンであった。
1907年東京帝国大学法学部政治学科卒業。
住友の新卒の第1期定期採用がスタートした際に入社した。

1930年(昭和5年)に理事就任後、同年一足飛びで常務理事に就任、
1936年(昭和11年)、鈴木馬左也の後任として住友の総帥の座である総理事就任がほぼ確定していたが、自らの器に非ずとして自己都合で退職した。
佐佐木信綱門下の歌人として「新古今集」の研究家としても活躍した。
京都大学経済学部教授・中川与之助夫人で歌人の鈴鹿俊子との恋に苦しみ、自殺未遂を起こし、いわゆる“老いらくの恋”と騒がれた末に結婚した。

歌碑が、裾野市の富士山を仰ぐ「忠ちゃん牧場」の入口にある。
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ビジネスマンとして『住友回想記』図書出版社(1990年2月)を遺した。

忠ちゃん牧場は、標高約800mの富士山麓にあ約60000㎡の牧場で、牛や羊が放牧され、牧歌的な風景が広がる。
併設されるジンギスカンハウスでは、名物のジンギスカンや人気のソフトクリ-ムが食べられる。
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忠ちゃん牧場 ジンギスカンハウス

すぐ近くに「富士サファリパーク」がある。







1942年4月に歌集『鷲』『国初聖蹟歌』で第1回帝国芸術院賞受賞[2]。1944年に朝日文化賞受賞。戦後は皇太子の作歌指導や歌会始選者をつとめた。

1948年1963年日本芸術院会員。従曾孫佐良直美がいる。

、川田ら東大法科出身者は7名、京大法科出身者が5名の計12名が入社した。東京帝国大学では当初文科文学部)に所属し小泉八雲の薫陶を受けた。小泉八雲の退任を受け「ヘルン先生のいない文科に学ぶことはない」と法科(法学部)に転科したという。

元来、

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2017年1月 9日 (月)

「日本会議の研究」の出版差止/アベノポリシーの危うさ(122)

日本会議の実態を詳らかにした菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書(2016年4月)について、東京地裁は6日、差し止めを認める決定をした。
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東京新聞1月7日

日本会議は安倍政権と極めて近い関係にあることで注目を浴びている組織で、関連団体「日本会議国会議員懇談会」に所属する閣僚は、安倍首相本人も含めると75%(15人)にのぼる。
⇒2015年12月26日 (土):日本をダメにする日本会議という存在/日本の針路(268)
⇒2016年6月12日 (日):生長の家が自民党支持を取り止め/アベノポリシーの危うさ(80)

菅野氏の著書は、同会議の実態を掘り下げ、ベストセラーになっている。
販売差し止めを求めた男性は宗教法人の元幹部で、機関誌の部数を伸ばす運動をしていた様子についての同書の記述6か所が、事実に反し、社会的信用を失ったと主張した。
東京地裁はこのうちの1か所について、男性の社会的評価を低下させると判断し、該当部分を削除しなければ販売を認められないとした。
ベストセラーの出版差止は極めて異例である。

菅野氏は6日、ツイッターに、次のように書いている。

「拙著『日本会議の研究』に対する仮処分申請について説明します。原告側が修正を求めてきたのは、第6章に登場する特定個人に対する記述のうち6箇所。そのうち5箇所は裁判所が事実認定し、1箇所だけ『その書き方はない』と裁判所が否定したと言うのが経緯です。つまり、こちら側は5/6勝ってる」
「日本会議の研究」販売差し止め 仮処分決定後に版元と著者がツイート

司法の行政への従属もここまで来たか。という感じである。
きわめて危険な状況であると言わなければなるまい。

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2017年1月 8日 (日)

見えないものを見る工夫/知的生産の方法(162)

去年横山大観の企画展を観た。
テーマは『横山大観 大気を描く』である。
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大気は目に見えない。
目に見えないものをどう描くか?

