TPPこそ大山鳴動して・・・/日本の針路(311)
小池百合子都知事が2日の会見で、東京五輪会場見直し問題に関し、自身が目指した案すべてが実現しなかった場合、「大山鳴動して鼠一匹」に終わると指摘され、「ちょっと、それは失礼なんじゃありませんか」と、気色ばんだ。
コスト削減を目的とした会場見直しで、ボート、カヌー・スプリントは「長沼ボート場」(宮城県登米市)での開催案は競技団体の反発が強く断念せざるを得なかった。
水泳の「五輪水泳センター」(江東区)も座席数こそ減らしたが、会場変更には至らなかった。
残るバレーボール会場は、有明アリーナを新設するか、横浜アリーナを活用するかであるが、横浜案は困難との見方が強く、有明に決まる見通しだ。
「見直しの問題提起でコスト削減がさらに進んだ」という知事の言葉は、負け惜しみの観が強い。
五輪会場問題はともかく、環太平洋連携協定(TPP)は、9日の参院本会議で与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、承認された。
しかし、TPPの発効には、交渉参加12カ国のうち経済規模が大きい日米両国の承認が必要だが、米国のトランプ次期大統領が就任直後の脱退を表明し、発効の可能性が事実上消滅している。
こちらこそ「大山鳴動して鼠一匹」と言うべきではないか。
東京新聞12月10日
参院本会議の採決では、民進、共産、自由、社民四党が反対。日本のこころを大切にする党は賛成した。
通常国会から始まった審議では、交渉過程の情報開示を巡り、政府の後ろ向きな姿勢が問題となった。また、農業や食の安全など幅広い分野で懸念が示されたが、議論は深まらなかった。発効の可能性が事実上ないにもかかわらず、政府・与党は国民に十分な説明をしないまま承認を急いだ。
九日の参院本会議に先立ち、安倍晋三首相は参院TPP特別委員会で「発効が不透明になっても、公正な経済圏を作るという戦略的な意義を世界に発信する」と承認の意義を強調した。
TPPは参加国間の貿易と投資の自由化に加え、サービスや知的財産のルールを決める包括的な経済連携協定(EPA)の一種。国内総生産(GDP)で世界の約四割を占める巨大経済圏を目指す。
関連法は、TPP承認に合わせた国内法の整備と影響を受ける畜産農家の支援策など計十一本の法改正。ほとんどが施行日をTPPの発効日としており、施行の見通しは立っていない。
TPP発効見通しなく承認 トランプ氏、2国間交渉の意向
国内にも反発が強かった関税や非関税障壁の緩和といった合意事項は、二国間交渉では、さらなる譲歩を求められる可能性がある。
今国会最大の課題と位置づけていたTPPに誤算が生じ、安倍政権は大きな岐路を迎えている。
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