「大東亜戦争」開戦とメディア/日本の針路(310)
「大東亜戦争」の開戦から75年目である。
しかし、開戦の当日は未だ名称が決まっていなかった。
大日本帝国と英国・米国・オランダ・中華民国などの連合国との間に発生した戦争に対する呼称。1941年(昭和16年)12月12日に東條内閣が、支那事変(日中戦争)も含めて「大東亜戦争」とすると閣議決定した。
敗戦後にはGHQによって「戦時用語」として使用が禁止され、「太平洋戦争」などの語がかわって用いられた。GHQの指定は現在では失効しているが、1960年頃から一種のタブー扱いとされメディアでの使用は控えられている。一方で大東亜戦争の用語を用いるべきであるとする主張も存在し、歴史認識問題などでこの戦争の呼称については議論が多数なされている。
Wikipedia:大東亜戦争
安倍首相が真珠湾を慰霊のために訪問することにケチをつけるつもりはないが、あの戦争をどう総括するかという歴史観が問われている。
⇒2016年12月 6日 (火):真珠湾訪問を意義あるものにするために/アベノポリシーの危うさ(112)
首相は昨年8月、「戦後70年談話」を発表したが、首相自身の言葉とか思いは伝わらないものだった。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
「大東亜戦争」は、侵略戦争でもあり自衛戦争でもあった。
植民地解放のための戦争でもあり、遅れてきた帝国主義戦争でもあった。
この両面を見据えつつ、どちらに力点を置くかが、歴史観の軸であろう。
残念ながら、安倍首相および取り巻いている人たちの基本的な認識は、自衛戦争であり植民地解放戦争であったということであろう。
開戦の日、日本国中が高揚した気分に包まれていたことは良く知られている。
例えば、高村光太郎の『十二月八日』という詩を見よう。
「12月8日」
記憶せよ、12月8日。
この日世界の歴史改まる。
アングロサクソンの主権、
この日東亜の陸と海とに否定さる。
否定するものは彼らのジャパン、
眇(びょう)たる東海の国にして
また神の国たる日本なり。
そを治(しろ)しめたまふ明津御神(あきつみかみ)なり。
世界の富を壟断(ろうだん)するもの、強豪米英一族の力、我らの国に於いて否定さる。
我らの否定は義による。
東亜を東亜にかへせといふのみ。
彼らの搾取に隣邦ことごとく痩せたり。
われらまさにその爪牙(そうが)を砕かんとす。
われら自ら力を養ひてひとたび起つ。
老若男女みな兵なり。
大敵非をさとるに至るまでわれらは戦ふ。
世界の歴史を両断する。
12月8日を記憶せよ 。
当時発行された切手が一種のリアルタイムの世相を映すアーカイブとなっている。
東京新聞12月8日
よほど自覚的にならないと、表層的な情報に振り回されることになる。
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