大観は大明治元年生まれ。
東京美術学校(現東京芸大)の第1期生として、岡倉天心、橋本雅邦らの教えを受けた。
絵具の濃淡で空気や光を表現する「朦朧体」という手法を創始し、国内では評価されなかったが、海外で高い評価を得た。
画家は見えないものを技法を工夫して表現する。

科学の世界では、胸の異常を検査するX線写真や脳の内部を見るMRI画像などが、見えないものを見る工夫として思い浮かぶ。
⇒2012年12月23日 (日):『脳のなかの水分子』とMRI/闘病記・中間報告(56)
脳卒中患者にとって、MRIは大きな助けである。

また、ニュートリノの研究においては、小柴昌俊さんの発明による「カミオカンデ」が可視化に貢献した。
⇒2015年11月 9日 (月):素粒子論の発展と日本人(6)/知的生産の方法(135)

ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士の緑色蛍光タンパク質も印象的が画像である。
オワンクラゲが持つ緑色蛍光タンパク質を発見したことにより、2008年にノーベル賞を受賞した。
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ノーベル化学賞を受賞した「下村脩博士」

緑色蛍光たんぱく質が脚光を浴びたのはSTAP細胞の記者会見である。
理化学究所は、「STAP細胞論文はほぼ事実ではなかった」としたが、アメリカのハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院がSTAP細胞の特許を出願したという。特許請求の範囲は、「細胞にストレスを与えて多能性を生じるメカニズム」だという。
かなり広い範囲をカバーするものと言えよう。

小保方晴子氏の、実験ノート等は避難されても致し方ないと思うが、STAP現象そのものの評価は別であろう。
私が印象深かったのは、細胞の多能性を証明するために使った蛍光色素で発光させた写真である。
蛍光色素で標識したSTAP細胞をマウスの受精卵に導入し、子宮内に戻すと、生まれてきたキメラマウスには蛍光を発する細胞が全身の組織で見いだされた。
Stap
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/

現時点では、理研は研究リーダーの小保方氏の不正と認定したままである。
⇒2014年4月 3日 (木):STAP細胞論文の検証/知的生産の方法(85)
ES細胞のコンタミネーションがあったのであろうということのようだ。
ちなみに、米国の特許出願(14/397,080)については7月6日付で非最終拒絶(Non-Final Rejection)が出されていたという。
STAP細胞特許出願を米国特許庁が暫定拒絶

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2017年1月 7日 (土)

舒明天皇の「国見の歌」の謎(2)/天皇の歴史(14)

舒明天皇の『万葉集』2番の「国見」の歌は謎の歌でもある。
⇒2016年9月29日 (木):象徴の行為としての「国見」/天皇の歴史(8)
⇒2016年11月24日 (木):舒明天皇の「国見の歌」の謎/天皇の歴史(11)

原文
高市岡本宮御宇天皇代 [息長足日廣額天皇]
天皇登香具山望國之時御製歌
山常庭 村山有等  取與呂布 天乃香具山 騰立 國見乎為者 國原波 煙立龍 海原波 加萬目立多都 怜A國曽 蜻嶋 八間跡能國者
(A 扁左[忙]旁[可] は外字)
古田武彦 講演会

かな書きすれば、以下のようである。

やまとには,むらやまあれど,とりよろふ,あまのかぐやま,のぼりたち,くにみをすれば,くにはら は,けぶりたちたつ,うなはらは,かまめたちたつ,うましくにぞ,あきづしま,やまとのくには

古田武彦氏は、次のように問題を提起する。

 講演会では何回も「なぜ大和盆地で海が見えるのですか。」と質問を良く受けてまいりました。今までは「良く考えておきます。」とその度保留してきた。今回はこれを正面から取り組んでみて、確かにおかしい。万葉学者が「おかしくない。」と言ってみても、常識ある人間からはおかしい。池のことを海原と言い換えても、他にそのような例があるかと確認すれば全然無い。
 典型的なのは「山常庭 村山有等 取與呂布 やまとには むらやまあれど とりよろふ」の中の「とりよろふ」の解釈に疑問を持った。なぜかというと万葉学者の解釈にはいろいろ有るけれでも、どんな解釈をしても、大和盆地にいろいろある岳(やま)の中で天の香具山が一番目立っているという意味には違いない。しかしこれは知らぬが仏で、奈良県の飛鳥に行ったことのない人は騙されますが、実際に行ってみたら一番目立たない山である。澤潟久孝氏の『万葉集注釈』という本の写真を使わせていただきますが、畝傍山、耳成山は立派ですね。香久山は目立たない平凡な山ですね。これは写真に撮れば良く分かる。上の二つは良く撮れる。香久山は写真に撮れば逆にどこかと探すぐらい分からない。よほど現地の人に確認しないと分からない。この写真には立派に写っているが、素人が撮ればそんなにうまく写らない。
 しかも高さは百六十三メートルしかなく、奈良盆地自身が海抜百メートルぐらいありますので、山の麓(ふもと)に立っている高さは、五十メートル位であるので、私が歩いても頂上までさっと十分ぐらいで上がって行けた。
 非常に低い丘である。それが山の中でも目立つ山とは言えない。これは明らかにおかしいと、おそまきながら気が付いてきた。

そして、冒頭と末尾の2つの「やまと」に着目する。

山常庭 村山有等
蜻嶋 八間跡能國者

最後の「八間跡」と表記する大和は他に全くない。
その前の「蜻嶋」については次のように言う。

これについて私の『盗まれた神話』で分析したことがありまして、これは『古事記』などに「豊秋津島」と言う形で出てまいります。この「豊秋津」に対して私は、これは「豊」は豊国のことであろう。豊前・豊後の豊国。「秋」と言うのは、例の国東半島の所に安岐町、安岐川がある。大分空港のあるところである。そこの港が安岐港である。しかしこの「秋津」は安岐川の小さな川口の港ではなくて、関門海峡からやってくると、安岐町のところが別府湾の入口になる。そうすると「秋津」は別府湾のことではないか。別府湾を原点にして、九州島全体を指すのが「豊秋津島」ではないか。そう考えた研究の歴史がある。そうするとこの歌の「秋津島」とは九州島のことではなかろうか。そう思い始めた。これを考えたときはおっかなびっくりだったのですが、さらに進んで別府湾なら「海原」があって「鴎(かもめ)立ちたつ」も問題なし。のみならず「国原に煙立つ立つ」も問題がなくなった。私の青年時代、学校の教師をやったのが松本深志高校。そこに通うとき浅間温泉の下宿させていただいた。坂を下り学校に通うとき、冬など温泉のお湯がずっと溝に流し出され、それが冷たい外気に触れて湯気が立ち上がっていて、本当に「煙立ちたつ」の感じだった。そこをぬうようにして降り、なかなかいい光景だった。浅間温泉のような小さな温泉でそうだから、別府となりますと日本きっての温泉の一大団地。そうすると、まさに「煙立ちたつ」ではないか。学校の授業の時は「民のかまどの煙が立ちこめ」と注釈にもそう書いてあったので「家の煙」だと解説していた。しかし良く読んでみると、「海原は鴎立ちたつ」は自然現象。鴎が自然発生しているのと同じように、それと同じく「国原煙立ちたつ」も自然現象。煙が自然発生しているのと同じ書き方である。同じ自然現象です。

確かに温泉地では湯煙が見える。
私も霧島の鹿児島大学病院に入院していた時に、周辺が湯煙だらけだったのを思い出す。
20120519_060643

そして、別府に「天香具山」はあるのか、と問う。

まず「天 あま」はあった。別府湾に「天 あま」はあるのかと調べると、まずここは『倭名抄』では、ここら一帯は「安万 あま」と呼ばる地帯だった。この間行ってきた別府市の中にも天間(あまま)区(旧天間村)など、「あま」という地名は残っている。天間(あまま)の最後の「ま」は志摩や耶麻の「ま」であり、語幹は「あま」である。奈良県飛鳥は「天 あま」と呼ばれる地帯ではない。
 現在でも大分県は北海士郡・南海士郡というのが有り、南海士郡は大分県の宮崎県よりの海岸から奥地までの広い領域を占め、北海士郡は佐賀関という大分の海岸寄りの一番端だけになっている。点に近い所だけだが大分市や別府市が独立して喰いちぎられていったことは間違いない。これはもう本来は北海士郡は別府湾を包んでいたに違いない。それで海部族が支配していて「天 安万 あま」と呼ばれる地帯だったことは間違いがない。
 それでは香具山はどうか。別府の鶴見岳の存在です。
……
 ですからもう一言言いますと、「土蜘蛛 津神奇藻(つちぐも)」というばあいも、「くも」というのは「ぐ、く」は不思議な、神聖なという意味、「も」は(海の)藻のように集まっているという意味で、「くも」は不思議な集落という意味で、「津神奇藻(つちぐも) 土雲」は「港に神様をお祭りしている不可思議な集落」という誉め言葉なのです。それをへんな動物の字を当てて卑しめていて野蛮族扱いにイメージをさせようとしているのが『古事記』・『日本書紀』です。それを見て我々は騙されている。本来はこれは良い意味です。岡山県には津雲遺跡などがあります。そういう知識がありましたので、「ほ」は火山のことになる。
それで平安時代に、この鶴見岳の火山爆発があり『三代実録』にめづらしく詳しい状況が書いてあります。頂上から爆発し、三日三晩かけて吹っ飛び、大きい磐がふっ飛んできて、小さい岩でも水を入れる瓶ぐらいの大きさの岩が飛んできた。又硫黄が飛び散って川に流れて何万という魚が全部死んだという非常にリアルな描写があります。現在はそれで一三五〇メートルで、今は隣の由布岳より少し低い。その鶴見岳は吹っ飛ぶ前は高さが二千メートル近くあったのではないかという話があり、もしそうであれば鶴見岳の方が高かった。
 それで元に戻り、鶴見岳には火軻具土(ほのかぐつち)命を祭っている。「か」はやはり神様の「か」で神聖なという意味で、「ぐ く」は先ほどの不可思議なという意味であり、「神聖な不可思議な山」が「香具山(かぐやま)」である。火山爆発で神聖視されていた山である。もう一つ後ろに神楽女(かぐらめ)湖という湖がある。非常に神秘的な湖ですが、その神楽女湖も、「め」は女神、「ら」は村、空などの日本語で最も多い接尾語で、これもやはり語幹は「かぐ」である。だから並んで山も「かぐ」、湖も「かぐ」である。ですからやはり本来のこの山の名前は「かぐやま」であろう。「香具山(かぐやま)」とは本来ここで有ろう。それで安万(あま)の中にありますから「天香具山(あまのかぐやま)」である。

ちなみに「国見町」をWikipediaで検索すると、以下の3例が出てくる。

  • ・国見町(くにみまち) - 福島県伊達郡にある町。
  • ・国見町 (長崎県)(くにみちょう) - かつて長崎県南高来郡にあった町。現在の雲仙市の一部。
  • ・国見町 (大分県)(くにみちょう) - かつて大分県東国東郡にあった町。現在の国東市の一部。
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    2017年1月 6日 (金)

    安倍年頭所感にみる改憲意欲/アベノポリシーの危うさ(121)

    安倍首相の年頭所感をどう読解するか?
    今日の東京新聞が解説している。
    11701062

    「わが国の たちなほり来し 年々に
     あけぼのすぎの 木はのびにけり」
     30年前の新春、昭和62年の歌会始における昭和天皇の御製です。
     戦後、見渡す限りの焼け野原の中から、我が国は見事に復興を遂げました。昭和天皇がその歩みに思いを馳せたこの年、日本は、そして世界は、既に大きな転換期に差し掛かっていました。

    引用されている昭和天皇の御製を「戦後復興の祈り」を託したものと言っている。
    1954年生まれの安倍首相にとって、「戦後」は経済復興面「だけ」が意識されるということだろうか。

     本年は、日本国憲法施行70年の節目の年にあたります。
     「歴史未曽有の敗戦により、帝都の大半が焼け野原と化して、数万の寡婦と孤児の涙が乾く暇なき今日、如何にして『希望の光』を彼らに与えることができるか・・・」
     現行憲法制定にあたり、芦田均元総理はこう訴えました。そして、先人たちは、廃墟と窮乏の中から、敢然と立ち上がり、世界第三位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を、未来を生きる私たちのため、創り上げてくれました。

    安倍首相は、現行憲法施行70年というタイミングを「改憲へのまたとないチャンス」と捉え、年始から「改正ありき」の印象付けをはじめたのである。
    現憲法を死守しようというわけではないが、安倍首相の考える改憲には断固反対する。
    日本国憲法は、大日本帝国憲法との比較において理解すべきものだ。
    Ws000000
    日本国憲法の特色

    ・国民主権
    ・基本的人権の尊重
    ・平和主義
    の3本柱を壊そうとするのが自民党改憲案である。
    表面的な美辞麗句に惑わされてはならない。

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    2017年1月 5日 (木)

    不適格大臣列伝(6)・稲田朋美防衛相-3/アベノポリシーの危うさ(120)

    去年亡くなった人物に、文部大臣や法務大臣を歴任した奥野誠亮氏(享年103歳)がいる。
    1913年に生まれ、38年に東京帝国大学法学部を卒業、同年に内務省に入り、戦後は、自治庁(当時)官僚となって、自治事務次官を経て自民党の衆議院議員になった。

    絵に描いたようなエリートである。
    憲法改正を積極的に唱え、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の初代会長を務めた。
    白井聡京都精華大学専任講師は以下のように評している。

    奥野氏の態度が子供じみたものにすぎないことは、彼が終戦時に内務官僚として大量の公文書の焼却に関わり、そのことを恥じる気配もなかったという事実によって裏書されている。
    その意図は、戦争犯罪の証拠を占領軍から隠すことにあった。この行為は、現在も歴史論争を混乱させる要因となっているという意味で禍根を残しているのだが、「奥野的」な保守派的主張ののっけからの破綻を運命づけている。「我が国に正義はあった」と確信するのならば、証拠を焼く必要はなかったはずである。「勝者が敗者の言い分を認めるわけがない」という言い訳は、到底成立し得ない。義を確信するのならば、「不当な罰」を受ける可能性を引き受け、いつの日か義が認められるよう証拠を残すのが当然の行為だったはずである。
    ところが、このトップエリートは、悪さを咎められた時の子供のような態度を、1世紀以上生きてなお、取り続けた。12月12日に行なわれた「お別れ会」の実行委員長は、安倍晋三首相である。けだし適任であるに違いない。安倍政権も「議事録改竄」に手を染めてきたからである。つまり歴史の審判にさらされる勇気の欠如において奥野氏はまさに大先輩であり、現政権は嫡流なのである。
    いわゆる「保守派」は、「現実派」ではなく「幼児派」である

    的確な指摘であるが、稲田朋美防衛相の靖国参拝のニュースに接し、「幼児派」の1人だな、と思わざるを得なかった。
    稲田氏が29日に靖国神社を参拝したのは、安倍政権の支持基盤である保守層への配慮からだという。
    自衛官募集ビラに、身内から「頼りない」と言われたトラウマがあるのかも知れれないが、いかにも稲田氏らしい軽い思慮を欠いたはねっ返りである。
    ⇒2016年11月21日 (月):不適格大臣列伝(3)・稲田朋美防衛相/アベノポリシーの危うさ(107)
    2016年12月 4日 (日):不適格大臣列伝(4)・稲田朋美防衛相-2/アベノポリシーの危うさ(111)

    稲田氏は「戦争は人間の霊魂進化にとって最高の宗教的行事」という谷口雅春の教えを生活の基礎だと言って憚らない人物である。
    靖国神社は「不戦の誓い」をするところではなく、「後に続く」と誓うところだというのだ。
    Photo
    「戦争は人間の霊魂進化にとって最高の宗教的行事」 谷口雅春と稲田朋美と日本会議


    稲田防衛相は安倍首相の「お気に入り」で、後継者に擬していることは広く知られている。
    ハワイ・真珠湾慰霊に同行もしたが、安倍首相が日米の「和解の力」を強調した直後である。
    靖国への参拝は中韓両国の反発を招くのみならず、米国からも「和解」の意義を問われることになろう。
    さすがに自民党の一部からも危惧の念が出ているらしい。

     稲田氏は参拝後、特攻隊員だったおじが靖国に合祀(ごうし)されたことに触れ、記者団に「家族や国を守るために出撃した人々の命の積み重ねの上に今の日本があることを忘れてはならない」と語った。
    ・・・・・・
     自民党幹部は29日、取材に対し「首相が稲田氏を起用したので仕方ないが、防衛相には不適格だ」と批判。公明党幹部も「米国だけでなく中韓との和解はどうあるべきか、政治家としての姿勢が問われる」と語った。民進党の野田佳彦幹事長は「真珠湾に同行した直後の参拝はどういう意味なのか、内外に説明する責任がある」と述べた。
    「和解の力」に冷や水 与野党から批判

    特攻隊員だったおじを慰霊するために参拝するのを問題にしているわけではない。
    というよりも、特攻隊員は犠牲者である。

    そもそも、防衛相というのは、国の防衛に責任を持つ人間であり、私的なことを口実にすべきではないだろう。
    そういうところが「頼りない」と言われることを自覚すべきだ。
    安倍首相はノーコメントの構えであるが、心中は「良くやった」と思っているのか、「余計なことをした」と思っているのか。

    真珠湾の美辞麗句は、口先だけであったのか、と安倍政権の姿勢が問われているのである。
    稲田氏は、自覚してか無自覚かは別として、安倍政権の本質を露呈させるという意味で貴重な存在かも知れないが、内閣は、満州事変以降の歴史を復習すべきではないか。

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    2017年1月 4日 (水)

    「日本はスゴイ」の自画自賛/アベノポリシーの危うさ(119)

    第2次安倍政権の発足から丸4年過ぎた。
    安倍首相は、「積極的平和主義の旗を掲げ、しっかりと世界の平和と繁栄に貢献し、世界の真ん中で輝く日本をつくっていきたいと思います」と意欲的であるが、4年の間に世相はずいぶん窮屈になった。
    「世界の真ん中で輝く日本」という言葉に、「日本はスゴイ」という風潮を感じざるを得ない。

    早川 タダノリ『「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜』青弓社(2016年6月)という著書がある。
    Amazonでは次のように紹介されている。

    テレビや雑誌でやたら目につく「日本スゴイ」の大合唱。「八紘一宇」や「日本人の誇り」を煽る政治家まで現れた。実は1931年の満洲事変後にも、愛国本・日本主義礼賛本の大洪水が起こっていた。「日本人の礼儀正しさ」や「勤勉さ」などをキーワードとして、戦時下の言説に、「日本スゴイ」という自民族の優越性を称揚するイデオロギーのルーツをたどる。

    確かに三原じゅん子議員の「八紘一宇」発言や「日本会議」、「文化芸術懇話会」などを見ていると、「日本スゴイ」は現在の日本の一断面であろう。
    ⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)
    ⇒2015年7月12日 (日):「文化芸術懇話会」におけるリベラルアーツの欠落/日本の針路(195)
    ⇒2015年12月26日 (土):日本をダメにする日本会議という存在/日本の針路(268)
    ⇒2016年8月14日 (日):日本をダメにする日本会議という存在(2)/日本の針路(288)

    東京新聞12月13日の「こちら特報部」(2016年12月23日)が、この現象を取り上げている。
    1612132

    かつての「経済大国」は遠い昔の話で、1人当りGDPでは日本は20位(2015年)である。
    安倍首相の「世界の真ん中で輝く日本」という言葉は、意識しているかどうかは別として、満州事変以降の世相との近縁性を表しているだろう。
    首相が率先して再び日本を「ディストピア」化しているのである。

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    2017年1月 3日 (火)

    岐路に立つ日本と満州国論/日本の針路(317)

    2017年は、様々な点で日本が岐路に立つだと思われる。
    日本が再び戦前、戦中のような社会に回帰するのではないか?
    第2次安倍内閣が発足した2012年以降、情報の統制が進み、反対意見を言いにくい雰囲気が強まった。

    2014年の特定秘密保護法施行による政府に不都合な情報の国民からの遮断、2015年のマイナンバー法施行による国民の一元管理に加え、2016年の改正通信傍受法の施行により、捜査機関による傍受(盗聴)の縛りが大幅に緩和し、市民活動の監視が強化された。
    の目が及ぼうとしている。
    安倍政権はメディア介入も強めている。高市早苗総務相は昨年、放送局に電波停止を命じる可能性に触れた。政府が放送局に電波停止をちらつかせるようでは放送の自由は死んでしまう。
    メディアへの介入も強く、高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に触れたたが、政府が放送局に電波停止を以て恫喝することにより、放送の自由は実質的に死んだ。

    これらの事態は、満州事変以降の歴史を想起させるものである。
    鶴見俊輔は1956年(昭和31年)に「知識人の戦争責任」(『中央公論』1956年1月号)のなかで「15年戦争」という言葉提起した。
    それは以下の3つの段階で進んだ。
    1.満州事変:1931年(昭和6年)9月18日 ~
    2.日中戦争(支那事変):1937年(昭和12年)7月7日 ~
    3.太平洋戦争(大東亜戦争):1941年(昭和16年)12月8日 ~

    年表風にまとめれば以下のようになる。
    昭和 6年 9月18日 満州事変
    昭和 7年 1月 8日 桜田門天皇狙撃未遂事件
                 1月28日 上海事件
                 3月 1日 満州国建国宣言
                 5月15日 5・15事件(犬養首相殺害)
    昭和 8年 3月27日 国際連盟を脱退
    昭和11年 2月26日 2・26事件
    昭和12年 7月 7日 蘆溝橋事件
    昭和13年 4月 1日 国家総動員法公布
    昭和16年12月 8日 日本軍真珠湾を奇襲
    ⇒2013年2月27日 (水):石原莞爾と2・26事件/満州「国」論(15)

    満州事変は1933年に塘沽協定により停戦が成立し、中国軍による偶発的発砲から起こったとされる盧溝橋事件(日中戦争)についても日本は「局面不拡大」「平和的折衝の望みを捨てず」と閣議決定[2]をしているが、鶴見は満州事変から日中戦争を経て太平洋戦争に至る(大東亜戦争)過程を日本の連続的な対外膨張戦略ととらえて14年間(15年にわたる)に及ぶ戦争を「十五年戦争」として総括しており、現実の歴史を振り返れば重要な視点であろう。

    満州国という「国」は、様々に論じられてきた。
    例えば、宮下隆二『イーハトーブと満洲国-宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』PHP研究所(0706)などは、意外な視点だと思われる。
    文学者が岩手県を理想化して描いた仮想的なユートピアと日本の侵略の象徴ともいうべき「国」である。

    満州国は国家だったのか?
    武田徹『偽満州国論』河出書房新社(1995年12月)は、「満州国の興亡をテキストに、国家を規定する幻想性を追求する。石原莞爾の「最終戦争論」、甘粕正彦の満州政策。そしてインターネット、デジタルキャッシュ、オウム王国の建設へ。満州国のデザインは戦後も生き続ける。」ことを描いた書である。
    「満州国」と「」付きで表記され、「なかった」ことになっているが、壮大な社会実験とみることもできる。

    あるいは「評論自体が「ジャズ的なノリ」で書かれることが多く、あまり論理的な文章ではない。平岡の感性でとらえた、「辺境的なもの、マイナーなもの」を、ことさらに称揚しているだけとも受け取れる」と評された平岡正明『石原莞爾試論』白川書院(1977年5月)は、現在でも一部にカリスマ的人気を持つ石原莞爾を「武装せる右翼革命家」として論じている。
    ⇒2009年7月10日 (金):平岡正明さんを悼む/追悼(7)

    同書の装丁に使われている満州国図は以下のようである。
    2

    もう一度、満州国の興亡を辿ることを今年の1つの課題としたい。

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    2017年1月 2日 (月)

    「日本3.0」(?)への対応/日本の針路(316)

    安倍首相が年頭所感を発表した。

     女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが、その能力を発揮できる一億総活躍社会を創り上げ、日本経済の新たな成長軌道を描く。
     激変する国際情勢の荒波の中にあって、積極的平和主義の旗をさらに高く掲げ、日本を、世界の真ん中で輝かせる。
    安倍内閣総理大臣 平成29年 年頭所感

    昨年は、相模原障害者施設における大量殺人や原発自主避難家族に対するいじめなど、弱者に対する迫害が深刻化した年であった。
    これらの顕在化した事件は氷山の一角に過ぎない。
    社会全体の風潮がそういう方向に進んでいるのだ。

    「積極的平和主義」の美名の下に戦争の準備を進め、「日本を世界の真ん中で輝かせる」と客観的条件を無視して、自己陶酔する。
    安倍首相の(スピーチライターの)言説には幼児性が際立つ。
    未来志向がお好きな内閣であるが、そのためには歴史に学ぶ必要がある。
    昭和は遠くなりにけり、であり、昭和を歴史として捉える時期になった。

    近代日本は、明治維新から敗戦までの時代、敗戦から現在の時代を経て、第3の時代にシフトする。
    30
    近代の第3ステージ、「日本3.0」が始まる

    1964年の東京五輪に始まる経済志向(思考)で過ごしてきた時代が終焉するのだ。
    安倍政権が「未来志向」を口にするなら、このようなパラダイムシフトをベースに置くべきだろう。
    「日本2.0」時代の政策が、「日本3.0」時代にはまったく有効性を失う。
    2020年には東京五輪が開催されるが、「日本経済の新たな成長軌道を描く」と相変わらず経済成長を目標に掲げるのは、時代錯誤でしかないのだ。

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    2017年1月 1日 (日)

    あけましておめでとうございます

    あけましておめでとうございます。
    今年も富士山は清々しい姿を見せてくれています。
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    平成という元号は、「地平天成(地平らかに天成る)」に由来すると説明されました。
    真に平成な年となることを祈ります。

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